ゲームにおける「初心者救済要素」とは?理想とされる実装の形も考察


 
操作スキルでクリアするタイプのゲームや、格闘や銃撃などで勝敗が決まるゲームは、操作に慣れない初心者は圧倒的に不利です。そのため、初心者でもプレイを楽しめるように、何らかの救済要素を実装するゲームは少なくありません。
 
とはいえ、初心者救済要素が強すぎると、熟練者や上級者が苦労して獲得したスキルが否定されることにもなるので、バランス配分が非常に重要です。
 
そこでこのコラムは、ゲームに実装されている「初心者救済要素」について解説し、理想形まで考えていきます。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
 

1. 初心者救済要素とは

この項目では、まずゲームにおける「初心者救済要素」について、実装のされ方やバランスブレイカーとの違いなどを解説します。
 

1-1. 初心者救済要素として実装される種類

初心者救済要素は、以下のような形で実装されることが多いです。
 
・モードや機能(オプション)
例えば、ゲーム全体の設定によって難易度を「EASYモード」や「HARDモード」に切り替えて、プレイのしやすさをコントロールすることも初心者救済要素のひとつです。また、全体の設定ではなく、個別のバトルごとにEASYとHARDを選択できる例もあります。
 
さらに、「Dynamic game difficulty balancing(動的難易度調整)」と呼ばれる方法もあります。これは、ユーザーのプレイ状況をシステムが監視して、難易度を裏で自動的に制御するというものです。
 
・アイテム
ゲーム内で特定のアイテムを装着することによって、回避性能を上げたり、攻撃を自動的に行ってくれたりする初心者救済要素もあります。
 
これらのサポート的なアイテムの多くは、初心者の間は有効でも、中級程度になるとあまり効果が感じられないように設計されています。そのため、ある程度ゲームを進めてさらに強くなりたいと思う場合は、初心者救済アイテムを外して別のものに変える選択を迫られます。
 
また、同じステージで繰り返し敗北すると、救済アイテムが使えるようになるゲームもあります。例えば特定の『マリオ』シリーズ作品では、ひとつのステージで特定回数ミスをすると、マリオを強化するアイテムの獲得が可能となり、そのステージをクリアしやすくしてくれます。
 
・キャラ
キャラを育成して強化していくRPGなどでは、ガチャを引かずに最初に主人公が出会い、サポートしてくれるお助けキャラが実装されていることがあります。これらのキャラはチュートリアル役をこなしてくれるだけでなく、スタート時点で使い勝手良く作られています。そのため、主人公の育成が進むまでバトルの中心として機能します。
 
ただし、ゲームが進んでいくと、より強いキャラの育成が進み、序盤で頼っていたお助けキャラは使用されなくなることも少なくありません。
 
また、『ドラゴンクエスト』シリーズでは、NPCとして序盤に登場してプレイを補助し、中盤になるころに何らかの理由で消えるキャラが実装されているケースが多数見られます。
 

1-2. 初心者救済要素とバランスブレイカーの違い

「バランスブレイカー」とは、強すぎることでゲームバランスを崩してしまうキャラやアイテムのことです。
 
ゲーム性を台無しにしてしまう存在なので、開発側が意図してバランスブレイカーを作ることはありません。しかし、何らかの特殊スキルや耐性などを持たせたことで、相対的に対抗手段が少ない存在が生まれてしまうということはあり得ます。
 
一方、初心者救済要素は、基本的にゲーム初心者や操作が苦手な人を補助する目的で実装されますから、バランスブレイカーとの出自は全く異なります。ただし、初心者救済要素の効果が強すぎると、結果的にそれがバランスブレイカーになってしまうこともあり、ゲーム開発者としては注意すべきポイントと言えるでしょう。
 

1-3. 初心者救済要素と有利になるバグ技の違い

ゲーム開発者が意図しないバグによって、簡単には勝てないはずのボスキャラに容易に勝てる状態が発生したり、無敵状態のキャラができてしまったりすることがあります。また、それらのバグの情報がネット上などで広がると、ユーザーから意図的に利用されることもまれにあります。
 
ただし、バグはあくまでもイレギュラーな存在なので、仕様検討や設計を経て実装された初心者救済要素とは明確に異なります。
 

2. 初心者救済要素の例

この項目では、有名タイトルに実装されている初心者救済要素の具体例を紹介します。
 

2-1. FINALFANTASY XVI

『FINALFANTASY XVI』は、初心者やアクションが苦手な人に向けて「オートアクセサリー」を実装しています。
 
攻撃を補助する「オートアタックの指輪」、攻撃回避を補助する「オートドッジの指輪」、攻撃されるとき時間を遅くする「オートスローの指輪」、HP低下時にポーションで自動回復する「オートポーションの指輪」、クライヴに従うトルガルへの指示を補助する「オートトルガルの指輪」があります。
 
