広告費ゼロで1位となったアプリ『どうぶつタワーバトル』はいかにして生まれたか?

 

スマホゲームは、今日本のメジャーゲーム市場において大きなウェートを占めるコンテンツの1つですが、同時に個人制作のゲームが覇権を争う大規模なインディーゲームマーケットになっていることも確かです。
毎年何かしらのタイミングでスマホゲームが一斉を風靡する時期があるものですが、ここ最近でインパクトが大きかったアプリといえば、『どうぶつタワーバトル』が挙げられるでしょう。
シュールで印象的なビジュアルが記憶にあたらしい『どうぶつタワーバトル』は、どのようにして誕生し、世間の話題をさらっていったのでしょうか。

 

『どうぶつタワーバトル』とは

『どうぶつタワーバトル』は、いわゆるオンライン対戦型インディーパズルゲームです。
いわゆるテトリスやジェンガに似たようなゲームで、ランダムに与えられるどうぶつのピースを崩さずに積み上げていくことができるかを競います。
対戦では2人で順番にどうぶつを積み上げていき、先にタワーを崩してしまった方が負けというシンプルなルールが採用されています。
しかしそのシンプルさや、リアルなどうぶつが無機質に積み上げられていくユニークさが話題を呼び、一躍アプリゲーム界隈で大きなブームを起こすことになりました。

 

個人制作の無料配信ゲーム

そしてそんな大ヒットゲームとなった『どうぶつタワーバトル』を製作したのは、大手ゲーム会社や有名企業などではなく、都内に住む一人の男性でした。
目標もやりたいこともなかった中で、プログラミングなら自分にもできるかも!ということで始めたアプリ作りの中で、2017年3月にリリースしたのがこのゲームだったのです。

 

世間を夢中にさせたオンラインアプリ

『どうぶつタワーバトル』は派手なグラフィックや革新的なゲームデザインが搭載されているわけではないため、一見するとなんの変哲もないゲームアプリだったかもしれません。
しかし、ゲームそのものの単純明快なシステムや、勝敗を重ねていくことで数値が上下するレートシステムを導入することにより、ただのバズにとどまらないゲームとしての面白さで世間を沸かせることにも成功しました。
インディーゲームとしては、理想的な成功を収めた『どうぶつタワーバトル』ですが、その制作背景にも迫っていきましょう。

 

『どうぶつタワーバトル』の制作背景

どうぶつを積み上げてその技術を競う世界観を持つアプリですが、『どうぶつタワーバトル』は制作者にとっても思い出深い1本であったようです。
制作者であるYabuzaki氏は、自身のブログで「『どうぶつタワーバトル』というアプリを作った話とか自分のこととか」という記事を公開しており、このゲームの製作に関するさまざまな思い出や制作秘話を語っています。

 

『どうぶつタワーバトル』誕生秘話

ブログによれば、もともと『どうぶつタワーバトル』には前身のゲームである『どうぶつタワー』が存在しており、これは1人プレイで遊ぶ対応のパズルゲームだったそうです(1)。
こちらも「バトル」ほどではなかったものの、Appランキングにランクインするほどのゲームとなっていたそうで、『どうぶつタワー』シリーズの知名度がゼロの状態から大きなバズを産んだわけではないことがわかります。
そして、このシングルプレイモードに対戦機能を実装したのが『どうぶつタワーバトル』だったのですが、リリース当初は大きな苦労もあったようです。

 

まず、オンライン対戦ゲームであるのにもかかわらずアクティブユーザー数が多くて5人程度しかいないなど、深刻なユーザー不足に悩まされたことです。
オンラインゲームは、つねに人がいなければゲームとして成立しません。
大手メーカーが広告に力をいれるのはこのような理由からなのですが、リソースの少ない個人でオンライゲームを成功させづらいのは、こういった事態が発生してしまうためです。

 

また、リリース当初のバージョンにはBANシステムも搭載していなかったために、「荒らし」行為が行われた際に対処ができず、そのせいでさらにユーザーが離れていったということもあったようです。

