高田馬場のボードゲームカフェ「GOTTA2CAFE」へ潜入取材!ゲームを通じたより良いコミュニケーションはどの様に生まれるのか?
東京都高田馬場の一角に構えるボードゲームカフェ『GOTTA2CAFE』。国内外のボードゲームを多数取り扱う一方で、運営元である株式会社ゴッタニからはオリジナルゲームもリリースされています。
今回はそんな『GOTTA2CAFE』を運営する株式会社ゴッタニの柳川様、勝間田様に、カフェ創業の経緯と実際にユーザーに遊ばれているゲーム、今後のボードゲーム業界に対するご展望についてもお伺いしました!
株式会社ゴッタニ 柳川様、勝間田様
・まずは、お二人の業務内容とご経歴について教えてください
柳川
株式会社ゴッタニ代表の柳川です。
ゴッタニはボードゲームカフェ、『GOTTA2CAFE』の経営、また自社ゲームの製造販売事業を行っており、私は代表としてカフェ運営や自社ゲームのライセンス周りなど、経営業務全般を行っています。
それぞれの収益で補えるよう事業はリスク分散しており、業務バランスは半々くらいで経営しています。
〇株式会社ゴッタニ代表 柳川様
勝間田
同じくゴッタニの勝間田です。普段は他社でプラントエンジニアをしつつ、ゴッタニの事業を兼任しています。また同じく役員を務める岡部は、ゴッタニのオリジナルゲームのデザインを担当しています。
自分と柳川は大学の同期で、同じく役員を務める岡部は柳川が働いていた会社の同僚です。
大学時代に、TCGのマジックザギャザリングが好きで遊んでいたんですけど、その時に柳川が乱入してきたことがなれそめでもあります(笑)
〇株式会社ゴッタニ役員 勝間田様
自分の手で、残るゲームを作る
・柳川様が会社を立ち上げた経緯についても教えて下さい
柳川
株式会社ゴッタニを立ち上げたのは2017年です。
自分はそれまで幾つかのゲーム会社において、ディレクターや、プロデューサーを担当していました。実は、『GOTTA2』というブランド自体は10年以上運営しており、5年前に法人としてフルコミットするようになりました。
・それまでデジタルゲームを作っていた中、アナログゲームブランドを立ち上げたのはどんな理由だったんですか?
柳川
一言で言うと、“自分の手で、残るゲームが作りたかった”という理由ですね。
・自分の手で?
柳川
会社からリリースされるコンシューマーゲームやソーシャルゲームって、当たり前ですが一人では作れなくて。ディレクターやプロデューサーが前に出る事は多いですが、デジタル系のゲームは船と同じで、それぞれの職種がチームとなり、みんなで一緒に舵を切って作ります。
ただ自分は、自分の手で皆をあっと言わせるゲームを作っていきたいと思っていて。そこでアナログゲーム業界に目を向けると、業界として作家性をしっかり評価してくれる文化が最近根付いてきています。自分の作品性が如実に反映されて沢山の人に遊んで貰えるという特徴がアナログゲームにはあるので、デジタルが悪いとかではなく、よりオリジナリティを発揮してゲームを作りたかったという意味です。
〇『ひっくりがえる』は、Nintendo SwitchのDLCとしてもリリースされている
・“残るゲーム“とはどのような意味があるんですか?
柳川
先ほどの話だと、「じゃあデジタルゲームを1人で作ればいいじゃん」。となるかも知れないのですが、アナログゲームの良い点は、地球上にずっと残り続ける事です。
例えばソーシャルゲームを作ったとしても、会社だと売上が無かったらサービスも終わってしまうじゃないですか?それがアナログゲームだと、たとえ発売から1000年以上経っていても実態として残ります。自分が作ったゲームが、その後何10年、何100年と遊ばれるって、クリエイターとしてはめちゃくちゃアツい話だと思うんです。
自分の手で、ずっと残るゲームが、私にとってアナログゲームだったという事が、ブランドを立ち上げたきっかけにもなっています。
勝間田
我々が作ったボードゲームを遊んでくれた人が感想を言ってくれたり、影響を受けて自分も作りました!と言って持ってきてくれたりする時もあり、すごく嬉しいですね。
GOTTA2CAFEについて
・現在GOTTA2CAFEでは多くのゲームを扱っていますが、自社オリジナルゲームは年にどれくらいリリースされていますか?
