荒野行動から学ぶスマホゲームアプリで肝となるマーケティングのポイント


iPhoneが2008年7月に販売されてから実に10年が経とうとしています。

スティーブ・ジョブズがイノベーションを起こしたのは電話やメールといったツールだけでなく、ライフスタイル全般に及びます。

もちろんゲームという文化にも多大なるパラダイムシフトを起こしました。

 

その中でもとりわけ近年巷を賑わせるスマホゲームでは「Pokémon GO」や「パズル&ドラゴンズ」といったタイトルに並んでバトルロイヤルゲームがシェアを拡大しています。

日本国内だけで見ても「PUBG(プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ)」、「フォートナイト」、「ワールドウォーヒーローズ」といったタイトルがリリースされ、しのぎを削っています。

 

こうしたFPSゲームの中でも特にゲーム離れを指摘されている若年層プレイヤーが多いのが「荒野行動」です。

今回は荒野行動の巧みなマーケティング手法をテーマに深堀していきます。

 

ゲームの概要

荒野行動はネットイースト社が火付け役となり、リリースされた1対100のバトルロイヤルガンシューティングゲームです。

その特徴はなんといっても携帯機とは思えない本格的なUI、100プレイヤーを同時に接続させる強固なインフラシステム、シンプルな操作性だからこそ映える戦略といった要素が挙げられます。

 

躍進のポイントは友達とのバトルをアピールしたこと!?

競合との差別化において、キャッチコピーが持つ影響力は侮れません。

同じ品質のサービス提供をしていてもどの切り口を売り文句とするかで受取側はまったく違った気付き方をします。

これについては4gamer.netのインタビューでシニアマーケティングマネージャーを務めるJoe Jiang氏のインタビューで言及されていました。

 

「手前味噌になりますが,マーケティングの効果が大きかったと考えています。

おっしゃるとおり,バトルロイヤルのベースはFPSで,基本的にコア向けのジャンルです。

他社さんも,真剣勝負によるストイックさなど,コア向けのゲームらしいアピールを行っていました。

しかし荒野行動では,“友達と一緒に遊ぶ楽しさ”をアピールし,それが中高生を中心とした若い世代に受け入れられたんです。

 

「日本市場のリサーチを行ったところ,荒野行動が人気を博した理由として,「最後まで生き残ること」より「友達といっしょに遊ぶこと」が大きかったんです。

そこで,コミュニティ方面のマーケティング施策を重点的に行ったところ,2018年の3月から5月にかけて,若い世代のプレイヤー数が一気に伸びました。」※1

 

ここから分かるのは、他のタイトルもスペック的には実現できたのに、あえて「友達と一緒に遊ぶ」点を大々的にアピールポイントにしたことが躍進の大きなきっかけになったようです。

 

Youtuberを使ったプロモーションの数々

2018年はYoutuberによるゲーム実況が加熱した年でした。

これまでと異なるのは、ゲーム実況を専門としているYoutuberが配信するのではなく、ゲームに関してはライトなYoutuberがゲームを実況し始めた、という点がポイントです。

というのも、ゲーム実況者の専門チャンネルではゲームが大好きな視聴者をメインとしていた為、狭まった視聴者層にしかリーチできていませんでした。

それに対して、そもそもYoutuberとして一定層のファンを囲っている配信者達が「初めてプレイしてみた」という形式で視聴者と同じ目線で始めています。

これによりライトなユーザや、非ゲーマーにもリーチすることが可能です。

 

Youtuberの配信を見て、自分もプレイし、動画のコメント欄に感想を記載する流れが出来る事で、動画の視聴数にもプラスに影響が発生し、またそれが新たなプレイヤーを生みます。

こういった従来のゲームにはなかったゲーム体験が他の競合ゲームアプリとの差別化になります。

 

以下はファミ通APPのインタビューでテイ・チョウ氏による回答です。

 

「まずは日本のゲームプレイヤーに受け入れられたことに感謝しています。

リリース初期の段階からプレイヤーからの反響があり、プレイヤーのみなさんがYoutubeやTwitterなどで『荒野行動』を拡散してくれたのはすごくありがたかったです。

私を含めた開発チームの皆は毎日開発の合間を縫って日本のソーシャルメディアを巡り、プレイヤーの皆様からの意見や要望を確認させていただき、そこで得たヒントをもとにゲーム開発を行っています。

意見を上げてくださるプレイヤーみなさんのおかげで、プレイヤーに寄り添ったゲーム運営が実現しています。」※2

 

こうしたユーザのゲーム体験をリアルタイムで確認し、PDCAが回せるというスマホゲームの利点を巧みに活かしているようです。

 

コラボによる新規層の刈り取り施策

スマートフォン向けゲームアプリと従来のコンシューマーゲームで決定的に異なる点は、絶えずアップデートが出来る所にあります。

当然ですが従来のスタンドアローンなゲームソフトではROMカートリッジとして工場出荷された段階でオンラインとは拒絶され更新されない存在となります。

 

しかしサーバーですべて管理しているスマートフォンではオンラインでの更新が実現されています。

これにより、少人数のプレイヤーを招待してのテストプレイや、不具合があった際にすぐデバッグが出来るといったサービス提供が可能になります。

それ以上にマーケティング観点で功を奏すのは、「コラボが容易に実施できる」点です

期間限定で漫画キャラクターのコスチュームが手に入る、原作ストーリーを追体験できる、一緒に戦える、といった夢のコラボが実現できるのです。

 

コラボレーションの多くはキャラクターの版権利用に伴い期間を制限することが多く、これまでのゲームソフトでそれが出来なかったのは一度リリースしてから更新ができない、という点がボトルネックとなっているからでした。

このコラボ戦略により、荒野行動の新規プレイヤーになりうる層に向けて、親和性の高い原作とコラボすることで新たなファン創出を可能としました。

また、副産物としてコラボ作品の原作を知らない層にも原作の知名度をあげられるといった事もあります。

 

シニアマーケティングマネージャーを務めるJoe Jiang氏は荒野行動のコラボ戦略についてインタビューで興味深い発言をしています。

 

先ずは知名度の高さです。

コミックやアニメの場合は,発行部数やGoogleの検索ヒット数などを参考にしていますね。

せっかく実施するからには,できれば“国民的”と呼ばれるくらいのIPとタッグを組ませてもらえればと考えています。」※1

 

こうした即時性を利用した飛び道具としてのマーケティング施策が有効に活きるのも、高レベルのゲームプレイ体験を提供しているからこそです。

 

まとめ

元来ガンシューティングゲームはミリタリー色が濃いため、女性よりも男性ユーザのシェアが多かった歴史があります。

しかし、デバイスの普及により「スマホで簡単に」というサービス提供が実現できるようになりました。

これらに加えてタレントやYoutuberを起用したクリーンなイメージを訴求する宣伝活動により、既存マーケットの中に新規ニーズを作ったと言っても過言ではありません。

 

こうした既存市場の再開発にイノベーションの種は隠れているということでしょう。

スマートフォン向けゲームアプリの最前線にいる荒野行動のマーケティングから、今後も目を離せません。

出典:
※1「荒野行動」のPS4版はスマホ版とのクロスプレイに対応。「TikTok」コラボでさらなるプレイヤー層の拡大を狙う
https://www.4gamer.net/games/402/G040245/20190529020/
※2日本で大人気のバトロワ『荒野行動』はどう進化していく?エヴァコラボ続報やつぎのコラボ情報も入手!
https://app.famitsu.com/20190524_1456889/

ライター名:ビットリズム
プロフィール:国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。

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