ゲームデザイナー必見。『Starman:Tale of Light』のユニークな質感の正体とは

 

最新のゲームハードがもたらす迫力あるグラフィックは、プレイヤーの没入感に大きく影響します。
しかしゲームに没入感をもたらすための表現には、必ずしもハイエンドなグラフィックが必要であるとは限らないのも、ゲームの面白いところです。
nada studioが配信するiOS/Android/PC(Steam)用ソフト『Starman:Tale of Light』は、グラフィックのあり方を考える上で示唆に富む作品に仕上がっています。

 

 

 

パズルゲームの『Starman:Tale of Light』

浮遊感に満ちた3Dパズルアクション

舞台は地球のように見えますが、どこか重力が地球よりも軽く、ふわふわと主人公が移動する点が特徴です。

 

主人公のスターマンは宇宙服のような装備を常に身につけており、行く手を阻む障害物を取り除きながら、前へ前へと前進していきます。
操作についてはタップした所に主人公が進んだり、オブジェクトを操作したりする事ができるクリック方式が採用されています。
単に移動するだけではなく、ものを持ったり、動かしたり、重ねたりする事ができるため、シンプルな操作とは裏腹に、こなすことのできるアクションは多彩です。

 

 

 

何のために建てられた建物なのかわからない建築物や、そもそもここがどこなのかもわからない世界を、小さな謎を解き明かしながら進んでいきましょう。

スローペースで進むゲーム展開も魅力

3Dのアクションアドベンチャーと聞けば、目まぐるしく動き回る主人公や、ドラマティックな展開が魅力の作品を思い起こすかもしれません。
しかし『Starman:Tale of Light』において展開されるのは、非常にゆっくりと進む穏やかなゲームプレイングが特徴です。

 

そもそも本作のポイントはパズルゲームを楽しむという所にもあるため、熟考を重ねながら進めていく必要があります。
まして、半無重力のような空間で展開されるということもあり、主人公の動きは緩慢で、あまり高速で動くシーンはなければ、その必要もありません。
ゆっくりと時が流れているかのような世界を堪能しながら、マイペースにパズルを解いていく事ができる点に、このゲームの魅力は詰まっていると言えるでしょう。

 

『Starman:Tale of Light』で強調される立体的な質感の追求

今作ではとても現実とは思えない、夢の中のような世界が広がっていますが、どこか現実的な体験を想起させるような仕掛けが含まれているのも事実です。

 

非日常なモノクローム表現とリアルな質感の組み合わせ

今作は、ほんのりと光っているスターマンが主人公ですが、光の加減や陰影以外の色彩表現はほとんど存在していません。
白黒のモノクロームな世界で、じんわり輝きを放ちながら闊歩するスターマンの様子は、さながら白黒テレビでアニメを見ているような感覚を覚えます。
しかし、そんなモノクロ世界でも、リアリティある確かな質感を持つオブジェクトは多く出現します。
スターマンが歩みを進める世界では、様々な建物の中や外を通ることになるのですが、これらの建物からは非常にモダンな空気感が流れています。

 

 

 

鉄骨の表現やコンクリート壁の描写など、モノクロでもしっかりそれとわかるほどに特徴を抑えているのですが、そのヒントはこのゲームのクリエイターにあります。
このゲームの製作者はスペインで建築家をつとめる人物で、建物の描写や立体的な表現に関してはプロフェッショナルの技が光っていたのです。
ファンタジーの世界観と、妙に見覚えのある現実的な質感の組み合わせが、このゲームを魅力的な作品へと昇華しているのです。

 

『Starman:Tale of Light』が持つ現実感の正体

非現実の世界観を構築するとなると、ついつい多くのゲームはファンタジックな仕上がりに落ち着いてしまう傾向にありますが、『Starman:Tale of Light』は違います。

 

今作ではモダン建築の要素も盛んに取り込み、まるで地球の裏側の世界に来たような錯覚を覚えさせてくれますが、妙な現実感は建築描写だけではありません。
例えば、薄暗く発光する主人公やオブジェクトの描写、そしてそれに呼応するかのように差し込まれる環境音が、現実的な体験を錯覚させてくれます*1。
人は視覚や聴覚など、一つの感覚情報だけで物事を判断しているわけではありません。総合的にその体験がどういうものであるかを判断し、心を揺さぶられているのです。

 

 

 

今作は、五感に訴える描写の追求に力を入れているところも、見所の一つとなっています。
ファンタジーの世界のはずが、どこか体験したことのあるような錯覚を覚えさせ、非現実的な体験を与えることに成功しています。
ファンタジーだからといって、現実とは乖離させすぎず、モノクロームな世界観で大きなリアリティを感じさせない、付かず離れずの距離感を保っているのです。

 

グラフィックに依存しない、リアルなゲームの作り方

『Starman:Tale of Light』が伝えてくれるのは、ゲームにおけるリアルさは、人間の本質的な部分に訴えられるかどうかで決まるという教訓です。

 

五感に訴える表現を追求する

『Starman:Tale of Light』において見所となっているのが、上述の通り五感に訴える表現です。
水の音や光の反射の様子など、一つ一つの描写は最新のゲームエンジンで表現されるようなハイエンドなものでなくとも、それらがうまく組み合わさることで、リアリティある体験を届ける事が出来ます。
どれだけ現実とは離れた世界を演出していても、五感に訴える要素がリアリティを伴えば、まるで本当にその世界にやってきたかのような擬似体験を得られるのです。

 

 

物事の因果関係を明らかにしていく

このような五感に刺激を与える描写をうまく表現するためには、現実世界においても、あらゆる事象に対する繊細な視点が求められます。
繊細な視点とは、言い換えれば自然の法則に基づく因果関係を、しっかりと理解する事です。

 

例えば、手に握っているりんごを落とせば、りんごは垂直に下へ落下し、音を立てて地面と衝突します。
その時の落下スピードや、落下時の着地音、着地した事でリンゴや地面に伝わったダメージなど、そこには様々な結果が現れます。
こういった事象に一つずつ目を向け、人間の感性に訴える表現をピックアップできるようになれば、自ずとゲームで必要な描写を導き出す事ができるようになるはずです。
現実での体験を糧に、ゲームへと落とし込んでいきましょう。

 

おわりに

『Starman:Tale of Light』では、夢なのか現実なのか、区別がつかないような不思議体験を得る事が出来ます。
この不思議体験を支えているのは、非現実な描写と、リアリティある描写の絶妙なバランスです。
ハイエンドなグラフィックがなくとも、五感に訴える表現の追求によって、リアリティある描写は十分に描く事ができるでしょう。

 

ゲームデザイナーを志す方は以下の記事で仕事内容について解説しております。併せてご覧ください。

 

ゲーム業界の「2Dデ・ザイナー」とは?仕事内容や必要な技術を説明
ゲーム業界の「3Dデザイナー」とは?仕事内容や必要な技術を説明
ゲーム業界の「キャラクターデザイナー」とは?仕事内容や必要な技術を説明

 

出典
*1:ゲームキャスト「非日常の世界への案内。星の人を導き、スペイン建築家の手による奇妙な通路を歩く『Starman:Tale of Light』レビュー」

 

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ライター名:Satoru Yoshimura

 

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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Steam版『Starman:Tale of Light』ストアページ
iOS版『Starman:Tale of Light』ストアページ
Android版『Starman:Tale of Light』ストアページ
nada studio公式Twitter

 

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