ゲームの体験版とは?ユーザーとゲーム会社のメリット・注意点を解説
ゲームによっては、正式リリースされる前に体験版が提供されることがありますし、ゲームファンの中には体験版をプレイした経験がある人も少なくないでしょう。しかし、体験版の定義やメリットなどは知られていない点もあります。
そこでこのコラムでは体験版の意味やメリット、注意点などを解説します。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
1. ゲームの体験版とは?
ここではまずゲームの体験版の定義や目的、類似性があるものとの違いなどを解説します。
1-1. 体験版の定義と目的
ゲームの体験版は、正規版のリリースが近づいた時期に公表されます。体験版は、そのゲームの魅力をユーザーに体験してもらうことを主目的とします。そのため、製品版に比べると内容が制限されていますが、無料で提供されるので、ユーザーにとっても魅力があります。
ただし、体験版をプレイしたユーザーからのフィードバックが改善に利用される例もあるので、昨今の体験版がリリースされる目的はユーザーに体験を提供するだけにとどまりません。
1-2. 配信される主なプラットフォーム
ゲームの体験版は配信で提供されます。配信される主たるプラットフォームとしては、Steam、PS Store、マイニンテンドーストアなどがあります。
1-3. 体験版とオープンベータの違い
ゲームの「ベータ版」は、開発が完全に終了していない状態でのリリースを指します。未完成でもユーザーの目にさらすことで、ゲームの全体像や問題点についてフィードバックをもらい、改善することを目的とします。オープンベータという名称は、誰でもプレイできるオープンな存在を意味します。
ちなみにベータはギリシャ文字のひとつで、アルファに次ぐ二番目の文字です。ゲームにはアルファ版という言葉も存在しており、関係者のみがテストプレイするものを指します。
1-4. 体験版とアーリーアクセスの違い
アーリーアクセスが持つ言葉の意味合いは年々拡大していますが、基本的にはベータ版と類似しており、体験版との違いは完成度や目的にあります。アーリーアクセスはバグや未制作部分がある状態で、ユーザーのフィードバックをもとにゲームを改善することが目的です。(一方で、エンディングまで遊べるようになっているアーリーアクセスもあります)
2. ゲームの体験版が持つメリット
この項目では、ゲームの体験版で得られるメリットを、ユーザー側とゲーム会社側の両面から解説します。
2-1. ユーザー(消費者)側のメリット
ユーザーにとって体験版は購入せずにプレイできるため、購入するかどうか迷うタイトルをテストできるメリットがあります。また、購入する前提のタイトルを早くプレイできることにはファンとしての喜びもあるでしょう。
さらに、体験版のデータを製品版に引き継げるよう配慮したタイトルもあるため、体験版が単に興味本位のプレイに終わらないメリットもあります。
2-2. ゲーム会社側のメリット
ゲーム会社としては、体験版を出すことでリリースを予定しているタイトルに関する話題を提供することができます。体験版をプレイした人がSNS等で情報発信してくれれば、さらなる認知度向上につながるので、マーケティング戦略としても有効です。
体験版の仕上がりが良くユーザーや専門家から高評価が得られれば、製品版の売上向上やブランディングが期待できます。またリリース前のファン育成や、ユーザーの反応を製品版やリリース後の運営に生かせるなどメリットが豊富です。
3. 最近の体験版のトレンド
ここでは、最近の体験版で行われているサービスのトレンドを紹介します。
3-1. セーブデータの引き継ぎはマストで盛り込む
体験版のセーブデータが製品版に引き継げるのは、もはやマストとなっています。この仕様がないと、体験版をプレイした人は、体験版と製品版の共通部分を二度プレイしなければなりません。そのため、体験版をプレイしたことで製品版を楽しみにくくなったり、むしろストレスになったりする可能性もあるでしょう。また、日々忙しく過ごす人が多い現代では、タイパを追求される傾向にあります。
3-2. 体験版を利用したユーザーに本編で特典を実装する
体験版をプレイすることで何らかの特典を付与するタイトルも少なからず存在します。たとえばスクウェア・エニックスが2024年にリリースした「聖剣伝説 VISIONS of MANA DEMO」では体験版をプレイすることで、製品版で使用できるアイテムが獲得できる特典が実装されました。
また、「ファイナルファンタジーVII リバース」では、体験版のデータがあることで、製品版で「冒険に役立つアイテムの詰め合わせ」が特典として配布されています。
さらに、カプコンの「ゴーストトリック」の体験版をプレイすると、ゲーム内で楽しめる画像や音楽的な特典が実装されたりするなど、特典の内容はタイトルごとに異なります。
4. ゲームの体験版の注意点
この項目では、ゲームの体験版に関する注意点を、ユーザー視点とゲーム会社視点の両面から解説します。
