無人島から宇宙へ。スペースアドベンチャー作品に見る、次世代のサバイバル企画に求められるテーマ
自身の生き残りをかけたサバイバルゲームは、ドキュメンタリーからビデオゲームまで、あらゆるコンテンツにおける人気ジャンルですが、ビデオゲーム界隈では宇宙サバイバルが人気上昇中です。
目次
惑星サバイバルを体験できる『INO』
伊能忠敬に名前を由来する『INO』は、その名の通り未知の惑星における探索と生存、地図の完成をミッションとするサバイバルゲームです*1。
公式ページ:https://www.fantec.co.jp/game/ino.html
2Dドットの世界で、宇宙空間を生き残れ
資源採掘にでかけたプレイヤーは、あろうことか危険な惑星にたどり着いてしまい、交信が途絶えたクルーを探しに惑星へと降り立つ、というのが一連のストーリーです。
探索に必要な装備品は全て他のクルーが持って行ってしまっており、サバイバルやクルーを探すのに必要な道具は全て自分で調達しなければならないという設定でこのゲームは始まります。
地球とは全く環境が異なる、不安定な惑星を少しずつ解き明かしていく楽しさが、最大の魅力となっています。
『INO』が特徴的なのは、全編がドット絵で進行するレトロな空気感が溢れているところでしょう。
3Dグラフィックに直接的な表現力は劣るものの、豊富な登場キャラクターや色鮮やかでユニークな世界観、そしてそこに流れる音楽が見事に組み合わさることで、唯一無二の世界観を構築することに成功しています。
2Dドットのスマホゲームだからこそ、その世界に没頭できる魅力を備えている、見逃せない作品となっています。
サバイバルアトラクションを楽しめる作品
人跡未踏の土地だけあって、これまでにみたことのない生き物や素材の数々も目立ちます。中にはもちろんプレイヤーに牙をむく、危険な生態も存在する中で生き延びることを求められますが、ゲームそのものの難易度はそこまで難しくないのも嬉しいところです。
宇宙服のバッテリーの概念や、敵キャラクターから受ける攻撃で減少するHPの概念はあるものの、相当に油断しなければゲームオーバーにならないよう、控えめの難易度となっています。
『INO』が提案するのは、あくまでも宇宙空間に放り出されてしまった時、どうやって生き延びるのかという宇宙サバイバルのアトラクションであり、実際のリアルな生存競争を体験するシミュレーションではありません*2。
まるでテーマパークのアトラクションのように、本当に死なないとはわかっていても、やっぱりドキドキしてしまうような楽しさが、『INO』には込められています。
未知の惑星開発をポップに楽しめる『Astroneer』
ビジュアルこそ可愛らしいものの、ハードな宇宙サバイバルを楽しめる『Astroneer』
は、密かに大きなファンコミュニティを形成しています。
公式サイト:https://astroneer.space/
3Dでポップな惑星を自由に探索
『Astroneer』は、3Dグラフィックで描かれる惑星を自由に探索し、現地で資材を集めながら、その星での生活を拡充させていくことを目指すゲームです。
エネルギーの調達も自ら行い、移動の手間を大きく軽減してくれるビークルも、惑星の開拓が進めば作り出すことができるようになります。
3Dとはいえ、登場キャラクターや惑星のビジュアルが、どこかポップで親しみやすい姿形をしている点も特徴です。
プレイヤーキャラクターは人型ではあるものの、写実的すぎず、どこか憎めないところがあります。
惑星の原生生物もグロテスクすぎず、全体的にファンシーなのがこのゲームのポイントです。
油断すると命の危険に晒されるシビアなゲームバランス
ビジュアルがファンシーとはいえ、『INO』とは異なりサバイバルゲームらしい、シビアな生存競争を迫られるのも特徴です。
不意に襲ってくる原生生物や、崖で足を滑らせての死など、ゲームオーバーの要因はそこかしこに溢れかえっています。
『INO』は2Dドットということもあり、死亡条件はかなり限定されていましたが、『Astroneer』は3Dゲームなので、次元が増えただけ、ゲームオーバーの要因も増えています。
ファンシーな世界観の中でリアルな死に向き合いつつ、慎重に未開の惑星を住みよい場所に変えていくシミュレーションを体験できるのが、『Astroneer』の醍醐味と言えるでしょう。
なぜサバイバル企画に宇宙が選ばられるようになったのか
従来のサバイバルのイメージといえば、無人島や砂漠など、地球内をテーマにしたものが多かったものですが、今宇宙サバイバルが増えている原因はどこにあるのでしょうか。
地球から消滅しつつあるフロンティア
まず一つは、地球にはもはや人々をワクワクさせるような未開の地が見られなくなったというところです。
テクノロジーの発展により、地球上のあらゆる大陸や島々は可視化され、誰もたどり着いたことのない秘境という場所は、この星からはほぼなくなってしまいました。
もちろん、誰も言ったことのない地域はまだまだ存在していますが、かつてヨーロッパ人が夢見た「新大陸」や、アメリカの西部開拓時代にあったフロンティア精神を刺激するようなわかりやすい目的地のイメージは、現代人からはなくなってしまったのです。
科学の発展で膨らむ宇宙の多様性
人が出生地や地域を問わず世界中を駆け巡るグローバリゼーションと、テクノロジーの発展によって、あらゆる地域が見える化されたことによって、どこに行っても誰かしらの人間がいて、社会を築いているという環境が明らかになった今、地球人が抱くのは宇宙のフロンティアです。
地球よりもはるかに大きく、あるいははるかに小さい惑星が無数に浮かぶ宇宙では、まさに『INO』や『Astroneer』で描かれていたような未知との遭遇や危険をはらむアドベンチャーが待ち受けているかもしれません。
現代の最先端技術をもってしてもどうにもならない災難の数々、そして未知の存在への夢が、私たちの好奇心をくすぐります。
2020年を生きる私たちにとって、もはやサバイバルゲームのスリルは、宇宙空間でしか得られない、壮大なエンターテイメントとなっているのです。
おわりに
人跡未踏の地をテーマにするサバイバルゲームは、いつの時代もプレイヤーをワクワクさせるコンテンツでありました。しかしながら、時代に合わせてそのテーマも変遷し、今や宇宙がテーマとなる時代に差し掛かっています。
今でこそゲームでのみ繰り広げられるSFファンタジーですが、いつの日か宇宙も私たちにとっては馴染み深い場所になっていくのかもしれません。
併せて読みたい記事
→ゲームの作り方は現場で学ぶ。『GIGAFALL』
→詰め込みすぎたゲーム『Craftopia』は理想の設計と言えるのか
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出典:
*1 ゲームキャスト「未知と出会う不安・喜びを味わう惑星探検ゲーム『INO』レビュー。孤独な惑星の地図を作ろう」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65916250.html
*2 上に同じ
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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