DLSSとは?仕組みや種類、対応GPUなどをわかりやすく解説


 
近年のゲーム開発において、高精細なグラフィックと快適なフレームレートの両立は、エンジニアが直面する大きな技術的課題です。その解決策としてスタンダードとなりつつあるのが、NVIDIA社が提供する「DLSS」です。
 
当コラムは、DLSSの基礎知識から各バージョンの詳細な差異、導入のメリットや実装時の注意点をわかりやすく解説します。技術的な仕組みや開発現場での活用方法まで踏み込んで記述していますので、最適化を目指すゲームエンジニアにとって、DLSSに関する知識を得ることに役立ちます。
 

1. DLSSとは

DLSSとはDeep Learning Super Samplingの略語であり、NVIDIA社開発のグラフィック技術です。DLSSを用いると、低解像度で描画した画像を、学習済みAIによって描画負荷を抑えつつリアルタイムで高画質化できます。
 
レンダリングに際しては、頂点数やピクセルシェーダーが多いほどGPUに負荷が生じます。そんなときDLSSがあれば、低解像度でレンダリングを行い、不足するピクセル情報をAIが補完して高解像度に変換することが可能です。
 
この技術が登場したことにより、画像の美しさを維持しながらフレームレートを向上させることが可能になっています。
 

1-1. DLSSのバージョンと対応しているグラフィックボード

DLSSは2018年にリリースされて以来、頻繁に新しいバージョンが登場し、機能が拡張されてきました。この項目では、バージョンごとの特徴や対応するGPU(グラフィックボード)についての情報を整理しました。
 
・DLSS1
2018年にRTX20シリーズ以降に導入されました。画質とフレームレートの向上ができ、現在のDLSSにつながる道を作りました。しかしこのときはまだゲームタイトルごとにディープラーニングさせる必要があり、性能的にもまだ十分ではありませんでした。
 
・DLSS2
2020年3月に、RTX20シリーズ、RTX30シリーズに利用できるタイプとして登場しました。DLSS1より画質向上が顕著になっただけでなく、タイトルごとに学習させる必要もなくなりました。これによって対応するタイトルが増え、DLSSの存在感が増していきました。
 
・DLSS3
2022年10月にRTX40シリーズのみに対応するバージョンとして登場しました。これ以前のバージョンより性能が向上し、グラフィック負荷が高いタイトルでもプレイしやすくなっています。フレーム生成機能が追加され、AIが中間フレームを生成することでフレームレートを引き上げる効果が得られます。
 
・DLSS4
マルチフレーム生成が可能となり、過去のバージョンより生成されるフレーム数が増えています。また、学習モデルが刷新されたことで、画面全体の情報を考慮して処理できるようになりました。これによりフレーム生成が安定し、高負荷のリアルタイム処理へも対応しやすくなっています。
 
・DLSS4.5
6倍マルチフレーム生成モードを搭載して高画質と高フレームレートを実現しています。また、動的フレーム生成も導入されており、レスポンスの最適化と画像の滑らかさを追求しています。
 
【DLSSのバージョンと特徴、対応GPU一覧】
・DLSS1
リリース:2018年9月
特徴:記念すべき初代
対応GPU:RTX20以降
 
・DLSS2
リリース:2020年3月
特徴:描画性能向上・タイトルごとの学習が不要に
対応GPU:RTX20以降
 
・DLSS3
リリース:2022年10月
特徴:フレーム生成機能が追加・画質とフレームレート向上
対応GPU:RTX40専用
 
・DLSS4
リリース:2025年1月
特徴:マルチフレーム生成・高負荷リアルタイム処理に対応
対応GPU:RTX40以降
 
・DLSS4.5
リリース:2026年3月
特徴:6倍マルチフレーム生成モード・レスポンスの最適化と画像の滑らかさ
対応GPU:RTX50専用
 
※ここに記載する以外にも、2.3、3.5などバージョンは存在します。
 

1-2. DLAAとDLSSの違い

DLAAとはDeep Learning Anti-Aliasingの略語で、DLSSと同じくNVIDIA社が提供している技術です。ただし、DLSSが高画質と高フレームレートに寄与することに対して、DLAAはアンチエイリアスに特化し、画像の明瞭さや鮮明さをアップします。
 
アンチエイリアスとは、CGにおいて曲線や斜めの線を描く際に画面上に現れてしまうギザギザ(ジャギー)を除去することを指します。つまり、DLAAを用いると、画像が滑らかになるのです。この特徴は、前景色と背景色のコントラストが大きいときに、特に効果を発揮します。
 
なお、DLAAもDLSS同様にディープラーニングを利用しています。この技術は、NVIDIA社製のGPUに搭載されたTensorコア回路によって高速処理も可能です。
 

2. DLSSの仕組み

DLSSは、①低解像度でレンダリングを行い、②AIによってアップスケール(画質の向上)し、③高画質の画像を出力する、という処理フローを行います。
 
NVIDIAのGPUであるGeForce RTXシリーズには「Tensorコア」が搭載されています。このコアは上記の処理フローにおいて高速演算に貢献します。AIによる処理には膨大な行列演算が必要ですが、Tensorコアはこの行列演算の高速処理が得意です。
 
