スマブラのプロデューサーが考える、面白いインディーゲームの企画の仕方


会社に属さず、個人開発でリリースされるインディーゲームは、Steamといったプラットフォームの誕生やゲームエンジンの普及により、ますます競争力を高めています。

そのようなゲーム戦国時代の中で、どうやって衆目を集めることができるのか。

『スマブラ』の生みの親である桜井政博さんは、あるコラムの中で興味深い話をしていました。

 

盛り上がりを見せるインディーゲーム市場

最大規模のインディーゲームコミュニティを持つSteamには年間6000本にも及ぶインディーゲームが登録されており、日の目を浴びぬまま忘れられていってしまうゲームも少なくありません。

2018年には9300本ものゲームがSteam上でリリースされ、世界最大のゲーム市場を構築するレッドオーシャンとなっています。(1)

 

Steam上でゲームをリリースする理由は、やはりユーザー数の多さにあるでしょう。

2018年時点で月間アクティブユーザーは9000万人を超え、自分で作ったゲームを多くの人にプレイしてもらいたいと思うなら、Steamでリリースするのが一番なのです。

 

とはいえそれだけ多くの人とゲームが集まるということは、その数に見合った激しい競争が起きているのも事実です。

名作ゲームとして評されるには多くの努力を要しますが、そんな厳しい競争を勝ち抜いたゲームの数々が高い評価を受けている例も少なくありません。

 

個人制作ながらメジャーゲームに転身することも

一方、『Minecraft』や『PUBG』のように、インディー出身でありながら、世界中にプレイヤーを持つメジャーゲームに大成した例もあります。

 

ゲーム業界を変えた「マイクラ」

世界で最も成功を収めたインディーゲームと言えば、誰もが口にするのが『Minecraft(マインクラフト)』、通称マイクラです。

2009年のリリース以来徐々にユーザーを集めながらアップデートを繰り返し、PCだけでなくニンテンドースイッチやPS4といったコンソール版のリリースも行われ、2018年には累計1億4400万本のセールスを記録しました。

 

ランダムかつ無限に広がる土地を赴くままに開拓するこのゲームは、サンドボックスと呼ばれるゲームジャンルをポピュラーにした大ヒットとなりましたが、開発者であるマルクス・ペルソンはわずかな開発チームと共に、このゲームを生み出したのです。

 

WIREDの記事、「マインクラフトをつくった男:ゲーム業界を根幹からゆるがしたインディーメーカー」によれば、マインクラフトの最大の魅力はほとんどの開発者が暗黙のうちに従っているゲームデザインのルールを無視している点にあるということです。(3)

 

大きな目的があるわけでもなく、ゲームの難易度が一定以上になることもないという設計はポピュラーなゲームデザインの真逆を行くものでしたが、この当てのない自由度の高さがユーザー主体のゲームコミュニティを構築させ、SNSやYoutubeを通じて爆発的な「バズ」を巻き起こしました。

 

ある意味でSNS時代を予見するような作品とも言えるマインクラフトでしたが、このようなゲームが当時存在しなかったことに目をつけ、ひたむきな開発を貫いたことが大成功をもたらしたとも言えるでしょう。

 

バトルロイヤルの開祖、『PUBG』

マインクラフトよりも直近の例で言うと、『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』、通称「PUBG」がメジャーになったインディーゲームとして有名です。

 

100人のプレイヤーが孤島に集結し、最後の一人になるまで戦うバトルロイヤル形式のゲームシステムを有名にしたのは、2017年に発売されたPUBGでした。

 

今でこそ一ジャンルを確立したゲームとして称えられるPUBGですが、開発者のグリーン氏によると、当初は別のゲームのMOD(プレイヤーが勝手にゲームを改変してしまう遊び方)として、映画の『バトル・ロワイアル』を参考にして開発を進めていたそうです。(4)

 

徐々にコミュニティの中で人気となっていったこのMODは、韓国のメーカーから打診を受け、単独でリリースをするに至りました。

今では数百人規模の会社で開発が進められ、その後リリースされるあらゆるシューティングゲームに影響を与えたバトルロイヤルというゲームジャンルもまた、インディーゲームに近しい「MOD文化」から誕生したのでした。

