ゲーム体験を丸ごと提供する『5つのネイト』がもたらした斬新な設計とは
ビデオゲームはいつの時代もクリエイティブなアイデアが詰まった媒体でもありますが、『5つのネイト』は、新しくも懐かしい、新感覚のゲーム体験をプレイヤーに与えてくれています。
目次
『5つのネイト』の遊び方
今作がベースとするのは、クラシックなRPGスタイルのゲームです。
しかし、昔ながらのロールプレイを楽しめるだけでなく、ゲームの範疇からは少しはみ出た遊び方を実現している点も、今作の面白いところです。
基本無料のRPG体験
『5つのネイト』はスマホ向けに製作された、シングルプレイ特化のRPGです。
呪いの力で5つの人格が入れ替わってしまう少女ネイトと、兄であるアシュレーの物語を楽しめる作品で、笑いあり、感動ありのハートフルな作品に仕上がっています。
特別ユニークなシステムを導入しているわけではなく、基本的にはクラシックなRPG体験を得られます。
ゲーム内の特徴的な仕様としては、バトル中にルーレットが回転し、確率で主人公であるネイトの性格が入れ替わる点が挙げられます。
性格の変化に応じてネイトの能力や行動も変わってくるため、時と場合に応じた臨機応変なプレイが求められるところは、ゲームに没入感を与える要素として機能しています。
このような一工夫も用意されていながら、ゲーム本編は無料で遊べるのも特徴です。
基本無料の作品には物足りなさを覚えることもありますが、今作では十分に楽しめるのは嬉しいところです。
課金で楽しめる攻略本付き
それでは、今作のクリエイターはどんなところで収益を得ているのかというと、別途課金で入手できる豪華な攻略本です。
今作はゲーム本編こそ無料ですが、有料で入手できるコンテンツとしてデジタルの攻略本が用意されています。
攻略本といえば、書籍などで販売されることが一般的なコンテンツの一種です。
今作ではアプリ形式で攻略本を購入でき、ゲームのクリア方法についての情報だけでなく、ゲームのディテールについての情報も得られるなど、ファン垂涎の内容に仕上がっています。
攻略本というよりも、公式ファンブックとしての位置付けが強く、より『5つのネイト』の世界へ浸れるコンテンツとして活躍してくれます。
『5つのネイト』がもたらした、懐かしくも新しいゲーム体験
ゲームの一部でありながら、一時的にプレイヤーをゲームの外へ連れ出すような今作の設計は、どのような影響をプレイヤーに与えるのでしょうか。
攻略本ありきのゲーム体験の再来
今作が特徴としているのは、攻略本の購入までも「ゲームの一部」として楽しめるシステムを導入している点にあります。
インターネット登場以前、ゲームの攻略情報や裏設定などの情報を知るためには、攻略本やゲーム雑誌の購入は欠かせないものでした。
それらが最も信頼できるソースであり、同時にファン向けのアイテムとしての価値も大きかったためです。
しかしインターネットが普及するにつれ、攻略本をはじめとする紙媒体の希少価値も薄れていきました。
インターネットを使えば無料で攻略情報が手に入るだけでなく、開発者のインタビューや設定資料なども閲覧できるようになり、リアルタイムの情報も入手できるため、攻略本を購入する意味が相対的に低下したためです。
しかし『5つのネイト』では、デジタル媒体とはいえ、あえて攻略本という形式でコンテンツを販売しています。
これは、今作を開発したインディーユニットであるねこどらソフトに17年ほどゲーム業界で活躍していたスタッフが在籍していることも理由として大きいでしょう*1。
昔ながらのゲーム体験を、スマホ時代に蘇らせることで、かえって新鮮な体験を提供してくれています。
実は今作の冒頭には、まるで説明書を読ませるかのようなチュートリアルが差し込まれている点も特徴です。
ゲームを遊ぶ前には説明書を読み、ゲーム本編を遊び、攻略本も読みながらさらにゲームへの理解を深めるという、徹底的に一つのコンテンツを遊び尽くせる仕様となっています。
ゲーム本編に収まりきらないクリエイティブを発揮できる場へ
このように、一つのゲームをしっかりと遊べる設計になっていることは、クリエイターにとっても自身の創造性を十二分に発揮できる環境の構築に役立ちます。
RPGのように、ストーリーやキャラクターの重厚さが重要視されるゲームの場合、ゲームプレイングには現れない部分の作り込みが重要になります。
結果的にはより優れた作品作りには欠かせない工程とはいえ、せっかく本を一冊書けるほどの世界設定を構築したにもかかわらず、その一部しか本編に使われないというのは少し味気ないものです。
ゲームの資料集などが販売されるのは、こういったクリエイターの努力と創造性の結晶を惜しみなく体験するためでもあります。
『5つのネイト』のように、攻略本を自主的に販売してしまうことは、インディーズとはいえ彼らの生み出した世界を存分に体験するのに役立ってくれます。
『5つのネイト』に見る、クリエイティブなゲーム設計のポイント
『5つのネイト』のように、プレイヤーや開発者の盲点をつくようなゲームを制作するためには、どのようなアプローチが求められるのでしょうか。
俯瞰的に「ゲームで遊ぶ」行為を捉えてみる
一つは、ゲームの世界観を作り込むだけでなく、一歩引いた視点からゲームというものを眺めてみることです。
ゲームは楽しいものですが、具体的にゲームのどんなことが楽しいのか、ゲームを媒介に、どんな体験が自分を楽しませているのかを深く考えることで、今作のようなユニークな体験を提供できるようになります。
ゲームプレイの全体像を掴み、アレンジの余地を探してみると良いでしょう。
ゲームを通じて「やりたいこと」を再度検討する
ゲームを通じて、自分はどんなことを表現したいのか、と考えることもクリエイターの役割です。
結局のところ、面白いゲームを作るためには自分が楽しいと思えるゲームづくりを続けなければいけません。
例えゲームと直接関係ないところでも、その体験が共有できるのであれば、そのための仕掛けを積極的に構築していくべきです。
もう一度自分の創造性の原点に立ち戻り、新しい遊びづくりを目指しましょう。
おわりに
ゲーム設計のアプローチは、一歩引いて考えてみると、様々な手法が検討できます。
今作のように、攻略本や説明書を読むといった行為の楽しさも含めたゲーム作りのように、ユニークなアイデアの余地はまだまだ残されています。
自分なりのゲームの楽しみ方を振り返り、新しい価値を提案していきましょう。
併せて読みたい記事
・二つの「気持ちよさ」を融合したゲーム『Mindustry』の設計とは
・箱庭×タワーディフェンスの『箱庭神社』が持つ、いいとこ取りのゲーム設計とは
・自由にシナリオ作りを楽しめるRPG『Legends of Covitoria』の「遊ばせる」設計
*1 ゲームキャスト「攻略本を片手に遊ぶ、懐かしの体験再現RPG『5つのネイト』がiOS/Android向けに配信開始。読んで楽しい攻略本と説明書付属の無料RPG」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65979135.html
『5つのネイト』Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.unity3d.neito&hl=ja&gl=US
『5つのネイト』Twitter:https://twitter.com/nekodoras
ゲーム業界経験者が転職するなら
GAME CREATORSを運営しているリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
ゲーム業界に精通したコンサルタントが、非公開求人を含む3,400件以上の求人の中から、あなたの希望や適正にあった最適な求人をご紹介します。
あなたの転職活動を成功に導くためにサポートいたしますのでお気軽に登録してください!