FPSにおける「エイムアシスト」とは?論争になる理由や実装時に注意したい点
FPS系のゲームには、最近「エイムアシスト」が実装されているものが複数あります。エイムアシストはハードウェアによってゲームの戦績に差がつきにくいように装備されるのですが、アシスト度が高いと強くなりすぎる問題も抱えています。
このコラムは、まずエイムアシストの意味や必要性を説明したうえで、実装する際の注意点なども解説していきます。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
1. FPSにおける「エイムアシスト」とは
この項目では、まずFPS(ファースト パーソン シューター)における「エイムアシスト」という言葉や意味を解説したうえで、エイムアシストを採用している代表的なタイトルを紹介します。
まず言葉の意味として、「エイム(aim)」という単語には、名詞として標的、狙い、目標といった意味と、動詞として銃などで狙う、といった意味があります。一方のアシストには手伝う、援助するといった意味があります。このような意味から、基本的に「銃などで狙いを定めるときに補助する機能」の意味合いを持ちます。
近年は、同一ゲームをさまざまなハードウェアで楽しむことができるようになっています。この状況は、ゲーム会社としては、ハードウェアに制限されずに多くのユーザーを獲得できますし、ユーザーも複数のハードウェアを購入しなくても多くのタイトルをプレイできるなどメリットが豊富です。
そしてこの状況下では、FPSにおいてキーボード+マウスを使ってプレイする人は照準が正確であり、ゲームパッドを使ってプレイする人が不利であることが明確になりました。
この状況を打開するためにゲーム会社が取ったのが、ゲームパッドユーザーのみに照準時の補助を行う「エイムアシスト」という機能です。考え方としては、不利な状況が少なくなるように補正機能をつけるという、明確で単純なものです。
エイムアシストを実装することには複数のメリットがあります。まず、プレイ環境による差を少なくすることが第一の利点ですが、さらに熟練していないプレイヤーや、それほど熟練することを目指していないカジュアルなプレイヤーが、プレイを楽しみやすいというメリットもあります。そもそもシューター系のゲームは敵を倒すことが醍醐味ですから、エイムアシストによって射撃が命中しやすくなれば楽しみを得やすいわけです。
しかし、エイムアシストを実装することによる問題も発生しました。エイムアシストが強すぎると、今度はゲームパッドを使うプレイヤーが有利になってしまい、補正前とは優劣の逆転現象が起きたのです。
この問題点については、当コラムの「エイムアシストは物議を醸す?問題になりがちな点」で詳しく解説します。
1-1. エイムアシストが採用されている代表的なタイトル
エイムアシストを採用している代表的なタイトルとしては、Electronic Arts社のApex Legends、Epic Games社のフォートナイトやDead By Daylight(エイムドレッシング)、Blizzard Entertainment社のオーバーウォッチ2などがあります。
どれも多くのユーザーを抱えているタイトルのため、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
2. エイムアシストは物議を醸す?問題になりがちな点
エイムアシストは、そもそもプレイ環境が異なる人でもそれぞれゲームを楽しめるようにすることを目的とする機能です。実際に、プレイ環境によって勝敗や戦績に差が生じたことを踏まえて、複数のタイトルで採用されています。
しかし、エイムアシスト自体が議論になりやすい側面もあるので、ここではその問題点を整理していきます。
2-1. 使用の有無で難易度や戦績が大きく違う傾向にある
エイムアシストの強弱はタイトルごとに異なります。とはいえ、エイムアシスト機能を持つタイトルでは、キーボード+マウスを使うプレイヤーよりも、ゲームパッドユーザーの方が優位という声が高いようです。
Apex Legendsに関してあるユーザーが行った調査では、ランキング上位の9割近くがゲームパッドユーザーである、という結果が出ています。このように特定の機器を使った方が有利、という結果が広く知られると、実際にはあまり影響を受けていないユーザーも、「不公平なゲームである」というイメージを持つことになるでしょう。
また、キーボード+マウスユーザーとゲームパッドユーザーという対立構図まで生み出してしまいますから、「楽しくゲームしたい」と思っている人が近づきがたいタイトルになるという弊害もあります。
2-2. 上手な人が使うとさらに強くなるシステムのため差が開きやすい
エイムアシストによって得られる優位性は、実力が高いプレイヤーほど引き出せると言われています。
極端な話をすれば、ゲームを始めたばかりの人や、あまり勝敗にこだわりなくプレイを楽しんでいる人は気づきにくい問題なのです。よりわかりやすく言えば、熟練度の低いプレイヤーが優位な道具を使ってもその機能を出し切ることは難しいので、プロプレイヤーに勝つのは困難です。
一方、ランキング上位者はゲームに対する熟練度が高く、あらゆる機能を使いこなすことに慣れています。そのため、漠然とエイムアシスト機能を使うのではなく、設定や使用中の動作など細かい点まで研究して、少しでも優位になる方法を探します。