 

制作者も驚いたアプリランキング1位の獲得

シングルプレイのゲームや、ユーザー数が少ないゲームでは起こり得なかったトラブルの数々に四苦八苦を課されることとなった『どうぶつタワーバトル』。
しかし、同年の11月にある転機が訪れます。

 

突如として『どうぶつタワーバトル』がTwitter上でその名前がたびたび上がるようになり、Appストアにおいてもダウンロード数を伸ばしていくようになったのです(2)。
勢いは11月下旬から12月にかけて加速していき、ブログによるとついには12月4日にAppランキング1位を達成しました。
これには制作者が一番驚いたということですが、いったいこの月に何があったのでしょうか。

 

広告を使わずに『どうぶつタワーバトル』が大流行した理由

スマホアプリとしてリリースされるインディーゲームの人気は、大抵の場合広告のかけかたによって左右されます。
『どうぶつタワーバトル』の場合、いかにして広告を使わずに流行を作ったのでしょうか。

 

スマホ版『どうぶつの森』の登場

1つは同年11月に、スマホアプリ『どうぶつの森 ポケットキャンプ』が発売されたことにあります。
『どうぶつの森』シリーズは任天堂のメインコンテンツの1つである人気作品で、「スマホで『どうぶつの森』が遊べる」ということは以前から話題になっていました。

 

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ところがAppストアで検索をかけると、「どうぶつ」というキーワードに反応し、『どうぶつタワーバトル』も一緒になって表示されるという事態が発生します。
これが話題となり、「『どうぶつの森』よりもおもしろい」という評価も下されるほどの人気タイトルとなったのです。
そして本家を差し置いて、Appランク一位を記録したのでした。

 

 

シンプルかつシュールだがストイックなゲーム性

本作は、“インストールして5秒で遊べる”、“子供から大人まで遊べる”、“(開発者なりに)細部まで妥協しない”、“レート性の導入”というテーマのもとに開発が進められており、実際のところ間口を広く持ちつつも非常にストイックな対戦パズルゲームとなっています。

 

絵面こそ“物理演算によりやけにリアルな挙動を見せるどうぶつたちをひたすら積み上げる”というシンプルかつシュールなものですが、いわゆるお助けアイテムのようなものはなく、“モードは対人戦のみ”、“勝ち負けで変動するレート機能”、“ほぼ待たされることのないマッチング機能”、“動画アプリ対応で戦術の研究に活用可能”ととことんストイックです。

 

有志によって物理演算による各どうぶつの挙動やその知識を用いた戦術に関する研究も行われており、上級者同士の戦いは多少の運要素こそあるものの各どうぶつの重心や形による噛み合わせなど、経験と研究の深さが勝敗を分ける真剣勝負となっています。

 

上級者同士の戦いにおいては、“いかにしてどうぶつを乗せていくか”ではなく“いかにして相手にどうぶつを落とさせるか”という考えが主軸となっていきます。
例えばどうぶつを高く積み上げていく場合でも、上級者ならば相手の手番で積み上がったどうぶつのタワーが崩壊するようにきっかけを仕込む……という立ち回りになります。

 

また、自分にとって有利な状況を作り出すための盤面論も生み出されており、上達していくほどに、相手の行動を読みコントロールし、逆に自分の行動を妨害されないように施策をめぐらす将棋やチェスのような心理戦の要素が表れてきます。

 

eスポーツとしての側面

『どうぶつタワーバトル』の開発者・Yuta Yabuzaki氏は、本作についてeスポーツの側面にも注目しています。
シンプルなルールに加えて、先述した通り多少の運要素こそあるものの、最後には経験と研究の深さが勝敗を分ける絶妙なゲームバランスなどが理由とのことです。

 

