バンダイナムコの新たな挑戦! 株式会社BXDが提供する『enza』プラットフォームの意義とその可能性に迫る
2017年、株式会社バンダイナムコエンターテインメント(以下BNE)と株式会社ドリコムが協力し、新たな企業、株式会社BXDを立ち上げました。
BXDはIPを軸に様々なエンターテインメントや商品を組み合わせ、世界で最も多様な顧客接点を持ち、創意工夫によって新しい価値を生み出し続ける企業を目指しています。
BXDが目指す姿と、BXDが提供する『enza』プラットフォームの意義と今後の可能性について、代表取締役社長の手塚晃司氏に伺いました。
バンナムとドリコムの弱点を補うBXD
――最初に、BXDという会社がどんな企業で、何を目指しているのかを教えて下さい。
BXDは新しい遊びを提案する会社です。
新しいワクワクを世の中に届けていくなかで、BNE一社、ドリコム一社だけではやりにくいことがあるので、BXDという形を作りました。
BNEは規模が大きいぶん、最先端の流行や、遊びや趣味、ネット技術といったトレンドを製品に活かすまで慎重で時間がかかることがあります。
一方でIPを扱う経験が豊富で大きな展開も可能です。
ドリコムさんはその逆で流行の最先端に立ち、能力もやる気もあるけど、単独で新しい大きな挑戦をするのはリスクがありました。
そこを一緒にやることで解決していこう、という背景でBXDは生まれました。
――手塚さん自身の略歴についても教えて下さい。
大学を卒業して新卒で入ったのは、バンナムではなく別のゲーム会社でした。
人数が少なくて、若くても仕事を任せてもらえるという理由で選んだ会社です。
実際に企画もやりましたし、開発もプロモーションも商品管理も、全部やらせてもらえました。
営業担当の時は、ゲームショップの店頭でゲーム大会を開催して、その司会なんかもやっていましたね。
他には、デパートでキャラクターの着ぐるみに入って、握手会もやりましたよ。
元々エンターテイメントがやりたかったんですが、単なるゲーム開発を超えて、エンターテイメントの様々な側面を経験できたのは良かったし、面白かったです。
――エンターテイメントの中で、何故ゲームを?
ユーザーの操作や反応で作品ができあがる双方向な点が面白いと思い、ゲームを選びました。
iモードがちょうど出たころに脳トレ系の企画をやっていて、売り上げが一気に上がったんです。
その時にもお客さまとコミュニケーションを取りながら面白くしていく体験ができて、ネットってすごいと思いました。
そんな中で、より多くの人に面白さを届けられる会社に移ろうと思い、当時のバンダイネットワークスに入りました。
バンダイネットワークスに入った後は、『ジャンプランド』という週刊少年ジャンプのキャラクターを使って遊ぶウェブサービスを担当しました。
――いまはもうサービスが終わりましたが、時代を先取りした企画という印象です。
本当に画期的な取り組みだったと思いますし、IP・キャラクターの強さや面白さを体感させてもらえました。
当時、バンダイグループとして初めて週刊少年ジャンプIPのネットワークのサービスに取り組んだのが『ジャンプランド』だったので、あらゆることが手探りでしたね。
バンダイネットワークスのころは、そういうゲーム以外のエンターテイメントが多かったんですが、ある時バンダイナムコゲームスと合併することになり、そこからはまたゲームをやろうと取り組んでいった感じです。
ただ、バンダイナムコゲームスには当然ながらゲーム作りのプロがいっぱいいたので、なかなか自分のやりたいようにゲーム作りを任されるわけじゃない。
仕方がないので誰もやっていないIPに手を挙げて担当したり、細かい実績を上げつつ、ソーシャルゲームが流行し始めたタイミングで、GREEの『仮面ライダーウォーズ』で本格的にゲームに戻って来ました。
――いいタイトルに巡り合って来たんですね。
実はそういう訳でもなく……ガラケーでのソーシャルゲームの全盛期に、この状況がずっと続かないというのは分かっていたので、その時点で次を探していました。
注目したのは当時iPhone3Gとか3GS時代のスマホで、触り心地がこれまでにないものだった。
これでゲームを作ったらどうなるんだろうと、一番初めに『ガンダムエリアウォーズ』を作りました。
実はこれがいまの『ガンダムエリアウォーズ』と全然違っていて、周辺のマップにザクとかの敵が出現するので、そこまで歩いて行って街中にARで表示される18mのザクを見上げながら自分のモビルスーツを呼び出してバトルするという、画期的なゲームだったんですよ。
『ポケモンGO』より断然早い。
ただ、当時のスマホのスペックが追い付かず、なかなか思うようには動きませんでした…。
――回線速度の問題もありました。
それこそ時代が早すぎましたね。
でもそこからリニューアルして、ARは置いておいて別のゲーム性に変えて、ロングランを達成しているゲームです。
『ガンダムエリアウォーズ』が上手く行っていなかったら、バンダイナムコグループのスマホ事業の立ち上がりはもっと遅かったと思います。
『ガンダムエリアウォーズ』でスマホでもゲームが商売になると分かって、どんどん大きいIPを投入する流れになりました。
いまやスマホは主軸のひとつです。
