「PvPゲーム」とは?概要や開発、バランス調整の注意点などを解説
近年、「PvPゲーム」という言葉を聞くことが増えています。「”PvPゲーム”という言葉は、ある程度理解しているけど、細かいところでどういった定義なのかはわからない」という人は少なくないのではないでしょうか。
そこでのコラムでは、「PvP」の意味を解説し、「PvP」ゲームの代表作などを紹介します。また、後半ではゲーム開発者や運営者に向けて、「PvP」要素を盛り込む上での注意点などを解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
1. 「PvP」とは
この項目では、まず「PvP」という言葉の意味や、「PvE」との違いのほか、「PvP」の代表的なタイトルを紹介します。
「PvP」は、「Player vs Player」の略語で、プレイヤー同士の対戦を指す言葉です。言葉として聞く機会が増えたのは最近のことですが、ゲームの中では以前から導入されてきたスタイルです。例えば1980年代に流行した『プロ野球ファミリースタジアム』や、『マリオブラザーズ』などもプレイヤー同士が競い合うゲームなのでPvPと言えます。
また、1990年代になると、『ストリートファイターⅡ』のように対戦格闘ゲームが大流行し、さまざまな大会も開かれています。
上記に示したように決して目新しいわけではない「PvP」ですが、近年耳にすることが増えたのは、オンライン環境が普及したことと、eスポーツが文化・娯楽として広く認知されたことに起因しています。
ログインすれば対戦相手がいることや、eスポーツプレイヤーのように自分も対人プレイに参加したいという人が増え、その環境も整っているからこそ、近年「PvPゲーム」も増えているのでしょう。
1-1. PvPと対照的な「PvE」とは
「PvP」と対照的な存在として「PvE」があります。「PvE」とは、「Player vs Enemy」、または「Player vs Environment」の略語で、プレイヤーとコンピューターが対戦する形式です。
対戦形式としては明確に分けることができる「PvP」と「PvE」ですが、ひとつのタイトルの中に混在していることも珍しくありません。
例えばRPGであれば、メインクエストやサブクエストはあらかじめ用意されたシステム上の敵と戦うことが多いので「PvE」のプレイが基本です。ただし、クエスト以外でプレイヤー同士が対戦する「PvP」も実装されていることは多いですし、クエストを完走した後も「PvP」の部分を楽しむ人もいます。このように、タイトルとしては両方の要素を持つゲームが多数存在します。
1-2. PvPの代表的なタイトル
この項目では、PvPの代表的なタイトルを紹介します。
といっても、プレイヤー同士で競い合うことを主軸にしている、というだけでもPvPと呼べます。そのため有名なものだけでも、『Apex Legends』や『League of Legends』、『フォートナイト』や『パズル&ドラゴンズ』、『ストリートファイター』シリーズや『スプラトゥーン』シリーズ、『FIFA』シリーズや『ぷよぷよeスポーツ』、『鉄拳』シリーズや『実況パワフルプロ野球』シリーズなど、まさに数えきれないほどのタイトルでPvPスタイルの対戦が取り入れられています。
2. PvPゲームの主なジャンル
この項目では、PvPの主なジャンルを紹介します。
FPSやTPSなど、シューティング要素があるジャンルではPvPが採用されていることが多く、『Apex Legends』や『スプラトゥーン』シリーズのほか、『フォートナイト』などは誰もが知るタイトルです。
また、パズルゲームでも対人戦は多く取り入れられており、『ぷよぷよeスポーツ』はプレイヤー同士の対戦を行う大会も多数開催されています。
さらに、『ストリートファイター』シリーズや『鉄拳』シリーズなどの格闘ゲームでも、古くから対人バトルは行われてきましたし、『FIFA』シリーズや『実況パワフルプロ野球』シリーズなどのスポーツジャンルも、早くからPvPを導入して多くのユーザーを集めてきました。
このように例を挙げてみると、PvPは特定のジャンルに限定される対戦方式ではないことは明白です。つまり、ジャンルでくくることは難しいので、あくまでも対人戦があることに着目しなければ、PvPゲームかどうかは判別できないのが実情です。
3. PvP要素をゲームに盛り込む際の開発ケース
この項目以降は、ゲーム開発者の目線でPvPを考えていきます。ここではまず、PvP要素をゲームに盛り込む際の考えられるケースを紹介しましょう。
3-1. 最初からPvPベースのシステムで開発するケース
まず考えられるのは、ゲームのコンセプト段階からPvPをベースとして開発していくケースです。ゲーム開発のコンセプトがすべて明かされるわけではないので、どのゲームがこれに当たる、と確定できるわけではありません。
とはいえ、古くは『ストリートファイターⅡ』などの格闘ゲーム、近年では『Apex Legends』などはPvPベースのタイトルと言ってよいでしょう。
3-2. 基本的にPvE(ソロプレイヤー向け)のタイトルにPvP要素を追加するケース
ソロプレイ向けのRPGなどは、基本部分はPvEですが、追加要素的にPvPが加えられている場合が多いです。
とはいえ、近年はオンライン環境があることを前提としたゲームがほとんどなので、比率的にPvEが大きくても、コンセプト段階からPvP要素が盛り込まれていることは多いでしょう。
3-3. PvEのタイトルのスピンオフでPvPを開発するケース
基本的にPvEを中心としたタイトルがヒットしたことで、スピンオフとしてPvP要素を多く盛り込んだ開発が行われる場合もあります。
