ステージを一度に二つ楽しめる、マルチバースなゲーム企画の面白さとは


スマホゲーム市場の登場により、3Dアクションゲームは飽和状態になっているようにも見られます。

 

しかし「マルチバース」という新しい概念の登場により、アクションゲームの面白さは新しい局面を迎えていることがわかります。

 

光と影を操ってゴールを目指す『影のまどろむ場所』

今作は見下ろし型の3Dパズルゲームの一種ですが、特徴的なのは一つのステージをクリアするため、実質2ステージ分を体験することが可能になっている点です。

 

ランタンを使ってゴールを目指せ

見下ろし型のシステムを採用しているこのゲームでは、主人公をうまくゴールまで案内してやるのが主な遊び方です。

 

主人公はランタンを手にしており、光と影をうまく操ることでギミックを解除しながら進めていくことになります。

 

また、プレイヤーが直接タップすることでアクションを起こすことも可能になっており、ステージ上の気になる部分を色々といじってみることで、先へ進むことができます。

 

ゲームはステージ制で進行し、じっくりと目の前のパズルに集中することができるため、急かされる心配はありません。

 

表と裏の世界を使い分けるギミック

ここまでの話を聞いていると、一見他のゲームとも大差のないパズルゲームのようにも思えます。

 

しかしこの作品の真価は表の世界と裏の世界をうまく切り替えながら進めていくことができる点にあります。

 

主人公がランタンを照らすことで、ステージの一部を覆う影は照らした分だけ動かすことができます。

 

そして影が触れた部分は、主人公のいる世界とは少し勝手が異なる裏の世界と繋がり、表の世界と裏の世界の要素が接続されてしまいます。

 

この性質を活用して、表の世界では存在しなかった足場を、影をかざす事で出現させ、通れるようにするという仕掛けになっています。

 

表の世界と裏の世界をうまく融合させながらゴールを目指すのが、このゲームの面白いところです。

 

名シリーズ最新作『クラッシュ・バンディクー4』が採用したマルチバース設定

このような1ステージに2ステージ分の仕掛けを採用するゲームシステムは、古典的な名作「クラッシュ・バンディクー」シリーズの最新作にもうかがえます。

 

名作アクションのクラシックな遊び心地

「クラッシュ・バンディクー」シリーズといえば、2Dスクロールでありながら3Dアクションの要素も取り入れた、アクションゲームの金字塔と言える作品です。

 

前進と後退の概念しか存在しない2Dスクロールかと思いきや、ステージの奥や手前にも主人公を動かすことができるという、独特の立体感が人気を生みました。

 

そんなクラッシュシリーズですが、2020年にも完全新作が発売され、昔ながらのクラッシュらしい操作を現世代機でも実現しています。

 

美麗になったグラフィックで「クラッシュ・バンディクー」を遊べるということで、当時夢中になっていた大人には嬉しい作品としてリリースされました。

 

シリーズ最難関の要因ともなっている「次元切替システム」

昔ながらのクラシックなゲームシステムを踏襲しつつも、最新作では新しい要素も取り入れることで、プレイヤーを飽きさせない工夫に力を入れています。

 

今回発売されたシリーズ最新作「クラッシュ・バンディクー4 とんでもマルチバース 」では、従来のアクションにマルチバース要素が加わりました。

 

『影のまどろむ場所』同様、あるアイテムを使用することで自由に表の世界と裏の世界のギミックを切り替えることができ、これを活用しなければ先へ進めない仕掛けになっています。

 

ジャンプやダッシュなどの正確性が要求されるだけでなく、タイミングよくギミックを出現させたり、消滅させたりしないといけないという、新しいアクションをもたらすことに成功しているのです。

 

もちろん、ステージが複雑化したことによって、ゲームそのものの難易度は過去作に比べて遥かに難しくなったという意見もあります*1。

 

ただでさえ独特の3Dアクションが多くのプレイヤーを苦労させていたのにも関わらず、ステージにギミック切り替えの機能が搭載されたことで、こなさなければならないタスクは増加しました。

 

しかしそれでも、「クラッシュ・バンディクー」という強力なブランドと独特のクセになる遊び心地から、多くのファンの心を掴むことが今作でも可能となっています。

 

また、ストーリーとしても、時代や次元を行ったり来たりすることになるというSF要素が加わっており、ストーリーが進むにつれて伏線回収や過去の回想などにも触れられます。

 

一つのステージの中に、次元を超えた仕掛けを導入することで、物語へ重厚感を与えることに実現しました。

 

ゲームとしての面白さと文化的な現代性を両立させたマルチバースの魅力

このような設定を自然に取り入れることができている理由として、次世代のアクションゲームに求められるシステムと、ユースカルチャーへの適合性を挙げることが出来ます。

 

一度で二度美味しいステージ構成

一つのステージの表と裏を切り替えながら進行できる仕掛けは、2ステージ分の要素が詰まっているとも言うことができます。

 

1ステージに組み込むことができるオブジェクトや仕掛けは、あらかじめある程度のキャパシティが定められているもので、キャパオーバーの際には仕掛けの取捨選択が求められます。

 

しかし、表と裏の世界を切り替えてプレイするマルチバースの世界観であれば、表の世界と裏の世界の両方にオブジェクトを配置し、2ステージ分の仕掛けを設けられます。

 

上で紹介した2作品ではステージの切り替えをギミックとして活用しています。

 

しかしマルチバースの設定を利用すれば、表の世界と裏の世界で微妙に異なる2つのステージを自然に取り入れることもできるでしょう。

 

多様性を重んじる現代のユースカルチャーにも適合

また、マルチバースという世界観は、現代の若者文化にも非常に適合した考え方でもあります。

 

アニメ映画『スパイダーマン: スパイダーバース』や映画「アベンジャーズ」シリーズなど、多くのヒーローが時代や世界を横断する物語が広く受け入れられるようになりました。

 

一つの世界観の枠にはまらない、時空を超えたヒーローたちの共闘は、グローバル化が進み、多くの情報に触れることができる現代人の心を大きく揺さぶる物語なのです。

 

いろいろな世界で、今日もヒーローたちが日夜悪との戦いに明け暮れているというストーリーが、分け隔てのない正義として受け入れられるほど、私たちはSF慣れしているとも言えます。

 

マルチバースは、想像以上に日常的な物語設定として活用することができるというアイデアは、覚えておいて損はないでしょう。

 

おわりに

二つの世界を切り替えながら進むマルチバースの物語は、映画やゲームを問わず広く受け入れられるようになりました。

 

ゲームとして扱うとなるとトリッキーに思えますが、実は多くの可能性を秘めた仕掛けであることも、忘れてはいけないポイントです。

 

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出典:

 

*1 IGN Japan「クラッシュ・バンディクー4 とんでもマルチバース – レビュー」

https://jp.ign.com/crash-bandicoot-4-its-about-time/47570/review/4

 

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ライター名:Satoru Yoshimura

 

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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『影のまどろむ場所』App Store:https://apps.apple.com/jp/app/%E5%BD%B1%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%81%A9%E3%82%8D%E3%82%80%E5%A0%B4%E6%89%80/id1221749074

 

『クラッシュ・バンディクー4 とんでもマルチバース』公式:https://www.crashbandicoot.com/ja/crash4/home

 

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