ロマサガRSから学ぶ既存ゲームIPで新規ファンを掴む為に必要な開発スタンス
20年以上前からファンにカルト的に愛されているスクウェアエニックス社のサガシリーズ。その最新作がスマホアプリゲーム「ロマンシング サガ リ・ユニバース(ロマサガRS)」として2018年12月にリリースされました。
大々的なテレビCM配信も手伝い、懐かしさで興味を惹かれたかつてのプレイヤーも多かったことだと予想されます。
このロマサガRSはスクウェアエニックスとアプリ開発会社であるアカツキ社のタッグによって作られたもので、既存ゲームIP作品の中でも特に評価が高いことで話題になっています。
過去のプレイヤーに迎合し、ノスタルジー要素を盛り込んで単純なリファインをしても一部のファンのみを対象にしたゲームとなってしまい、コンテンツの広がりに限界ができてしまいます。
しかしこれまでのシリーズへのリスペクトがない開発ではそもそもでそのタイトルを使う意義が伴わず、ゲームとして愛される事は困難です。
シリーズもののジレンマである「新規客の取り込みにくさ」と、既存ファンから総スカンされる、というどの利用者層にも響かない、いわば魂が抜けたゲームとなってしまうからです。
それだけ既存ゲームIPを用いたアプリゲームはセンシティブな設計・開発が求められますが、この高いハードルを強い熱量と緻密な設計でクリアしているのがこの「ロマサガRS」です。
目次
ロマサガRSとは?
ロマサガRSはこれまでのサガシリーズで語られた事が史実として存在している世界で、ロマンシングサガ3の300年後という設定の物語です。
これまでサガシリーズで人気を博していた、「閃き」、「連携」、「陣形」といった、従来のRPGにはなかった戦略的なシステムはもちろん引き継いでいます。
それだけではなく今作では「オーバードライブ」というさらに戦略性の高いコマンドが用意されており、正統な続編である事が見受けられます。
登場人物に吟遊詩人がおり、彼が子どもにおとぎ話を話す様に過去シリーズであったことに触れる事で、プレイヤーはその世界の歴史に触れる事ができます。
ロマサガRSのストーリー
ロマサガRSの物語は、「ロマンシング サ・ガ3」で8人の救世主が世界を救ってから300年が経過したころから始まります。
突如として異世界の過去の瞬間が囚われた塔「グレイブ(GRAVE)」が世界中に出現し、時を同じくして山奥や森を住処としていた魔獣が町を襲うようになります。
魔獣を討伐するには塔の頂上から現れる異界の戦士の力を借りる必要があり、ロアーヌ候ゼノン・アウスバッハは塔士団を結成しました。
1部1章では、主人公のポルカ・リン・ウッドが、何者かによってさらわれた妹のリズを助けるため、グレイブから召喚された異界の戦士たちを仲間に妹を探す戦いの旅に出ます。
現在展開している1部2章では、1章の15年後の世界を舞台に展開。
リズの娘であるジョセフィン・リン・ウッドにも焦点が当たります。ロマサガRSのキャラクター
本項では、ロマサガRSの主要キャラクターや歴代作品から登場するキャラクターを紹介します。
ポルカ・リン・ウッド
本作の主人公で元サーカスの曲芸師です。
何者かによってさらわれた妹のリズを探すため、塔士団に入団します。
リズ・リン・ウッド
ポルカの妹で、ポルカとともに空中ブランコの花形スターでしたが、1年ほど前に何者かにさらわれ行方不明となってしまいます。
1章終盤では、とある経緯によりジョセフィン・リン・ウッドを出産することとなります。
ジョセフィン・リン・ウッド
リズの娘で通称“ジョー”。
幼いころにウンディーネとボルカノに預けられており、玄武と朱鳥の術を身につけています。
アルベルト(「ロマンシング サ・ガ」)
イスマス候ルドルフの第二子。
