ドラゴンクエストウォークで学ぶニッチジャンルでの戦い方


2016年にNiantic社が開発したポケモンGOの登場により、位置情報×IPのスマホアプリゲームは一大ジャンルとなり、各社でしのぎを削っています。

そんな中、国内IPの中でもリリース後30年以上に渡って新しいプラットフォームで新タイトルを作り続けるドラゴンクエストシリーズから待望の位置情報ゲームがリリースされました。

それがドラゴンクエストウォーク(以下ドラクエウォーク)です。

 

リリース1ヶ月で8600万ドルの売上予想が立てられており、1ダウンロードあたりの客単価で見るとポケモンGOが12ドルだったのに対し、ドラクエウォークが51ドルと大きく乖離があります。

また、かつてドワンゴ社がリリースし、わずか7ヶ月で終了してしまった「テクテクテクテク」という位置情報アプリは、終了理由を「現在の課金規模では事業として成立しない為」と発表しています。

 

ドワンゴの親会社であるカドカワ株式会社が発表した決算によると「売上高900万円に対して営業赤字が8億600万円」という状況であり、ゲーム性とキャッシュポイントの両立は課題でした。

そんな中、このドラクエウォークの成否を占う上で重要な「ユーザがお金を落とし易いかどうか」という点で、上述の売上予想は他のタイトルとも一線を画すヒットタイトルの兆しと言えそうです。

 

本事項では、ニッチジャンルで且つ競合が既に揃っている状況で新規タイトルをリリースする際に重要な事をドラクエウォークを事例に導き出します。

 

概要

ドラクエウォークは、ストーリーに沿って実際の地図を模した画面内フィールドで目的地を設定し、プレイヤーがそこに向かって歩きながら、道中で現れるモンスターを倒していくゲームです。

任意で設定した目的地への過程でレベルアップによるパラメータ強化や、装備アイテムのガチャといったイベントで継続的にプレイヤーのリテンションがなされています。

従来の伝統的なドラクエとも、ソーシャルゲーム性に特化した「星のドラゴンクエスト」や「ドラゴンクエストモンスターズスーパーライト」とも異なる第三のドラクエとして期待されます。

 

参照記事
ドラゴンクエストウォークに学ぶwithコロナで試される位置情報ゲームのピボットな開発スタイル

 

片手で済むカジュアルなバトルシステムとジレンマ

本タイトルではモンスターと遭遇した際にドラクエシリーズではおなじみの、1人称視点で戦う

画面に切り替わります。

そこからはプレイヤーが任意でコマンドを選択してバトルをしますが、より位置情報ゲームとしてサクサク進むUXを提供する為に「オートバトル」機能が実装されています。

これはあらかじめ戦闘方針を設定しておき、その方針に則ってAIが勝手にコマンドを選んで戦う機能です。

従来のドラクエファンからすると疑問が沸くかもしれませんが、あくまでこのゲームが本格RPGではなく位置情報ゲームであることへの優先度が高い為の英断だと推測されます。

 

こうした「これまでのドラクエ」を大切にしつつ、実質ゲームカテゴリをRPGではなく位置情報ゲームと再定義した為のドラスティックなスタイル変更がゲーム性と面白さを両立させています。

 

課金要素

ドラクエウォークでは各クエストに推奨レベルという概念が存在しており、プレイヤーのキャラクターが推奨レベルまで到達していないと攻略は難しい、というシビアな目安が開示されています。

しかしこの推奨レベルを超越して攻略できるのが「装備品」です。

 

これまでの伝統的なソーシャルゲームで確立された、装備品ガチャシステムは本タイトルでも実装されており、ガチャを回す為に必要となるのがジェムと呼ばれるゲーム内通貨です。

ジェム自体はゲーム内クエストをクリアしたり様々な報酬としてプレイヤーが得られますが、本タイトルでは従来のゲームとは異なる課金要素があります。それはマイレージという概念です。

このマイレージは「歩く、戦闘する、フィールド内にある壷を割る」というアクションをすることで勝手に溜まって行くポイントで、ゲーム内の様々なアイテムやガチャチケットに変更できます。

マイレージにはランクがあり、通常のマイレージパスよりも課金して得られるゴールドマイレージの方がおよそ2.5倍もポイントが溜まり易い為、やりこむユーザほど不可欠な要素となります。

 

ガチャの為のジェム購入に課金することへ抵抗のあるプレイヤーに「歩くため」という言い訳を作って課金させることに成功している、というのが特徴です。

この特徴こそがこのタイトルを位置情報ゲームとして頭一歩抜きん出る要素になり得るのです。

 

まとめ

ドラクエウォークの本質はこれまでのRPGをなぞりながらも、体感型のフィットネスツールとしてポジションを形成していることにあります。

もちろんこれまでの位置情報系アプリでも同様に、歩くことがゲーム内のインセンティブとなり、ウォーキングを促すケースは多くありました。

しかし物語性、世界観をフィットネス要素と絡め、歩くことにより意味を持たせる動機作りが他の競合アプリとの優位性になっていることは間違いありません。

 

「このゲームは、コマンド式RPGゲームだ」という前提をひっくり返し、「位置情報ゲームとして原典から要素を逆引きし再構築する」というアプローチ。

これこそがニッチジャンル且つ、競合が既に揃っている状況で新規タイトルをリリース、成功させる為に必要なアプローチであることは間違いないでしょう。

 

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ライター名:ビットリズム

プロフィール:国産ゲームで産湯を使ったロムネイティブなゲームエバンジェリスト。QOL向上に必要なのはワーク・ライフ・ゲームバランスだと信じている。

 

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