上記のアクセサリーは3つまで装着可能で、「オートアタック」と「オートドッジ」、「オートポーション」を装着した状態なら初心者でもプレイしやすいとされています。
 

2-2. スーパーマリオ3Dランド

『スーパーマリオ3Dランド』では、同一コースをクリアできない状態が連続すると、自動的に「アシストブロック」が出現するシステムを実装しています。
 
5回ミスすると「アシストブロック」から「無敵このは」を入手できますし、10回なら「パタパタの羽」を獲得できます。「無敵このは」はマリオをパワーアップするアイテムで、「パタパタの羽」はステージのゴールまで到達しやすくしてくれます。
 

2-3. NieR:Automata

『NieR:Automata』はEASYモードにすることで、バトルを自動化できます。そのためバトルに慣れない人や、バトル操作を自動化してプレイを進めたい人におすすめです。
 
操作としては難易度をEASYに設定してオートチップを装着すると、オートバトルでプレイが進むようになります。
 
ある程度慣れてきて、「できるだけ自力でプレイしたい」という場合は、プラグインチップ設定の「セットタイプA」を確認して、オート攻撃、オート射撃、オート回避、オートプログラム、オート武器切替の中から必要なものだけを残せば好みの難易度でプレイできます。
 

2-4. バイオハザードシリーズなど

多くのゲームには難易度設定機能があり、EASYモードやHARDモードを選ぶことで、ゲームの進めやすさを選択できます。
 
また、ユーザーが選択するのではなく、ユーザーの技能に応じて、システム側が難易度を自動的に調整する「Dynamic game difficulty balancing(動的難易度調整)」を実装しているゲームもあります。
 
例えば『バイオハザード4』などには上記のシステムがあるので、ユーザーのプレイ状態に応じたレベルが維持されるように作られています。ただし、徹底してダメージを受けないようなプレイを行っていると、慎重なだけで特に上手ではなかったとしてもゲーム側が「このプレイヤーは上手」と判断し、難易度が極限まで上昇してしまうというリスクも見られます。
 

3. 初心者救済要素を実装するときの注意点

この項目では、ゲーム開発者の視点から、初心者救済要素を実装する際に注意するべき点を解説しましょう。
 

3-1. ゲーム体験を損なわずに難易度を下げられる要素を探す

極端な話をすると、初心者救済要素を使った瞬間、ほとんどプレイしない(そのゲームの醍醐味であるシステムなどを一切活用しない)ままゲームを完全クリアしてしまうようでは、ユーザーはゲームを楽しめません。
 
そのため、初心者救済要素を実装する場合、そのタイトルをプレイする楽しみを維持しながら、初心者でもクリアして行ける要素にとどめることが重要です。
 

3-2. 初心者救済要素を隠すと初心者が見つけられない可能性がある

初心者救済要素は、発見して装着するアイテムとして設計されることがあります。ただし、ゲームに慣れない初心者にとって、ゲームを進行させるだけでも大変ですから、アイテムを探してゲットする作業自体が高難易度に感じられることもあるでしょう。
 
そのため、わかりにくい場所に隠したりするとせっかくの初心者救済要素を獲得できずにゲームを進めてしまい、難易度の高さで挫折してしまう、ということもあり得ます。
 
このような事態にならないために、初心者救済要素は隠さず、わかりやすくゲットさせることをおすすめします。
 

3-3. ただ楽にするだけのモードはゲーム好きには好まれない傾向にある

ゲームをプレイしているのはもちろん初心者だけではありません。熟練者や上級者にとって、初心者救済要素はあまり好まれない傾向があります。
 
それは、「苦労してスキルを獲得した自分と、苦労無くアイテムを獲得しただけの初心者の戦績があまり変わらない」といったときに不満として表面化しがちです。
 
そのため、初心者救済要素が強すぎないように設計することは非常に重要です。また、初心者救済要素を使ってステージクリアした場合、報酬の一部を与えないなど、何らかのマイナス要素を付加することをおすすめします。
 

3-4. 使わずにクリアしたメリットが大きすぎると使われない可能性がある

前の項目で、初心者救済要素を使用した場合、報酬の一部を与えないなど何らかのマイナス要素を着けるべきと記載しました。ただし、そのマイナス要素が大きすぎる場合や、救済要素を使用しない場合のメリットが大きすぎる場合などは、せっかく用意した救済要素が意地から使われないこともあります。
 
すると結局ゲームはクリアされず、「面白くないゲームだった」と不評を買う可能性もあるので、初心者救済要素を使用するデメリットが大きすぎないようにゲームを設計しましょう。
 

4. まとめ

ゲームにおける「初心者救済要素」について、その概要や実装例、実装時の注意点などを解説しました。
 
ゲームをプレイする人のスキル幅は非常に広いので、救済要素を実装して初心者でもプレイしやすくすることには大きな意味があります。とはいえ、初心者救済要素が強力過ぎるとゲームバランスを崩してしまい、熟練者がゲームから離れてしまうかもしれません。そのため、初心者と熟練者の双方を見据えたバランスや、実装の仕方を考えることが非常に重要です。
 

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