ソーシャルゲームにおける「有償石」とは?無償石との違いや差別化する理由
多くのソーシャルゲームでは、ガチャを回すときやアイテム獲得、スタミナ回復などに使用できる通貨(トークン)のような存在として「石」を使っています。そして、「石」には無課金でもらえる「無償石」と、課金でのみ得られる「有償石」があることがほとんどです。
普通にプレイしているだけなら、無料か有料かの違いしかないように思われがちですが、「有償石」と「無償石」は法律的に大きく異なるものとして区別されます。このコラムでは、「有償石」と「無償石」の違いを分かりやすく解説します。
目次
1. ソーシャルゲームにおける「有償石」とは
この項目では、まずソーシャルゲームにおける「有償石」という存在について解説します。
そもそもソーシャルゲームにおける「石」は、ガチャを回すために使用するほか、アイテムの獲得やスタミナ回復など、ゲームによってさまざまな利用方法があり、通貨のような役割を果たします。
ファンタジー要素が強いゲームでは「魔法石」と呼ばれたり、ポノスがリリースしている『にゃんこ大戦争』シリーズでは「ネコ缶」と命名されたりしています。ほかには、「ジェム」や「クリスタル」と呼ぶゲームもあります。
このように、それぞれのゲームで世界観に合わせた名称がつけられていますが、このコラムでは比較的使われることが多い「石」という表現を使用します。なお、一般的に「石」という名称が多く用いられているのは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントがリリースしたタイトルである『パズル&ドラゴンズ』の「魔法石」に由来しています。
「石」には有償石と無償石の区別があることがほとんどで、その違いを大きく言うと、名称の通り課金して入手するか、無課金でも入手できるかという点にあります。
ただし、有償石と無償石には、使われ方や法律上の違いがあるので、その点を次の項目以降で詳しくまとめます。
2. 有償石と無償石の違い
この項目では、「有償石」と「無償石」の違いを解説します。
2-1. 無償石に該当するもの
ソーシャルゲームでは、「無償石」をさまざまなシーンで配布することが通例となっています。例えば、新規登録時のサービスやログインボーナス、イベント時のサービスやミッションクリアによる報酬、メンテナンス遅延時やシステム障害時などのゲーム会社からのお詫び、などの理由で無償石が配布されます。
そのためユーザーにとっては、「無償石」は直接的な課金をせずに獲得できる石として、重宝していることと思います。ゲーム内での上位者を目指すなどの目標がなければ、「無償石」だけでもかなり楽しめるゲームも少なくありません。そのため、無課金ユーザーにとっては特に「無償石」の配布は嬉しいサービスでしょう。
ソーシャルゲームの「詫び石」について詳しく書いたコラムがあるので、興味がある方は以下もご参照ください。
→「ソーシャルゲームの「詫び石」とは?語源やゲーム開発者視点で見る文化」
一方「有償石」は、課金をしたことで獲得できる石です。用途的には、ガチャやアイテム獲得、スタミナ回復など無償石と大きな違いはありません。ただし、有償石でしか回せないガチャがあったり、レアリティが高いキャラクターの排出率が高かったりもします。
細かい点はゲームによって異なりますが、有償石ならではのメリットを実装しているゲームは非常に多く存在します。この点については、後述の「ユーザーに課金を促せるメリットが大きいガチャを実装するため」の項目で詳しく解説します。
有償石はログインボーナスなどで入手できることは基本的になく、あくまでも課金によって獲得するものとして実装されます。この理由は、当コラムの「有償石と無償石が差別化されている理由」の項目で詳しく記載します。
2-2. 消費する際は無償石から使われることがほとんど
ゲームによって、ガチャを回すときなどに有償石と無償石を一緒に使えるゲームもあります。このような場合、消費は無償石が優先されることがほとんどです。
例えば石を3000個必要とするガチャを、無償石が1500個、無償石を2000個持っている状態で回す場合、無償石1500個はすべて消費され、ガチャを引いたあとには有償石500個が残る、といった具合です。
※ただし、有償石と無償石を合わせて使えないゲームもあるので、実際の使用時には各ゲームの仕様を確認してください。
3. 有償石と無償石が差別化されている理由
この項目では、ゲーム会社が有償石と無償石を差別化して実装している理由を解説します。
3-1. サービスが終了した際の払い戻しでトラブルをうまないため
ゲームのサービスが終了するとき、ゲーム会社は未使用の有償石に相当する金額を、手続きを行ったユーザーに返金しなければならないことが法律で決められています。これは、「資金決済に関する法律」の第二十条、「保有者に対する前払式支払手段の払戻し」の第一項に記載されています。
法律に記載された文言は専門用語が多く、一読しても意味が分かりにくいので、以下で要約します。
まず、ユーザーが有償石を購入することは、法的には「前払式支払手段」と呼びます。この「前払式支払手段」には、商品券やプリペイドカードのほかカタログギフト券なども含まれます。
