コンテンツ産業の人材を育てる阿佐ヶ谷美術専門学校。キャラクターデザインコースのカリキュラム内容とは?

 

阿佐ヶ谷美術専門学校は、1945年に設立された絵画教室を前身に持つ、伝統ある美術・デザインの専門学校で、2020年に創立75周年を迎えました。
クリエイティブな雰囲気漂う杉並区高円寺に拠点を構える本校は、デザイン業界や芸術分野、コンテンツ産業に優秀な人材を輩出し続けています。
今回は2012年に新設されたキャラクターデザインコース教員の末岡一郎さん、小暮真起さん、SONIOさんに、教育方針、カリキュラムの特徴や就職サポートなどについて、詳しく伺いました!

 

 

画像左から末岡一郎さん、小暮真起さん、SONIOさん。
※インタビュー中は敬称略

長い歴史とともにアップデートを重ね続けてきた阿佐ヶ谷美術専門学校

――まずは阿佐ヶ谷美術専門学校の教育方針、歴史、特徴について教えてください

 

末岡
阿佐ヶ谷美術専門学校は、1945年に設立された絵画教室“阿佐ヶ谷洋画研究所”を前身とした専門学校で、2020年には75周年を迎えました。
油絵教室から始まり、“美術を学習できる場所という”ベースはそのままに、美術大学の予備校という向きでの活動を経て、1964年にデザイン専門部3年制に改編成され、学校法人認可を受けました。

 

デザイン系の学科が設立したことで募集人員も増え、美大受験予備校から、アートとデザインを学ぶ専門学校として、今日のスタイルに変化していきました。
特色としましては、本校ではデッサンを重視しているので、絵を描く能力がしっかり備わっている学生が多いです。
絵画表現コース出身で3DCGアーティストになるという学生も多いです。
デッサンという基礎的な能力を備えていれば、異なるジャンルに挑戦することもできるので、強みの1つだと考えています。

 

――学校ではツールの使い方というよりデザインや美術そのものを教えるということでしょうか

 

末岡
デザインの授業では先人が残したノウハウが必要になります。
専門学校の目的は、現場で活躍できる人材の育成で、そのうえでツールに関する知識が必須になりますが、それだけでは勉強の実感がわきません。
ツールの用途や使い方といった知識だけでは応用がききませんから、多面的に物事を教えていくというのが本校の方針です。

 

――時代に合わせてカリキュラムを変えていくのですか?

 

時代に応じた設備やカリキュラムのアップデートは欠かしません。
1980年代にMacのPCを導入したことをはじめ、PhotoshopやIllustratorを使用できるようにするなど、素早く時代に順応していきました。
予算の課題はありますが、学生が困らないようアップデートするのも仕事なので、一歩先とは言わずとも半歩先のテクノロジーは導入できるよう努めています。

 

去年と同じカリキュラムも存在しません。
授業の基本的なテーマに変更はありませんが、授業内容は次の時代に必要なスキルやトレンドを取り入れています。
一方、木炭デッサンなども行っているので、アナログとデジタルの両方に関する知識をバランスよく学べます。
余談として、校舎のアップデートももちろん行っているのですが、改築箇所はそれぞれ当時の建築基準法を尊守したレイアウトとなっているので、歴史の長さをリアルに体感できます(笑)。

 

――次に、皆様が阿佐ヶ谷美術専門学校で教職に就くこととなった経緯についてお聞きできればと思います。

 

末岡
キャラクターデザインコースのコース長を務めている末岡と申します。
元々はテレビ局の制作デスクや広告メディアに関する仕事をしていまして、本校に来る前には別の学校で映像に関する授業を受け持っていました。
本校に来たのは、住む場所が近かったのでイベントなどを見学していたところ、僕の前任にあたる方と顔見知りになりまして、その方からお声がけをいただいたことがきっかけです。
その後、非常勤として20年弱、常勤として15年程度務め、現在に至ったという形です。

 

