
「完全版商法」とは?ゲーム会社とユーザーそれぞれの目線で問題点を紐解く
ゲーム業界で「完全版商法」という言葉が使われる場合、比較的ネガティブな意味を含むことが多いです。「完全版」は通常版を販売した後、通常版の問題点を解消したり追加コンテンツを加えたりして販売されることが一般的です。ただし、通常版リリースからの期間が短かったり、追加コンテンツが物足りなかったりすると、儲け主義と批判される場合があるのです。
このコラムでは、完全版の販売を一方的に批判するのではなく、言葉の意味や使われ方を解説し、完全版販売で起こりがちな問題点やこの商法が存在する理由を冷静に解説します。「完全版商法」について考える際に、ぜひ当コラムを参考にしてください。
目次
1. 「完全版商法」とは
この項目では、まず「完全版商法」という言葉について解説し、関連する用語との違いを明確にします。
1-1. 完全版商法と言われるマーケティング例
完全版商法とは、発売済みのゲームに追加要素や改善点を加えた「完全版」を後から新たに販売する手法を指します。
通常版を購入したうえで、追加コンテンツを含む完全版を買うことに肯定的な意見もあります。推し活に取り組む人なら、同じ商品を複数買いすることは珍しくありませんから、そのタイトルを愛する人なら追加コンテンツが含まれていれば積極的に購入する人も多いのです。
また通常版が好評であり、ある程度の期間が経過してから追加コンテンツを含む完全版が出る場合は比較的受け入れられやすいでしょう。さらに過去のリリース時の対象ハードが主流ではなくなったことで、新しい環境に対応するための完全版販売であれば、批判されることはほぼありません。
しかし、通常版のリリースからあまり間をおかずに完全版が出る場合や、追加コンテンツが完全版購入でしか楽しめない場合、追加要素が少ない場合などは批判の対象になりがちです。
1-2. DLC(ダウンロードコンテンツ)追加との違い
DLC(ダウンロードコンテンツ)とは、一般的に名称の通りインターネット上のプラットフォームからダウンロードするコンテンツです。ゲーム業界において、DLC追加、または追加DLCという言葉を使う場合、メイン部分とは別に、新たに追加されたダウンロードして楽しむストーリーやマップなどを指します。
追加DLCが有料の場合、追加部分だけを購入するのでその販売方法に批判を述べる人はいません。(内容の良し悪しや価格設定への批判は別とします)
一方の完全版は、通常販売されたメイン部分を含めて販売されることが多く、先に販売された通常版を買った人は二重に購入することになります。このため、DLC追加販売では起こらない批判が完全版販売においては見られます。
ゲームのDLCについて詳しく解説したコラムがありますので、ぜひ以下もご参照ください。
→「ゲームのDLC(ダウンロードコンテンツ)とは?あり方やメリット・注意点などを解説」
1-3. リメイク・リマスター・移植版 との違い
ゲームのリメイクとは、過去に存在したタイトルを新しい技術や解釈で作り直すことを指します。その際、過去作とは設定やキャラクター、ストーリーなどが違うことも多々あります。
一方のリマスターは、ストーリーやキャラクターは同じでも、グラフィックやサウンドなどを現代の技術水準で作り直します。つまりリメイクもリマスターも、過去作を現代風に再制作することを指します。
一方の完全版は、先に販売された通常部分は変更せずに、追加コンテンツなどを含めたものです。バランス調整などはあるものの、基本的に通常版の内容を踏襲します。
また移植版とは、あるタイトルを別のプラットフォームやハードウェア向けに変更したものを指します。たとえばPlayStationのみでプレイできていたタイトルのPC版を出した場合などに、移植という言葉が使われます。近年は過去に家庭用ゲーム機向けに作られたゲームが、スマートフォンでプレイできるように移植される例が多いです。
2. 完全版商法が抱える問題点
この項目では、完全版商法に対してユーザーが感じがちなマイナス印象を解説します。
2-1. 出費が重なりメーカーへの不信感につながる
既に通常版を購入しているユーザーも、完全版にしか含まれていないコンテンツを楽しむためには完全版を購入するしかありません。この結果、「同じものを二度買わされる」という印象を持つユーザーも存在します。
また、完全版でシステムを一部変更するタイトルも存在するため、このような場合「通常版は有料のベータテストだったのか?」と感じる人もいるでしょう。
このような体験が特定の会社のゲームで続くと、ユーザーはその会社に対して不信感をもつ可能性があります。
通常版を購入しているものの、「追加コンテンツがあるから」と完全版も買ったユーザーとしてはそもそも金銭的負担を感じやすいですから、追加コンテンツの内容が薄かったりつまらなかったりした場合、SNSなどで強い批判が起き、炎上騒ぎに発展するかもしれません。そのため、ゲーム会社としては顧客満足度への配慮が重要です。
2-2. 通常版をやりこんだユーザーからすると値段に対して満足感が低くなる可能性がある
