レイトレーシングとは?ゲームがリアルになる仕組みや必要スペックを解説


 
当コラムでは、近年のゲームグラフィックス技術の中でも重要性が増している「レイトレーシング」について、その仕組みや実務的な導入の基準などを解説します。
 
このコラムを読むことで、レイトレーシングの基礎知識や、メリット・デメリットが明確に整理されるでしょう。
 

1. レイトレーシングとは

レイトレーシング(Ray Tracing)とは、光の動きを計算し、反射や影をより現実に近く描く技術を指します。「Ray」は「光線」という意味であり、「Tracing」は「跡を追うこと」、「図面や図表や輪郭を描く行為」と訳されます。
 
レイトレーシングはレンダリング技術のひとつでもあります。レンダリングとはデータを演算・処理して画面に映像を出力する手法であり、3DCG制作には欠かせない技術です。
 
レンダリングにはラスタライズやレイトレーシングなどの描画手法があり、さらに影や間接光の計算、見た目の表現手法にもさまざまな方式があります。その中で、レイトレーシングは光の反射や屈折を計算し、鏡やガラス、金属表面や髪のツヤなどをリアルに描写することに役立ちます。
 
かつてレイトレーシングは映画やアニメーションなど、事前に作って上映や放送する際に利用されるものでしたが、GPUが進化したことでリアルタイム処理が可能となり、ゲームでも使いやすくなっています。
 

1-1. ラスタライズとレイトレーシングの違い

ラスタライズとレイトレーシングは、物体の形状や光を表現する技術として、どちらもゲーム業界で重宝されています。
 
ラスタライズは3Dモデルを構成するポリゴンを画面上の2Dピクセルに投影し、その範囲を塗りつぶす手法です。ラスタライズは処理に要する負荷が少ないため、高速描画に適しています。この特徴から、レイトレーシングより古くからゲーム開発を支えてきました。
 
対してレイトレーシングはリアルな描画に適していますが、処理時の負荷が大きい特徴があります。このように双方で異なる点があるため、競合する技術と捉えられていた時期もありますが、技術の発達でレイトレーシングの負荷が低減されているため、最近は補い合う技術として併用される場面が増えています。
 

1-2. パストレーシングとレイトレーシングの違い

「パストレーシング」は、レイトレーシングの発展形として発達した技術です。レイトレーシングは、特定の反射回数や特定の光源効果(鏡面反射のみなど)に限定して計算を行うことが多い一方、パストレーシングは無数の光の経路をランダムにサンプリングし、多数の光の影響を演算してそこから平均的な色合いを選択します。これによって光に関係する表現がさらにリアルに、高精度で描写できるのです。
 
上記の処理を行う際には非常に大きな負荷がかかるため、過去にはリアルタイムレンダリングは困難でした。しかし、近年ハードウェアの発達によってこの障壁が緩和され、リアルタイム性を求めるゲーム業界でも利用されるようになってきました。
 

2. ゲームにレイトレーシングを活用することで得られる映像表現例

ここでは、ゲームのグラフィックにレイトレーシングを導入することで得られる特徴を解説します。
 

2-1. 反射が自然になる

レイトレーシングを使うと、水たまり、ガラス、金属などの映り込みや光の反射がリアルになります。
 
過去にはラスタライズで上記のような処理が行われていましたが、ラスタライズは画面外の物体や光源に配慮できないため、本来存在している画面外の光が反映できず、不自然な映像になることがあります。
 
一方、レイトレーシングを使えば画面外にある物体や光源を踏まえた画面作りができるため、違和感が生じにくいのです。
 

2-2. 影の出方がリアルになる

レイトレーシングは影の表現も得意としています。レイトレーシングが主流になる以前は、シャドウマップというテクスチャが利用されていました。シャドウマップは処理が早いというメリットがありますが、影がぼんやりした表現になりがちでした。
 
しかし、レイトレーシングが一般化した現在は、影の濃さや柔らかさ、距離による変化が表現しやすくなっています。
 

2-3. 光の回り込みで空気感が出る

レイトレーシングは光の回り込みや間接光を考慮できるので、画面に「空気感」を与えることができます。
 
空気感のない映像はのっぺり、あるいはべったりと表現される状態になりがちで、美しさやリアルさ、奥行きが損なわれます。レイトレーシングはこれらの問題を解消するので、没入感が高まります。
 

3. レイトレーシングのデメリット(注意点)

メリットが多いレイトレーシングですが、ゲーム開発やプレイ環境に関して注意点もありますので、以下にまとめます。
 

3-1. GPU負荷が大きく、fpsが下がりやすい

ゲーム開発においてレイトレーシングの問題点は、演算量が多いことからGPUへの負荷が大きいことです。これによってフレームレートが低下し、映像の滑らかさも下がる可能性があります。
 
特に、WQHD(2560×1440)や4K(3840×2160)といった高解像度環境では、計算すべきピクセル数が飛躍的に増大するため、GPUへの負荷が高まります。
 