一般社団法人日本eスポーツ連合(JESU)は、eスポーツとは、広義には電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉で、コンピューターおよびビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称としています。
本作は、毎週土曜日の夜に開催されている階級別リーグ制の大会“獣王杯”、有志による賞金制大会“DTBグランドマスターズ杯(グラマス杯)”、不定期ながら月に複数回開催されている企業スポンサー付きの賞金制大会“超獣王杯”など大会が複数開催されており、すでにeスポーツの要件を満たしているとみてよいでしょう。

 

とはいえ、『どうぶつタワーバトル』のeスポーツとしての側面は本作の知名度ほどは認知されていません。
Yuta Yabuzaki氏は、本作の“間口が広く、気軽にプレイでき、ゆるく楽しめる”という特徴により、eスポーツ的側面を知らなくても楽しめることが要因と考えており、動画制作や大会運営を通してeスポーツ的な楽しさを布教していくという形で、eスポーツ環境の発展に努めています。

 

なお、GAME CREATORSではeスポーツの基本知識に関する解説記事も掲載していますので、あわせてチェックしてみてください。

 

 

小さなバズがSNSを通じて大きな流行へ

個人製作ゆえのチープさや、ゲームプレイングのビジュアルのシュールさは、SNSとの絶妙な相性を発揮します。

 

どこかアンバランスな世界観に、インディーズゲームに見られる予想外のバグの発生は、プレイヤーにストレスではなくSNSに投稿するためのネタを提供します。
好プレイ珍プレイを問わず、Twitterではさまざまなプレイ動画が公開されました。
大手WebメディアやYotutuberもTwitter上で次々とこのゲームを取り上げ、一躍話題のゲームとなっていったのです。

 

ゲームにおけるバグは、確かに製作者の意図と反してゲームプレイングを阻害してしまう厄介な存在です。
ただ、必ずしもバグがプレイヤーを不愉快にさせてしまうとは限らないことも、このゲームが示した側面であるとも考えられます。
ミスを恐れず、まずは作品を完成させろとはあらゆるクリエイターに向けて発せられる言葉です。
ゲームの場合、時として開発者の意図しないバグやミスが、バズに繋がることを教えてくれる事例だったともいえるでしょう。

 

『どうぶつタワーバトル』の専門用語

『どうぶつタワーバトル』では、有志により戦術論や各どうぶつの特性に関する研究が日夜行われ、専門用語も発展していきました。
本項では、有志やファンが本作に注いだ情熱の証ともいえる専門用語を解説します。

 

新どうぶつ/旧どうぶつ

『どうぶつタワーバトル』は、2018年2月23日から使えるようになった“新どうぶつ”と、それ以前の対戦でつねに出ていた“旧どうぶつ”が存在しており、現在は新どうぶつか旧どうぶつのセットがほぼ50%の確率で出るようになっています。
本作の話題において、プレイしていない人でも印象深いであろうゾウ(本作におけるアジアゾウ)、シロクマ、キリンは旧どうぶつにあたります。
旧どうぶつは新どうぶつに比べて形が整っていて乗せやすいです。
逆に新どうぶつは形が歪なものが多く、一部のどうぶつは非常に乗せ辛くなっています。

 

数字(0~7)+どうぶつの名前

特定のどうぶつを数字の数だけ回転させて落とすことを指します。
例として、“2キリン”ならばキリンを2回回転させて、“5ゾウ”ならばゾウを5回回転させてから落とします。
回転の途中でどうぶつを落とすディレイ(後述)を行う場合は、〇d、〇.5と表します。
使いやすい万能型や攻勢を仕掛ける際に活躍する組み合わせは用語として確立しています(本記事では割愛)。
なお、どうぶつは8回転で1週するため、8以上の数字は使用されません。

 

アグロ

不安定な土台を作ったり、意図的に足場を狭めるように積んだりすることで短期決戦を狙う速攻型戦略です。
タワー戦になる前に相手を倒す立ち回りとなるため、コントロール(後述)に比べて自分より実力の高い相手とも戦いやすいというメリットがあります。
反面、不安定な土台で戦うことになるため自滅しやすいというデメリットがあります。
語源はトレーティングカードゲーム(TCG)用語にある同名用語です。

