ゲーム開発で活躍する「モーションキャプチャー」の技術とは?仕組みなどを解説


 
モーションキャプチャーは人間や動物、物体などのリアルな動きをデータ化して映像に利用する技術です。しかし、「詳しいことはわからない」という方も多いでしょう。
 
そこでこのコラムでは、モーションキャプチャーの定義や種類、使用された代表的なゲームなどの情報のほか、メリットや注意点なども解説します。
 

1. モーションキャプチャーとは

モーションキャプチャーとは、物体、人、動物などの動きをデジタルデータとして保存したうえで、それをPCなどで再現可能な状態にする技術です。「モーキャップ」と省略されることもあります。
 
この技術を使うことで現実の動きをそのままCGモデルに適用し、画像上の動作をリアルに描画することが可能です。
 
たとえばダンスの技能が物語の中で重要な意味を持つ場合、ダンスの映像に説得力がないと物語の感動が半減することがあります。そんなとき、モーションキャプチャーを用いてプロのダンサーの動きを画像上で再現すれば、作品の説得力が損なわれません。また、優れたダンスパフォーマンスが物語の感動を押し上げる効果も期待できます。
 
上記はほんの一例ですが、近年のゲームや映画などのエンターテインメント分野では、モーションキャプチャーは説得力のある動作を実現するための不可欠な技術となっています。
 

1-1. モーションキャプチャーの歴史

モーションキャプチャーを画像による動作の観察や測定と捉えるなら、その歴史は19世紀まで遡ることができます。19世紀には現代のようにCGはありませんが、写真撮影を駆使して肉眼では捉えられない馬などの動物の動きを把握する技術が生み出されていました。
 
20世紀に入るとアナログ技術を利用した初期の計測システムが登場しますし、20世紀後半には、被写体にセンサーやマーカーをつけて動作を記録する方法も開発されます。その技術は短期間のうちに発展し、1990年代にはリアルタイムのモーションキャプチャーも登場しました。
 

2. モーションキャプチャーが用いられている最新タイトル例

ここでは2025年現在で、モーションキャプチャーが用いられている最新タイトルを紹介します。
 

2-1. ウマ娘 プリティーダービー

『ウマ娘 プリティーダービー』は、実在の競走馬をモデルとする美少女キャラのレースやトレーニングを描く育成シミュレーションゲームです。このタイトルでは、ライブパフォーマンスやレースシーンにモーションキャプチャー技術が活用されています。
 
それぞれのウマ娘の個性を重視しているため、複数回の収録を行って動作のバリエーションを増やす工夫が行われています。また、リアルのアクターと3Dモデルの体格差があっても、画像化した際に違和感が出ないようにするツールを独自開発しています。
 
ほかにも、指の動きや表情まで再現しようとするこだわりをもちつつ、アクターの安全性を徹底するなど、さまざまな配慮が人気に結び付いています。
 

2-2. FINAL FANTASY XVI

『FINAL FANTASY XVI』は、新型コロナウイルス流行の影響を受けて外出や集合が制限された時期に開発が行われていました。そこで自宅でモーションキャプチャーの撮影ができる環境を構築したことで有名です。
 
短時間で身体に装着できるツールの採用や、スマートフォンによる撮影でも品質を維持する技術の導入など、さまざまな工夫が盛り込まれています。
 
また、動作のすべてをモーションキャプチャーに頼るのではなく、開発効率を考慮してモーションキャプチャー4割、手付け(手動アニメーション)が6割という比率で構成されています。これらの取り組みによってダイナミックで迫力のあるアクションシーンが作り出されました。
 

2-3. モンスターハンターワイルズ

『モンスターハンターワイルズ』では、キャラクターだけでなくほとんどのモンスターの動きにモーションキャプチャー技術が使われています。
 
このシリーズはハンターやクリーチャーのリアルな動作が大きな魅力ですが、その動きを実現しているのは、カプコン専属のモーションアクターです。会社に常駐するアクターたちがノウハウを蓄積し続けることでリアルさや品質が随時向上しています。
 
また、150台ものカメラがある大型スタジオや自社開発ゲームエンジンの導入など、設備やツールへの惜しみない投資もゲーム世界への没入感を高めるポイントです。
 

2-4. サイレントヒルf

『サイレントヒルf』は昭和の田舎町を舞台とするサイコロジカルホラーです。このタイトルにはフォトスキャンと呼ばれるモーションキャプチャーの関連技術が導入されており、アクターの微小な動きを再現することに力が注がれています。
 
モーションキャプチャーというとダイナミックな動きで用いられると考えがちですが、微細な動きを重視することでホラー性を高めているのが本作の特徴です。
 
さらに、ヒロインの感情表現を重視するために、モーションアクターではなく映画やテレビドラマで活躍する有名俳優を起用するなどさまざまなこだわりが反映されています。
 

3. モーションキャプチャーの仕組みと種類

ここではモーションキャプチャーの技術的な仕組みや種類について解説します。
 

3-1. 光学式モーションキャプチャー

光学式モーションキャプチャーは、体や物体に取り付けたマーカーの位置を複数のカメラで計測する技術です。カメラから赤外線などを発射し、マーカーで反射した光を捉えてマーカーの3次元的な位置を正確に算出します。
 
この方式は、ミリ単位の非常に高い精度で動作を記録できる点が最大の長所です。その一方で、マーカーがカメラの視界から外れるとデータに欠損が生じます。また、高コストな方法でもあるのでご注意ください。
 

3-2. 慣性式モーションキャプチャー

慣性式モーションキャプチャーは、加速度計やジャイロセンサーなどの慣性センサーを身体各部に装着し、加速度や角速度の情報を取得する方式です。
 
カメラなどの外部機器が不要ですし、屋外でも使いやすいなど場所の制約を受けにくいメリットもあります。また、セットアップが比較的簡単なうえに、光学式よりコストが安い点も魅力です。
 
