居心地の良い脱出ゲーム?『Discolored』の設計について


脱出ゲームには数多くの作品がありますが、『Discolored』に含まれる演出には、脱出ゲームらしからぬ居心地の良さを覚えることもあります。

 

一風変わった脱出ゲームの『Discolored』

Discoloredが特徴的なのは、色を足していくことでゲームクリアを目指すという設計です。

 

脱出には「色」が必要

プレイヤーはとある砂漠に佇むレストランに放り込まれますが、その世界の全てがモノクロで表現された状態からゲームは始まります。

現代はフルカラーの時代とは言え、モノクロ表現で物語が展開される作品も少なくなく、白黒ならではの落ち着いたゲームプレイングが魅力となっているゲームもあるものです。

ただ、Discoloredは少しそういったゲームとは勝手が違っていて、プレイヤーはモノクロの世界から脱出するべく、世界に少しづつ色を加えていくことが必要になっていきます。

 

かつては確かに存在していた色を取り戻しながら、元の世界への帰還を目指すのが目的です。

いわば色のない世界から、色のある世界へと脱出するのがこのゲームのコンセプトと言えるでしょう。

 

3D空間を自由に移動

ゲームそのものは3D世界を自由に行き来できるというシステムを採用しており、エリアは制限されているとは言えくまなく探索を行うことが可能です。

脱出ゲームやアドベンチャーゲームの面白さは、幅広い選択肢や探索場所からインスピレーションを得つつ、攻略のヒントを少しづつ紡いでクリアを目指す面白さがあります。

 

脱出ゲームの中には行動に制限があったり、クリアのために必要な鍵が少なすぎたりするおかげで、あまり味気のないプレイングとなってしまうケースも散見されます。

一方でDiscoloredはスマホゲーとしては比較的余裕のある自由度と、程よいプレイ時間を想定してくれているため、プレイに際しては物足りなさや不自由さを感じることはないでしょう。

 

色を取り戻していく『Discolored』の世界観

単に世界に彩りが与えられるだけでなく、着色はクリアに欠かせないヒントをも提示してくれます。

 

着色によってあるべき世界を取り戻す

プレイヤーが操作することになる主人公は、もともとは彩色豊かな世界に住んでいた人間です。

ある時いきなりモノクロの世界に送り込まれてしまったことから、主人公は白黒しかない世界に違和感を覚えます。

その経験がこの世界に色を取り戻そうというモチベーションに繋がり、着色のために奮闘するというわけです。

 

最初からモノクロであることが大前提なら、世界に色を増やしていくという設定は違和感を覚えてしまいますが、色のある世界とない世界の存在が前提になっているゲームだからこそ、着色することの正当性が保証されていると言えるでしょう。

スマホゲームにはこの辺りの世界観の作り込みが甘いものもありますが、Discoloredはしっかりと世界観を作ろうという意気込みが垣間見えるのも面白いところです。

 

見えないものも見えるように

そしてプレイヤーは、ただ世界に色を取り戻すだけではありません。

実はその着色したことがクリアのためのさらなるヒントをもたらす仕掛けにもなっているのです。

例えば緑色をモノクロの世界に色づけることで、白黒では見ることのできなかった緑色の文字や植物などが可視化されるようになり、さらなるヒントをここからえることができるように作られています*1。

 

自分がいる世界に色が増えていく感覚は、自分が確実に脱出に近づいていることをしっかりと確認させてくれるという点でも優れた仕掛けと言えますが、それだけにとどまらず、色そのものが新たなヒントをもたらしてくれるのは画期的なシステムです。

このインタラクティブな仕掛けこそ、Discolored最大の特徴と言えるでしょう。

単に仕掛けを解くだけでは知恵の輪やルービックキューブのようなパズルゲームと大差ありませんが、仕掛けをクリアすることで世界の様子が変化するだけでなく、プレイヤーに新たな謎とヒントを与えてくれるのです。

 

着色によって変化する世界

Discoloredではゲームクリアのために色を取り戻す必要がある一方、モノクロの世界にも形容できない魅力があるのが不思議なところです。

 

孤独だが、居心地の良いモノクロの世界

Discoloredは文字通り色を奪われた世界という意味ですが、色味のないモノクロの世界はどこか昔懐かしい、居心地の良さを覚えてしまう点は否定できません。

もともとは色を失った世界から脱出することが目的のゲームな訳ですが、孤独感とともに絶対的な静けさももたらしてくれている点は、都会の喧騒に疲れてしまった現代人にとっては癒しの空間にもなり得ます。

本来は居心地の悪い場所から脱出するのが脱出ゲームですが、Discoloredには「別にこのままでもいいんじゃないか」と思わせるような空間演出が、ゲーム開始時点で与えられているのです。

 

また、少しづつ着色することで元の世界に戻っていく様子は、現世に近づいているというワクワク感を与えてくれるとともに、もうこの落ち着きのあるモノクロ世界には帰ってこれないのだなという名残惜しさももたらします。

ディズニーランドのように、夢の国と現実世界がゲートをくぐるだけで行き来できればそのような名残惜しい感情が生まれることもないところを、Discoloredでは色が今いる世界に少しづつ加わっていくことで、夢の世界が現実的な要素によって直接破壊されていくように仕向けられています。

 

現実世界に帰るためには、ノスタルジックで居心地のいいモノクロの世界を侵食する必要があるという葛藤を、プレイヤーは乗り越えなければいけません。

 

簡素な脱出ゲームも、演出次第でリッチなゲームに

パズルゲームの延長線上にあるとみられがちな脱出ゲームですが、雰囲気づくりやグラフィック・音楽の作り込みによって、大作にも負けない情緒と深みをゲームにもたらすことができます。

もちろんパズルゲームならではのひらめきが求められるギミックを用意することも重要ですが、それらの魅力を最大限に引き出すためにも、演出効果は大きな役割を持つことになります。

 

おわりに

脱出ゲームはビデオゲームの世界だけでなく、現実世界でも様々な場所で催されている人気のエンターテイメントです。

スマホでも気軽に遊べるとは言え、作り込み方や仕掛け次第では、パズルゲーム以上の感動をプレイヤーにもたらしてくれることでしょう。

 

出典:

*1 ゲームキャスト「色を失った世界を彩りを取り戻す脱出ゲーム『Discolored』レビュー。孤独な世界、プレイヤーに寄り添う音楽、演出が秀逸な1作」

http://www.gamecast-blog.com/archives/65952669.html

 

ライター名:Satoru Yoshimura

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

関連記事一覧