【前編】『バーチャファイター』『シェンムー』を生み出した伝説のゲームクリエイター・鈴木裕氏へインタビュー!

――次に体感ゲームシリーズの制作に携わられましたよね。

 

業務用に比べて開発の人数も少なく、失敗しても会社へのダメージが少ないコンシューマの、小規模プロジェクト開発から始まって、次はアーケードの開発を行いました。

 

アーケードになると、今度はコインオペレーションゲームになります。

5000円払って遊ぶコンシューマゲームって、ちょっと遊んで5000円捨てるって訳にはいかないから、ある程度は遊んでもらえるんです。

 

でもコインオペレーションのゲームは、100円玉を入れてちょっと面白くなかったり、操作がわからないと、次のゲーム機に移ってしまう。

だから100円入れて説明書読まなくてもできるゲーム、を理想として作っていました。

 

――子どもの頃、『ハングオン』をプレイしている人を見ているだけで、バイクのこと何も知らなくても格好いいなぁって思えました。

 

あの当時は、ゲームが教育の敵だったんです。

地下の喫茶店で不良がタバコを吸いながら、コイン積んでスペースインベーダーやっているアンダーグラウンドのイメージが強くありました。

 

だからゲームをプレイしている人の姿を変えられたらいいなと思っていました。

 

バイク型の大型筐体にまたがってゲームをしていると、ちょっとスポーティな感じしませんか。

 

アンダーグラウンドな状態から脱出して、もう少しエンターテインメントとして見られるように、プレイしている姿を変えていきたいというのがありました。

すこし、今までのゲームより、健全な感じがしましたから。

 

――確かに格好いいから俺もやろう、というモチベーションがありましたね。『スペースハリアー』なんかも、上手い人がプレイしているとギャラリーができていました。

 

以前『ハングオン』の企画書がぽろっと出て来たことがあって、久しぶりに読んでみたらビックリしたんですよ。

ターゲットユーザーという項目に、「16歳・男」って書いてあるんです(笑)。

 

免許取れなくて、でもバイクに乗りたい、そういう男の子だけをターゲットにしている。

よくこんな企画書通ったなって思いましたね。

 

でも面白いのは、そこまでフォーカスして作っているからこそ、できたものが尖がるんですね。

「なんでも美味い」というレストランより、「マグロだけは負けない」と言っている食堂のほうが、期待度が上がることと似ています。

 

多分僕のゲームって、大なり小なりそういうところがあるんだと思うんです。

だからターゲットユーザーを思い切り絞るのは、それはそれで悪いことじゃない。

分かりやすくて特徴がはっきりするから、セールスもしやすくなりますしね。

 

 

――次の転換点としては、バーチャファイターでしょうか。

 

『ハングオン』から始まって、今までテーブルタイプのゲームが主流だったところに体感ゲームというジャンルを作っていきましたが、最初はリスクヘッジの関係で予算も少なく、ムービング機構やモーターも入っていませんでした。

 

メカトロニクスの部隊の人が持っていた夢に向かって、僕らもそれにピッタリのゲーム内容というのはどういうものだろうと考えながら、全社一丸となって動いていました。

 

その後『スペースハリアー』でモータードライブを入れて、最終的にR360というノーリミットでグルグル回る筐体までたどり着きました。

 

地球駒みたいに無制限に回るという、大きな最終目標を達成してしまいましたから、

直撃の刺激を与える方法はもう限界点まできてしまった。

 

だから次は、錯覚だけで人を転ばすということに注力することに変化していきます。

3Dで正確なパースペクティブの表現をして、CGによって新たな手法を開拓する時代の幕開けです。

 

先にお伝えした通り3Dは僕が学生時代から触れていますし、体感ゲームもハングオンから内部は全部3Dだったんですよ。

最終的にスプライトで、目に見える部分だけ2Dにしていただけなんです。

 

それがとうとうバーチャレーシングの時にオール3Dのボードができた。

そういう意味で、体感ゲームの第一世代が終わって次に第二世代、3Dの時代に突入したのです。

 

3Dといっても『バーチャレーシング』とか『バーチャファイター1』は、フラットシェーディングと言って、三角形のポリゴンが1色でしか表現できません。

他社さんの某格闘ゲームでは素晴らしいグラフィックスを売りにしている一方で、我々は絵を使えませんでした。

 

でも、段ボール箱みたいなキャラが殴ったり蹴ったりしているけれど、動きだけは恐ろしく綺麗で、スムーズなんです。

そこがまた尖っていたんだと思います。

 

――動きが綺麗だったから、ゲームをしていると勝手にビジュアルが補正されていくんですよね。

 

『バーチャファイター1』の時はたまたま毛色が変わったものが出てきたな、と思っている人がいて本当に3Dの時代が来るのか皆が半信半疑でした。

そんななか僕は必ず3Dの時代がくると信じていました。

 

CPUの能力が上昇するカーブを考えると、いつごろにそうなるのかも見えていましたし、3Dの表現は映画をずっと追いかけていくんだろうなとも思っていたので、映画を見ていればゲームの将来も予想することができました。

 

それが皆にもはっきり伝わったのが、多分『バーチャファイター2』からなんです。

そこでテクスチャマッピングという技術が導入されて、3Dのゲームにも業界で培われて来たグラフィクスがそのまま使えるということが証明されました。

 

僕はその時に、すべての2Dゲームが3Dでもう一回復活すると考えていました。

2Dで煮詰まっていたゲーム業界で、すべてのジャンルが3Dでもう一回生き返ると。

 

――映画的なムービーシーンが挟まるゲームはありましたが、鈴木さんの作品は全部介入できるところに面白さがありました。

 

リアルなムービーとクオリティの低いゲーム画面が繋がっていると、違和感がありませんか。

僕は昔、某有名野球アニメで急に実写が混じることがあって、強烈な違和感がありました。

 

ああいう表現は個人的に嫌いで、自分の作るゲームには統一感を持たせたいと思っています。

僕がゲーム作りで大切な事は、世界観の統一なんです。

だから全体的なクオリティが落ちても、統一感を優先してしまう。

 

でもいまは技術も進歩して、クオリティとの両立ができるようになりました。

 

(後編へ続く)

 

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