ただ、ガラケーのソーシャルゲームの時代がずっとは続かなかったように、スマホアプリの時代もずっと続くわけではない。
次の遊びはなんだろうというのを我々BXDは考えなくてはならないと……綺麗に会社の話に繋がりましたね(笑)。
IPハブ構想の中心となるenza
――ここからはenzaプラットフォームの話を聞かせて下さい。
enzaはプラットフォームですが、実はenzaという名前やプラットフォーム感をお客さまに意識して頂く必要はないと思っています。
enzaだから人が来る訳ではなく、メインはゲームやエンターテイメントがいつでも楽しめることです。
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(通称シャニマス)がenza専用ではなくアプリ版もブラウザ版もあるのも、マルチタッチポイントの方針のもとで、どこで知ってもらってもどこで始めてもらってもいいと思っているからです。
一方で、ゲームのファンがライブやグッズでもより楽しめるようなことを考えると、そういった企画の自由度が担保できる環境が望まれる。
enzaはそこをどうにかしようと思って作ったものになります。
いろんな事業がIPの周辺にあって、どの事業から入っても、そのIPの別側面に繋がっていける、IPハブ構想というものを提唱しているのですが、それがenzaで一番やりたいことです。
いままで世の中になかった遊び方を提供していきたいと思っています。
――enzaをゲームのプラットフォームととらえるのは、浅い。enzaからライブにもグッズにも飛んでいける。IPを軸にエンターテイメントをつなぐハブがenzaということですね。
起動も圧倒的に早い。
友達からシェアされた時にすぐその場で作品世界に入れるというのは、今後すごく大事な要素になると思います。
例えば友達と飲み会で盛り上がって、「このゲーム面白いよ」とおススメされても、ストアに行って何ギガもあるアプリを落としてとなると、なかなか気軽にはプレイできません。
通信の制限も端末の容量制限もあって、何かをするために何かを消さなくちゃいけなくなると、ストレスにもなる。
そういうのを徹底的になくしていこうと、enzaを作りました。
――それでいてリッチな体験になっている。HTML5に関する相当の技術がないとできないと思われます。
アプリじゃないからと体感を落とすのは、ただの言い訳です。
だからアプリと変わらない体感を用意しています。
技術に関しては、ローンチまでに2年以上かけました。
ほかに先行事例がないので既存の技術者もいないし、全部一から作っているんですね。
未だにほかの会社ではできないことも多いはずなので、そういう意味では画期的なことをやっていると思っています。
中国でHTML5が流行っているのですが、やっぱりまだカジュアルゲームが中心で、読み込み時間が少なくリッチなゲームというのはほとんどでてきていません。
「僕らもHTML5を研究しているんです」という会社さん自体は世界中にたくさんいるので、もしそういう会社が何か作りたいというのであれば、我々からも技術の提供・開示ができます。
もちろん自社の貴重な技術ではあるのですが、それより仲間が増えて盛り上がってくれたほうが我々にもメリットがあると考えていますので。
――開発の苦労について教えて下さい。
実装の部分の苦労はプラットフォームが変わってもある意味同じなので、省きますね。
それよりIPでゲームを作る時に大事なのは、作品の理解です。
お客さまもプラットフォーム云々ではなく、この作品が好きだからやるという人がほとんど。
その人達と向き合えるだけの知識や愛がないとゲームが作れません。
ここに大きな苦労があります。
その点、バンダイナムコグループは30年、40年と作品に向き合い続けて来た企業なんです。
いまからどこか別の会社の人たちがガンダムをやりたい、ライダーをやりたいとなった時に、いままでの40年分の作品を全部見るかというと、難しい。
でもゲームを遊ぶお客さまは長年にわたって作品を見ている人たちです。
だからそれより詳しくないと、説得力が出せない。
そこが出せるのが長年やって来たバンナムの強みであり、BXDにも受け継がれています。
BXDではその土台の上に新しいゲーム性を加えて、どうゲームに昇華させていくのかをずっと考えています。
失敗しながら試行錯誤のノウハウを得る
――BXDが会社としてどこを目指しているのか、就職を希望する人向けに教えて下さい。
会社としても個人としてもそうですが、毎日ワクワクするというのを大事な要素に掲げていて、そういう仲間を集めています。
ベンチャーはそういうものですが、何をやればいいという正解がない。
どうやったらいいかも試行錯誤しながら、失敗しながらやっていかなければなりません。
それが報われる時と報われない時がありますが、どっちの場合でももう一度PDCAを回し、次はこうやろうと決めて自分の力で進んで行けるのが、BXDの一番いいところだと思っています。
――失敗を恐れず行動するのは、なかなか難しいことです。
上手くいっている会社を真似するのは早いし、楽ですが、そのやり方が上手くいかなくなった時に試行錯誤するためのノウハウが溜まりません。
そうではなく、僕らが大事にしているのは試行錯誤するノウハウを蓄積することです。