両親と姉・ディアナの下平穏に暮らしていましたが、モンスターの襲撃によって城のみならず家族を失ってしまいます。
さらに、失意の中で出ることとなった旅路では、さらなる試練が襲いかかります。
しかし、真面目で正義感の強い性格から決してくじけず、やがて己の使命を見出していきます。
最終皇帝(「ロマンシング サ・ガ2」)
伝承法の限界によって定められた、最後のバレンヌ帝国皇帝です。
ゲーム開始時に名前と性別を設定できますが、操作可能となるのはゲーム終盤と特殊な立ち位置のキャラクターとなっています。
ユリアン・ノール(「ロマンシング サ・ガ3」)
シノンの開拓民である男性です。
死食による悲劇で妹を失いましたが、エレンとの出会いで行動力のある本来の性格を取り戻していきます。
自分が正しいと思うことを行なう正義感の強さを持ち、それを認めたハリードと好意を持ったモニカの推薦で、ロアーヌのプリンセスガードへ入隊を誘われます。
ロマサガRSのゲームシステム
各キャラクターには複数のスタイルが設けられています。
キャラクターにはHPやLPといったステータスが、スタイルには固有の「技・術」および「アビリティ」が3つずつ設定されており、同じキャラクターならば基本ステータスは同じですがスタイルによって性能が異なります。
異なるスタイルでも同名キャラクター(あるいは異なる名前でも同一のキャラクター)は同じパーティに編成できないので注意が必要です。
バトルシステムはロマサガ3がベースとなっており、5人編成のパーティを構成してバトルに挑みます。
閃き、連携、陣形などのシリーズおなじみの要素の他、「発動すると必ず先制攻撃可能」、「技の威力上昇」、「複数キャラで発動した際は連携も必ず発生」という特徴を備えた新要素のオーバードライブ(OD)も盛り込まれています。
敵モンスターの構成はクエスト毎に固定されており、基本的に3ラウンド編成です。
バトル時にLPが0になるとそのキャラは戦闘から離脱しますが、終了後は全回復します。
ロマサガRSの評判は?
ロマサガRSの評判について、ソーシャルゲームの評判として避けては通れない、「ガチャ」、「周回」、「育成」の3要素に焦点を絞って解説していきます。
ロマサガRSのガチャ
ロマサガRSのガチャは、1回300ジュエル、10回3,000ジュエル、有償限定で1日1回100ジュエルで挑戦できます。
また、1日1回限定でプラチナガチャを無料で引くことができます。
ガチャ挑戦時にはさまざまな演出が発生することがあり、爆発が起きたり、ペットが横切ったり、場合によってはサガシリーズの名場面が流れたりもするので、ファンならニヤリとしてしまうかもしれません。
ガチャの排出率はSSが5%、Sが12%、Aが83%で、10連ガチャでS以上1体確定となっています。
さらに、ガチャを引くごとにメダルを100枚入手でき、15,000枚集めるとプラチナガチャメダル交換所にてSS確定ガチャチケットと交換できます。
メダルを15,000枚集めるのに必要な回数のガチャ150回に必要なジュエルは4,5000で、これを有償ジュエルで賄おうとした場合は40,000円(ジュエル11,300個:10,000円×4)が必要です。
他のアプリでは、最高レアリティの抽選確率が1~3%、ガチャ回数による最高レアリティ保障は300回というケースが見られることも多いこと点を考慮すると、最高レアリティでもある程度狙いやすい設計といえるのではないでしょうか。
ロマサガRSの周回
報酬を求めて同じクエストをプレイし続ける「周回プレイ」はスマホゲームとは切っても切れない要素で、ロマサガRSにも存在します。
同じ作業を繰り返す周回プレイはゲームに対するモチベーションを下げてしまいがちですが、本作にはモチベーション低下を回避するための措置として2種類のオートバトルシステムを搭載しています。
