ゲームに声優を起用する意味とは?マーケティングや世界観などを考える

過去には音声が無いゲームが多数ありましたが、近年はフルボイスのゲームも増え、声優が起用されるケースも多数あります。声優を起用すればゲームの臨場感が上がりますし、メディア展開がしやすくなるなどメリットが豊富です。とはいえ、どんなゲームでも声優を使えば良いというわけではありません。

このコラムは、ゲームに声優を起用する意味や、メリット、注意点などをさまざまな角度から検討します。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

1. ゲームにおける声優の活躍部分

この項目では、まずゲームの中で声優が活躍できる部分を紹介します。

1-1. キャラクター

ゲーム内に登場するキャラクターに声優が声を当てることで感情が伝わりやすくなったり、臨場感が高まったりすることは少なくありません。

アニメ業界で活躍している声優が起用されることもありますが、近年は「ゲーム声優」という職業に就く人も増えています。ゲーム声優は1人で数十キャラクターの声を担当することもありますから、声の微妙な使い分けが求められることが多く、アニメや映画の吹き替えを行う声優とはやや異なる専門性が求められます。

1-2. ナレーション

声優を起用したナレーションを加えることで、ゲーム内での状況をわかりやすくしたり、ゲーム内の演出効果を上げたりすることができます。また、ナレーションはキャラクターへの声優起用よりも、ゲーム全体の世界観を深める効果を期待できます。

2. ゲームで声優を起用するメリット

この項目では、ゲームに声優を起用することによるメリットを解説していきます。

2-1. ゲームが表現したい世界観をリッチなものにしてくれる

声優は状況に応じて声の質や大きさ、高さや太さなどを変えて発声することに特化したプロフェッショナルです。そのため、声優を起用することで、効果音や音楽だけの場合に比べて世界観を追求しやすくなりますし、ユーザーのプレイ体験もリッチなものになることが期待できます。

例えば、テキストで「ええっ?」と表示されれば、キャラクターが驚いていることが伝わります。一方、それを声優が読むことによって、驚きのなかに照れのニュアンスを加えたり、困ったニュアンスを重ねたりすることもできるでしょう。

このように、声優の声によってユーザーが没入感や心地よさを感じやすくなることは少なくありません。そのため、ユーザーはゲームをより深く楽しむことができ、ファンが増えることが見込めます。

2-1-1. ゲームジャンルによっては声優の起用が必須なことも

ゲームのジャンルによっては、声優の起用が欠かせない場合があります。例えば、人気アニメから派生したゲームであれば、マーケティング的にアニメの人気を引き継ぎたいのは当然のことです。そのため、アニメで声を当てた声優が、ゲームでも起用される場合がほとんどです。

また、恋愛アドベンチャーゲームや美少女ゲームなどであれば、声によってユーザーへの訴求力を高める手法が多く取り入れられています。そのため、これらのジャンルでも声優の起用は必須です。

2-2. 購入層に起用した声優のファンが増える可能性がある

有名声優や既に根強いファンがいる声優を起用すれば、その声優が出演していることでユーザーが増える可能性があります。また、キャリアが長い有名声優をキャスティングすれば、幅広い年齢層へのアプローチも可能です。

さらに、ゲームをあまりプレイしていない人でも、「推しの声優の声が聞きたいから」という理由でプレイを開始する人もいるでしょう。つまり声優の起用方法によっては、そのゲームの利益を上げるだけでなく、ゲームファンを増やすきっかけになることも考えられます。

2-3. メディア展開の余地が広がる

声優を起用したゲームであれば、メディアミックスを積極的に行ってゲームを盛り上げていく手もあります。

具体的には、ゲームに出演した声優のライブを開催したり、ファンディスクを出したりすることができるでしょう。また、音声配信や動画配信などを行うことで、ゲームを盛り上げることもできます。さらに、ゲームの人気に火がついてアニメ化や映画化というパターンもあります。

このようにメディアミックスの流れに乗っていけば、自社IPの確立も夢ではありませんから、ゲーム会社にとっても大きなメリットがあるでしょう。

3. ゲームで声優を起用する際の注意点

この項目では、ゲームに声優を起用する場合に気を付けるべきポイントについて解説しましょう。

3-1. ユーザーに世界観や設定を強制させる(想像の余地を減らす)

声優は声によって世界観や状況を伝えるプロですから、ある意味でゲームの世界観や設定すら操ってしまう強い存在となることもあります。そのためユーザーにとっては、「想像」を楽しむ余地を減らしてしまうというリスクも忘れてはなりません。