小暮
キャラクターデザインコースの3年生担当主任を務めております、小暮と申します。
私は本校の卒業生で、在学中は時空デザイン科という現在の映像などを制作する学科でアニメーション学んでいました。
卒業後はアニメーションを制作しつつアルバイトをしていまして、本校で働いている友人から助手をしてくれないかという打診が来たことが教職に就くきっかけでした。
最初はデジタル工房の助手で、年を挟んでキャラクターデザインコースの助手となり、さらに数年つづけたタイミングで教員にならないかと言うお話をいただきました。
現在は教員2年目で、3年生の担当をしています。

 

SONIO
キャラクターデザインコースの2年生担当主任を務めております、SONIO(ソニオ)と申します。
私は小暮先生と同期で、時空デザイン科を卒業後は研究科に入り、1年間さらに研究と自分の制作を進めていきました。
卒業後はアプリゲームの制作会社に入社し、2、3年間イラストレーターとしてキャラクターを描いていました。
その後は本校のデジタル工房で管理助手をさせていただいて、また別のゲーム会社でアートディレクターの仕事についた後、また本校に戻ってきて教員を務めているという形です。
紆余曲折な経緯となっていますね(笑)。

 

――卒業後も阿佐ヶ谷美術専門学校で働きたいと思った理由はどのような理由でしょうか?

 

SONIO
自分で絵を描くことが好きで、この学校も好きだったという部分が大きいですね。
学生も社会人も最先端の情報を知っていますが、異なる視点から情報を取り入れることができ、それが勉強になると感じたのが理由ですね。学生たちも最近の流行りとか情報に関しては敏感なので、日々私も刺激をもらっています。

1年次でしっかり幅広く基礎を学べるカリキュラム

――まずはコンテンツ学科についてお聞かせいただければと思います。

 

末岡
コンテンツ学科は本校の中でも新しい学科でキャラクターデザインコースと映像メディアコースがあります。キャラクターデザインコースでは、各分野を横断的に学べるコース設計をしています。これはコンテンツ産業が多分にジャンル横断的であり、相互に深く関連していることによります。

本校には以前から伝統的なデザインを学べる視覚デザインコースがあったのですが、学生が志望する進路が多様化していたことにより、それに合わせてこちらもコースを多様化させようという考えに至ったのがきっかけです。
キャラクターイラストとマンガとアニメーションイラストを学べる場所があってもよいのではと提案し、実行に移した形ですね。
コースとしては新しいですが、経歴的に見ると先輩の数は多かったので、作ることができました。
視覚デザインコースはリアルな描写のイラストを手掛けてきた先生が担当しており、グラフィック重視となっていますが、キャラクターデザインコースはキャラクターや2Dゲームのデザインを目指す学生を中心ターゲットとしたコースとなっています。

 

実際、さまざまな経験を経て現在のポジションにたどり着く卒業生は多いです。
そのことを考慮すると、在学期間でさまざまな分野を学んで、見える世界をより広げていくことが学生にとって重要だといえます。
例えば、イラストを制作するにしても、バックグラウンドから考えて作っていくほうがリアルになりますよね。

 

1年次は基礎学科で、シナリオの授業を含む全コースの授業による基礎的な教育を行います。
前期は立体の制作や映像の撮影、キャラクターデザインやリアル描写など、後期は各コースの中での基礎に関することすべてを学びます。
例として、キャラクターデザインコースならばデジタルイラストやデジタルアニメーション、マンガなどの授業です。

〇コンテンツ学科 キャラクターデザインコースのカリキュラム

 

――デザインの専門学校でシナリオに関する知識を教えるというのはめずらしい印象があります。

 

末岡
シナリオに関して、短期集中で教えるケースはよく見かけますが、しっかりと長い期間をかけるものは珍しいと思います。

 

物語を考える力はデッサンと同じで基礎的な能力ですし、人はイラストから物語を読み込むので、作品に物語を落とし込む方法などを学生に教えたら発想が柔軟になるのではないかという考えですね。
実例として、1年次の授業では簡単なストーリー重視でマルチエンディングのゲームを制作します。

 

現在では、多くの人がスマートフォンでストーリー重視のゲームをプレイしたり、マンガを読んだりして、物語を体験していますから、無視できない要素だと考えています。
2年次、3年次と続いてしまうと、入学時の動機とズレが生じてしまうため、1年次でシナリオについては終了させつつ、ストーリーにのめりこんだらマンガ、イラストをやりたかったらイラストと、自分に向いているものを選択してもらいます。

 

――2年次、3年次にではどのような教育が行われるのですか?