4-1. ユーザー(消費者)側の注意点
体験版は製品版に比べて内容が制限されていますが、それでもダウンロードするとそれなりの容量を覚悟しなければなりません。たとえば比較的最近リリースされた「ファイナルファンタジーVII リバース」は、製品版が約150GBであることに対して、体験版でも約50GBのダウンロードが必要でした。
また、体験版ではプレイできる内容が限られるので、部分的なテストプレイだと理解しておくことをおすすめします。さらに体験版と製品版では、仕様が変わる可能性もあることも踏まえておくべきでしょう。
4-2. ゲーム会社側の注意点
ゲーム会社側が最も注意すべきなのは、無料の体験版ではあっても、品質が低すぎると批判を浴びることもあり得るという点です。ユーザーからの評価が低く、ネガティブな情報をSNSなどで拡散されると、製品版を手に取ってもらえなくなるリスクもあるので、品質の維持には十分注意しましょう。
また、体験版を出すための工数が必要となるため、その分のリソースをあらかじめ確保しておくことも重要です。
5. 話題になったゲームの体験版例
ここからは、体験版が大きな話題になったタイトルを具体的に紹介します。
5-1. バイオハザード7
カプコンは、2017年にリリースした「バイオハザード7 レジデント イービル」に関して、本編とは異なる内容を実装した体験版「バイオハザード7 ティザー ~ビギニングアワー~」を配信しています。
この体験版は、製品版ではないのにマルチエンディングが実装されたことで大きな話題になりました。また、解けない謎が複数あることから、繰り返しプレイする人が多かったことでも知られています。
そもそもホラー色が強い「バイオハザード」シリーズですから、わからないことはストレスではなくシリーズの持ち味である恐怖を誘います。この演出によって、製品版リリースまで話題が続き、マーケティングの成功例として知られる例にもなっています。
5-2. ブレイブリーセカンド
スクウェア・エニックスが2015年にリリースした「ブレイブリーセカンド エンドレイヤー」については、体験版である「ブレイブリーセカンド 無料で遊べる三銃士編」が配信されただけでなく、体験版のアップデートも行われています。
製品版のネタバレをしないために、体験版のみのオリジナルストーリーも実装されており、このタイトルに掛けるスタッフの意気込みがうかがえます。
また、体験版をプレイしたユーザーからの声がフィードバックされて本編に生かされた内容もあり、体験版の成果が上がったタイトルでもあります。
5-3. メタファー:リファンタジオ
アトラスが2024年にリリースした「メタファー:リファンタジオ」においては、製品版リリースの約2週間前に、「プロローグ体験版」が配信されています。アトラスの人気タイトルである「ペルソナ」シリーズのキャラクターデザイナー:副島成記氏、コンポーザー:目黒将司氏、ディレクター:橋野 桂氏といった有名スタッフが参加したこともあって、体験版でも大きな話題となりました。
体験版の配信から2週間後が製品版の配信なので、内容的には大きな違いはなく、物語の導入部がプレイできる形が取られています。そのため、体験版から製品版へのデータ引継ぎも可能です。
また、体験版の配信と同時期にコミカライズも発表されるなど、メディアミックス戦略にも力が入れられています。
5-4. P.T
「P.T」は2014年にPlayStation4向けに無料配信されたホラーゲームです。完全クリアすると、エンディングムービーで「サイレントヒル」シリーズ新作ゲームのプレイアブル・ティザー広告であったことが明かされるという仕組みを取っています。
恐怖感を煽る演出が多く、プレイヤーができることが少ない点、同じルートを何度もループさせられる点などがホラー性を高めているとして、高く評価されている一作でもあります。「P.T」がのちにリリースされる「バイオハザード」シリーズに影響を与えたという話も有名です。
しかしその後「P.T」は配信停止され、「サイレントヒル」シリーズ新作ゲームの制作も中止されています。この事態が、「P.T」が伝説的存在となった遠因にもなっていますが、配信停止の理由は明らかになっていません。
まとめ
ゲームの体験版に関して、定義や目的、メリットや注意点などをまとめました。ゲームの体験版はユーザーとしてはゲームを無料でプレイできる機会が得られるうえに、購入を検討しそうなタイトルのテストプレイができるなど、多数のメリットが得られます。近年は製品版にデータ移行できるものが多いため、時間的無駄が生じない点でもプレイする価値が高まっています。
ゲーム会社としても認知の向上やファンの育成、ユーザーからのフィードバックがもらえるなどメリットが複数ありますが、品質が低いとマーケティング上のマイナスになってしまうリスクもあるので注意が必要です。
ゲーム会社に勤める人は、上記リスクを踏まえつつ、体験版が自社の利益になるように取り扱ってください。
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