 

 

桜井政博が考える、売れるゲームの企画方法

大人気格闘ゲーム『スマッシュブラザーズ』シリーズを手掛けてきた桜井氏もまた、インディーゲームのファンの一人を公言していますが、彼によると、面白いゲームとは作り手の趣味が貫かれたゲームであるということです。

 

今やメジャーゲーム界隈では世界中で伝説的な存在として崇められている桜井氏ですが、伝説のゲームクリエイターであるだけでなく、暇さえあればインディー・メジャーを問わずゲームをやりこむ生粋のゲーマーでもあります。

 

まさにゲームに人生の全てを注ぎ込んでいるような人ですが、ファミ通に寄せられているコラムによれば、インディーゲームはSteam経由で遊ぶこともあるものの、PCではなくリビングのテレビでプレイしたいというのが本音のようです。(5)

 

仕事上、ゲームで遊ぶことはそのまま自身の武器になるという桜井氏ですが、家庭用ゲームを主に扱う仕事柄、やはりリビングでプレイできるゲーム体験に大きなこだわりが感じられます。

 

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インディーか、メジャーかはプレイヤーに関係ない

同じコラムの中で、桜井氏は少し手厳しい意見をインディーゲームに対して寄せています。

それはどれだけの予算やスタッフが投入されているとしても、メジャーだろうがインディーだろうが、お金を使ってもらうプレイヤーにとってはどちらも同じプロの作品であるという言葉です。

 

個人製作でお金も時間も不足しているからといって、単調なゲームシステムや同じ要素の繰り返しで妥協してはいけないという話ですが、これもやはりインディーゲームがメジャーゲームと区別がつかなくなってきた、今日のゲーム事情に繋がってきます。

 

たとえ個人製作でも面白いゲームであれば多くのプレイヤーがそのゲームに集まりますし、メジャーゲームであったとしても代わり映えのないゲームデザインで、ストーリーにも魅力がないゲームにセールスは期待できません。

 

大事なのは、「好き」を貫いたゲームを作ること

それでは面白いゲームをどう作るかについて、桜井氏は自分が好きなものを作って、それを好きな人が遊ぶという環境を作れば良い、つまり自分の趣味を貫く必要があると語ります。

 

どうすれば売れるか、儲かるかではなく、自分が面白いと思うものを形にして、しっかりと遊んでもらえるゲームを作らなければいけない。

メジャーであれインディーであれ、まずはクリエイターが熱中して作り込めるような趣味全開のゲームを作ることが、キャリアにおいては大きな足がかりとなるのでしょう。

 

まとめ

Steamをはじめとして、インディーゲームが様々なプラットフォームで遊べるようになった昨今では、純粋なゲームの面白さのみで勝負できる世界が徐々に整いつつあります。

たとえ個人製作のインディーゲームでも、プレイヤーが増えれば大手ゲーム会社から声がかかり、開発資金やスタッフを補填してくれたり、タイトルをそのまま買収してしまうというケースも見られます。

 

面白いゲームは正当に評価される。

そんな時代がインターネットやインディーゲームの勃興とともに到来しようとしていると言えるのではないでしょうか。

 

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出典:

(1)桜井政博『桜井政博のゲームについて思うこと2015~2019』G2ブレイン、2019年 p.174~175

 

(2)Chelsea Adelaine Hassler “Minecraft Boss Helen Chiang on Her New Role, Breaking Records, and What’s in Store For 2018” POPSUGAR,

https://www.popsugar.com/news/New-Microsoft-Minecraft-Head-Helen-Chiang-Interview-44513067

 

(3)TOM CHESHIRE 『マインクラフトをつくった男:ゲーム業界を根幹からゆるがしたインディーメーカー』WIRED

https://wired.jp/2013/01/06/minecraft-vol6/

 

(4)徳岡正肇『PUBGの生みの親は,Modderからいかにしてゲーム開発者になったのか。GDC 2018の講演をレポート』4Gamer

https://www.4gamer.net/games/348/G034868/20180330111/

 

(5)(1)に同じ

 

ライター情報

ライター名:Satoru Yoshimura

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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