想像力から創造力へ。日本デザイン福祉専門学校が語る、次世代のクリエイターに必要なものとは?

 

 

日本デザイン福祉専門学校は、1954年の設立以来、創造力を持ったクリエイター育成のためのカリキュラムで多数の業界人を輩出しています。
一方的な専門技術の教育ではなく、生徒との対話を重視し、就職支援から卒業後の相談まで幅広いサポートを行っている点が特徴です。
今回は日本デザイン福祉専門学校の校長である塚本博義さんに、教育方針、創造力を持ったクリエイターを育てるためのカリキュラム、そして学生たちへの思いについて、詳しく伺いました!

 

“創造的職業人”とは変化できる人のこと。日本デザイン福祉専門学校の教育方針

――まずは日本デザイン福祉専門学校の教育方針について教えてください

 

本校では“創造的職業人”の育成を掲げていますが、これは変化できる人のことと考えています。
まずは基本的な知識や技術を学ぶ。しかし、基本的なパターンを学んでも、それを壊して変化させていくことができなければ、社会の中で生きていくことはできません。
学んだことに執着せず、社会の中で揉まれながら知恵と技術を取り入れて、柔軟に変化していくということが重要です。
そして、職業人は変化していくだけではなく、世の中の役に立つ形にして伝えていくということも必要だと思っています。

 

我々は、学生が作品を作るプロセスを“アイデア”、“物語”、“デザイン”、“ディレクション”の4つに分けています。
“アイデア”の部分では、ギリシャ哲学によればエイドス(外部から見た印象、形になるもの)とイデア(心の根、心理、理念)と考えます。
我々の目に映るものはエイドスに当てはまりますが、その根源となる考え方はイデアに入ってきます。
発想法は先達者たちが作ってくれていますから、それを学んでいきます。
次のプロセスは“物語”、つまりバックボーンです。

 

作品には物語が必要となるので、起承転結や序破急等で創作していきます。そして、“デザイン”のプロセスでそれを形にしていきます。
学ぶべき“デザイン”の方法と手法では構図や色、形、キャラクターデザイン、ソフトを含めた表現技術の修得が必要になります。
最後は“ディレクション”です。
学生のうちは、基本的には作品を作る過程で先生たちの指導や校正が入りますが、実際に社会に出たり、インターンやアルバイトで体験したりするものはまったく違います。

 

Adobe社のツールの発展により、誰もがクリエイターの力を持てるようになり、一つの方向だけで評価されない時代が来ました。
これはさまざまな分野が垣根を超えれば道は広がっていくということです。

 

例えばゲームは未来が無いといわれた時代がありました。
デザイン関係のクリエイター、講師達さえゲームなんて2、3年でなくなると考えていた初期の時代でしたが、その中で学生達はゲームの未来の可能性を信じ就職していきました。
ゲームを信じた人たちはもっと遠くを見ていたのです。

 

だからその世界に飛び込み、いろいろなものを生み出していきました。
当時、その分野に学内の優秀な学生を送り出すことがあり、それは非常に勇気がいることでしたが、彼らは成功しました。
デザインは、それだけで完結せず、ビジネスや他の分野と絡んでいくことで未来を切り開いていくのだと思います。
講師は大人なので失敗したことを経験として持っていますが、それはあくまでその人のもので目の前の学生達のものではありません。
これから入学してくる若者たちは、次代ごとに違う視点でものを見ているため、生徒ごとの視点によって少しずつ学校の在り方は変わってくるでしょう。
ですが、それを追いかけるだけでは混乱してしまうので根っことしての考え方が必要となります。

 

デザインという枠の中だけの考え方ではそのようなことはできませんし、アイデア、物語、デザイン、ディレクションの流れをちゃんと抑えていかないとこれからの時代に対応できないでしょう。

 

例えば、物語をベースに作品を作り始めた時、それを難しいと感じる生徒は多いですが、起承転結、序破急、などの既存の物語を作る法則を丁寧に伝えると、スムーズに理解してくれます。
さまざまな方法を講師が提示して、その中で何か自分に適したものを見つけたり、自分の温めたアイデアを形にしたりと、学生の進む道を探してあげられる立場でありたいです。

 

――熱中したい学生に、現場の雰囲気を伝えながら教育していく教育方針は大きな強みだと感じます。

 

デザインの現場は戦いですからね(笑)。
好きなことに熱中できる学生が、学校生活を通して自信を持ち、さまざまなものに立ち向かっていくことが理想ですが、教育はその一部しかできません。
自信を持ち、居場所があると感じられるようになる、あるいは確保できる力を養ってもらえればうれしいです。

 