また、例えば文字情報だけなら、ゲーム序盤では仮面をつけていることで年齢や性別が不明のキャラクターを登場させることが容易です。ユーザーに年齢や性別をミスリードする演出を意図的に挿入し、ストーリーが進む中で予想外の事実が判明していくといった演出を、文字情報なら大した手間をかけずに実施できます。

しかし音声を付けると、上記のような演出をするには別の手間が発生しますから、文字情報ならではのメリットが失われる場合もあります。

3-1-1. イメージと違った、という理由でファンを減らす可能性がある

例えばマンガやライトノベルなどを原作としてゲームを作る場合、原作ファンの脳内には主要キャラクターの声のイメージが脳内で作りあげられていることが少なくありません。そんなケースで声優を起用すると、「イメージと違う」という理由で原作ファンから強い拒絶を受ける例は多数あります。

もちろんすべてのファンのイメージにマッチするキャスティングは、どんなに費用をかけても実現できません。そのため原作がある作品をゲーム化する場合、ある程度の拒絶は覚悟する必要があります。

マンガや小説が先行しているゲームを開発する場合は、ファンがどんなイメージを持っているかを想定することも非常に重要です。

3-2. 声優の起用にかかる予算やスケジュールなどを考慮する必要がある

声優を起用するには予算やスケジュールなど、マネジメントすべき点が増えることを考えなければなりません。特に高い人気を持つ声優を起用するほどギャラは高くなりますし、スケジュールも抑えにくくなります。

そのため、ゲームのイメージにあわせたキャスティングを行いつつも、予算やスケジュールを踏まえた起用をすることも迫られます。

3-3. 音声を違和感なく当てはめるための開発工程が発生する

ゲームに音声を加えるということは、サウンド関連の新たな工程が増えるということです。

例えばRPGや恋愛シミュレーションゲームなら、文字情報だけでも十分に内容を伝えられる場合は少なくありません。その場合にもテキストを入力する手間はあります。

しかし、声優のオーディションをしたり、音声を録音したり、ゲーム内に当てはめていくなど、声優を起用することで必要な工程は大きく増加します。また、音声を採ったり、調整したりするための技術や機材が必要となることも考えておくべきでしょう。

4. ゲーム開発時に声優を起用するかどうかを考えるポイント

この項目では、ゲームに声優を起用する際に考えるべきポイントを解説しましょう。

4-1. 開発しているゲームジャンルと声優の相性が良いか

ゲームのジャンルによっては、そもそも声優が必要ないこともあります。また、ノベルゲームに慣れている人の中には、「文字情報とBGMだけで十分」という人もいます。さらに、「RPGにも音声は不要」という人もいますし、「音声全体は否定しないが、フルボイスまでは必要ない」という意見もあるようです。

ノベルゲームにフルボイスを実装した場合、オートモードでプレイしていると声優がセリフを読む速度がプレイ速度を支配します。そのため速読が得意で早くプレイすることを好む人にとっては、フルボイスは邪魔なものになりかねません。

音声を実装しても、設定によって主役の声だけ消したり、音声全体を消したりすることはできます。そのため、好まない人は音声をオフにすれば良いという考え方もあるでしょう。とはいえ、ほとんどのユーザーが音声オフにしてプレイするようなことがあれば、そのゲームについては声優の起用が失敗だったと考えて良いでしょう。

4-2. 開発しているゲームの世界観(雰囲気)に声優は必要か

ゲームの世界観や雰囲気によっては、音声が無い方が良い場合もあり得ますから、そもそも声優をキャスティングすることが必要かどうかを検討することをおすすめします。

例えばミステリーやホラーなどであれば、音声が無いことによってむしろ臨場感を高めることもできるでしょう。

4-3. どこまでのメディア展開を事前に想定しているか(プロジェクトの規模)

声優を起用するメリットが見当たらなければ、費用や手間をかける必要はありません。例えばゲームの企画段階からメディア展開を想定しているなど、声優の存在が必須である場合を除いては、声優を起用するかどうかを安易に決めないよう注意しましょう。

5. まとめ

ゲームに声優を起用するメリットや注意点をまとめました。声優を起用することは、ゲームの世界観を深め、臨場感を上げる効果が期待できます。また声優のファンをゲームファンとして取り込んだり、メディア展開もしやすくなったりするメリットもありますから、マーケティング面でのプラスも見込めます。

とはいえ、ゲームの世界観にあっていない場合や、キャスティング上のミスマッチが起こった場合などは、費用や手間をかけて起用した声優がむしろユーザーからの不評を買うこともあります。

そのため、声優を起用する際には必要性や費用対効果などをしっかりと考えることが重要です。

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