イラストが活きるパズルゲーム『GOROGOA』が届ける次世代のゲームらしさ
スマホゲームは数あれど、スマートフォンの特性を生かしきったゲームはそう多くはありません。
タッチスクリーンであることや、小型のデバイスで作品が完結することをフルに活用するゲームを挙げるとすれば、『GOROGOA』はその代表例としてふさわしいでしょう。
目次
『GOROGOA』の遊び方
派手なグラフィックや重厚なドラマは、ゲーム体験において大きな役割を持ちますが、スマホゲームにおいてはその限りではありません。
スマホ特化のパズルゲーム
この作品で求められるのは、非常に簡単なタッチ操作のみです。
いわゆるパズルゲームの一種である今作ですが、ストーリーの進行に従ってプレイしていくことが求められます。
画面をタップすると物語が進行していきますが、ある時点でタップをしても画面が変化しなくなるタイミングが訪れます。
そんな時は、どこか画面の気になる部分をタップしてみましょう。
すると仕掛けられていたギミックが作動し、再び物語は進み始めます。
このように、タップに合わせて画面に現れるイラストからそのあとの展開を予想しつつ、物語をプレイヤーが謎を解くことで進行させていくことを楽しむことができます。
一般的なパズルゲームの多くはステージクリア制を採用しており、ストーリー性の薄い単調な展開となっていますが、GOROGOAではむしろストーリー性が強調される内容となっています。
まるで絵本を読んでいるかのような体験
妙にアナログな質感や、まるで紙を触れているような感覚に、どこか懐かしさを覚える人もいるかもしれません。
次々に現れるイラストを組み合わせたり離したりする動作は、さながら絵本のような感覚に近いと言えるでしょう。
小さい頃に仕掛け絵本を触れたことがある人にとっては、おなじみの仕掛けも多く、その頃の思い出を呼び起こされてしまいます*1。
スマートフォンというデジタルデバイスに触れておきながら、紙の絵本のようなアナログな体験をしっかりと提供するところに、GOROGOAの良さが現れます。
今や数多くのゲームやその他のエンターテイメントをスマホで自由に享受できるようになりましたが、その一方で1つ1つの体験価値の個性が失われている様子も窺えます。
それでもこのゲームが唯一無二の体験を届け、それでいて過去の記憶を掘り起こすようなノスタルジーの創出を実現しているのは、どのような仕掛けが功を奏しているのでしょうか。
洗練されたイラストの美しさとゲームシステムへの注目
このゲームが優れているのは、ゲームをプレイするために必要な最低限の情報のみを伝える、いわば引き算の美学が詰まっているところにあります。
UIを排除したイラスト重視の体験
実際に触れてもらうとわかるように、GOROGOAでは余計な情報は一切存在せず、ひたすらタップ操作のみを楽しむことができる設計になっています。
通常のゲームの多くは、世界観の理解や操作方法の理解を促すため、画面上には多くのテキスト情報やイラストなどが現れます。
ましてスマホゲームはボタン操作を画面上で行わなければいけないため、画面にボタンが表示され、実際のゲーム画面を楽しむための余地は非常に限られています。
しかしGOROGOAの場合、画面をタップするだけで遊ぶことができるよう完結しているため、余計なUIを表示する必要はありません。
ゲーム画面に極力集中できるような計らいは、ゲーム中のイラストの質感や、タッチ操作の心地よさをしっかりと味わえるようなデザインにつながっているのです。
だからといって電子書籍でもない
UIを極力排除したゲームだからといって、Kindleなどの電子書籍との差別化もしっかりと行われているのも特徴です。
画面上に余計な表示がなく、タップ操作で話を進めていくことができるという体験は、Kindleで絵本を読むような体験に近いと思われるかもしれません。
しかし、それでもこのゲームをゲームたらしめている点として、Kindleでは再現できないような、パズルとして複雑な操作を必要としている要素が挙げられます。
イラストを重ね合わせたり、つなぎ合わせたりといった操作は、同じデバイスで動作するKindleにおいて再現することは難しいでしょう。
電子書籍はあくまでも情報を伝達するための合理性に特化した体験に力を入れているため、エンタメ性の追求については至らない点が多いのです。
まるで絵本のような楽しみ方だが、電子書籍では実現できないという、絶妙なラインをオリジナルのゲームとして実現したのがGOROGOAなのです。
『GOROGOA』が提示するスマホゲームとしての正当性
『GOROGOA』はゲームこそシンプルであるものの、スマホゲームとしてあるべき姿の1つが詰まっており、ゲームクリエイターにとっても学びの多い作品となっています。
タッチスクリーンをフル活用したゲーム
このゲームが特徴としているのは、タッチスクリーンの利点をしっかりと生かしている点にあるでしょう。
昨今のゲームの多くはスクリーンにボタンを配置し、家庭用ゲーム機などのコントローラーを兼用した作品が多く、タッチスクリーンの強みを生かしきれていません。
タッチスクリーンの最大の利点は、ゲーム画面に直接干渉出来るという体験です。
そのため、スマホゲーが輝くのは、ボタン操作を排除した体験を届けられることにあります。
今作では、この点をしっかりと押さえ、タッチスクリーンならではの画面をフル活用した操作と、アナログな質感の再現に取り組んでいます。
人肌の温もりを感じるような触り心地を思いださせる体験は、タッチスクリーンに本来求められていた使用方法の重要性を再確認させてくれます。
能動的な読書体験のゲーム性
また、タップして謎を解くごとにゲーム中のストーリーが展開していく仕組みは、ストーリーにより深く没頭できる仕掛けであるとも言えます。
パズルを解けばそれがそのまま新しい物語を展開していく体験は、プレーヤー自身が物語を紡いでいくような効果を生み出し、クリエイターの気分さえも味わわせてくれるのです。
一般的な読書というものは、紙をめくるだけのシンプルで刺激の少ない体験にとどまっています。
今や多くのエンターテイメントに囲まれ、激しい刺激を受けることに慣れた現代人にとって、いかなる行為においても強烈な体験を求めます。
今作における物語が自分の手の中で進んでいくような感覚は、間違いなく通常の絵本よりも記憶に残る読書体験を届けてくれることでしょう。
おわりに
スマホゲーム市場には数多くの作品が放出され、もはやスマホゲームは飽和状態にあると言われることもあります。
しかし、タッチスクリーンの可能性とあるべき姿に注目すれば、まだまだこの市場にはクリエイティブの余地が残されているとも言えます。
スマホゲームの限界の見極めは、クリエイターの創造力に託されているとも言えるでしょう。
併せて読みたい記事
→一度で二度美味しいゲーム『ピクセルスライム3』のクリエイティブ
→詰め込みすぎたゲーム『Craftopia』は理想の設計と言えるのか
→主人公を操作しないパズルゲーム『Pavilion』はなぜ面白いのか
出典:
*1 ゲームキャスト「物語を読み進める“仕掛け絵本パズル”『Gorogoa』レビュー。読むように進むゲームという新しい体験」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65908881.html
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ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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「GOROGOA」公式Twitter:https://twitter.com/a_i
「GOROGOA」 AppStore:https://apps.apple.com/jp/app/gorogoa/id1269225754
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