通常版をじっくりやり込んでいるユーザーにとっては、完全版は新しさを感じにくいため、購入価格の割に満足感を得にくい、と思われる可能性があります。これは完全版に追加される新コンテンツの内容や量にもよりますが、「数千円出したのに、わずかな時間しか楽しめなかった」と思われると、その会社が出す次回作は手に取ってもらえないかもしれません。
通常版を買ったうえに完全版も購入してくれるユーザーは、そのタイトルを高く評価してくれているはずです。しかし完全版によってガッカリさせてしまうと、貴重なコアユーザーを失うこともあり得ます。
2-3. 「どうせ完全版が出るから」と新作を買い控えられるようになる可能性がある
通常版リリース後、短期間のうちに完全版が出ることが予想できていれば、「どうせ完全版が出るから」とリリース時に買い控えするユーザーがいるかもしれません。
実際に、特定の会社では「作品としての評価は高いのに、新作としてリリースされたときに販売数が想定よりも伸びない」という現象が、投資家向け説明会にて指摘されています。この現象に対して、「時間をおいていわゆる完全版が販売されることに対する懸念が買い控えを招いている可能性がある」という分析を公表しています。
3. 完全版商法に該当するマーケティングに踏み出す理由
完全版商法が批判されがちなことを、ゲーム会社が知らないはずはありません。それでも、完全版商法と揶揄される可能性があるマーケティングが行われるのは、ゲーム会社にとっても多くのメリットがあるからです。ここではゲーム会社から見た完全版の販売理由を解説します。
3-1. 新規タイトルを開発するのに比べてコストが抑えられるから
ゲーム会社としては、まったく新しいタイトルを開発するには大きなコストと、リスクを考えざるを得ません。
一方、既存の素材や設定、ゲームエンジンやアセットを流用できる完全版は、開発費を劇的に削減できます。このため、少ない予算で確実な収益を上げる方法として、完全版のリリースは有効と考えられがちです。
3-2. 通常版のファンが購入する可能性が高く売上が担保されやすいから
ゲーム会社にとって完全版は、「すでに評価されているタイトルだから、ファンが購入してくれるだろう」という目算が立てやすいメリットがあります。
新規タイトルの場合はファンがついてくれるかどうかはわかりませんが、既存のタイトルならファン数もある程度把握できるため、売上や利益の検討がしやすいのです。
3-3. 通常版の購入を見送ったユーザーに新しくアプローチできるから
ゲーム業界では毎日のように新作がリリースされるため、「話題作だけど購入していない」ということが起こりがちです。完全版のリリースは、上記のような気になっていたが購入していないユーザーに再アプローチする機会になります。
そもそもユーザーは新規タイトルを買うときには「このゲームは購入する価値があるだろうか?」と懐疑的になりがちです。しかし、完全版が出るころにはそのタイトルの情報は豊富に存在するので、少ないリスクで購入できる魅力があります。
3-4. DLCでは対応が難しい改善ができ、タイトルとしての完成度を上げることができるから
ユーザーとしては、「新しいパッケージとして完全版を出す場合でも、通常版をもっているユーザーには追加部分だけをDLC販売してほしい」と思います。
しかし、通常版自体の修正量が多い場合やシステム自体を大きく変更している場合などは、DLCで対応できないケースもあります。これを踏まえて、完全版の販売はそのタイトルの完成度アップの手法として選択されるケースもあるのです。
4. 完全版商法に向けられる厳しい目への向き合い方の例
ここまで書いてきたように、完全版をリリースすることは決して悪いことではありません。しかし、通常版リリースからの期間が短い場合や、追加・修正内容が薄い場合、ユーザーの価格負担が大きい場合などは、利益のみを追い求めているとして批判されがちです。悪い場合はSNSなどで炎上し、タイトルのブランド価値や会社の信用を落とすこともあるので注意が必要です。
このような事態を避けるためにも、ゲーム会社は以下の点への配慮が求められます。
・ユーザーとの信頼関係を重視する
・通常版が「有料ベータ版」などと批判されないよう、初期リリース時の完成度をあげる
・通常版購入者向けに追加部分のDLC販売を行って、購入の負担を抑える
・通常版購入者にとっても「買う価値がある」と思ってもらえるよう、完全版を充実させる
5. まとめ
完全版は、発売済みのゲームに追加要素を加えて新たに提供する販売戦略であり、リメイクやリマスターとは異なるアプローチです。ゲーム会社としては収益が計算しやすいのでマーケティングの手段として悪い選択とは言えません。
ただし、場合によってはユーザーから儲け主義、完全版商法と批判されることがあります。また「どうせ完全版が出るから通常版の購入は控えよう」という意識を起こす要因にもなり、新規リリース時の売上低迷にもつながります。
これらを含めて、完全版のリリースに当たっては、ユーザーとの信頼関係を壊さないことや、長期的目線をもつことが重要です。
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