eスポーツが及ぼすマーケティング面の影響とは?企業がアプローチする理由
eスポーツ市場は拡大の一途をたどっているので、今後ゲーム業界の中でその位置は大きくなっていくでしょう。そのため、マーケティング方法としてeスポーツに注目するゲーム会社は多数存在します。
そこでこのコラムでは、eスポーツの市場規模やマーケティング手段として着目されている理由を説明したうえで、ゲーム会社がどのようにeスポーツに関わっていけるのかを解説していきます。
eスポーツに関連したマーケティングを展開したいと思っている企業の担当者は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
1. 2022年の世界のeスポーツ市場規模
この項目では、まず2022年の世界でのeスポーツ市場規模について解説します。
株式会社角川アスキー総合研究所が調査報告している「グローバル eスポーツ&ライブストリーミングマーケットレポート2022」によれば、2022年の世界のeスポーツ年間収益は、13億8400万ドルでした。
この数値はここ数年確実に上昇しており、2021年と比較して約22%も伸びています。このような市場の伸びを踏まえて、2025年には18億6620万ドルに達するという予想もあります。
また、世界のeスポーツオーディエンス規模は2022年に5億4910万人とされており、日本の人口の4倍以上にも達しています。さらに、2025年には6億8460万人まで伸びると予想されています。
ちなみに日本で最もファン人口が多いスポーツは野球ですが、野球の世界ファン人口は5億人とされています。そのため、世界規模で見た場合、eスポーツオーディエンスはすでに野球ファンよりも多いことがわかります。また、MDB(株式会社日本能率協会総合研究所)の報告によれば、日本の2023年のeスポーツ市場予測は180億円、2026年には500億円まで成長すると予測されています。
このように、世界でも日本国内でも確実な増加が見込まれている市場だからこそ、多くの企業や団体が参入を表明しているわけです。
2. eスポーツがマーケティング面で注目されている理由
この項目では、eスポーツがマーケティングの分野で注目されている具体的な理由を記載します。
2-1. Z世代などの若い人達に抵抗なく広告を受け入れてもらえる土壌になりうるため
これから市場消費を担っていく若い世代、特にZ世代においては、従来マーケティングの中で大きな位置を占めていたテレビや雑誌などの広告効果が薄れていることが確実視されています。
一方、デジタルネイティブとも呼ばれる世代にとって、ゲームは単なる娯楽ではなくコミュニケーションツールの役割も果たしています。そのため、eスポーツは今後のマーケティングの戦略において重要な位置づけとなるでしょう。
このような予測はアメリカの市場調査会社eMarketerが出しているだけでなく、日本の経済産業省の報告にも記載されています。
2-2. 実際のスポーツよりもプレイまでのハードルが低く、エンゲージメント率が高いため
従来のスポーツは、道具や場所、ウェアなどを必要とするものが多く、天候に左右されることも少なくありません。ところがeスポーツは、今や非常に多くの人が持っているスマートフォンと通信環境があるだけで、観戦もプレイも容易に始めることができます。
eスポーツで扱われるゲームタイトルも多数存在するので、「やってみたい」という衝動を覚えてからプレイするまでに30分程度しかかからないという手軽さもあって、誰もがオーディエンスにもプレイヤーにもなれるのです。
このため、Z世代にとってeスポーツはエンゲージメント率が高い広告媒体のひとつになり得ると予測できるのです。
2-3. 同ジャンルでの経験が活きやすいため
ゲームは新しいタイトルが次々と開発・リリースされています。しかし、FPSやMOBAなどのジャンルは、ある程度の経験を持っていれば、新しいタイトルにもなじみやすい特徴を持っています。そのため、最新ゲームが出ても、プレイヤーが遷移しやすいメリットを持っています。
2-4. SNSなどと親和性が高く、企業先導よりもユーザー先導で口コミが広がるため
eスポーツは、プレイも観戦もデジタル環境下で行われることが多いので、SNSでの拡散も行われやすい特徴があります。また、これからのマーケティング対象として大きな存在であるZ世代は、情報の認知や訴求、購買前の調査、購買行動のすべてをデジタル環境下で行いますし、購買後良かったものであればSNSを通じて他者に推奨します。
このため、SNS、Z世代、eスポーツの3者は、非常に親和性が高い状態にあります。また、前日したように購買行動をとった本人たちが拡散してくれるので、従来の広告媒体に費用をかけるよりも、安価で効果を得やすいことが予想されています。
2-5. 様々な面で収入につながる可能性があるため