ただし、位置精度は光学式より低いこと、磁場の影響を受けることなどの注意点もあります。
 

3-3. 機械式モーションキャプチャー

機械式モーションキャプチャーは、外骨格型の専用装置を体に取り付けて、関節部分の計測装置で動作を測定する方式です。
 
装置が大がかりなことや動作が制限されること、装着者の身体に負荷がかかることなどの短所はありますが、関節から直接測定するので、データ精度が高いメリットがあります。また、外部環境の影響を受けにくいのもこの方式の利点です。
 

3-4. 磁気式モーションキャプチャー

磁気式モーションキャプチャーは、磁気センサーを身体に装着して、動作をリアルタイムで測定する方式です。
 
磁場が干渉する可能性があることや高コストであることなどの難点はありますが、高精度のデータが取得できます。また、広い範囲の複雑な動きを把握することに向いています。さらに、マーカーが遮蔽されるとデータが欠損する光学式とは異なり、金属や磁性体以外の遮蔽に影響を受けません。
 

3-5. 画像式モーションキャプチャー

一般的なビデオカメラやハイスピードカメラなどを用いて必要な動作を撮影し、その映像を解析して動作データを抽出する技術です。複数台のカメラ映像から必要なデータをディープラーニングで計算し、骨格を算出する「マーカーレスモーションキャプチャー」などが最近注目されています。
 
照明の影響を受けること、精度が低い場合があること、解析に時間を要することなどの欠点がありますが、身体にマーカーやセンサーを取り付ける必要がないのはモーションアクターにとって大きな利点です。また、設定が容易なことや、コストが低いことなど多数のメリットがあります。
 

4. モーションキャプチャーに必要になる機材

モーションキャプチャーに必要となる機材は、光学式では赤外線を発するカメラや身体に装着するマーカーなどが代表的です。一方慣性式は、慣性センサーを内蔵した専用のスーツやトラッカーなどを用意しなければなりません。
 
また、画像式であればセンサーやマーカーは不要です。このように方式によって必要な機材はまったく異なるので、用途や予算、環境などを踏まえて方式を選定してから機材の準備を考えましょう。
 
ただし、いずれの方式でも扱うデータ量は大きいので、それを処理・解析するPCやソフトウェアは欠かせません。
 

5. モーションキャプチャーのゲーム業界以外の活躍シーン

ここではゲーム以外でモーションキャプチャーが活用される場面を紹介します。
 

5-1. Vtuberのアニメーション

モーションキャプチャーはVtuberのアニメーション制作に欠かせない技術です。Vtuberの配信では、「中の人」の表情や身体の動きをリアルタイムでキャプチャーし、即座にバーチャルなアバターに反映させます。これにより、視聴者はまるでキャラクターが実在しているかのような、自然で臨場感あふれるパフォーマンスを楽しむことが可能です。
 

5-2. 人の動作の研究と商品設計・改善

モーションキャプチャーは人間の動作解析に役立つので、研究分野でも活用されています。動作を細かく解析することで、身体に負担をかけている動作や効率が悪い動作を把握できるからです。
 
たとえば、スポーツ選手のフォームを分析してパフォーマンス向上や怪我の予防にもモーションキャプチャーは取り入れられています。
 
また、工業デザインや商品設計の現場では、人間にとっての快適性や使いやすさを高めることに役立ちます。
 

5-3. さまざまな分野の研究

モーションキャプチャーは、医療やリハビリテーションの分野でも重要な役割を果たしています。たとえば患者の動作を計測することで、疾患の原因究明やリハビリの効果確認に利用されていますし、建築や土木の分野では、安全性向上や作業効率改善に向けた研究にも用いられています。
 

5-4. ロボットの遠隔操作

モーションキャプチャーで得た情報を使ってロボットを遠隔操作する技術もすでに開発されています。この方法を用いると、災害現場などで起こり得る危険を回避しながら人命救助が可能です。また、原子炉などの人が入りにくい場所の調査や作業への活用も研究されています。
 

6. モーションキャプチャーを仕事にする場合のキャリアパス

ゲームに関心があってモーションキャプチャーを仕事にしたい人には、モーションキャプチャーを積極的に導入しているゲーム会社に入ることをおすすめします。
 
たとえば以下の企業はモーションキャプチャーを業務に取り入れており、高い専門性を有しています。
 
・カプコン
社内にモーションキャプチャースタジオを設置していますし、モーションアクターも常駐しているなど、積極的な投資を行って技術の向上や蓄積に努めています。
「カプコンに就職したい!会社の概要と就職の際のポイント」
 
・D・A・G
映画やゲームのCG映像制作を担う企業で、モーションキャプチャー技術を駆使した高品質なアニメーション制作を行っています。国内最大級のモーションキャプチャースタジオを設置しており、多人数での収録や身体の微細な動きの再現が可能です。
「D・A・Gに就職したい!会社の概要と就職の際のポイント」
 
・Cygames
『ウマ娘 プリティーダービー』などでモーションキャプチャーを有効活用しています。自社専用のモーションキャプチャースタジオを東京と大阪に設置しており、ボディスキャナーやカメラなどのツールも豊富です。
「Cygames(サイゲームス)に就職したい!会社の概要と就職の際のポイント」
 

7. まとめ

モーションキャプチャーは人や物体の動きをデジタルデータ化し、ゲームや映画などに使用するリアルな映像を提供することに役立つ技術です。光学式や慣性式、磁気式など、手法は多彩で、それぞれに長所、短所があります。
 
そのため、モーションキャプチャーの利用や導入に当たってはぜひ当コラムを参照して、用途や環境にあった選択を行ってください。
 

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