柳川
基本は年に2,3本のペースを意識していますが、2021年はダイソーからリリースされた、『パタパタくるりん』を含めると5本位でしたね。
・ダイソーから発売された『パタパタくるりん』は100円でリリースされています。発売の経緯や狙いについても教えて下さい
〇『パタパタくるりん』メインビジュアル
柳川
『パタパタくるりん』は、正体隠匿と呼ばれるタイプのゲームにオセロの様な味付けをしたタイプのゲームです。付属の4×4マスのシートをテーブルに置き、サンリオキャラクターカードを使って遊ぶゲームになっています。
発売の経緯ですが、知人の紹介でダイソーの方を紹介してもらい、販売元の大創出版の社長さんにお話を聞いてもらう中で企画が決まり、発売までサポートしてもらいました。ゲームデザインを岡部、ディレクションを自分が担当しています。
通常のボードゲームだと同じ図柄を使う場合が多いですが、ハローキティを含め5通りのキャラクターカードは同じ図柄がなく、5通りのキャラクターカードは全て違う図柄で作られています。
ダイソー様で販売される一連のボードゲーム商品群は、購入しやすい値段といい、どれをとってもお勧めのラインナップといい、本当の意味で初心者向けの、正にボードゲーム業界のエントリーモデルです。そこに弊社のゲームが入れた事は誇らしく感じています。
ボードゲームを買う際に、数千円だとハードルが高いですが、100円であれば気軽に手を出せる。本作をきっかけに、ボードゲームに興味を持ってもらいたいという思いを、ダイソーさんを通して実現することが出来ました。
・会社の方針である、“カフェ経営との融合を通した、ゲームを通じたより良いコミュニケーション”について詳しく教えて下さい
柳川
ちなみに、友達同士でゲームする時ってどういう動機でしますか?
・ゲームが楽しいからという事もありますが、一番は友達と時間を共有したいから、ですかね?
柳川
正にその通りで、ゲームが面白いと感じる理由は、ゲーム自体がコミュニケーションツールになりえるからだと思います。
日本人は世界でも一番、自国語を使うのが大好きな国民で、Twitterトレンド世界一位も日本語が多く、日本語でのコミュニケーションが非常に多い。それだけコミュニケーションに飢えている国民性だと思うんですよ。
SNS、スポーツ、飲み会など様々なコミュニケーション手段がある中で、私たちはゲームを選択した。自分たちが遊んで楽しかったアナログゲームを通じて、皆さんにも楽しい時間を提供したいと思っており、会社の方針にもしています。
・カフェに来られたお客様には、どのような接客を心掛けていますか?
柳川
イメージでいうと、店員と言うよりはメーカーの販売人みたいな感じです。まさに目利きとして、幅広い遊び方を提案出来るように心掛けています。
ウチのカフェに来る人って、コーヒーを飲みに来る方は少なく、ボードゲームがやりたい、興味があるというお客様がほとんどです。でもボードゲームにあまり馴染みがなく、知っているのは人生ゲーム位という方も来られます。
そういう方々には、どんなゲームが好みかどうかをヒアリングしておすすめのゲームを教えます。是非ボードゲームは楽しいんだと感激して頂きたいです。
勝間田
今の気分が、体を動かしたい、とにかく騒ぎたいという気分に合わせて、最適なゲームを提案する。ボードゲームにもパズル系や謎解き系など、種類が色々ありますからね。
ゲームの種類も5~600種類くらいあって、ボードゲーム好きな人でも迷う事はあります。お客様の気分や要望をしっかり聞く事は意識しています。
〇店内には世界中の様々なボードゲームが並んでいる。
最近だとコンビニ本で、“私が選ぶボードゲーム選挙“みたいな本が出ていたり、芸人さんがテレビで遊んでいたりとボードゲームの知名度は上がっているので、テレビなどで紹介されるゲームは基本的に網羅するようにしています。
・カフェのユーザー層についても教えて下さい
柳川
立地的に最近は学生の方も多くなってきましたが、社会人の方もいるので年代問わず遊んでくれています。
立ち上げから3年目位で学生さんから認知してもらい、メディア露出なども増えてきたので段々お客様も増えてきていますが、認知向上は試行錯誤していますね。ある程度の期間が必要になりますし、何より業界全体が盛り上がらないと興味すら持たれない。
GOTTA2CAFEとしては、まずは来てくれた人が最大限楽しんでもらうような場を提供していく事。より良い体験をしてもらうという部分に一番重点を置いています。
勝間田
コミュニケーションツールとしてのボードゲームカフェではありますが、ダーツやカラオケ、ボーリングと言った施設と比べると、中々選びづらいジャンルではあるんですよね。
『パタパタくるりん』のように、ダイソーを通じてエントリーモデルが出来たという話をしましたが、まだまだ日本ではボードゲームで遊んでいる人口が少ない。私の切なる 願いは、とにかくボードゲームの魅力に触れて貰って、沢山遊んでほしい。それにより、人が人を呼んでくれて、業界全体の活性化にも繋がってくると思います。
柳川
お客様に来てもらうたびに、体験の新しい窓を開けられたなと感じています。ただ、ヨーロッパに比べると日本はまだボードゲームは浸透していません。またはもしかすると、囲碁や将棋といった遊びが先行しており、そこに変わる席が中々空いていなかったのかもしれません。
わちゃわちゃしてびっくりするという時間がずっと続くという体験や、好きなボードゲームをコレクションするという流れは正に始まったところで、ボードゲーム開国主義を我々としても掲げていきたいと思っています。まずはそのために、今のカフェ経営やオリジナルゲーム開発を実直にやっていくしかないですね。
すべてのゲームは、「アナログ」である
・GOTTA2が独自で製造、販売しているタイトルはどのように企画をしているんですか?
