ゲームの企画を短時間で生み出すために必要なこと
ゲーム作りは企画が最も肝心で、難しいと言われることもありますが、『薔薇と椿 ~伝説の薔薇の嫁~』は企画のきっかけの掴み方を暗に私たちに伝えてくれています。
「薔薇と椿 ~伝説の薔薇の嫁~」公式サイト
https://www.roseandcamellia.com/
「薔薇と椿 ~伝説の薔薇の嫁~」公式Twitter
https://twitter.com/bara_to_tsubaki
「薔薇と椿 ~伝説の薔薇の嫁~」DLページ
App Store:https://apps.apple.com/jp/app/id1494666973
Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=nigoro.room6.rc
目次
ユニークなゲーム性が感じられる『薔薇と椿 ~伝説の薔薇の嫁~』
本作は格闘ゲームに近いシステムを搭載していますが、できることは相手をビンタするだけという、一風変わった作品です。
動画:https://www.youtube.com/embed/-knwi8lT5Uc
※メーカー・room6 LLC.より公開されているPV。
格闘ゲームをビンタのみに集約
大正時代が舞台という本作ですが、ゲームがスタートすると二人のお嬢様が対峙し、交互にビンタを放つバトルへといざなわれます。
画面の指示にタイミングを合わせてビンタを繰り出していくのですが、時としてそれが避けられ、カウンターを食らってしまうこともあります。
しかし、それはこちらとしても同じことです。
相手のビンタにタイミングを合わせて回避し、カウンターを繰り出せば、ゲームを有利に進めていくことができます。
ゲームはどちらかの体力がなくなった時点で勝敗が決します。
先に相手の体力をゼロにした方が勝者ということで、ルールとしてはシンプルで、誰にでもわかりやすい設定です。
基本的にビンタしか繰り出すことはできませんが、回避やカウンター、そして掴むというコマンドを上手に使い分けながら、体力を削っていく技術が求められます。
コマンドはシンプルであるものの、本格的な格闘ゲームさながらの読み合いと臨場感を、しっかりと味わうことができるのです。
ビンタが映えるお嬢様設定
本作の舞台設定は大正時代ということで、激動の時代を生きる名家の令嬢たちの小競り合いを楽しむことができます。
いわゆる格闘ゲームでおなじみの大男たちがビンタで戦っているようでは、少々物足りなさを感じるところです。
しかし、「ビンタだけ」というアクションの少なさを、暴力に不慣れな令嬢たちが争っているというケースに当てはめ、物足りなさを抑える働きをしています。
様々なアクションを作品に盛り込めるのなら、それに越したことはありませんが、どうしても予算や時間の都合をつけることが難しいことはあるものです。
『薔薇と椿』が上手なのは、手数の少なさを令嬢という設定だからと理由づけることで、このようなシンプルなゲームを作品たらしめているところなのです。
ビンタシーンはどのようにゲームに落とし込まれたのか
「ビンタしかできない」という設定は、一見するとあまりにも単調すぎると思われますが、今作ではしっかりとゲームとして成立しているのが面白いところです。
地味な小競り合いを「上品な殴り合い」に昇華
令嬢同士によるビンタの応酬というものは、「ストリートファイター」や「鉄拳」に馴染みのあるゲーマーにとっては、いささか物足りなさを覚えるかもしれません。
しかし、『薔薇と椿』はこの単調さを逆手に取り、「厳かな空間で繰り広げられる、静かで上品な殴り合い」という設定を貫いたことで、「お嬢様格闘ゲーム」というステータスの獲得に成功しています。
ゲームをプレイする側の人間は、必ずしもボリュームのあるゲームを求めているとは限りません。
今作では「お嬢様同士の小競り合い」という設定によって、激しいアクションが必要なくなったことで、プレイヤーは「ビンタの応酬」に駆け引きやドラマを感じることができるようになったのです。
どれだけ規模の小さい争いでも、そこに迫真の物語があれば、プレイヤーは引き込まれていきます。
本作において注目すべきは、ゲームのユニークさもさることながら、雰囲気づくりの重要性を訴えかけていることにもあるでしょう。
どこかで見たようなドラマ展開が場を盛り上げる
人の心を動かすドラマというものには、プレイヤーが共感できる設定を採用しなければなりません。
たとえ遠い星の宇宙人たちによる物語であっても、環境問題に立ち向かう姿や、侵略者との戦いにおける団結は、私たちの心を動かしてくれるドラマがあります。
今回の大正ロマンな世界観における名家の陰湿な戦いというものも、日本のドラマや映画では見かけることの多い設定です。
相続争いや跡取りなどのドロドロとした戦いは、みっともなく関わり合いたくないものとして心に残っています。
『薔薇と椿』もまた、そんな設定を拝借した陰湿な戦いを描いており、多くの人に「これが名家の女の戦いなのか」ということで、理解してもらうことができるよう作られています。
家庭用ゲーム機のような大型タイトルが並ぶ場所では、今作のような地味な争いを描くことはできません。
しかし、スマホゲームは開発者の好きなように、あらゆるドラマをゲーム化し、人に楽しんでもらうことができます。
『薔薇と椿』もまた、地味な争いであるとはいえ、共感できるドラマを描くゲームに違いありません。
自分が気になったドラマを、しっかりとゲームとして楽しんでおらえるのは、スマホゲームの大きな特徴なのです。
些細な出来事をゲームに落とし込むために
『薔薇と椿』のように、些細な出来事をしっかりとゲーム化するためには、どのような心がけが必要なのでしょうか。
ドラマや映画を見て、印象的なシーンをしっかりと記憶
些細でも印象的なシーンというものは、多くのドラマや映画、アニメに差し込まれているものです。
たとえば、夜のバーでバーテンダーが「あちらのお客様からです」とグラスをスライドさせて持ってきてくれる動作などは、多くの作品においてパロディ化されるインパクトを残しています。
本シーンの元ネタと言える作品は定かではありませんが、それでもそれを見た人が、一度は真似したくなるような行為であったことには違いありません。
これをゲーム化したのが、任天堂の『メイドインワリオ』です。
ミニゲーム集となっているこの作品では、バーテンダーのスライドさせてきたグラスをうまくキャッチできるかで遊べるよう作られています。
なぜ印象的だったかを考え、ゲームに落とし込んでみる
自分が面白いと思ったシーンや、話題になったシーンは、なぜ人に印象を与えているのか、何が面白いのかを考えてみることで、思わぬアイデアが浮かび上がるかもしれません。
『薔薇と椿』のビンタの応酬は、暴力に不慣れな女性が力の限りビンタを静かに打ち合うシュールさに面白さがあります。
あるいはバーテンダーの場合、そんな上手にグラスをテーブルの上で滑らせられるのかという疑問と、つい試してみたくなってしまう好奇心を刺激する、少しだけ非現実的な行為となっています。
「あれはどうなっているのだろう」と考えてしまうシーンや、なんとなく笑いがこみ上げてくるシーンというものは、ゲームで再現しても、見劣りしない魅力が秘められているものです。
そんな見所に注目しながら作品を楽しむことで、ゲーム化のアイデアも自然と増えてくるのではないでしょうか。
おわりに
ゲームというものは必ずしも大人気作品に準拠した、一大スペクタクルを描く必要はありません。
それよりもむしろ、そのような巨大タイトルでは実現できないような、些細な事柄をゲーム化していくことにこそ、インディーゲームの開発者の意義を見いだすことができるのではないでしょうか。
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→一発アイデアでも大丈夫。スマホゲームに求められる企画力とは
→人間を機械で表現?『Homo Machina』に見るゲームの面白いアイデアの作り方
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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