このため、NVIDIA社のDLSSやAMD社のFSRなどのAIを用いたアップスケール技術、フレーム生成技術との併用が、実用上の必須条件となっています。
 
NVIDIA社のDLSSについて詳しく書いたコラムがありますので、ぜひ以下もご参照ください。
「DLSSとは?仕組みや種類、設定方法、対応GPUなどをわかりやすく解説」
 

3-2. 対戦ゲームでは不利になる場合がある

FPSやTPS、格闘ゲームなど、競技性の高いオンライン対戦ゲームにおいては、レイトレーシングは敬遠されがちです。
 
これらのタイトルでは画像の美しさより、フレームレートの高さと遅延の少なさが求められるため、演算負荷が高いレイトレーシングはプレイの邪魔になることがあるからです。
 

4. レイトレーシングを実装するかどうかの判断基準

ここまでに解説してきたように、レイトレーシングには多数のメリットがある一方、実装の際に注意すべき点もあります。そこでこの項目では、ゲーム開発者に向けてレイトレーシングを実装する際の判断基準を紹介します。
 

4-1. ゲームの売りが“映像体験”にありマーケティング上の訴求ポイントになるか

まず検討すべきは、開発中のタイトルが“映像体験”を売りとしているかどうかです。
 
レイトレーシングは光の屈折などを計算してリアルで深みのある映像を作り出すことに向いています。しかしその一方で、GPUにかける負荷は大きく、画像の滑らかさから見ると不利になる可能性があります。
 
そのため、実装を推奨したいのは、フォトリアル系や没入感を重視するタイトル、あるいはライティング演出を多用するタイトルです。
 
一方、FPSやTPS、格闘ゲームなどのオンライン対戦がメインで、映像のリッチさよりも動作の滑らかさやカクつきの少なさなどが求められるタイトルにはおすすめしません。
 

4-2. 実装・調整・検証コストに見合うか

レイトレーシングを導入する場合、実装の工数がかかるだけでなく、品質調整や最適化、不具合検証の工程が増えることも考慮する必要があります。
 
たとえばオブジェクトの材質設定の調整、ノイズ除去の最適化、さらにはレイトレーシング特有の光の漏れや異常な反射などの検証など、複数の工程が増えます。
 
またゲーム開発者は、描画の負荷を抑えるために細かなチューニングを強いられます。さらに品質保証チームも、レイトレーシングのオン・オフ両方の環境でテストをしなければなりません。
 
これらを踏まえて、プロジェクトの予算が上記のような追加コストを許容できるかどうかを見極める必要があります。
 

4-3. パフォーマンスへの影響を許容できるか

レイトレーシングは映像にリアルさや深みをもたらす技術ですが、ゲームのパフォーマンス低下が懸念されます。パフォーマンスの低下率は状況によりますが、新しいハードウェアを用意していても、20~50%もフレームレートが低下すると言われています。
 
フレームレートが低下するとカクつきが発生するなど、ユーザーのストレスになる現象が発生するため、開発者はこの点を考慮しなければなりません。
 
上記の問題点はDLSSやFSRなどのアップスケール技術でカバーすることができますが、ハードウェアの要求が上がることになるため、ユーザーを選ぶリスクも伴います。
 
これらを踏まえると、開発するのが画質優先タイトルか、操作性優先タイトルかでレイトレーシングの実装判断は分かれます。
 

4-4. ターゲットユーザーのプレイ環境と合っているか

前の項目「パフォーマンスへの影響を許容できるか」と関連する検討事項ですが、レイトレーシングの実装を前提としたゲーム開発を行うと、そのポテンシャルを伝えるために、ユーザーにある程度の環境を整えることを要求する必要があります。
 
推奨環境が高いと、低スペックのハードウェアしか持っていないユーザーはそのタイトルを楽しめなくなり、万人向けのタイトルとは言えなくなります。そのため、ハイスペックなPCや比較的最近リリースされたコンシューマー機を持つ層をメインターゲットとするかどうかも、レイトレーシング実装の条件と考えるべきでしょう。
 

5. まとめ

レイトレーシングは、ゲームにおける光の表現に深みを与え、非常にリアルな映像を作り出す技術です。自然な光の反射や影、現実に近い空気感などはプレイヤーにこれまでにない没入感を提供します。
 
しかしその一方で、GPUへの負荷の高さや開発コストの上昇、ユーザーにハイスペックなハードウェアを要求することなど、開発者として懸念しなければならない要素もあります。
これらを踏まえると、レイトレーシングは優れた技術でありながらも、すべてのタイトルに実装すべきとは言えません。
 
ゲームエンジニアはまずレイトレーシングのメリット・デメリットをしっかり把握して、自社のタイトルに適しているのか、コスト面で折り合うのか、必要な環境が想定ユーザーにマッチするのかなどを考慮して実装を検討してください。
 

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