ゲーム会社におけるデスマーチはどういったときに発生するのか
このコラムは、「ゲーム業界に就職したいけれど長時間残業は避けたい」という人に向けて、ゲーム会社の現場状況を表す言葉として話によく挙がる「デスマーチ」について解説します。
デスマーチはゲーム業界の全てで起こっているわけではありませんが、なぜこれほどゲーム業界を表す言葉のようになってしまったのでしょうか?
デスマーチが発生しやすい状況や、ゲーム業界の特色などを考えつつ、デスマーチを避ける方法も考察します。
目次
1.そもそもデスマーチとは?
「デスマーチ」というのは、本来は戦争中の軍隊が、兵士の健康状態を考えずに行う無謀な進軍が死に直結することを意味しています。
近年は「デスマーチ」という言葉は、長時間残業や徹夜、休日出勤などが続く状態や、無理な業務日程の下で過重労働を強いられる状態を指しています。
ゲームやソフト開発の現場で使われるイメージが強いようですが、年末や年度末などに業務が集中する業務や決算前の経理業務などにも使用されます。
2.ゲーム業界におけるデスマーチの発生原因
この項目ではゲーム業界でのデスマーチ発生の要因を解説していきます。
2-1. 上層部が現場作業に対する理解が薄く、プロジェクトに十分なリソースが割かれない
どの業界でもありがちな話ですが、現場経験が薄い管理職、または現場から遠ざかってしまった管理職者は実働面で無理があっても、「スケジュール」と「予算」だけに着目しがちです。
この場合ありがちなのは、各工程にバッファ(予備時間)を設けない、作業が遅れたら残業で取り返す、など無理なスケジュールを組むことです。
現実を無視して使われる「少数精鋭」という言葉や、「現場の苦労は理解するがコスト上仕方ない」といった言葉が横行するブラック企業は、残念なことに一部に存在しています。
2-2. 会社単位で新規プロジェクトに対するノウハウがなく、フローが最適化されていない
ゲーム業界で特に起こりやすい現象として、新しい技術の台頭や求められるクオリティのインフレについていけないといったことが挙げられます。
このような理由から、発足した新規プロジェクトに充てられた予算やスケジュールが、計画上は問題ないと思われていたのに、フタを開けてみれば不可能に近いものだった、ということがあります。
また、ゲーム業界はチャレンジングな世界ですから、会社として既存のジャンルとは違うゲームジャンルに挑むことや、時代の流れを呼んで新しいゲームエンジンを使用することなどもありえます。
その場合、蓄積されたノウハウが役に立たず、結果的に無理なスケジュールを組んでしまうケースもあります。
また、開発が一段落した際にフィードバックをしても、技術革新やクオリティの向上は日進月歩で続いていますから、次のプロジェクトに100%活かせるかどうか不明という現実もあります。
2-3. 納期に余裕がない状況下で致命的なバグ・問題が発見される
ゲームの開発が大詰め、という時点で致命的なバグが発見され、スケジュールが大きく狂ってしまうということもあります。
トラブルに対するリカバーの予想がつけば、日程を組み替えたり、人員を増やしたりするなどの対応も可能ですが、バグの原因や対応策が明確にならない場合、デスマーチに直結していきます。
2-4. そもそもスケジュールの時点で破綻しているが、会社の関係で動かざるを得ない
最初のスケジュールが組まれた時点で、管理職やチームリーダーは「かなり厳しい」と察知しているケースもあります。
この時点で十分な対策が練られればデスマーチを回避できますが、企業内または企業間の都合でそのまま走り出してしまうプロジェクトも無いわけではありません。
3.デスマーチが発生することによる身体への影響
この項目では、デスマーチ状態で仕事を続けることで起こる可能性がある身体への影響を記述しておきましょう。
健康に楽しく働いて成果を上げ続けられるように、公表されている情報やリスクを知って予防につなげていきましょう。
3-1. 残業と健康の関係
長時間の残業が続けば身体や精神に良くないのは、誰もが直感的にわかることです。
行政としては長時間残業が身体に与える影響の研究成果を発表したり、残業数の基準値を定めたりするなど、過重労働による発病や過労死を防ぐ取り組みをしています。
具体的な数値を上げると、単月で100時間を超える残業、または80時間を超える残業を平均的に行っていると、脳や心臓疾患を患うリスクがかなり高いことを厚生労働省が認めています。
これは「過労死ライン」とも呼ばれていて、ここまで残業すると過労死のリスクが上がるという数値ですから、このくらいは残業しても大丈夫、という値でないことも知っておきましょう。
(ちなみにここでいう「残業」は、週に40時間の労働を超えて就労した数値を指しています)