柳川
まず、優先するのは作家性とオリジナリティ。また、最近の時勢や流行りを見た上で、問屋さんが買いやすいテーマを考えてから作る事もあります。
もしくはギミック先行で、後からテーマを加える事があり、モノによってはガジェットから肉付けしていくパターンもあります。企画のスタートは明確に決まっていないですね。
作家性、テーマから、ガジェット、梱包、ギミックまで全てが及第点に達した時、初めて販売に至ります。
〇ゲームマーケット2021秋には、一挙に3本の新作ゲームを発表している。
・ゴッタニでは、ボードゲームはどのように作っているのでしょうか?
柳川
基本的にデジタルゲームと一緒ですね。デジタルでもボードゲームでも、本質は全てアナログゲームなんですよ。
・全てアナログゲームと言いますと?
柳川
ゲーム内の視覚的な部分は、テレビやスマートフォン、最近だとVRセットでも見ますよね。
ユーザーが見やすい、使いやすいという観点で考えると、指が邪魔で見えない、テレビのサイズに合っていない…など、結局完成系はアナログで検証することになるんです。この視点が上手く消化しきれてない企画は意外と世の中に多くて。
生身の人間が遊ぶ以上、アナログという視点から離れることは出来ません。そういう意味で、作り方も変わりません。
〇『「Where am i? Alice in a Mad Tea Party」』
世界最大規模のボードゲームの祭典「Essen Spiel2019」にて初展示と共に、即完売となったGOTTA2の話題作。アリスの世界観を忠実に再現すると共に、ゲームトークンに本物のミニチュアの陶器を使う等、豪華なコンポーネントを特徴としている。
〇正体隠匿系ゲーム『白雪姫のアップルルーレット』
〇株式会社ゴッタニからリリースされているタイトル一覧
〇店内で遊ぶだけでなく、気に入ったゲームは購入が可能
柳川
なお、GOTTA2 CAFÉのゲームはクラウドファンディングを通して新作の発表を行っています。
現在は『Post Guild -ポストギルド-』のクラウドファンディングを実施中なので、興味ある方はぜひご協力頂ければ嬉しいです!
今後について
・ボードゲーム業界について、お2人の業界展望などがありましたら教えて下さい
勝間田
まずはゲームに触れる機会が増える事で、業界がもう少し盛り上がれば良いなと思っています。
最近はボードゲームのイベント来場者も増えてきたタイミングで、昨今のコロナ禍に直撃して…。勢いがそがれた感はありつつも、決して無くなる事は無いはずです。ボードゲームを生業にしている我々が、業界を盛り上げて、日本でもボードゲームを遊ぶ文化が根付いていけばいいなと思っています。
柳川
ゴッタニとしては安定して新作を出して、しっかりファンにゲームが届くようにしたいです。日本のアナログゲーム、中でも完全オリジナルのボードゲームの市場規模は数億程度で(TCG,UNO,人生ゲームを除く)まだまだ小さい規模です。
一方で海外の市場だと、数百億という市場規模が出来ており、海外への展開という視点も持っていなければいけません。
目先の目標としては、まずは国内でしっかり収益を出す事。それを通して業界が活性化して、海外への展望も見えてくると思います。日本のボードゲームが海外へ輸出されるケースはまだ稀なので、モデルケースをどんどん作っていきたいと思っています。
自分達のタイトルで、業界に大きな影響を与える所まで、『GOTTA2』のブランドを育てていきたいですね。
・GOTTA2 CAFÉの運営についても教えて下さい
柳川
元々ボードゲーム好きの人も、これから始めたい方も、入り口はどこでも問題ありません。ボードゲームで遊びたいけど、一緒に行く人が..。と言う方もご安心ください。我々が必ず楽しい時間を提供できる様教えますので、いつでも遊びに来てください!
勝間田
まずは気軽に入って貰って、楽しかったらまた来てもらうという流れが作れるといいですね。どうしてもお店に入る心理障壁があると思うので、その意識を取り払えるよう、運営していきたいと思っています。
・ありがとうございました!
〇店員もお客さんもみんなで盛り上がれるボードゲームカフェ、GOTTA2。これからボードゲームをしてみたい人も、好きな人も、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか
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