1つ目のシステムは「通常オート」で、起動すると各キャラクターが通常攻撃のみを繰り返します。
動作が非常に単純なため、手動でのプレイに比べて時間当たりの効率は落ちますが、そのクエストを通常攻撃のみでパーティさえ構築できれば確実にクリアできるため、時間に余裕がある人やすでに育成を終えている人、一部分だけ手動でプレイしたいという人にとっては便利な機能です。
2つ目のシステムは「全力オート」で、毎ターン現在のBPで使用可能な技や術の中でもっとも消費BPが多いものを使用します。
ロマサガRSでは技・術を戦闘中に使用すると「技・術Rank」が上昇することがあるため、より育成に向いたオート機能となっています。
しかし、技・術を使用する際の優先順位は消費BP以外にもさまざまな要素があり、直接ダメージを伴わない補助の技術は使用されないなどといった複雑なルールとなっているので、パーティ構成には注意する必要があります。
ロマサガRSの育成
ロマサガRSには、ステータス、スタイル、マスターレベル、装備、技・術などのさまざまな育成要素が存在します。
ステータス
キャラクターのステータスは、初期値が固定であるLP・BPや戦闘後に上昇する腕力、体力、器用さ、素早さ、知力、精神、愛、魅力で構成されています。
また、特定のアイテムを使用すると各ステータスの上限を開放できる裏能力値も存在します。
裏能力値を開放すると、ステータスとは別に育成できる「裏腕力」、「裏知力」などの項目が追加され、通常のステータスと同様に戦闘後に上昇していきます。
裏能力値は通常のステータスとは異なり、スタイルごとのステータス補正の後で加算されます。
スタイル
キャラクターのステータスは全スタイルで共有される点は前述したとおりですが、育成可能な上限値はスタイルごとに異なります。
また、スタイルにはステータスの補正値も設定されており、レベルを上げることで補正値を伸ばすことができます。
アビリティもレベルによって解放されていく他、スタイルレベルが一定に達することでマスターレベルという数値が上昇し、スキルとオーバードライブ時のダメージが強化されます。
さらに、スタイルピースというアイテムを使用することで、スタイルの限界突破を実行し、レベルの上限解放を行うこともできます。
技・術とアビリティ
技・術は各スタイルに3つずつ設定されており、技は戦闘中に攻撃する際に閃き、術は戦闘後に学習する形で入手します。
戦闘中に使用すると技・術のRankが上昇し、命中率・威力・状態異常成功率などが上昇する場合があります。
また、技・術Rankを消費することで技・術の威力が上昇する「練達」という要素も存在します。
技・術もスタイルと同様に覚醒を行うことができ、覚醒を行った際には消費BPが減少します。
覚醒可能な回数は技・術によって異なります。
なお、技・術の覚醒により前述の「全力オート」で優先順位がズレるという問題がありましたが、パーティ編成ごとにオートバトルでの消費BPを初期値から覚醒段階までの任意の値に設定できる「BP管理」の機能が追加されたことにより解決しています。
装備
武器・主防具・副防具の育成要素はレベルを上昇させる「装備品強化」と基礎性能を上げる「装備品進化」が存在しており、いずれも必要な素材を消費することで行えます。
レベルは最大5で、レベルが最大になると進化可能になります。
進化させるとレベルが1に戻り、再びレベルの上昇が可能になります。
なお、進化できる回数は装備品のレアリティごとに異なっており、SS装備品が4回、S装備品が3回、A装備品が2回となっています。
また、武器・主防具・副防具にはさまざまなアビリティを付与できるアイテム「聖石」を1つ装備することもできます。
ロマサガRSの攻略方法は?