例えば『Minecraft』自体は自分のペースでコツコツ遊ぶゲームです。しかしその後スピンオフとして作られた『Minecraft Legends』はPvP要素を多く含むタイトルとして仕上げられています。
4. PvPゲーム(要素)を楽しいものにするために注意すべき点
この項目では、PvP要素を持つゲームを楽しいものにするために開発側が考えるべき注意点を記載します。
4-1. バランス調整がとにかく求められる
対戦要素が強いゲームの場合、圧倒的に強いキャラクターやアイテムがでないように、常にバランス調整に配慮する必要があります。どうやっても倒せないキャラクターや、強力過ぎるアイテムがあると、対戦の面白さが減ってしまうからです。
また、特定のキャラクターさえいれば勝てるとなれば、ゲームに多彩なキャラクターを盛り込む意味がなくなりますし、強すぎるキャラクターを使う相手とのマッチングが避け続けられれば、結局強いキャラクターを持つ人もプレイを楽しめません。
そのため、バランス調整によって強すぎる要素を作らないこと、ある程度強いキャラクターに対しても戦術を考えれば勝てる、などの工夫が必要です
4-2. Pay to Win(ペイトゥウィン)にならないように注意する
Pay to Win(ペイトゥウィン)という言葉は、課金すればするほど強いゲームを指して使われます。つまりお金を多く出した人には勝てないので、勝利するにはお金を出すしかないゲームと言い換えることもできます。日本では特に有料ガチャで強力なキャラクターを獲得するシステムが多いので要注意です。
以下にPay to Winの問題点を簡略化して解説します。月1万円ガチャを回す人が最高レアリティキャラを2体持っているとき、月100万円ガチャを回す人は強キャラを200体持っていると想定できます。これでは勝負にならないので月に1万円課金する人はそのゲームを離れるか、ストレスを抱えながらプレイすることになります。
また、月5万円課金する人は、上位に行きたいと思って10万円課金に移行するかもしれません。とはいえ、経済的に無理をしているとゲームを楽しめませんから、結局ストレスを抱えながらゲームを続けるか、そのゲームをやめてしまうかの二択におちいります。
では月100万円課金する人が最強の状態を楽しんでいるかというと、そうでもありません。自分と競える人が少なく同じ相手との対戦ばかりでは、PvPゲームとしての楽しみが成り立たないからです。現実にはランクシステムなどもあり、上記のように簡単な図式にはなりませんが、課金額が勝敗を決めるゲームに遭遇し、嫌な思いをした人は少なくないと思います。
また、課金ばかりをあおるゲームは社会的に批判されることも多く、結局はゲームの運営が長続きしないリスクもあります。もちろんゲーム会社が存続し、給料を得るにはユーザーに課金してもらうことは必須です。とはいえ開発や運営を行う人は、関わっているゲームがPay to Winにおちいらないように気を付けましょう。
「Pay to Win(ペイトゥウィン)とは?ゲーマーが忌避する課金とバランス」
4-3. マッチングやランクシステムは公平性を意識する
『League of Legends』をリリースしているRIOT GAMESは、サポートページの「マッチメイキング」という項目で、「両チームの勝つ確率が50%で誤差±1%以内にすることが公平なマッチメイク」という趣旨の記述をしています。つまり、いわゆる「五分五分」の対戦を組むことこそがマッチングの基本というわけです。
ランクシステムも同様に公平性が必要です。あるランクで勝率が上がっていけば、ユーザー本人がそのランクにとどまりたいと思っても、システムとしてはランクを上げざるを得ません。強い人が低ランクにいることは、多くのユーザーに対する不公平となるからです。
また、ゲーム会社側は単純な勝敗だけでなく、放置や回線落ちを繰り返すユーザーにも対処すべきです。通信が不安定化することは誰にでもあり得ることですが、回線落ちが多いユーザーは負けを認めないために故意に回線落ちしていることがあります。しかし、運営側としてはトラブルと故意の区別は基本的にできません。
そのため、『スプラトゥーン3』では、故意かどうかは問わず、回線落ちした場合その勝負は敗北としていますし、状況に応じてある程度の時間マッチングされなくなるという対処を取っています。
このような措置に不満を感じるユーザーもいますから、ゲーム会社としては事情をていねいに説明してユーザーの納得を得る努力も必要でしょう。
4-4. チートやグリッチの使用に対する処罰と対策を充実させる
PvPを取り入れたゲームでは、残念なことにチートやグリッチ(バグを利用して攻撃する不正行為)で勝とうとする人が一定数存在します。不正の方法は次々と生み出されるのでゼロにすることは困難ですが、だからと言って放置すると運営側の姿勢が問われます。
不正行為が横行すると、規約を守ってプレイをしているユーザーが楽しめませんから、ユーザー離れが進みますし、SNSなどで運営批判の声が上がり、炎上することもあります。
そのため、不正には厳正に対処することや、不正を防ぐための取り組みを随時行うことが、PvP系のタイトルでは欠かせない業務となっています。
5. まとめ
「PvPゲーム」の意味や特徴、代表作などを解説したうえで、ゲーム開発時にPvP要素を盛り込む上での注意点をまとめました。
オンライン環境の普及やeスポーツ文化の浸透によってPvP要素を持つゲームを楽しむ人は増加傾向にあります。とはいえ、人と人とが対戦する状況を作る場合、公平性が重要になります。また、課金競争におちいることがありますし、不正をしてまで勝とうとする人も出てきますから、開発側としては多くの人に快適にゲームを楽しんでもらえるような工夫や取り組みが欠かせなくなっています。
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