そのため、上記の処理フロー以外のグラフィックにかかる負荷を低減し、リアルタイムでアップスケールができるのです。
 

2-1. 通常のアップスケーリングとの違い

従来のアップスケーリング技術であるバイリニア法やバイキュービック法では画像がぼやけやすく、ディテールが失われる欠点があります。
 
一方、DLSSは現在のフレームだけでなく、過去のフレーム情報も参照してピクセルを蓄積し、AIによる欠損の再構築も行うため、パフォーマンスアップと画質向上の両立ができるのです。
 

2-2. DLSSのメリット

DLSSを用いることで、以下のようなメリットが得られます。
 
・フレームレートの大幅な向上
DLSSはフレームレートを向上させるメリットがあります。実際の数値はケースによって異なりますが、過去の描画方法に比べると、2〜4倍もの向上が見られる場合もあります。
 
・GPU負荷の軽減
DLSSは処理負荷を下げることで消費電力を抑えます。また、GPUの発熱を抑制するので、ハードウェアの寿命延長にも寄与します。
 
・ジャギー低減
AI学習を利用したアンチエイリアス効果により、細い線や網目状のオブジェクトで発生しやすいジャギーを効果的に除去します。
 
・映像の安定性向上
AIが細部のテクスチャを補完するため、画面上で激しい動きがあっても映像が乱れにくいメリットがあります。
 

2-3. DLSSの注意点

多くのメリットがあるDLSSですが、注意点もあるため、以下に記載します。
 
・対応GPUの必須条件
DLSSはNVIDIA社のGPUのみに対応していますから、他社製GPUユーザーは恩恵を受けられません。
 
・ゲーム側の個別対応
DLSSはNVIDIA社のGPUを搭載していれば、どのゲームにも有効というわけではありません。初期のDLSSより対応タイトルは増えていますが、それでもDLSSに対応していないタイトルも多数あります。
 
・ゴーストやちらつき、UIのにじみの発生
画面上で素早く動く物体の背後に「ゴースト(残像)」が生じたり、細かな格子状の模様で「ちらつき」が発生したりすることがあります。
 

3. ゲーム開発会社がDLSSをどう活かすべきか

DLSSは登場からすでに7年以上が経過し、バージョンアップごとに機能も向上していることから、対応するゲームも増えています。
 
特に高画質を追求するAAAタイトルでは、フレームレートの向上も必要なため、DLSSによる最適化が広がっています。
 
以下では、DLSSに向いているタイトルの特徴と、実装する際の技術的ポイントを解説します。
 

3-1. DLSS導入が向いているタイトルの特徴

導入を優先すべきなのは、描画負荷がボトルネックとなりやすい以下の特徴を持つタイトルです。
 
・ハイエンドな視覚体験を追求するタイトル
近年、グラフィックに関するユーザーの期待度は高まっており、AAAクラスのタイトルは高解像度をアピールすることが一般化しています。しかし、グラフィックの負荷が大きいと、動作のカクつきが起こりやすいうえに、電力消費が増えますし、発熱によるハードウェアへの悪影響も懸念されます。
 
そんなとき、DLSSに対応すれば、低解像度の画像を高画質化してリアルタイムで出力することができるため、動作のカクつきやハードウェアへの悪影響を軽減できます。
 
・レイトレーシングを多用するタイトル
レイトレーシング(光の反射や屈折を物理的に計算する処理)は、リアルな映像の提供に寄与しますが、GPUへの負荷も大きくなります。また、フレームレートの低下が起こりやすい懸念もあります。
 
DLSSはこれらの問題を低減してくれるので、導入検討の価値があります。
 
レイトレーシングについて詳しく書いたコラムがありますので、ぜひ以下もご参照ください。
「レイトレーシングとは?ゲームがリアルになる仕組みや必要スペックを解説」
 

3-2. 実装時に押さえたい技術・設計ポイント

エンジニアとしてDLSSを実装する際は、以下のポイントに留意することを推奨します。
 
・DLSS以外のアップスケーリング技術にも対応すること
DLSSはNVIDIA社のGPUがあってこそ使える技術ですが、それ以外のGPUを利用しているユーザーも多数存在します。そのため、アップスケーリングをDLSSだけに依存していると、自社タイトルの良さを味わってもらえないユーザーが存在することになります。
 
これを踏まえて、AMDのFSRや、インテルのXeSSなどにも対応しておくことをおすすめします。
 
・GPU世代別の品質検証を行うこと
GPUとDLSSは世代やバージョンごとに異なる特徴を持っています。ユーザーのプレイ環境は様々なので、新しいGPUとDLSSだけで動作確認をするのは好ましくありません。
 
これを踏まえて、DLSS2、3、4と様々な環境で品質を検証し、環境が異なっていても快適にプレイできるよう、注意しましょう。
 

4. まとめ

DLSSは、AIの力を借りて高画質とフレームレートの向上を実現するための技術です。グラフィックへの要求が高まって高画質化が進むゲーム業界において、DLSSのようなアップスケール技術の重要性は非常に大きくなっています。
 
また、DLSSはジャギーの低減や映像の安定化、省電力化など豊富なメリットを持っている一方、導入に当たっての注意点もあるため、ゲームエンジニアはまず正しい知識をもつことが大切です。
 
ぜひ当コラムを参考にして、多くのユーザーに自社タイトルの魅力を十分に届けられるよう、DLSSをはじめとするアップスケール技術の重要性を学んでください。
 

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