 

SONIO
私は2年次の授業がメインですが、1年次、3年次の授業を担当することもあります。
変化のつけ方としては、1年次は、テーマを与えてイラスト描かせるなどの方法で、学生の能力や技術を把握していきます。
2年次では学生ごとの長所や短所を伝えていき、3年次は卒業制作がメインとなるので、学生の作りたいものと現状を近づけるためのサポートをするように心がけています。

 

末岡
2年次での学生へのフォローは教師が個々人に行っています。
キャラクターデザインコースは、本校の中でもっとも人数が多いですが、それでも1人ひとりに十分目が届く人数となっています。
なので、個々人の能力や変化は把握しやすいです。

 

小暮
2年次では、イラストを描いて自己満足で終わるのではなく世界に発信していこうという趣旨で、コミティアに参加して作品を発表してもらうこともあります。

 

――3年次についても詳しいお話をお願いできればと思います。

 

小暮
3年次は卒業制作に向けて活動していくこととなります。

卒業して社会に出ていくうえで、自分の作品を発信していかなければならないという前提もあり、多くの学生はスマホゲームの企画を立てて、それを卒業制作にします。
また、自分の画集やアニメやマンガを制作する学生もいます。

基本的にはSONIO先生とタッグでサポートにあたっており、ユーザーインターフェースの出来栄えなど、学生たちに第3者の視点からの意見を伝えます。
卒業制作の制作期間は学生ごとに異なり、前期に企画を考えたり、2年次には温めていたりとばらつきがありますが、開始時期によるクオリティの変化はあまりないですね。

豊富な設備と卒業後への手厚いフォローアップ

――阿佐ヶ谷美術専門学校にはどのような学生が入学してきますか?

 

末岡
デザインやイラストの経験については学生ごとにまちまちで、1年次には教えることがなさそうな学生もいます。
基本的にはデッサンなどの授業もしっかり行っているので、未経験の学生でも2年次辺りから実力が伸びていき、卒業するころには差は小さくなります。

 

教育においては、描画やデジタルなどの手法ごとにコツがあり、そして学生ごとに癖があるので、その点をしっかり指摘するよう注意しています。
高校生のころは顔だけ描いていた学生に全身を描くコツを教えてあげると画力が大きく伸びることもあります。
前述した通り、今の学生はさまざまなコンテンツに触れて知識や経験の下地を備えているので、正しい方法を知ることでより能力が伸びていくイメージですね。

 

――学生様に阿佐ヶ谷美術専門学校が選ばれる理由はどのような点があるでしょうか?

 

美術・デザインに特化している事や、コンテンツにまつわる授業を幅広く受ける事が出来るという点、また授業を進めるうえで豊富な機材があるという部分も理由になるかと思います。

 

機材は学科関係なく使用可能で、工房管理者に頼めば使い方も教えてくれるので、キャラクターデザインコースの学生が銅版画の作品を制作することもできます。
なお、工房は卒業してからも予約を行うことで使用できます。学校のパソコンで図面をダウンロードして作成ということもできるので、ポートフォリオを作りに来る卒業生もいます(笑)。
また、卒業後のフォローアップとして求人も掲載しているので、求人を見に来る卒業生もいます。

 

本校ではGoogleのエデュケーションサービスを導入しているのですが、こちらは容量無制限で卒業後も使用可能になっているので、卒業生とのつながりは強いですね。

〇実際のデジタル工房内

 

