『Marble Knights』に見る、面白いゲームに欠かせない「ひねり」の作り方
名作と呼ばれるゲームはいつも、これまでのゲームとは少し異なる工夫が施されています。
少しの変化とはいえ、従来のゲーム体験とは異なる遊びを提供することのインパクトは、非常に大きな影響を与えます。
『Marble Knights』もまた、そんな一工夫の面白さを再認識させてくれる、良いアクションゲームに仕上がっているようです。
目次
アクションゲーム『Marble Knights』の遊び方
『Marble Knights』は、『シャンティ』シリーズや『熱血硬派くにおくん外伝 River City Girls』などを開発したゲームソフト開発会社・WayForward Technologiesが手掛けたApple Arcade向けアクションゲームです。
プレイヤーは、剣と魔法を駆使してラウンディンガム王国の平和を悪のテラボール卿から取り戻すこととなります。
本作では基本となるソロプレイモードの他、最大4人で楽しめるマルチプレイモードも搭載されており、高難度のステージを4人で協力して攻略することができます。
また、本作の冒頭で流れるアニメーションは、TVアニメ『キルラキル』や『SSSS.GRIDMAN』などを手掛けたアニメ制作会社・トリガーがプロデュースしています。
基本は典型的なアクションゲーム
舞台となるのは、剣と魔法がありふれたファンタジーの世界。
世界征服を企むテロボール卿の企みを阻止すべく、プレイヤーである騎士が立ち上がるのがあらすじです。
ゲームシステムとしては、アクションRPGをよく遊ぶ人にとってはもはやお馴染みの見下ろし型をベースとしています。
スティック操作でキャラクターを動かし、画面タッチで攻撃、ホールド操作でチャージ攻撃を行うことができます。
インターフェースとしても非常にベーシックな設計で、HP表示など重要な情報は見やすくまとめられています。
普段からアクションRPGに馴染みがあるのであれば、その操作性に困るということはなさそうです。
足が「ビー玉」になっているユニーク性
システムは基本的、遊び方としても特徴的な点は見当たりませんが、このゲームを面白くしているのが、足が「ビー玉」になっているという点です。
登場キャラクターたちは上半身こそ普通の形状ですが、下半身は完全な球体となっており、これを使って移動します。
そのため、実際に操作する際にはまるでビー玉を転がしているような感覚に仕上がっており、それを活用したプレイスタイル、あるいは遊び方を堪能することができるようになっています。
これまで、ビー玉を転がすゲームやアクションRPGを楽しめるゲームは別個に存在してきたものの、これらを丸ごと楽しめる作品というものは見られませんでした。
『Marble Knights』では、その名の通りビー玉を使って移動する騎士たちを操作し、世界平和の戦いを繰り広げなければいけません。
『Marble Knights』はどこに工夫があるのか
今作は一見すると変哲のないアクションゲームですが、その真価は実際に遊んでみることで判明します。
これまでとは違うプレイ感
足が通常の二足歩行からビー玉になることによる操作性の変化は、想像以上に大きいものです。
例えば通常の二足歩行の場合、プレイヤーはスティック操作によって実際の人間が歩いたり走ったりするようにコントロールすることができます。
しかし球体の足を有するキャラクターを操作するとなると、スティック操作こそ正常に行えるものの、移動後には慣性が発生し、勝手に動いてしまうという挙動が生まれます。
ある程度移動のコントロールはできるものの、球体の慣性が生まれるために、それを計算しながら動かなければなりません。
通常の二足歩行の感覚で遊ぶと痛い目を見てしまうこともあり、アンバランスな移動のスリルを味わいつつ、アクションの世界に身を投じることができます。
また、傾き操作でキャラクターをビー玉転がしのように移動させることができるのも、『Marble Knights』ならではのユニークな遊び方と言えるでしょう。
足が球体になることがもたらすスリル
二足歩行のようにうまく移動できない不安定さは、ゲームに新しい刺激を与えてくれます。
アクションRPGは数々の名作を生み出してきたポピュラーなジャンルではあるものの、今や飽和状態へと突入しつつあります。
遊び方に家庭用ゲーム機ほどの多彩さをもたらすことができないスマホゲーとなると、操作も移動と攻撃が精一杯となり、多様なアクションを盛り込むことは難しいものです。
そこで、『Marble Knights』はあえてプレイヤーキャラクターに球体という不安定な要素をもたらすことで、ゲームにビー玉転がしのような新しいスリルをもたらしました。
これはプレイヤーを不自由にすることでエンタメ性をもたらす手法ですが、新しいアクションのあり方の可能性を感じさせる要素でもあります。
例えばキャラに球体の要素を取り入れることで、慣性の力がしっかりと働くようになり、一方向に傾けることで通常ではありえないスピードで移動することを実現しました。
二足歩行では実現し得なかった、新しい爽快感をこのゲームでは生み出すことに成功していると言えるでしょう。
面白いゲームに欠かせない「ひねり」の条件
見慣れたゲームを少しの工夫で大きくその遊び方に刺激を与えた『Marble Knights』ですが、そんな一工夫をうまく作るためのポイントはどこにあるのでしょうか。
見慣れた景色への一工夫
ベースとしては遊んだことのあるゲームシステムや世界観でも、どこか「あれっ」と思うような要素を取り入れることで、オリジナリティあるゲームに仕上がります。
これまでにない面白いゲームを作りたいと言っても、この世には全くのゼロから生まれたゲームというものはありません。
名作と呼ばれた数々の作品も、もとを辿ればインスパイアを受けたビデオゲームや遊びがあり、クリエイターの工夫と想像力で新しい作品へ生まれ変わったものです。
まずは自分が面白いと思うゲーム、あるいはアレンジの余地があると思うゲームを一つ定め、上手く自分なりに一工夫加えられるところがないかを探すことが重要です。
理解不可能にならない程度の仕掛け
自分なりのアレンジを加えることは、名作を生み出すために重要なプロセスです。
しかし、自分のオリジナリティを追求するあまり、自分にもプレイヤーにも理解しがたい複雑な機能を導入することは、非常にリスキーです。
そもそも面白いゲームというのは、その要素の一つに誰でも遊べる分かりやすさという部分が存在しています。
複雑なプレイが必要になるのはゲーム終盤だけで、初めから複雑なようではプレイヤーの心を掴むことができず、難解なゲームとして評価されてしまいます。
一方の『Marble Knights』ですが、このゲームがアクションRPG加えた要素は昔懐かしいビー玉転がしです。
ビー玉転がしのうまく操作できないが、操れるようになると楽しいエンタメ性と、誰でも親しみやすい遊び方の要素をうまく取り入れることで、新しいジャンルの開拓に成功しました。
上手なひと工夫やアレンジというのは、このように一言で説明できて、誰でも遊べることが求められていることを念頭に置きましょう。
おわりに
面白いゲームが持つ「ひねり」というものは、実は機能そのものは非常にシンプルであることがほとんどです。
これまで見かけなかったが、実は実装してみると面白い仕掛けというものは、『Marble Knights』のアプローチを踏まえると、まだまだ世の中には存在しています。
上手なアレンジを実現するため、色々と試行錯誤してみることも重要であると言える事例でもあります。
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ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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『Marble Knights』Apple Arcade:https://apps.apple.com/jp/app/marble-knights/id1520992000
『Marble Knights』開発公式Twitter:https://twitter.com/WayForward
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