『Suzy Cube』に見る、ゲーム作りにあるべきプロの仕事の姿
スマホゲーム市場は年々拡大を続ける一大マーケットを形成していますが、必ずしもそこに並ぶ全ての作品が優れているとは限りません。
どれだけ多くのゲームがストアに陳列されていても、高品質で不自由なく遊べる作品は、わずかに一握りです。
目次
ハイクオリティなスマホゲームの『Suzy Cube』
例えば3Dアクションゲームの『Suzy Cube』は、昨今のスマホゲームとしては珍しいほどによく設計された作品に仕上がっています。
3Dで自由に世界を体験
プレイヤーが操作するのはキューブ状の顔を持つ主人公で、3Dの立体的な世界を縦横無尽に移動することができます。
いわゆる「スーパーマリオ」シリーズに近いゲームシステムを採用しており、道中の障害物を避け、コインを集めながらステージクリアを目指すのが目的です*1。
ステージは少しづつ小分けに用意されており、往年の『スーパーマリオワールド』を彷彿とさせるような設計が特徴です。
近年はシームレスでゲームが展開し、ゲームスタートからエンディングまで、ステージ場面が切り替わることなく、ずっと遊び続けることができる作品も見られます。
シームレスな体験は確かに滑らかで、ゲームの世界に引き込まれるような経験ができますが、一方で集中力が続かずに疲れてしまうこともあるものです。
しかし『Suzy Cube』は、往年のスタイルを踏襲したステージ構成を採用しています。
クラシックなゲームに慣れ親しみ、モダンなゲームデザインについていけなくなっていた人であっても、気軽に遊べるのが嬉しいところです。
豊かなアクション性も魅力
クラシックなステージ構成だけでなく、この作品では非常にシンプルなボタン操作で豊富なアクションが楽しめるのも魅力です。
基本的にプレイヤーに求められるのはジャンプと移動の操作のみ。
これまであまりアクションゲームをプレイしてこなかった人でも、気軽に手に取ることができます。
昨今のゲームは何かと機能を盛り込みすぎるあまり、複雑な操作になってしまうケースもしばしば見られます。
この作品ではそういった煩わしい要素は一切排除されているので、単純明快なプレイスタイルで遊ぶことができます。
しかしそれでいながら、ゲーム中には多様な障害物や、アイテムが散りばめられているため、プレイが単調になってしまうこともあります。
ステージごとに異なる毛色が採用されているため、最初から最後まで、余すことなく堪能することができるのです。
『Suzy Cube』がこだわった細部への作り込み
第一印象やざっとしたプレイ感において優れた感触を提供してくれる『Suzy Cube』ですが、細部に目をやると、開発者のプロの仕事ぶりを随所にうかがえます。
ストレスフリーな操作性
1つは、先にも触れたようにストレスフリーな操作性をしっかりと実現している点です。
ゲームによっては機能の盛り込みすぎにより、スマホゲームにはそぐわない複雑なプレイが求められこともあります。
しかしこの作品はスマホの小さな画面でも誤操作などが発生しないよう、しっかりと操作性の確保に努めている様子が窺えます。
シンプルな操作によるプレイを実現しただけでなく、キャラクターの挙動なども非常に自然に作られているため、違和感を覚えることもありません。
行き届いたローカライズ
『Suzy Cube』は海外の開発者によって作られたゲームですが、インディーゲームとしては細部までローカライズが行き届いている、稀有な作品でもあります。
多くの海外ゲームは、たとえAAA級のゲームであっても日本語訳が雑に行われているケースが見られます。
しかしこの作品では、そのような雑なローカライズの形跡は見られず、日本語に精通した人物によって日本向けに販売されている様子が窺えます。
こういった心遣いも、ファンの心を掴む上では重要です。
どこか懐かしいゲーム性
そして、明らかに「マリオ」を意識したゲーム作りは、非常にこの作品においてはうまく機能しているように思えます。
このゲームが優れているのは、マリオシリーズをそのまま模倣したB級作品にとどまっているのではなく、マリオシリーズの細部のこだわりまでも再現している点にあります。
多くのマリオライクなゲームは、基本的なゲームシステムのみを模倣するだけにとどまっています。
しかしこの作品は、マリオシリーズのゲームシステムはもちろん、シリーズに共通する作り込みの深さも徹底して行われている点に魅力があると言えます。
丁寧なゲーム作りは、プレイヤーをゲームの世界へ導く上では欠かせない要素です。
安心してゲームの世界に身を委ねられる感覚は、クラシックな名作の数々を思い起こさせる体験ともいえるでしょう。
現在のスマホゲームが抱える課題と可能性
スマホゲームは多くのユーザーを獲得している一方で、そこにはまだまだ課題と可能性が残されている様子が見られます。
甘い作り込みは許されない時代に
上述の通り、今ではスマホを通じてバリエーション豊かなゲームの数々を、簡単に体験することができるようになりました。
しかし、本当に質の高い作り込みのゲームはまだまだ少なく、満足できる作品は数えるほどしかありません。
スマホゲーム市場は巨大化を遂げ、ユーザーを満足させるためには、上質なゲームを届けなければいけなくなっているのです。
巨大化した市場で求められる「丁寧な仕事」
そのため、ゲームそのものはシンプルでも、随所に「丁寧な仕事」が窺えるゲームは注目が集まる傾向にあります。
世の中にはゲームの作り込みの浅さが、逆に新鮮に感じるユニークな作品として評価されていることも確かです。
しかしながら、やはり多くのユーザーが求めるのは、丁寧な仕事で上質な時間を届けてくれるゲームの存在です。
『Suzy Cube』は個人製作で、開発に3年もの月日をかけて作られたゲームです*2。
その丁寧な作りは多くの人の関心を集め、人気作品としての地位を獲得しました。
ゲームは、音楽や映像作品などに比べると、作品の良し悪しがトレンドに左右されることが少ないため、落ち着いて作り込みに時間をかけることができるコンテンツです。
そのことも踏まえ、まずは焦らずに開発へ勤しむことが求められるでしょう。
おわりに
ゲーム開発は地道で孤独な作業ですが、しっかりと作り込まれた作品には、正当な評価が与えられるエンターテイメントの世界でもあります。
ゆっくりでもいいので、根気よく作り続けることの大切さを再確認してみる時間をとってみるのも、大切な作業と言えます。
併せて読みたい記事
→「ミニ四駆 超速グランプリ」に学ぶライト層・ヘビー層のニーズを両立させるゲーム作り
→スター・ウォーズ/銀河の英雄に学ぶ、映画世界観を大切にしたゲーム作り
→ポケモンに学ぶ、学校では得られないゲーム作りのアプローチ
出典:
*1 ゲームキャスト「明るくて可愛くて、楽しいマリオ系アクション『Suzy Cube』レビュー。1人で3年をかけて練り込んだ渾身のインディゲーム」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65921622.html
*2 同上
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ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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『Suzy Cube』公式サイト:https://suzycube.com/
『Suzy Cube』App Store:https://apps.apple.com/app/suzy-cube/id1293337633
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