ゲーム情報のリーク(漏洩)はなぜ起こってしまうのか?した場合の処罰なども説明
このコラムは、ゲーム業界におけるリーク(情報漏洩)について記載します。リークが発生することでどのような悪影響が出るのか、リークはなぜ起こるのかを解説したうえで、リークに対する法的な扱いも紹介します。また、リークを防ぐためのポイントにも触れていきますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
1. リーク(漏洩)とは
この項目では、まずリーク(情報漏洩)について解説します。
「リーク」という言葉自体には「液体などが漏れる」という意味がありますが、ここで言うのは機密情報の漏洩行為です。何らかの「新しさ」を利益の根源とする商売において、公式な発表の前に情報がリークされた場合、利益や信用の観点で大きな損害を受けることが少なくありません。
ハッキングなどの外部からの犯罪行為によって情報を抜き取られリークしてしまうケースもありますが、情報を管理し守秘義務を守るべき内部の人が情報をリークしてしまう場合もあります。
次の項目では、ゲーム会社やゲーム業界内がリークによってどのような悪影響を受けるのかを解説します。
2. ゲーム情報のリークが生み出す悪影響
この項目では、ゲームの情報が公式発表以外でリークされてしまった場合に、業界内で起こり得る悪影響を紹介します。
2-1. ユーザーの期待感の減少
「ゲーム」というジャンルでは、次にどんなキャラクターが登場するのか、ストーリーがどのように展開していくのかがわからない状態で、一歩ずつ進んでいくことに楽しみが含まれているものが多数あります。広報の一環として公式発表される情報は、ユーザーの事前の期待を高めるために戦略的に行われますから、こちらは利益拡大のための手段です。
一方、不当なリークによって情報が明らかにされた場合、ユーザーの期待感が低下してゲームの価値が薄れてしまうこともあります。特にストーリーの重要な要素や、エンディングなどがリークされると、ユーザーの期待が大きく減少して、購入意欲やゲームの存在価値自体を落としてしまう可能性すら考えられるのです。
2-2. ゲーム内外経済の混乱
不用意にリークが行われると、得るべき利益が回収できないということもあります。例えば、イベントやガチャの内容などが事前に漏れてしまうと、それに備える人が増えて、収益を上げる予定に狂いが生じることがあり得ます。
また、オンラインゲームの場合は次に強化される装備や要素を先回りして押さえようとする人が続出し、欲しいときに買えない、相場が釣り上がるなどの不平不満を生み出す原因にもなります。ゲーム内通貨であっても、経済が混乱するとストレスフリーなプレイと程遠くなってしまうため、注意が必要です。
ゲーム開発の多くは複数の会社によって行われていますし、開発以外にも多くの企業の利益がかかっています。そのため、不利益をこうむるのはひとつのゲーム会社にとどまらない場合もあり、ゲーム業界の内外で不利益が拡散していく可能性も考えられます。
2-3. 企業への信頼の低下
情報漏洩が起これば、どのような事情であっても、その管理元は批判を受けざるをえません。情報の内容にもよりますが、利益を左右するようなケースや顧客情報の流出などが起これば、その企業の信頼は大きく低下することでしょう。
場合によっては、企業として多額の賠償金を払わなければならなくなるケースもありますから、金額によっては会社の存続すら危うくなるかもしれません。
2-4. 株価への影響
情報漏洩が株価に影響を与える可能性もあります。株式はその企業への期待値で売買されますから、リーク騒ぎで収益が低迷すると予想されればその会社の株を手放す人が増えるかもしれません。また情報管理能力が低いとみなされれば、会社自体の評価が下がって、やはり株式が売りに出されてしまうこともあり得ます。
3. ゲーム情報のリークはなぜ起こる?
