『創世のエル』が試みる現代的なドラマをレトロゲームに組み込む手法


クラシックなRPGはいつの時代でも多くのプレイヤーから愛されるジャンルですが、『創世のエル』はそんな古典的なRPGの殻を破ろうとする、前衛的な作品に仕上がっています。

 

過去の名作RPGをオマージュした『創世のエル』

『創世のエル ~英雄の夢の終わりに~』は、スマホ向けに発表された新作RPGですが、どこか懐かしい雰囲気の漂う作品です。

App Store:http://urx3.nu/xewq

 

ビジュアルや世界観は「ドラクエ」や「女神転生」をイメージ

この懐かしさの正体として、一番に目に止まるのは、やはりこのゲームが見下ろし型のドットRPGの方式を採用している点でしょう。

 

「ドラゴンクエスト」シリーズでは、「DQ7」のように、スーパーファミコンやプレイステーション1くらいの時代からこの角度でのプレイングが実現しています。

 

完全な2Dドットではなく、斜めくらいの見下ろしでプレイできることにより、3Dまではいかないものの、三次元的な立体感を感じることができるようになっています。

 

『創世のエル』に関してはグラフィックこそ2Dドットですが、斜め上からの視点により、立体的な世界が得られる工夫を採用しています。

2000年前後にRPGをプレイしていた人にとっては、親しみやすいシステムといえるのではないでしょうか。

 

また、シナリオには「女神転生」シリーズの同人的な要素も込められており、本編では未使用だったとされるシナリオを拝借しています。

そのためシリーズプレイ済みのプレイヤーにとっては、満足度の高い仕上がりを味わうことができます*1。

ビジュアルからシナリオまで、RPGが初めてというよりも、むしろすでに何度も親しんでいる人に向けて作られたゲームと言えるでしょう。

 

プレイングも典型的なRPG

また、今作はそのゲームシステムについても馴染み深い方式が採用されています。

RPGの醍醐味である戦闘については、昔ながらのターン制バトルが展開され、新しいRPGになかなか馴染めないというプレイヤーにとって、嬉しいシステムであるといえるでしょう。

 

ターン制バトルは飽きられつつあるとも言われていますが、一方で根強い人気を誇る、完成されたゲームシステムであるとも言えます。

多くの新しいゲームが新方式の採用に焦点を合わせている中、ターン制バトルの安定感は見逃せないものがあるのです。

 

使い古されたシステムの流用と言われることもありますが、『創世のエル』はそれだけでは終わらない魅力も持ち合わせています。そこで注目したいのが、今作で展開されるドラマの数々です。

 

重層的に展開される『創世のエル』のドラマ

ゲームシステムそのものはクラシックな今作ですが、注目すべきはそのストーリー展開にあります。

 

表裏で同時進行するストーリー

今作で主に進行していくのは、魔王が人間に宣戦布告し、勇者がその野望を食い止めるというもの。

いわゆる典型的なRPGのシナリオとも言えますが、実はこのストーリーと同時進行で、世界は別のシナリオも進めていくことになります。

 

実はこの世界で展開される人間の世界は、まるで現実世界のように複雑な情勢を抱えています。

魔王討伐後の世界において、誰が主権を握っていくのかということもテーマなのです。

勇者が魔王を討伐したからといって、必ずしも世界が平和になるとは限りません。

むしろ、人類共通の敵が消滅したことによって、人類の団結力や社会の強靭さは失われていってしまう難しさをはらんでいるのです。

 

勇者は対魔王という上ではヒーローになれるのかもしれませんが、実社会をどれだけ救えるのかについては疑問が残るという、とても難しい立場に立たされてしまうのです。

 

幾度となく持ち出される現代的なテーマ

また、ゲーム中では現代の日本やその周辺国が抱える問題も、風刺的に何度も持ち出されます。

 

原発事故によって廃墟と化した町の写真や、領土問題、レイシズムの話題など、ビジュアルこそファンタジーではあるものの、取り扱われるテーマには生々しさが残ります。

 

多くの問題を人類は抱えていることをまざまざと見せつけられ、その上で魔王討伐を敢行しなければならない勇者という存在。

その上でプレイヤーは多くの選択を強いられることそのものが、このゲームの醍醐味となっているのです。

 

『創世のエル』がレトロと現代の交錯に成功している理由

重層的で、なおかつ現実世界で幾度となく見かけた思い社会的なテーマが、このようにうまく作品内に収まっているのには、どのような仕掛けが考えられるのでしょうか。

 

プレイヤーに特定の思想が強制されていない

プレイヤーは多くのリアリティ溢れる社会問題や葛藤にさらされることになりますが、特定の思想の強制が特段行われない点は、RPGらしいシステムと言えます。

 

特定の思想を強要するシナリオになってしまうと、『創世のエル』は途端にプロパガンダ的な意味合いを持ち始め、プレイヤー層を極端に絞り込んでしまうことになります。

 

そこで、ゲーム内のプレイヤーには多くのテーマに触れるきっかけだけを与え、それを知ることができる、というレベルに留めます。

そのことが、多くのプレイヤーにしっかりとゲームを楽しんでもらえる仕掛けになっているのです。

 

選択肢の幅広さは、ゲームを煩雑にしてしまうこともありますが、そもそもこのゲームの土台にあるのが「典型的なRPG」というシンプルなテーマです。

 

ベースにあるテーマが単純だからこそ、その上に展開されるシナリオは多少複雑になっても、プレイヤーを混乱させることはありません。

むしろ「思っていた以上に重層だった」という満足感を与えることができます。

 

描かれるドラマの豊かさ

社会的なテーマが多いだけでなく、今作では登場人物が豊かで、ドラマティックに演出されている点も魅力です。

 

単に取り上げるテーマが豊かなだけでは、やはりプレイヤーに中だるみの様な感覚を覚えさせてしまうこともあるでしょう。

しかし『創世のエル』はRPGらしく、しっかりと人物の作り込みが行われています。

豊かなドラマが展開されるからこそ、プレイヤーは一つ一つの選択肢に悩み、丁寧に答え、現実の問題について考えるきっかけを得られるのです。

 

おわりに

王道のゲームは、王道なだけでは誰にも評価をしてもらうことはできません。

個性的なシナリオと、豊かなドラマがあって初めて多くの人にプレイしてもらい、話題を集めることができます。

 

『創世のエル』は、そのことをわかりやすく体現してくれている作品であると言えるでしょう。

 

 

参考:

*1 ゲームキャスト「『創世のエル ~英雄の夢の終わりに~』レビュー – 勇者よ、お前はこの腐りきった世界を救えるか!世界を救う意味を問う、王道RPGの先を描く1作」

http://www.gamecast-blog.com/archives/65891532.html

 

ライター名:Satoru Yoshimura

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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