ゲームリリース時の「マルチプラットフォーム」とは?詳しく説明!


 
このコラムでは、ゲームをリリースするときに行われるマルチプラットフォーム展開について解説します。2000年代以降、ユーザーの所持ハードの多様化に伴い、新作タイトルのマルチプラットフォーム展開は一般的なものになっています。2023年現在もその傾向は健在です。
 
そのためこのコラムでは、マルチプラットフォームがどんなもので、どのようなメリットや注意点があるのかを、わかりやすく解説していきます。ゲームのマルチプラットフォーム展開について知りたい人は、ぜひこのコラムを最後まで読んで参考にしてください。
 

1.マルチプラットフォームとは

マルチプラットフォーム展開とは、同じタイトルを複数のゲームハードウェアでプレイできるようにリリースすることを指しています。より具体的に言えば、Nintendo Switchとプレイステーション4(5)、Xbox Series X|Sなど複数のコンシューマー機でプレイできる状態です。
 
また、アプリについてもプラットフォームをひとつに集約せず、iOSとAndroidに加えて、Windowsでもプレイできるなど、OSを限定せずプレイできることもマルチプラットフォームと呼びます。
 
マルチプラットフォームは、マルチタイトル、またはマルチ展開と呼ばれることもあります。
 
過去のゲーム業界では、OSが異なる場合、それぞれのOS下で開発を進める必要があったので、マルチプラットフォーム展開を行うために膨大な工数や開発費がかかっていました。しかし近年は異なるOSでも同一のプログラムで動かせる開発ツールが作られたので、マルチプラットフォーム展開がしやすくなっているのです。
 

1-1. クロスプラットフォームとの違い

ゲーム業界におけるクロスプラットフォームとは、多くの場合マルチプラットフォーム展開でハードごとにユーザーがバラバラになっても、オンラインプレイでは一緒に遊べることを指します。これをクロスプレイと呼ぶこともあります。
 
逆にマルチプラットフォーム展開しているタイトルでもクロスプラットフォームに対応していない場合、例えばPS4ユーザーはPS4ユーザー同士、Nintendo SwitchユーザーはNintendo Switchユーザー同士でしかオンラインプレイを楽しめません。
 
ちなみに、ゲーム以外のソフトウェアを扱う業界では、クロスプラットフォームという言葉は複数のOSに対応できるソフトウェアを指して使い、異なる種類のハードウェアへの対応は含まないこともあります。
 

2.マルチプラットフォームの種類

この項目では、マルチプラットフォームの種類を紹介します。
 

2-1. 横マルチ

横マルチとは、異なるメーカーが同世代に出したコンシューマー機に対応できるソフトウェアを指しています。例えばソニーのプレイステーション4と、マイクロソフトのXbox Oneなどです。
 
ただし最近は、同世代に出ていたとしても各会社・各ハードごとにグラフィック性能の差や強みの違いが顕著なため、言葉自体使われるケースが少なくなってきています。
 

2-2. 縦マルチ

縦マルチとは、同会社コンシューマー機の複数の世代に対応するソフトウェアを指します。例えばプレイステーションの4と5の両方でプレイできるソフトウェアは縦マルチです。
 
こちらは横マルチと違い、定義がはっきりしているため、未だによく使われる言葉です。
 

3.マルチプラットフォームで展開するメリット

この項目では、ゲームをマルチプラットフォームで展開することのメリットを、開発側の視点で解説します。
 

3-1. 様々なハードのユーザーに遊んでもらえるようになる

マルチプラットフォーム展開をしておらず、特定のハードウェアだけでしかプレイできないソフトウェアの場合、そのハードウェアを持っている人にしか遊んでもらえません。例えばプレイステーション5にしか対応していないソフトウェアの場合、プレイステーション4やNintendo Switch、Xbox Series X|Sしか持っていない人、パソコンのみでプレイする人はユーザーになれないのです。
 
そのため開発側としては、どのハードウェアが最もユーザーを得やすいかの判断を迫られますし、その見込みが外れた場合、見込んだ利益を上げられない可能性が出てきます。また、過去には人気タイトルをプレイするために複数のハードウェアを購入する人も少なくありませんでしたが、近年はスマートフォンが普及したことで、コンシューマー機を何台も購入するという動きは減っているのが現状です。
 
これらの点を踏まえると、ゲーム開発側にとって、ユーザーにゲームを楽しんでもらいやすい環境を整えること自体が大きなメリットとなるのです。
 

3-2. 工数・制作費をあまり増やさずに販売チャンスを増やせる(販売リスクを減らせる)

ゲームを開発する側としては、マルチプラットフォーム展開をすることで、工数や製作費を大きく増やすことなくユーザーの分母を増やすことができます。また、特定のハードウェアのみに対応していた場合、そのハードウェアの人気が低下するとゲーム自体は評価されていてもユーザー数も伸びなくなります。
 