小暮
学生からは基礎学科に関する評判をよく聞きます。
1年の前期で幅広くクリエティブの基礎を学べる他、2年次にコースの変更することもできるので、さまざまなものに興味がある学生や進路に悩んでいる学生にはありがたいそうです。

 

SONIO
本校は大規模な学校ではないのですが、それが逆に学生たちから選ばれている理由にもなっているみたいです。コンテンツ学科はのんびりした学生が多いというのも関係しているかもしれません。
その他ですと、基礎学科でまんべんなく授業を受けることで他のコースに所属する教員ともつながりができるので、学生と教師の距離が近いという点も魅力の1つかもしれません。

 

末岡
また、立地や校舎が理由だったという話もありました。
立地に関しては新宿から近いという点が好評だったそうですが、校舎については秘密基地のようなレイアウトなど、テーマパークのようなイメージを持ってくれているようです(笑)。


〇クリエイティブな雰囲気の校舎内(中庭)

 

――社会に出てから活躍している卒業生について共通点などはありますか?

 

末岡
この学校が好きという性質があるかもしれません。学校の設備やサポートを積極的に活用する人も多いです。
また、この地域を気に入っているとか、本校の近所に住んでいるという部分もあります。
活躍している卒業生に講演を頼むと自転車でやって来たり、卒業して長い年月が経ってもイベントを見に来てくれたりします。

 

小暮
愛校心と学校の設備をよく使うという部分は私も感じている部分ですね。
例えば、大判印刷は3年次が卒業制作で使うことがほとんどなのですが、卒業後に活躍するような学生は、1年から自主的かつ積極的に使います。
その他の特徴は圧倒的に元気があるというところでしょうか(笑)。

 

SONIO
何種類かいると感じていまして、質問や自主的な作品提出を積極的に行う学生や、人とのかかわりは最低限ですがともかく多数の作品を制作する学生などがいます。
必ず共通する部分としては、作品への熱意がしっかりと伝わってくる学生が卒業後に活躍していると思います。

 

末岡
社会に出てイメージとのギャップに躓いてしまう学生は少ないながらいます。
また、商業と趣味の取り組み方の違いに迷って及び腰になる学生も少なくないですが、こちらについては踏み切る勇気が少し足りないだけだと考えています。
コミティアなどで作品を発表して、見知らぬ人に手に取ってもらう経験が励みになるのではないかと考えています。


〇アサビフェスタイラストコンペ優秀賞 「上には上がいる」

 

 


〇アサビフェスタイラストコンペ審査員特別賞 「Hell flame」

 

――阿佐ヶ谷美術専門学校を志望する、あるいは今後クリエイターを目指す読者にメッセージをお願いします

 

小暮
クリエイターになるために大事なことの1つは、食わず嫌いをやめることだと思います。
過去の自分は、触れる作品やコンテンツを選んでいたために、手を出せるジャンルの幅が広がりませんでした。
今では、卒業後の経験や教師としての仕事の中で、ジャンルの幅を広げることの重要性を体感しています。
本校では1年次の基礎学科でさまざまな分野の知識を学べるので、入学した際には気になる分野にも積極的に挑戦していただければと思います。

 

SONIO
1年次の学生によく見られるのですが、恥ずかしさから好きなものを隠す傾向があります。
ですが、好きなものこそ自信をもって主張して、積極的にかかわってほしいと思います。
好きだと主張することでやってくるチャンスや縁もありますから。
本校には好きなことに没頭できる設備もありますので、本校で好きなものを極めてほしいと思います。

 

末岡
クリエイターへの道を開くのに必要なことは“やりたいことをまっすぐやる”ことだと思います。
高校生のころからキャラクターデザインをやっていた学生が本校に来て、そのまま志望する会社に行ったことがあります。
あこがれへの純粋な気持ちは実現の近道でもあると思います。
本校にはやりたいことをまっすぐやるためのカリキュラムを用意していますし、卒業してからもやりたいことをやるための設備を準備しています。
クリエイターを目指していて、やりたいことがあるという人は、ぜひ入学していただければと思います。

 

――ありがとうございました。

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