一度で二度美味しいゲーム『ピクセルスライム3』のクリエイティブ
昨今のスマホゲームには、まるでスマホで遊んでいるとは思えないほどのシネマティックな作品も増えてきています。
しかし、そのようなトレンドを意に介さないどころか、まるで逆行するような作品も数多く存在します。
目次
二本のゲームを同時に遊べる『ピクセルスライム3』
『ピクセルスライム3』はそのような作品の一つで、大胆にも1つのアプリで2つのゲームを遊べるよう作られました。
縦画面ではパズルゲーム
スマートフォン専用ゲームとなっている今作ですが、2つのゲームはそれぞれ縦画面と横画面に応じて、異なる作品が用意されています。
スマホを縦向きにして使うと遊べるのは、2Dスクロール型のパズルゲームです。
プレイヤーはタワー状に構成されたステージを一段づつ進み、ブロックを上に持ち上げながら色を揃えて消滅させることができます。
カラフルに用意されたブロックをうまく除去しつつ、少しでも高い場所を目指し、なおかつ効率的にブロックを消滅させていくことが目的です。
ワンタップ操作で複雑なアクションなどは発生しないため、片手でも遊べるような仕様が採用されています。
スピード感のある演出などはないものの、比較的短時間でサクサク遊べるゲームに仕上がっているため、ちょっとした時間に遊ぶにはちょうど良い作品となっています。
しっかりとやりこむには物足りないですが、気が向いた時に遊ぶのに最適の一本です。
横画面ではアクションゲームに
縦スクロールのパズルだけでは少し味気がないところですが、横画面のアクションゲームが付属するということであれば話は少し異なります。
『ピクセルスライム3』を横画面で遊ぶ場合は、RPGのテイストとアクションを融合させた、バトルアクションを楽しむことができます。
プレイヤーは草原に現れる敵を、持ち前の剣とため斬りによってバッサバッサとなぎ倒していくことになります。
自身のHPが削られきってしまう前に、相手を倒すことができればステージクリアという仕組みです。
いわゆるターン制のバトルが採用されていますが、攻撃はコマンドではなく、タイミングよくタップ入力を行うことで可能です。
ゲージが満タンに近い時に剣を振り下ろすことができれば、大ダメージを与えることができます。
移動は2Dの横スクロールで、ボタンは左右と攻撃ボタンのみが用意されているため、やはりパズルゲームと同様のシンプル操作が魅力となっています。
スマホを横向きにして、両手での操作が必要となりますが、単純明快なゲームシステムと操作で混乱も少なく、遊びやすく作られている点が魅力と言えるでしょう。
『ピクセルスライム3』が実現したクリエイティブ
ゲームそのものにおいては大きな革新こそなかったものの、『ピクセルスライム3』は時代に沿ったユーザーニーズに応えているゲームである様子もうかがえます。
スマホの特性を生かしたゲームシステム
最近ではスマホゲーム市場が、家庭用ゲームやPCゲームの市場を大きく凌駕し、最も巨大な取引が行われている現場へとシフトしつつあります。
そのため、スマホゲームストアにも家庭用やPC向けに作られたゲームの移植作品が数多く並び、魅力的なラインナップを形成しています。
しかし、これらのゲームはあくまで通常のモニターやテレビを意図して作られた作品であるため、スマホでのプレイに最適化された作品であるとは限りません。
それどころか、無理にスマホへの移植を進めてしまったことで、小さな画面で複雑な操作が必要になり、ゲームを満足に楽しむことができないといった問題も起こりうるのです。
一方、『ピクセルスライム3』はあらかじめスマホで遊ぶことを想定した作品であるということができます。
画面が縦向きか、横向きかで遊べるゲームが異なるというのは、スマホでなければありえない発想であると言えるでしょう。
「二者択一」の排除
また、この作品はパズルゲームとアクションのどちらかを選ばせるのではなく、どちらも遊べてしまうように作られているのが特徴です。
ゲームは安定したセールスを記録しようとすると、ゲームジャンルの方向性を定め、特定のジャンル特化でそのゲームのキャラクターを固定し、世に売り出していく必要があります。
しかし今作においては、パズルもアクションも合わせて遊べるよう設計されています。
パズルとアクションを融合したゲームならいざ知らず、シンプルなパズルとアクションの両方をプレイヤーに提供し、好きな方を遊んでもらう方針を採用しているのです。
1つで二度美味しいお得感は、安価なスマホゲー市場においては重要な要素です。
軽量化を行い容量不足知らずに
そして、『ピクセルスライム3』の最大の特徴は、ゲームの容量がわずか10MBに抑えられているという点です。*1
多くのスマホゲームは、通常数百MBの容量を必要とすることは珍しくありませんし、大作となると数GBに至ることもあります。
ゲームが面白いのはありがたいことですが、スマホはゲームのためだけのデバイスではないため、容量不足に陥ることは避けたいものです。
しかし今作のように、わずか10MBとなるとそんな心配は無用です。
毎日遊ぶわけではないが、とりあえずスマホに入れておいて容量を食わないということで、長い間ユーザーに遊んでもらえる可能性も高まっていると考えられます。
また、旧式でスペックに自身のない端末でも、しっかり遊ぶことが出来るのも、嬉しい特徴といえます。
スマホゲームに求められる開発者の工夫
様々なゲームがスマホを通じて配信される中、多くのプレイヤーに喜ばれるゲームのあり方は、どのような要素に見られるのでしょうか。
お得に遊べるゲームのニーズ
1つは、お得に遊べる作品の重要性です。『ピクセルスライム3』のように、わずか250円で2つのゲームを遊べるのは、プレイヤーにお得感を与えてくれます。
仮に一方のゲームがつまらないと感じても、もう片方は面白いかもしれないという、購入やプレイのモチベーションをうまく作ることができているためです。
スマホゲームの世界は必ずしもリッチな作品である必要はなく、チープながらも長く楽しく遊べるゲームの需要が存在しています。
スマホへの負担を最小限に
また、10MBという低容量の実現は、やはり低価格同様、コスパの良さを感じさせることとなります。
スマホはいつの間にか容量不足となってしまうことが多く、そのせいで新しいアプリを試す機会が損なわれているケースも見られます。
一方今作のような10MBにも満たないゲームとなると、どれだけ容量がいっぱいでも、あっさりダウンロードできることは多いものです。
ゲームの購入前に容量不足でDLされないという事態を回避しやすいため、興味を持ってくれた人にはしっかりと遊んでもらいやすいのが特徴です。
おわりに
スマホゲームは家庭用ゲームとは違い、低価格や低容量など、実用的な側面がセールスポイントとして注目されるケースが多いジャンルです。
こういったハードウェアの事情ならではのニーズを汲み取ることも、人気スマホゲームを発表していくためには必要なプロセスであるということが出来るでしょう。
併せて読みたい記事
→「場」を提供するだけで良い。製作者に求められるクリエイティブの正体
→クリエイティブなオンラインゲーム『五七五オンライン』から創造性のあり方を考える
→ポケモンマスターズの事例で学ぶクリエイティブのグロースハック
出典:
*1 ゲームキャスト「縦と横で内容が変わるスマホゲーム『ピクセルスライム3』、7月8日App Storeに登場。約50%オフで買える予約受付実施中」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65965427.html
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ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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『ピクセルスライム3』公式サイト
https://softfunk.com/hulabreaks/pixelslime3/index.html
『ピクセルスライム3』App Store
https://apps.apple.com/app/id1516730030
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