この「前払式支払手段」に当たるサービスを提供している企業は、「前払式支払手段」で得た額が一定値を超えた場合、そのサービスを終了する際には、消費者が持っている未使用の「前払式支払手段」について、消費者の申し出があれば払い戻しをしなければならない、というのが「資金決済に関する法律」の第二十条第一項の趣旨です。
ちなみに、払い戻しをしなければならないのは課金によって購入した有償石のみで、直接お金を払って獲得したわけではない無償石は払い戻し対象ではありません。
上記の払い戻しを踏まえて、ゲーム会社は有償石1個がいくらに相当するかを定めておかなければなりません。例えば有償石500個を500円で販売していれば、有償石の単価は1円ということになります。
ここで気を付けなければならないのが、1回の課金額が大きいほどユーザーにとって得になるような販売方法を取っているゲームが多いことです。例えば、500円では有償石が500個購入できるが、5,000円払うと5,500個の石を入手できる、といった具合です。
ゲーム会社としては、売上や利益を上げるためにできるだけ多く課金してもらいたいのが実情です。そのため、1回の課金額が大きいほど何らかの特典を付ける、という手法が一般化しています。
しかし、上記の例のように、5,000円で5,500個の有償石を売ってしまうと、このときの石1個の単価は、5,500/5,000=1.1円となります。すると、返金を行う場合に、石1個に対して1円を払い戻すべきなのか、1.1円を払い戻すべきなのか、という混乱が生じます。ゲーム会社としては安い側で払い戻しをしたいでしょうが、ユーザーが損をする状態になると不満が高まり、会社としての信用を失うことにもなりかねません。
このような事態を防ぐためには、5,000円の課金に対して有償石は5,000個販売し、無償石を500個おまけでつける、という方法があります。この方法なら、払い戻しの際の単価の混乱はありませんし、ユーザーにとってのお得感も維持できます。
つまり、有償石はゲーム会社の利益確保のために欠かせないアイテムであり、より多くの利益を上げるためには課金額が大きいケースを優遇することも必須の手段です。しかし、有償石自体をサービスで付加してしまうと払い戻しの際に混乱が起こります。無償石は有償石とさほど変わらない用途を持っていながら課金対象ではないので、購入特典として付加することに最適なのです。
3-2. ユーザーに課金を促せるメリットが大きいガチャを実装するため
「石」の用途は、大きく分類すると、ガチャやアイテム獲得、スタミナ回復などであり、用途だけを見れば有償石と無償石に違いはありません。とはいえ、ゲーム会社としては利益アップのために有償石に多く課金してもらう仕組みを作る必要があります。
その手段として多く利用されるのは、有償石のみでしか回せないガチャです。例えば、有償石を使って10連ガチャを回すと、最高レアリティのキャラクターが必ず1体獲得できる、といった仕組みが代表的です。
ゲームによってガチャの排出割合は異なりますが、最高レアリティのキャラクターの排出率は1%未満であることも少なくありません。そんななかで、10連で必ず1体獲得できるのであれば、課金してもガチャを回したいと思うユーザーの率は上がります。
また、レアリティが3段階あるゲームで、有償石で回すガチャの場合、最低レアリティのキャラクターは排出されないという工夫もあります。さらに、有償石を消費して一定数のガチャを引くと、限定アイテムが入手できるゲームも存在します。ほかにも、音楽をテーマとするゲームで、ライブ視聴のチケットを有償石で購入する仕組みを実装したゲームもあり、有償石の購入を促す手段は多数存在しています。
ただし、有償石によるガチャの恩恵が大きすぎる、もしくは有償石のみに限ったイベントの頻度が高すぎる等の場合、ユーザーからすると「露骨な集金」と感じてしまいゲーム離れのきっかけになってしまいます。ゲームのユーザー層によって最適な頻度は異なりますが、周年イベントやお正月限定など、1年に2~3回の頻度に留めているタイトルが一般的です。
4.まとめ
ソーシャルゲームにおける「有償石」について解説しました。ソーシャルゲームの中には、ガチャやアイテム獲得、スタミナ回復などに使用できる「石」を実装しているものが多く、「石」は「有償石」と「無償石」に分類されます。
「有償石」は課金によってのみ獲得できるもので、ゲーム内での存在感も「無償石」より大きいことが一般的です。また、「有償石」はゲーム会社にとって貴重な収入源なので、ユーザーが課金してでも入手したくなるように、「無償石」との差別化が行われています。
さらに、「有償石」と「無償石」は、法律上の扱いも異なります。「有償石」は法的には、「前払式支払手段」と呼ばれており、ゲーム会社はサービスを終了する際に、未使用の「有償石」を持っていることを一定期間内に申し出たユーザーに返金する義務があります。
このため、もしプレイしているゲームのサービスが終わったときに「有償石」が残っていたら、ぜひゲーム会社の案内に沿って払い戻しの手続きをすることをおすすめします。
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