性格に応じて短期が合う学生、長期が合う学生がいますから、学科によってある程度在籍期間を選ぶことができます。
2年制がベースで学生が入るクラスのコミックイラスト学科があり、これが最初のきっかけとして絵を学ぶ場所です。
絵を学んでいくと、その次に分野への道が開けます。
例えば、ゲームに近いものだとマンガやアニメーション、キャラクターデザインといったものがありますね。

 

 

4年課程のイマジネーションデザイン学科(主任加藤タカ先生)は、その分野で学んだものを社会に出た時、どのように活用できるかという視点で密接につながっていきます。
これは3年生の時からゼミナールという形で始まっています。ゼミはその道のプロが講師を務めており、企業の方から好意的なお言葉を頂き具体的な仕事をしながら学んでいきます。一緒に仕事をしながら学んでいくことは、企業の方にとっても安心して学生を雇用して頂ける事につながっているようです。

 

4年間の学びを通して学生はどんどん成長していきます。
その成長の中でのベースは“物語”と”したいこと”を実現する為のカリキュラムです。
3人の学科主任の牧山直樹先生(マンガ・アニメ・キャラクター学科3年課程)、加藤タカ先生(イマジネーションデザイン学科4年課程)と塚本博義(コミックイラスト学科2年課程 主任兼務)が一緒に話してカリキュラムを組み立ています。
勿論、2年課程から3、4年課程へのそれぞれへの転科もスムーズです。

 

チャレンジする子たちが生きる場所を作るカリキュラム

――マンガ・アニメ・キャラクター学科についての特徴として、“物語を作れる作家になる”というものがありました。こちらについて詳しくお聞きできればと思います。

 

物語のテイストは、各年度によって変わりますが、物語の法則は不変だと考えています。その人が生きた時代によって見てきたものは異なるので、展開も情報も様々です。
物語の法則は突き詰めれば数えるほどしか存在せず、そしてどのような作品にもあてはまります。
ですから、物語の法則をベースに自分のアイデア、設定を当てはめていくことで作品は多様な形で完成していきます。
そして、この法則は物語以外の作品作りでも活用していくことができます。
例えば物語(小説等)を発表するのであれば、チャレンジ精神を持つ学生は、原作を自分たちで出版社に持ち込み出版し、物語に曲を付け、グラフィックを制作し、ゲームとして完成させ、プロダクションと交渉しコンテンツに声を吹き込み公開する形を取る学生も誕生しております。

 

また、チャレンジする子たちが生きる場所を作っていきたいと思っています。
業種が発達した現在では、絵が得意でなくても映像系分野でデザインの仕事に就くことができます。
ですが、考え方が固着してしまうとそれが中々できなかったりします。
実際本校にもそのような子が入学してくることがあります。
そのような時に、教育を通してさまざまな道があるということ学び、選択肢を見つけてくれればうれしいです。
(学科主任 牧山直樹先生)

 

 

――入学してきた学生様には、まずはどのような事から教育されるのですか?

 

まず考え方を壊す。考え方というのは中高時代に得た「常識」みたいなものですね。先述したとおり、デザインの現場は座学とはまるで違いますから。
そして考えの基を作る事も同時に行います。そしてそのうえで、“発想は自由である”という基本的な考え方を作ります。

 

また、入学してくる学生の中にはコミュニケーションが苦手な子がいるので、まずは自分の考えを自分の言葉で伝える力を養う必要があります。
社会人として大事な礼儀、礼節、人間性の部分を教えることも多いので、本校では担任に年齢の高い人材を配置しています。
会社の副社長のような経歴の人がおり、社会の中で経験したことやどのような人が求められているかということをわかりやすく説明してくれます。
その中では社会常識をはじめとした社会とうまく付き合っていく方法も伝えていきます。

 

本校の在籍人数は少ないですが、学生1人1人に対するケアや適した教育はしっかりとさせています。
人数が多ければ生徒同士の競争が発生しやすくなりますが、落ちこぼれてしまう子も出てくるので、各校が判断していく部分だと思います。
学校の運営においては教育と経済視点は両方とも必要となってきますから。
我々は学生目線でどのようなことができるかを重視しています。

 

――才能や実力が伸びやすい学生に共通した特徴はありますか?

 

素直で好奇心がある子です。積んできた経験はあまり関係なく、何でもやってみるという素直な姿勢を持っている好奇心旺盛な子は伸びやすいですね。それに我々には、才能を育てられるという考え方が根本にあるので、成長のための手助けは惜しまず行います。

 

――日本デザイン福祉専門学校に入学される方はどのような方が多いですか?