 

コントロール

アグロと同じくTCG用語にある同名用語が語源で、がっちりとした土台を作り、相手をタワー戦へと引きずり込む持久戦略です。
どうぶつの引きや各どうぶつの重心、形への理解が求められるため、ある程度の習熟を必要としています。

 

タワー

お互いにどうぶつたちを高く積みあった状態、あるいはそれが形成されていく様で、“ブレーメン”、“ブレーメンタワー”とも呼ばれます。
どちらが先にタワーを倒すかの攻防は“タワー戦”や“ブレーメン合戦”と呼ばれます。

 

用語を使って例文を作ると「アグロ対コントロールならば、アグロ側はブレーメンを警戒し、可能なら初手から4パンダなどで巴投げを仕掛ける必要がある」といった形となります。

 

回避

タワー戦の状況などで、左右どちらかの空いているスペースにどうぶつを置くことで、タワー戦の攻防を1ターンやりすごせます。
各どうぶつの形や重心を把握し、安全なスペースの見極めが重要となります。

 

下の土台が見えない状態で回避を行う場合は“天空落とし”と呼ばれます。
安全なスペースの見極めを自分の記憶の中で行う必要があり、ハイリスクなテクニックですが、勝率を上げるために重要な技術でもあります。
その他、端のスペースに余裕があれば回避と同時に崖掛け(後述)も行われることがあります。

 

ディレイ

どうぶつを回転の途中で落すことで、通常では不可能な角度でどうぶつを置くテクニックです。
回転の途中で指を放すことで行える他、回転の途中で操作時間が切れるように調整することでも行えます。

 

崖掛け(崖掴み)

特定のどうぶつを向きや落下位置などを調整して落とすことで、ステージ(土台)の左右どちらかの端に足などを引っ掛けるテクニックです。
本テクニックを活用することで、擬似的に足場を拡張することもできます。

 

巴投げ

丸みを帯びた背中のどうぶつを背中側が地面を向くように置き、その上に他のどうぶつを置くと上のどうぶつが下のどうぶつに投げ飛ばされるような挙動を見せる現象およびその挙動を狙って起こすテクニックです。
また、丸みを帯びた背中のどうぶつを背中側が空を向くように置いた状態で、他のどうぶつを置くと上のどうぶつが投げ飛ばされるような挙動を見せる“巴投げ”というものも存在します。

 

点立ち

ディレイを活用するテクニックで、どうぶつが1箇所の接地点のみで立っている状態のことを指します。
直後の相手のターンの置き方を大きく制限させることが可能ですが、失敗するとどうぶつが倒れた勢いのまま落下してしまうこともあるハイリスクなテクニックです。

 

ラムセウム・テンティリス

シロクマを回転させずに落とし、その上に逆さになるよう回転させたシロクマを落とす(0シロクマの頭上に4シロクマを落とす)テクニックです。
某アプリゲームに登場するキャラクターの必殺技を模した大道芸的な技ですが、3つこぶの山形をした背中が曲者のシロクマに対する返し技として機能するという一面もあります。

 

おわりに

ゲーム作りは昔より簡単になった分、クリエイターの数も増えていき、競争倍率は高くなっているかもしれません。
しかし、作ったゲームが売れるかどうかは、実際にリリースしてみるまでは分からないものです。
『どうぶつタワーバトル』の大ヒットは、「作ってみなきゃ分からない」ということの大切さを伝えてくれるものだったと言えるでしょう。

 

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出典:
(1)YABUZAKI Blog「『どうぶつタワーバトル』というアプリを作った話とか自分のこととか」
https://blog.planet12.jp/post/dotaba/#develop_ep

 

(2)ねとらぼ『「中毒性が異常」「どう森を超える神ゲー」――無名のフリーゲーム「どうぶつタワーバトル」がなぜか突然流行りはじめた4つの理由』
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1712/03/news016.html

 

署名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

 

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