そのため、複数のハードウェアでプレイできる環境を作るということは販売リスクを減らすことにもつながるのです。
 

4.マルチプラットフォームで展開する際の注意点

この項目では、マルチプラットフォーム展開でゲームをリリースする場合に開発側が注意するべき点を解説しましょう。
 

4-1. ハードの性能差が原因で同クオリティのものを提供することが難しいケースがある

ハードウェアが異なれば必ずスペックに差があり、基本的には最も性能が低いハードウェアに合わせることになります。そのため、最新のハードウェアを持っている人としてはハイスペックの環境が活かせないというデメリットがあります。
 
特に縦マルチの場合は、新しいハードウェアと一世代以上前のハードウェアとの性能差があるので、その差が顕著です。
 

4-2. ハードの性能差があまりに大きいとそれぞれに最適化した内容に調整する必要があり、工数・制作費がかさむ

マルチプラットフォーム展開は、もともと少ない工数で複数のハードウェアに対応できることをメリットとして取り組まれます。しかし、ハードウェアの性能差が極端に大きい場合、それぞれの特徴に応じた調整を行う必要性が発生するので、開発工程で多大な時間やマンパワーを使うことになります。
 
やや特殊な例になりますが、2017年にリリースされた「ドラゴンクエスト11」では、プレイステーション4とニンテンドー3DSに対応したマルチプラットフォーム展開が行われました。しかし、プレイステーション4とニンテンドー3DSではハードウェアの性能や特徴が大きく違うことから、ソフトウェアにもかなり明瞭な違いが生まれました。
 
プレイステーション4ではキャラクターがリアルな頭身ですし、背景も微細に書き込まれています。一方3DSではグラフィック性能が劣ることもあって、キャラクターの頭身が低く、これまでのドラクエの雰囲気を踏襲している印象を受けます。また、背景の景色や家屋も、描画レベルではなくデザイン自体が異なっています。そのため、一見すると「別のゲームなのでは?」と思えるほどビジュアルが違うのです。(さらに2Dモード・3Dモードと選ぶこともできます)
 
すべてのシーンにこのような対応をするために、開発スタッフがどの程度の工数を使ったのかは明確ではありません。しかし、一般的に考えるマルチプラットフォーム展開よりも、はるかに多くの人件費を使ったことは間違いないでしょう。
 

4-3. オンラインプレイ対応でクロスプラットフォームではない場合、それぞれのハードでユーザーが分散する

複数のハードウェアに対応しているソフトウェアでも、クロスプラットフォーム(クロスプレイ)対応をしていない場合、オンライン環境下での対戦相手や共同プレイの相手が少なくなってしまいます。すると、オンラインゲームのマッチングが成立しにくくなるという致命的な問題が起こります。
 
オンラインゲームでマッチングが成り立たない場合、ユーザーはプレイを楽しめません。また、「このゲームは人気がないようだ」という判断もされやすく、結果的にユーザー離れが起こるリスクが上がります。
 

4-4. 最新ハードを購入する意味が薄れ、業界全体での最新ハードへのユーザーの移行が遅くなる

複数のハードウェアでプレイできる環境が整っていると、ユーザーが最新のハードウェアを購入する意欲を低下させる可能性があります。すると、巨額の開発費を投じて作られた最新型のハードウェアの売れ行きが、結果的に悪くなるかもしれません。
 
この問題は、ハードウェアを製造・販売している会社だけが困るのではなく、ゲーム業界全体の発展を鈍らせる可能性もあります。
 
新しいハードウェアは、それ以前の機体よりも描画能力や処理速度が優れていることが一般的です。そのため、新しいハードウェアが普及すれば、ゲーム自体も優れた環境に対応した内容で開発ができます。
 
ソフトウェアとハードウェアは、どちらかがハイスペック化すれば追随してもう片方も新型化し、相互に発展を助け合う性質があります。つまり、ハードウェアの発展が遅れれば、ソフトウェアも伸び悩んで、ゲーム業界自体が停滞するリスクが上がるのです。
 

5. まとめ

ゲームをリリースする際に行われるマルチプラットフォーム展開について、言葉の意味やメリット、開発会社にとっての注意点などを解説しました。
 
マルチプラットフォームは、ハードウェアやOSの壁を越えて、同一のソフトウェアを広く楽しんでもらうための手段として、近年広く普及しています。過去には特定のコンシューマー機のみでしか遊べないソフトウェアも多く、ユーザーの囲い込みで利益を最大化しようという考えが主流でした。しかし、近年はマルチプラットフォーム展開を実施しやすい開発ツールが登場しています。そのため、以前よりも非常に少ない経費で、ゲームのマルチプラットフォーム化ができるようになっています。
 
マルチプラットフォーム展開にも開発会社が注意すべき点は複数ありますが、ここまで解説した内容を踏まえると、マルチプラットフォーム展開は今後もさらに進行していくと予想されます。
 

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