『Plague Inc. -伝染病株式会社-』に見る、炎上しないゲームの作り方


ゲームも創造物の一種である以上、時として作品が誰かを傷つけ、大きな騒動になってしまうこともあるものです。

しかし『Plague Inc. -伝染病株式会社-』は、デリケートなテーマをゲームに採用しつつも、多くの人に愛されることになった、大ヒット作品です。

 

大ヒット作品となった『Plague Inc.』

このゲームは簡潔に言えば、プレイヤーがウイルスとなり、世界中の人々にウイルスを感染させることを目的とする、バイオシミュレーションゲームです。

 

ウイルスを世界中の人々に広めるシミュレーション

通常、人間はウイルスと戦い、いかに感染を抑制し、人間への被害を最小限に留めるかが問われる立場にあります。

 

しかし、このゲームにおいてはその立場は逆となります。

プレイヤーはウイルスとなり、いかにしてウイルスの感染を世界へと広め、人類をパンデミックに導くかを試す、シミュレーションゲームになっています。

このゲームは伝染病の感染モデルを非常に高いレベルでシミュレートしており、感染拡大のプロセスが非常に精巧であるという評価も受けています*1。

 

逆に、人類がウイルスの封じ込めに動く際のプロセスも、かなり高いレベルで再現されています。

空港の検疫や都市封鎖、媒介となる生物の駆除など、徹底してウイルスの拡大阻止を行います。

初めてこのゲームをプレイするという人の多くは、瞬く間に感染を封じ込められてしまい、ゲームオーバーとなってしまうケースもあるほどです。

 

今回のコロナ騒動でもわかるように、人類の感染症対策のノウハウは非常に高いレベルに達しており、容易にパンデミックが起きてしまうことはありません。

ただ、一度初動での封じ込めに失敗すると、あとは手がつけられないほどの猛威を振るうのも、ウイルスの脅威です。

ウイルス側は、初動でどれだけ人間の封じ込めを回避できるかが、このゲームでは問われているということです。

 

新型コロナウイルス禍における活躍にも注目

2012年に誕生したゲームは、一躍大ヒットを記録し、多くのファンを生みました。

今日でもその人気は健在ですが、新型コロナウイルスの流行はさらにその人気を後押ししました。

 

新型の感染症が話題になるたびに注目を集めてきたゲームですが、この度の新型コロナウイルスの流行を受け、かつてないパンデミックに人類が危機に直面し、新しい局面を迎えます。

『Plague Inc.』の開発元であるNdemic Creationsは、WHOの設置した基金に25万ドルの寄付を送り、新しいゲームモードの搭載を発表しました*2。

 

その新モードというのが、これまでの伝染病を広めていくシミュレーションとは真逆の仕様で、伝染病を食い止める「対パンデミックモード」です。

このモードは無料で実装が予定されており、検疫や公共サービスの閉鎖など、実際に起こりうる、あるいはコロナショックで目撃した施策の数々を投じ、感染食い止めを体験できます。

通常モードでは強敵であった人類ですが、今回はウイルスを脅威としつつ、理想的な防疫対策について考えることができるシミュレーションを楽しめるというわけです。

 

なぜ『Plague Inc.』は批判を受けないのか

新型コロナウイルスの世界的な流行により、決して笑い事にはできなくなったパンデミックという現象。

そんな中でも『Plague Inc.』が大いに支持されたのは、どういった理由があったのでしょうか。

 

社会的なメッセージの強さ

一つには、社会的なメッセージが非常に強いことが挙げられます。

このゲームは前述のように、高いシミュレーション能力を有しており、パンデミックはいかにして起こるのか、ということを体験することができます。

また、パンデミックを引き起こす正体はどんな生物なのか、人類はどのように感染を食い止めるのかということを、ウイルスの側から理解することができます。

ウイルスの側に立つことで、優れた防疫システムが現代には採用されていることや、それを回避して感染を拡大させるウイルスの脅威を、しっかりと学ぶことができるのです。

ゲームでありながら、感染症の恐ろしさを真剣に伝え、そして対策について教育の機会を与える、優れたエンターテイメントと言えるでしょう。

 

作り込まれたゲームシステム

このゲームは単なる訓練用のシミュレーションとしての正確さだけでなく、ゲームとしての面白さもしっかりと備えているところが特徴です。

高い難易度で頭を使いながらウイルスを感染させる戦略性と、感染を効率よく広げていくために必要な症状は何かを選び、カスタマイズする多様性を楽しめます。

高いレベルのプレイスキルの要求と、豊富なカスタマイズと戦略を選択できるゲームシステムのクオリティの高さこそ、このゲームの真の魅力であると言えます。

 

押さえておきたい、炎上しないゲームの作り方

このように、『Plague Inc.』はゲームとして真っ当な、作り込みの追求というアプローチによって評価を得ました。

ここから学べることは、ゲームクリエイターがしっかりと頭に入れておきたい考え方です。

 

社会的なテーマに対しては真剣に向き合うこと

一つは、社会的なテーマを取り扱う場合、決して茶化したりせず、真剣に向き合う姿勢を貫くことです。

『Plague Inc.』がパンデミックの最中でも評価されているのは、真摯に感染症と向き合い、プレイヤーにその恐ろしさを伝え、それでいて現実の感染症対策に支援を行なっているためです。

 

開発者たちは決して感染症を茶化したりせず、本当に人類にとって脅威であることを、ウイルスをプレイさせることで逆説的に伝え、その啓蒙に努めています。

生死や文明の存続に関わる重要なテーマと真剣に向き合う姿勢もまた、このゲームが高く評価されている所以です。

 

冗談半分で第三者を揶揄したり、攻撃したりしないこと

このゲームが優れているのは、実際に存在する特定の団体や人物を名指しで攻撃したり、こきおろしたりするような振る舞いをしていない点です。

 

いくつかのゲームには、実在の政治家や人物を題材に、ブラックジョークとして彼らを貶めたりする描写を有する作品もあります。

しかしこれは不用意に敵を作ったり、人々を不快にさせて社会の分断を促したりする行為であるため、モラルある振る舞いであるとは言えません。

特にこのゲームのように、多くの死者をうみ、生活に打撃を与えている感染症のようなテーマを題材とする場合はなおさらです。

テーマの問題とまっすぐ向き合い、高いレベルの啓蒙に努めるにはどうすればいいのかを、真剣に考える必要があるでしょう。

 

おわりに

『Plague Inc.』は、一見ブラックジョークのようなゲームではありますが、パンデミックの最中でも高い人気を誇ります。

ゲームの高いシミュレーション能力や、社会貢献への意識の高さ、啓蒙の意義に富んでいることから、評価されているわけです。

大人気ゲームがいつまでも人気である理由には、志の高さも必要であるということなのでしょう。

 

 

出典:

*1 電ファミニコゲーマー「新型コロナウイルスの危機が迫る今、あの「人類を滅亡させる作品」について語ろう【名作紹介:Plague Inc. -伝染病株式会社-】」

https://news.denfaminicogamer.jp/iphoneac/200129d

 

*2 4gamer「「Plague Inc.」のNdemic Creationsが,コロナウイルス対策に25万ドルの寄付を発表。さらに対パンデミックの新モード実装も明らかに」

https://www.4gamer.net/games/243/G024364/20200324095/

 

ライター名:Satoru Yoshimura

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

『Plague Inc.』公式サイト

https://www.ndemiccreations.com/en/

『Plague Inc.』ストアページ

App Store:https://apps.apple.com/jp/app/plague-inc-/id525818839

 

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