つまり、強いプレイヤーはエイムアシストによってより強くなるので、中級者がつけいるスキが無くなってしまうのです。
3. 注意!エイムアシストとチートの違い
そもそも「チート(cheat)」という単語には、だます、詐欺といった意味があります。ゲーム業界では、開発・運営側が認めない外部のソフトを使って行う不正行為を指します。
時には、とてつもなく強い相手に称賛の意味を込めて「チート」という言葉を使う人もいますが、ここで言うチートは禁じられた手段で不正に勝利を得ようとする行為です。
キーボード+マウスでプレイする人やエイムアシストを使わない人の中には、「エイムアシストはチートだ!」という人も散見されます。特定の手段を使って、実力以外の部分で勝敗が左右される点を見れば、言いたくなる人の心情は理解できるものです。とはいえ、公式に実装されている機能ですから、エイムアシストは決してチートではありません。
なお、実際に外部ツールなどを用いて本来のエイムアシスト機能をさらに強めるといったものも存在します。こちらは「ソフトエイム」と呼ばれており、差別化・注意喚起が頻繁に行われています。
4. エイムアシストを実装する際のポイント
ここからは、ゲーム開発に携わる人の目線で、開発するゲームにエイムアシストを実装する際のポイントを記載します。
4-1. マッチング次第で機能のオンオフが自動的に切り替わるようにする
エイムアシストに対して不満が出るのは、「対戦する相手が自分より有利な状態にある」という状態からくるものです。多くのプレイヤーは、同じ条件で戦っているのであれば、負けたときに悔しい感情はあっても「ずるい」とは言わないでしょう。むしろ、相手の強さに尊敬を感じて称賛を送る人も多いのではないでしょうか?
一方、最初から優遇されている相手に敗北したときには腹が立つでしょうし、そのゲームをプレイする意欲がそがれる可能性もあります。最悪の場合、そのタイトルだけでなく開発しているゲーム会社の印象が悪くなることもあるかもしれません。
このような不満を解消する手段のひとつに、マッチング次第でエイムアシストのオンオフが自動的に切り替わるようにするという方法があります。
実際に、Blizzard Entertainment社はオーバーウォッチ2において、クロスプレイ(PCとゲーム専用機が混在する状況)ではエイムアシストを有効としていますが、ライバル・プレイ(ランクマッチ)では無効とするなど、細かい配慮を行っています。(2022年11月18日時点)
4-2. 武器の種類によってエイムアシストの強さを調整する
武器の種類によってエイムアシストの効き具合を調整する方法もあります。
例えばEpic Games社のフォートナイトでは、チャプター2までは多くの武器でエイムアシストが使用できることでゲームパッドユーザーが有利過ぎるという指摘が起こりました。チャプター3ではその点に配慮して、ショットガン系の武器には従来通りのエイムアシストがあるものの、特に強力と言われるアサルトライフルではエイムアシストの度合いを弱める措置が行われています。
4-3. プレイ環境によってエイムアシストの強さを調整する
近年、ゲームをプレイする環境は、PCでキーボード+マウスを使うケース、PCでゲームパッドを使うケース、コンソール(ゲーム専用機)でゲームパッドを使うケースなど多様化しています。このため、プレイ環境を踏まえてエイムアシストの強弱を調整する方法もあります。
ただし、あまり細かい取り決めを行うと、ユーザーにとっては混乱する原因になります。また、仕様変更について適切なアナウンスをおこたると、ユーザーの不信を招きますし、異なる環境下でプレイするユーザーの対立をあおることもあり得ます。最悪の場合、タイトルやゲーム会社からのユーザー離れが起こることもあるので、注意が必要です。
5. まとめ
ゲームの「エイムアシスト」について、言葉の意味や現在起こっている問題点と論争を整理し、実装する際の注意点もまとめました。
エイムアシストは、ハードウェアが異なる環境のプレイヤーが対戦しても、環境による勝敗の差が出ないことを目的に生み出されたものです。しかし、現実的には調整が難しく、大手ゲーム会社でも解決できているとは言えない現状があります。
プレイヤーとしては、楽しくプレイするために情報収集をしながら、異なる環境のプレイヤーに理不尽な怒りをぶつけないことが重要です。
また、開発する側であれば、エイムアシスト問題の背景や傾向、自社タイトルの中で起こり得る問題点を整理して対処することが重要でしょう。
対策は、マッチングでON/OFFを切り替える、武器ごとに強弱を決める、プレイ環境で強弱を決めるなど複数存在するので、自社のタイトルに合う方法を選んで、多くのユーザーが楽しめるゲーム作りをしていきましょう。
ゲーム業界経験者が転職するなら
GAME CREATORSを運営しているリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
ゲーム業界に精通したコンサルタントが、非公開求人を含む3,400件以上の求人の中から、あなたの希望や適正にあった最適な求人をご紹介します。
あなたの転職活動を成功に導くためにサポートいたしますのでお気軽に登録してください!