eスポーツは多様なルートで収入につながりやすい特徴を持っています。現状最も金額が大きいのは、企業や団体からのスポンサーシップです。続いてメディア権やパブリッシャー提供資金も収益になりますし、関連グッズやチケット販売も小さな額ではありません。さらに、デジタルとストリーミングを使った配信もある程度の収益性を持ちます。
現状において、このように多方面での収益性を求められるeスポーツは、今後さらに発展することが確実視されています。
これらの点を踏まえれば、eスポーツがマーケティングの有力な手段として着目されるのは納得がいくことです。
3. ゲーム企業がeスポーツでマーケティング面においてアプローチする方法
この項目では、ゲーム企業がeスポーツを通じたマーケティング効果を得るためのアプローチについて、3つの方法を解説します。
3-1. eスポーツタイトルに選ばれるようなゲームを開発・運営する
まずゲームを開発する会社として、正攻法でありわかりやすいのは、eスポーツの種目になり得るタイトルを開発・運営することです。
一口にeスポーツと言っても、さまざまなジャンルが種目となっています。まずシューティングを競うFPSやTPSはeスポーツとして扱いやすいジャンルです。
格闘系の対戦ゲームも、テクニックを競う点やアクションの魅力などでプレイする人にも見る人にも人気があります。
また、サッカーやカーレースなどのスポーツ系のジャンルも大会に向いていますし、パズルアクションゲームも点数や速度を競うことに適しています。
さらに、MOBAやRTSは複数のプレイヤーが参加できるのでチーム戦開催に最適です。戦略性も問われるので、オーディエンスにとっても大きな興奮があるでしょう。
eスポーツに向いているゲームのキーワードとしては、反射神経を問うスポーツ性が高いゲーム、あるいは戦略性を競うことでオーディエンスを魅了するタイトルです。一方避けるべき内容は、暴力性やゴア描写が強いもの、性的表現が強いものなどです。
3-2. 大会などを開催し、eスポーツシーンを盛り上げる
ゲーム会社がeスポーツの大会を開催して、シーンを盛り上げていくという方法もあります。
eスポーツの大会を行うには、企画や進行を行う団体や組織が必要ですし、スポンサードする企業も欠かせません。また機材や賞品を提供することで大会に貢献する企業もあります。自社が開発したゲームが種目であれば、大会を行うこと自体がユーザー拡大につながりますし、仮に自社のタイトルでない場合も開催企業としてのマーケティング効果はあるでしょう。
大会を開催すれば、スポンサー料や広告料を得ることができます。また大会グッズやチケットの販売で利益を得ることも可能ですし、大会を配信して収益につなげる手もあります。さらに、大会を行っていない時期にはeスポーツの体験施設や練習の場所を提供するというビジネスも考えられます。
eスポーツに参入しているゲーム会社について書いたコラムがありますので、ぜひご参照ください。
→「eスポーツに参入しているゲーム会社とは?具体的なチームも紹介」
3-3. チームを結成し、eスポーツシーンで活躍して注目される(もしくはチームのスポンサーになる)
ゲーム会社としてeスポーツのチームを結成したり、チームをスポンサードしていたりする企業も多数あります。
実際にチームを運営するには、選手やサポートスタッフに給料を払う必要がありますし、拠点や設備費、遠征費などもかかるでしょう。そのため一社単独でスポンサードできない場合は複数の企業で協力してチームを運営する方法もあります。
また、ゼロから立ち上げればその過程も自社のマーケティングに使えるかもしれませんが、それだけの費用を出すのは難しいと判断した場合、既存のチームのスポンサーのひとつになるという考え方もあるでしょう。
eスポーツの選手育成やシーンの発展を推進する企業について記載したコラムがあるのでご参照ください。
→「日本国内におけるeスポーツの発展と若手選手の育成を目指す「Libes」が新プロジェクト始動!大阪府・大東市と連携し、eスポーツ地域活動拠点を整備!」
4. まとめ
eスポーツがゲーム会社のマーケティングにどのように利益をもたらすのかについてまとめました。
まずeスポーツ市場は世界でも日本でも右肩上がりの成長が見込まれている産業なので、マーケティングの手段として今後も着目されるのは必至です。今後購買力を増していくと考えられるZ世代は、デジタルネイティブと呼ばれるなどeスポーツとの親和性が高いので、Z世代に以下にどのように認知されるかが成功のカギとも言えるでしょう。
ゲーム会社であれば、eスポーツの種目となるようなタイトルを開発することや、大会を開催すること、プロチームを作ることなど、関わり方も複数考えられます。
いずれにしても、高いマーケティング効果を得るには、市場分析と自社がどのように関わっていくのかをしっかりと考えることが欠かせないでしょう。
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