ここからは、ゲーム情報のリークがなぜ起こるのかを、いくつかの側面から考えていきましょう。
3-1. リテラシーよりも自己顕示欲・承認欲求が強まってしまったから
ゲーム業界で働く人は、アルバイトであっても守秘義務を課されることが一般的です。まして正規の従業員であれば、リークという行為が、自分自身が所属する会社に大きなダメージを与える可能性があることも想像できるでしょう。また、犯罪行為として起訴され、懲役刑を受けたり多額の賠償金を課せられたりする可能性もあり、人生に対して大きな痛手を受けることもあり得ます。
それでもなお、内部からのリークが無くならない理由の一つに、自己顕示欲や承認欲求などがあります。例えば「誰もが知っているようなAAAタイトルの開発に関わっている自分を誇示したい」、「ほかに人が知らないことを知っている自分の凄さをアピールしたい」といった場合に、後先を考えずにリークの快感に浸ってしまう人も存在するようです。
3-2. リーク情報がお金に変わるメカニズムが存在するから
場合によっては、「リークすることで金銭的な利益を得られる」という誘惑に負けてしまう可能性もあります。不正なメカニズムはさまざまかつ法に触れているものも存在するので一様に語ることはできませんが、情報を売ることで金銭的利益を得るという可能性は常にあるでしょう。
また、直接の金銭的利益でなくても、その会社の信用を失墜させることで精神的に得をするというケースも考えられます。
3-3. 匿名で発表しても影響力が伴うプラットフォームが増えたから
例えばツイッターなど、匿名性があるSNS等のプラットフォームが増えた影響で、リークの誘惑に負けてしまう人もいるようです。刑事事件になってしまえば発信元は明らかにされるでしょうが、そこまで考えが至らない人が、「バレないだろう」という安易な気持ちと、拡散や承認の快感を求めてリークに至ってしまう例は、実際に存在します。
4. ゲーム情報のリークによる処罰(法的処置)
ゲーム情報をリークした場合は、法的にはどのような処罰を受けるのかをここでまとめておきます。
考えられる可能性として、収益に対する悪影響が出た場合は、不正競争防止法4条という法に沿って、損害賠償請求の対象となる可能性があります。
また、不正競争防止法21条1項に沿って刑事告訴される可能性もあります。この法律に沿って訴えられた場合は、十年以下の懲役、または一千万円以下の罰金、またはその両方が科せられる場合があります。これは従業員であっても退職者であっても対象になりうる法律です。
賠償請求も刑事告訴も、リークさえしなければ恐れるものではありません。もし、わずかにでも「リークの誘惑」が頭をよぎった場合は、これらの処罰を思い出して踏みとどまり、その後も明るい人生を歩んでいくことをおすすめします。
5. ゲーム情報のリークを防ぐためのポイント
ここからは、企業としてゲーム関連の情報を、リークの魔手から守るためのポイントを解説していきます。
5-1. 秘密保持契約の締結を徹底する
まず、アルバイトなどを含む従業員に対して、秘密保持契約を結ぶことが重要です。これによってゲーム開発に関わる以上は守秘義務があり、契約に違反すれば損害買収請求が行われると意識させることができます。
また、社内にてリーガルチェックを徹底することや、法務部門が無ければ作るか、外部に頼るのかを決めておきましょう。すでに法務部門がある場合には、リークが起こったときにどのように対処するかを十分に検討しておくことが重要です。
透明性を持ち、内外に適切な情報開示が行える体制も用意しておきましょう。リークの事実を知ったあとでも、風評被害の拡大や信頼の失墜を恐れて自ら公開しないという誤った判断も起きがちです。しかし、隠ぺいすることは、かえって企業としての信頼を損なう可能性があるので、適切な情報開示を行うことで「リークという悪を許さない」という毅然とした態度を取ることが得策です。
さらに、全従業員にコンプライアンスの概念を定着させることも考える必要があるでしょう。
5-2. 機密情報へのアクセス権を限られた人間にのみ与える
重要な情報については、アクセスできる権限をできるだけ少なくすることがリスク回避につながります。機密情報に触れることができなければ、そもそもリークは起こらないからです。
また、特定の人間しかアクセスできないとわかっていれば、「自分だとバレずにリークできるかも」という不届きな人間にとって「特定されやすいのでやめておこう」という気持ちを持たせることもできます。これは管理側にとっても、仮にリークが起こったときに問題行動をとった人を特定しやすいメリットもあります。
5-3. タイトルリリースまでに情報を提供する必要がある流れからリークの可能性を逆算しておく
多くのゲームは、広報的な意味でリリース前に一定の情報開示を行います。ゲームの性質やリークを行う人間の利害、どの情報にアクセスできる人間かによってリークの可能性はある程度把握できます。そのため、それらの情報を総合してリークの可能性を逆算しておくことも非常に重要です。
6. まとめ
ゲームのリリースや公式発表の前に起こる「リーク」について、それによって起こる悪影響やリークが起こる原因を解説し、さらに対策についてまとめました。
機密情報のリークはゲーム業界にとってプラスな点は無く、さまざまな要素からマイナスになるだけの許されざる行為です。その起こり方はさまざまで、個人の自己顕示欲や証人欲求を満たすものから、金銭的利益を得ようとするものもありますが、いずれにしてもその行為は犯罪です。
対策として、事前に従業員へのコンプライアンス教育などを徹底すること、対策をしているという姿勢を内外に明らかにすることなどが必要です。場合によっては法的措置を取らざるを得ない場面もあるかもしれませんが、必要であれば毅然とした態度を取ることが、さらなるリーク者発生の抑止になります。
いずれにしても、ゲーム業界からリークという憎むべき行いが消えることを望んでいます。
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