それがあれば、プラットフォームや技術がどう変わっても、適応していける。
そこをいま一生懸命やっています。
失敗に関して言うと、僕なんか失敗しかしていません。
特にゲーム業界やエンターテインメント業界は、とても100発100中とはいかない。
それが過去の経験から分かっているので、文化としてグループ内に失敗に対する許容が根付いています。
ピピンアットマークやワンダースワン等、過去に大きな挑戦をしてきた鵜之澤伸さんや大下聡さんがその後社長になったことは、何よりも説得力がある実例じゃないでしょうか。
そういう人たちの中には、試行錯誤したすごく貴重な経験が溜まっているので、使わない手はない。
あとは失敗の仕方ですよね。
人のせいにしないで、自分のせいにしてくれればいい。
なんで失敗したのかを反省して、次は成功できるよう学んでくれれば大丈夫です。
――BXDでいま活躍されている方は、どんなスキルを持っている人でしょうか。
みんなゼネラリストというよりは、スペシャリストです。
例えばいまはデータ分析の部門がすごく強い。
そこには業界トップクラスの人たちが集まっています。
その人達もゼネラリストという観点で見ると、足りないところがある。
でもその欠点を見るよりは、誰にも負けない強みや、何ができるかを見ようと思っています。
これがBNEと大きく違うところで、BNEはゼネラリスト採用を進めてきました。
だからBNEにはジョブローテーションしながら、どこに置いてもちゃんとその仕事ができる人が多くいます。
そこがBXDとBNEの一番の違いです。
あとは自分で考えて、自分で行動する。
自走できる人という言い方をするんですが、そういった人が社内に多いし、それがありがたいです。
――お話を聞いていると、BXDは大企業とベンチャーのいいとこどりの会社だという気がします。
そこはすごく意識しています。
親会社の制限があるからベンチャーのように振る舞えないのでは、と思われることも多いのですが、BXDはそもそも制限を受けないために作った会社なんです。
BNEだと稟議を通したり、説明したり、社内の根回しが必要だったり、いろいろ手間がかかる。
そこのスピードを上げるため、自分で判断できるように外に作った会社なので、可能な限り素早く動けるようになっています。
――海外戦略はどう考えていらっしゃいますか?
海外はいま、法律や税金等の問題をクリアにしているところです。
北米もアジアも、だいぶ目途が立ってきました。
ただ正直、僕らもまだ道半ばで、プラットフォームにしろゲームの運営にしろイベントにしろ、これが正解と思ってやれてはいません。
もっともっと試行錯誤して、いろんな手を打って、お客さまの反応を見て変えてという作業の練度を上げて行かなくちゃいけない。
その試行錯誤のノウハウができれば、それは北米にもアジアにも持って行けます。
海外含めて事業の拡大も視野に入れてはいるけど、それと同時に深みを出す、掘り進めることもやっていかなくちゃいけないというのが現状です。
――お客さまからすれば、意見が採用されやすいフェーズということですね。御社はさらに意見の適用が早い。
それをずっと意識したいと思っています。
まずは自分が正しいと思っていることをやる。
お客さまの反応を見て、次の手を打つ。
このサイクルを早くしないと、間違ったことを半年引きずったりしかねません。
『シャニマス』に限って言うと、アプリをローンチするまでの間にも、お客さまと向き合って、より面白いゲームにしようと改善を重ねてきました。
そしてアプリ化して、新しいお客さまが入って来た時に一気に広がった。
こういったことは、いままでだとあまりなくて、アプリは一発勝負に近かったんです。
でも『シャニマス』はお客さまに寄り添って、より面白くしていけていると思っています。
これを受けて次にやりたいと思っているのが、αテストやβテストの導入です。
最近ちょっと増えて来ましたが、さらにもっと前の段階。
それこそイメージビジュアルやPVを発表した段階から意見を頂いて、反映させていけるような仕組みを作りたい。
マンガなら連載前にまず読み切りを掲載して、読者の反応を受け取るようなやり方ですね。
そうして作品が世に出る前に完成度を上げていきたいと思っています。
――最後に読者、ゲーム好きな人に向けてメッセージをお願いします。
ゲーム業界って、仕事してて楽しいですよ。
同じ苦労するなら、楽しい苦労のほうがずっといい。
苦労して、自分のレベルが上がって、もっと大きなことができるようになる。
人生自体がゲームみたいなものです。
そう思えば、どんなに大変なことでもレベル上げのチャンスになる。
そういう楽しくてレベルアップできる場所を我々も提供したいし、お客さまと一緒に作っていきたいと思っています。
とにかくこの仕事は楽しんでやりましょう。
――ありがとうございました。
ゲーム業界経験者が転職するなら
GAME CREATORSを運営しているリンクトブレインでは、ゲーム業界に特化した転職エージェントサービスを提供しています。
ゲーム業界に精通したコンサルタントが、非公開求人を含む3,400件以上の求人の中から、あなたの希望や適正にあった最適な求人をご紹介します。
あなたの転職活動を成功に導くためにサポートいたしますのでお気軽に登録してください!