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ゲームにも80年代ブームを!『ザ・ビデオキッド』に見るプロデューサーに求められる方向性


2019年現在、あらゆるエンターテイメントの分野において大きなブームとなっているのが80年代をモチーフにした作品です。

映画やドラマなどではその存在感が大きなものとなっていますが、実はゲーム業界にもその波が訪れていることはあまり知られていません。

 

『ザ・ビデオキッド』の魅力

ザ・ビデオキッドはいわゆるスクロール式のアクションゲームですが、シンプルな操作性とスリルのあるアクションもさることながら、注目したいのはゲームの隅々にまで散りばめられた、80年代を彷彿とさせるネタの数々です。

 

公式サイト:https://chorusworldwide.com/the-video-kid-jp/

 

80年代の雰囲気をふんだんに取り入れる

主人公はビデオの配達人。

バイト代を稼ぐため、スケートボードに乗って家庭のポストにビデオを荒々しくも投函していくのですが、行く手には様々な障害が立ちはだかります。

 

迫り来る自動車やよくわからない穴など、そこそこのスピードで市街を駆け抜けながら力の限りコインを集めてビデオを投函していくわけですが、道中にはこれでもかというほど懐かしのキャラクターやオブジェクトが設置しされています。

 

某ディスニーキャラクターやトランスフォーマー、ミュータントタートルズといったキッズなキャラクターに始まり、デロリアンや80年代のアメリカンなパトカーなど、当時のハリウッド映画には欠かせない、何処かで見た懐かしいキャラクターたちが街を右往左往しています。

 

そもそも主人公が何処かで見たことのあるような赤いベストを着て、スケートボードに乗っているという出で立ちであるため、80年代の世界観であることを強くプレイヤーに訴えかけているのです。

 

ドット絵でありながら芸の細かい作り込み

そしてこういった世界観を、ドット絵のみで表現している点に製作者の深い愛が感じられます。3Dドットという、通常のグラフィックに比べて写実的な描写が難しい手法で、80年代の日常的なアメリカの景色や、その時代を代表するキャラクターたちを知っている人なら誰でもわかるような形で表現しています。

 

特にドット絵でキャラクターやトレードマーク的なものを再現するのは、元ネタとなる作品やキャラクターに対して深い造詣がなければできない芸当です。確実に彼らの特徴を抑え、デフォルメに成功していることは、グラフィック作品としてもかなり高いレベルで作り込んでいることがわかります。

 

ザ・ビデオキッドは、実際のところゲームそのものだけをみるとかなり単調で、ひたすら障害物を避けながらスコアを稼ぐだけのゲームと見ることもできるため、人によってはすぐに飽きてしまうクオリティであるとも言えます。

 

しかしそれでも、このゲームを家庭用ゲーム機からスマホ版までリリースされるほどの注目を集めているのは、プレイヤーを80年代の世界観に引き込めるような、強烈なグラフィックがあるからなのです。

 

世界で進む80年代ブーム

80年代ブームはゲームに始まったことではなく、映像作品や音楽の流行において顕著です。

最近では映画やドラマにおいては特に持ち上げられることが多くなっており、関心がない人でも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

 

80年代リバイバルが各分野で進む

80年代リバイバルのムーブメントとして、最も顕著な例としては海外ドラマの『ストレンジャーシングス』が挙げられるでしょう。

 

80年代のアメリカの片田舎を舞台に、名作映画をオマージュしつつ少年少女たちが世界の危機を救うという作品ですが、世界中で大きな旋風を起こすことになりました。

 

公式サイト:https://www.netflix.com/title/80057281

 

映画でいえば、スティーブン・スピルバーグ監督作品の『レディ・プレイヤーワン』も80年代リバイバルということができます。

VRの世界で繰り広げられるアクションアドベンチャーの中に、往年のゲームやアニメキャラクターたちがそのまま登場したり、重要な場面でのキーを担う描写も多数盛り込まれています。

 

公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/

 

「古き良きあの時代」への理解を求めるテーマ性も、強い80年代への喚起を促していると言えるでしょう。

 

ゲーム業界にも波が訪れる

80年代リバイバルは、ゲームでも見られます。

 

80年代と言えば、ファミコンやアーケードゲームが時代を席巻した「ゲーム黄金時代」でもありますが、セガの名作ゲーム機「メガドライブ」が「メガドライブ ミニ」となって復活したり、名作パズルゲーム「ドクターマリオ」がスマホ版として美しくなって帰ってきたりなど、次々と現代の技術でリメイクされている様子が窺えます。

 

特にスマホ版への移植の動きは著しく、誰でも気軽に名作を遊べるということで、有料でも購入する傾向の高い中高年層の需要も高いと考えられます。

 

あの頃遊んだゲームを、手頃な値段でいつでも好きなだけ遊べるというのは、大人にとっても嬉しい体験であることは間違いありません。

 

なぜ80年代が流行るのか

このような流行は一過性のものかもしれませんが、今の時代に80年代の文化が流行っていることにはいくつかの理由も考えられます。

 

当時幼少期を過ごした大人のノスタルジー

1つは上でも少し触れたように、80年代は当時幼少期を過ごした大人にとって、ノスタルジックな時代であるためです。

 

失われた古き良き思い出を体験するための装置として、80年代をありありと体験させてくれるゲームや映画は、まさにタイムマシンのような役割を果たしています。

 

80年代を知らない若者には憧れの時代に

当時を知らない若い世代にとっても、80年代は魅力的な世界のようにうつっています。

名作映画が展開しているようなドラマティックな出来事や奇抜でビビッドな世界観は、味気ない現代の雰囲気を忘れさせてくれるような衝撃を与えてくれるのです。

 

音楽で言えば、80年代の日本の名ジャンルとされているシティポップブームも、同様の効果をもたらしていると言われています*1。

 

高度経済成長が絶頂にあった80年代、今の日本では考えられないほど景気が良く、文化的にも華やかだった時代に若者は想いを馳せ、その憧れの念をシティポップを聴くことで昇華させているのです。

 

大人にとっては懐かしい存在として、そして若者にとってはかつて存在した華やかな時代として、80年代は全世代に受け入れられているのです。

 

おわりに

ビデオゲームは独特のカルチャーを持っているように考えられることも多いですが、スマホの登場によって、今やテレビや映画を見るのと変わらないポップカルチャーになりました。

 

ゲームをする人しない人に限らず、今世間では何が流行っているのかを参考にしてみることで、新しいヒット作のヒントを得ることができるかもしれません。

 

出典:

*1柴 那典「今なぜ海外で「シティ・ポップ」が大人気なのか? 火付け役に聞く」現代ビジネス

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65477

 

ライター名:Satoru Yoshimura

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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