また、イギリスで行われた調査では、1日の労働時間が7~8時間の人に比べると、11~12時間働く人はうつ病になる確率が2倍以上もあるという結果が出ています。
このようなデータから、長時間労働が身体だけでなく精神にも大きな負荷をかけることは明確な関係があると考えてよいでしょう。
3-2. 残業が引き起こす病気の種類
ここでは長時間労働がどんな病気を引き起こすかという点に着目して解説しましょう。
ある研究では、長時間労働が脳や心臓疾患のリスクを上げることが分かっています。
疾患の名称を具体的に紹介すると、脳に関しては脳内出血やくも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症などがあげられます。
また、心臓では心筋梗塞や狭心症、心臓性突然死や解離性大動脈瘤などがあります。
医療の記事ではないので個々の疾患の説明は省きますが、どの疾患も重篤な状態になることがあるので注意が必要です。
また、別の研究では長時間労働が高血圧につながることが報告されています。
さらに、長時間労働している際は仕事の期限や成果に追われている可能性が高く、精神的負荷が増大していることが予想できます。
ストレスが多いと自律神経のバランスを崩しやすくなり、睡眠障害につながりやすいと言われています。
残業が多いとどうしても帰宅時間も遅くなって自然と睡眠時間も少なくなるでしょう。
そこに睡眠障害も加わると疲労は一層回復しにくくなります。
ある医師は、睡眠時間が5時間を切るとうつ病や適応障害など、メンタルの不具合も増えると報告しています。
仕事が過密した結果として長時間労働が行われているのでしょうが、健康状態を維持して高いパフォーマンスを発揮するにはむしろ長時間残業を避けることが得策です。
4.デスマーチから逃れるには?プロジェクトや会社の危険ポイント
ここでは、デスマーチを逃れるために、プロジェクトや会社にありがちな危険な兆候、ポイントなどを解説します。
4-1. リリースまでのスケジュールのフローがしっかり見える化されているか
まずはプロジェクト発足の時点で無理のないスケジューリングがされているかを確認しましょう。
特にゲームのリリース日は一度公の場で発表されてしまうと、ユーザーの期待を裏切ったり、関係企業に迷惑を掛けたりすることにもなりますから、そう簡単に変更することはできません。
とはいえ、単にリリース日ありきで出来もしないスケジュールが組まれていたり、細かいスケジュールやリソース配分の根拠が示されていなかったりするようであれば、そのプロジェクトはデスマーチのリスク大です。
事態は進行するほど厳しくなりますから、「まずい」と感じた場合は出来るだけ早い段階で意見を出し、解決策を議論しましょう。
4-2. 残業前提のスケジュールになっていないか
スケジュールを組んだ人に「遅れは休日出勤や残業で取り返す」、「残業するのは当たり前」といった感覚がある場合は非常に危険です。
もしチームや会社に残業文化が浸透している場合、その考え方自体を変えることに挑みましょう。
過度な残業はモチベーションやパフォーマンスを低下させるだけで、「良いゲーム作り」に繋がる要素はないことを訴え、それが聞き入れられないようなら転職も検討することをお勧めします。
4-3. 上層部と現場の認識に相違があったり軋轢が生じたりしている
上層部や管理職と現場で作業をする人の間に相互理解が無い場合、現場側から増員やスケジュールの変更を求めても理解を得られない場合があります。
これを回避するには、日ごろからのコミュニケーションが重要ですが、現場側から上層部にアプローチするのは難しいことが多いかもしれません。
自分自身のポジションにもよりますが、中間的位置に立つ人を巻き込んでキーマンとなる人への根回しを行うなど、会社組織の流れを踏まえた打開策を練りましょう。
また、クリエイティブな事業で収益をあげているのに現場の意見を聞かない状態であれば、その企業はそもそも危険な状態です。
早めにホワイト企業を探して転職を考えましょう。
「ゲーム業界=ブラック?実態と転職する上で注意したいポイントを解説」
「ホワイトなゲーム会社に入社したい!良い会社かどうかを見極めるポイント」
5.まとめ
ゲーム業界への就職を考えている人に向けて、ゲーム制作会社でデスマーチが起こるメカニズムやその回避方法などをまとめました。
文中でも何度か触れましたが、ゲーム業界は開発的な仕事が多いことから、スケジュールが予定通りに進まないことはよくあることです。
しかし、デスマーチにおちいらないようにしっかりバッファを取る、十分なリソースを割くことを重視する会社も多数あります。
ゲーム業界全体でデスゲームが起こっているわけではないことを理解して、就職・転職先をしっかり選びましょう。
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