 

基本的には高校を卒業するくらいの年齢の子が多いですね。
我々の学校は、少数で細かく生徒たちをフォローしていく教育方針です。自分を見てくれる環境で、ゆっくりと勉強できるというイメージがあるのではないでしょうか。

 

我々の学校は、丁寧に少数の単位で学生たちをフォローしていく教育方針です。規模の大きい学校とは入学してほしい学生のイメージも少し異なる趣があるので、その点での棲み分けができているという部分もあるのでしょうね。

 

――社会に出て活躍している卒業生に共通する特徴などはありますか?

 

どの生徒も夢が大きく、“いつか何かを成し遂げたい”という思いがあります。在学期間の三分の一から半分を過ぎたあたりでそういった思いを持つようです。
もちろん、そういった子へのサポートは欠かしません。
こちらからうまくサポートしてあげられれば、あとは自分自身で成し遂げてくれますから。

 

 

――ゼミナールについても詳しくお聞きできればと思います。

 

“誰もがデザイナーになれる”という思想を重視し、それを形にしたのが本校のゼミナールです。
ただ、本校のゼミナールは、一般的なものとは少し異なるかもしれません。

 

まずは1、2年生のうちに“ゲームやアニメを作りたい”、“絵を書いていたい”といった自分のやりたいことを見つけて、ゼミナールに入ります。
そして、学校が招いたデザインの現場で活躍するさまざまな講師の方に、各ゼミナールで講義を行ってもらいます。講義をそれぞれの講師が横断的に担当しているので、一人の学生に対する見方や意見を沢山取り入れることが出来ます。長所、短所含め講師陣からフィードバックを貰う事で、個々人のフォローに活かすこともできます。

 

――今後導入したいカリキュラムはありますか?

 

産学官の項目として一番大きいのはアニメーションです。
キーワードは“動く”という部分で、これがデザインで生きていく方法に加わったと思います。
ここでいう“動く”はアニメーションだけではなく、ソフトによるモーション等によるものも指します。
これもただ覚えればいい、動けばいいというわけではなく、それを使った表現ができないと採用にはつながりません。
歩くという動作1つをとっても、体全体による重力を感じられる動きを作れる、または作るために何度もトライできる人が採用されます。
そのため、アニメーション志望で入学する生徒には、まず手描きで絵を描かせてこの部分の知識を教え込みます。

 

――最新技術が出てきた世の中ですが、やはりデッサンのような基礎的な部分も重視しているということでしょうか。

 

デッサンというよりは観察する力で、これは模写などの別の分野でも養うことができます。
例えば、花を模写するならば花弁の厚みを考える力です。
入学する生徒の中には、観察するということが初めての子もいます。別の言い方をすると、じっくり対象に向き合うという経験自体が初めてという子たちです。
専門学校で育てるのは職業人です。
将来生徒がどのような社会人になっていけるかが我々にとってのカギですから、そういった物事の観察力という面も、カリキュラムの大事な要素の1つです。

 

職業人に必要なのは“創造力”と“想像力”の両立

――卒業生の進路はどのようなものがありますか?

 

さまざまな職業があります。
デザインの仕事以外にも農業を営んだり漁師になったりと非常にバリエーションが広いですね(笑)。デザインにおいて一番大事なことは考えることですから、まったく外れているとは思いません。
我々としては、少なくとも生徒に入学してよかったと思ってもらえる学校でありたいですね。

 

――ゲーム業界で活躍する上で、どの要素が必要だと思いますか?

 

時代に合わせて変化できる人材が活躍しますから、それを支える技術や相手の要望を聞き、修正する力が必要になります。変化というのは、自分の安全圏から抜け出すという勇気も当てはまります。
その上では、相手の行動や言動の意図を考える必要もあるので、相手を想像する力も重要になってきますね。相手というのは、「お客様」の場合もあるし、「組織の中の方」の場合もある。

 

様々な”変化”に対応しながら、相手の事を “想像”した上で“創造”していく。これはゲーム業界に限らず職業人として生きていくうえで必要となるものかもしれません。

 

 

――最後に、日本デザイン福祉専門学校への入学を検討している、あるいはクリエイターへの道を目指す読者へのメッセージをお願いします。

 

校長という立場からのメッセージとしては、ぜひ本校に来てくださいというところでしょうか(笑)。
1人の先輩クリエイターからのメッセージとしては、人に会うことを大事にしてほしいです。
さまざまな人と出会い、自分の目と耳で体験したことが経験値になります。また、その中において自分で判断を行い、価値観を作り上げていくことも大事です。
今は新型コロナウイルスの流行下にありますが、オンラインや手紙という方法もあります。
技術面よりも伝える想像力の部分を大事にしてほしいですね。

 

――ありがとうございました。