ロマサガRSは、「バトル全滅篇」という衝撃的なタイトルのTV-CMが放送され、CM内でも「難しいからおもしろい!」というナレーションが入るなど、難しさのアピールも行われています。
本項では、そんなロマサガRSをプレイしていくためのコツを紹介します。
無料ガチャを毎日引こう
前述したとおり、ロマサガRSでは1日1回限定でプラチナガチャを無料で引くことができます。
たかが1回とはいえ毎日続ければそれなりのもので、SSRが1つ以上当たる確率は、1週間で約30%、1月で約78%、2月もすれば約95%となかなかの期待値になります。
また、同じキャラクター(スタイル)が当選した場合でも、スタイルのレベル上限突破や、未所持のキャラ(スタイル)を獲得できるスタイル召喚に使うピースを獲得できます。
ストーリーを進めて育成要素を解放しよう
ストーリークエストを進めることで、訓練や遠征をはじめとした育成施設が解放されていきます。
遠征は、キャラクター5人を1つの場所に向かわせることで一定時間経過後に能力値とアイテムを入手できる施設です。
遠征即時帰還チケットを使用すれば即時に終了させられるので、パーティの戦闘力増強や新しく手に入ったキャラクターの初期育成で活躍します。
訓練では、選択したキャラクターのピースを一定時間後に入手できます。
レアリティが高いほど訓練に必要な時間が長くなりますが、訓練はどのレアリティのキャラクターでも行えるので、SSランクキャラクターのピースを集めて限界突破することも可能です。
なお、遠征や訓練に参加させたキャラクターもクエストには問題なく参加できるので、解放され積極的に活用していきましょう。
陣形を使いこなそう
ロマサガRSには、ロマサガシリーズおなじみの陣形システムが実装されており、インペリアルクロスや鳳天舞の陣といった代表的な陣形でクエストに臨むことができます。
陣形はメインおよびデイリークエストのクリア報酬や陣形メダル交換などで入手可能です。
陣形の種類はもちろん、配置する位置によってキャラクターのステータスに様々な補正がかかります。
難易度の高いクエストだけでなく、クエストを高速で周回したり、パーティの長所をさらに伸ばすものも存在しているので、積極的に収集しておきましょう。
デイリー要素をこなそう
ピースや装備強化素材を購入可能なデイリーショップ、スタイル強化EXPやオーラム(鍛冶屋やショップで仕様する通貨)を多く獲得可能なデイリークエスト、合計60ジュエルを獲得できる毎日のミッションは忘れずにチェックしましょう。
特に、毎日のミッションは毎週のミッションと合わせてクリアすることで合計920ジュエル入手でき、約1カ月で10連ガチャに挑戦できる計算となります。
共同開発に必要なのはリスペクトと魂
さて昨今、既存IPを使ったスマートフォンアプリへのローカライズ開発は手を変え品を変え玉石混淆の様相を呈しています。
とても興味深いのは「スマホに最適化するにはどうしたら良いか」という設計アプローチではなく、「まずサガとは」という原典への限りないリスペクトのある探求が先にあったということです。
そしてタイトルが持っている作品の魂を明確化し、開発陣で共有することでブランドを守ったモノづくりが出来、新規ユーザにも既存ファンにも受け入れられる製品作りができたことでしょう。
効率化やセオリー通りの開発では行き着けないレイヤーがあるようです。
かつてのタイトルが売れた理由から「そのタイトルにファンが求めていること」や「あるべき姿」に真摯に向き合う事の重要性を考えさせられます。
紙一重の醍醐味であるオールスター
記念碑的な作品を作る際、過去の人気キャラクターを総登場させる、という手段が用いられます。
シリーズの歴史自体をコンテンツ力に変えてしまう、反則的で強烈なインパクトを持っています。
しかし、取り扱いを誤るとこれもまた存在意義に直結する、深刻なダメージになってしまう為、様々なタイトルでも慎重に取り扱われています。
まとめ
ロマサガRSには既存ゲームIPを使った新作で成功する為に一番大切な事のヒントが溢れていました。
全ての開発のベースに原典へのリスペクトがあり、タイトルが持っている次世代に通ずる魂の具現化があり、その先にデバイスへの最適化がありました。
こういったただの過去作への迎合やスマホアプリへの安直な最適化ではなく、常にその時代で求められる「このタイトルの存在意義とは何か」を開発陣が真摯に考えて開発するスタンスが求められると言えそうです。
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ライター名:ビットリズム
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