タッチUIからVoice UIへ。 時代のニーズに合わせた事業を展開する株式会社サイバードにインタビュー!
全世界でのシリーズ累計会員数2,500万人を誇る女性向け恋愛ゲーム『イケメンシリーズ』を中心に、『BFBシリーズ』『細木数子六星占術』『名探偵コナンシリーズ』『なみある?』などのエンタテインメントサービスを展開している株式会社サイバード。
近年は新たに音声AIアシスタントとの会話で操作を行うVoice UI事業に挑戦するなど、時代の進化に合わせた事業を展開しています。
今回はVoice UI部 副部長 兼 Voice UI/UXデザイナーの元木理恵氏(写真右)とイケメンシリーズの人気タイトル『イケメンヴァンパイア◆偉人たちと恋の誘惑(以下、イケメンヴァンパイア)』のプロデューサー・新井優衣香氏(写真左)、2名にインタビュー! 新しい時代を切り拓く事業と多くの女性たちを魅了するゲームの秘訣について同時に伺いました!
時代の最前線で活躍する二人の経歴
――まずはお二人の略歴についてお話を伺いたいと思います。
元木
新卒で入社した会社は印刷会社でした。
その頃は、ガラケーにカメラが付き始め、ガラケーサイトを作る会社が出始めた時代です。
私も印刷物を作りながらガラケーサイトを作る仕事も請け負うようになり、ITの仕事は面白いなとは思っていたのですが、当時はモバイルインターネットの黎明期だったので作業量も多く大変で疲れてしまって…。
それで二社目に転職するタイミングでもITは選ばず、広告代理店に入りました。
ただ、そこでもガラケーサイトとか、QRコードを利用した広告といったITが絡まった仕事を任されることが多く、これはもうITの方向に行けってことかなと感じ、サイバードに入社した流れです(笑)。
――サイバードに入社してからはどのような業務をされましたか。
元木
私が入社した時期は、まだガラケーしかない時代でした。
キャラクターを扱う部署で、他社様からお借りしたキャラクターでガラケー向けの月額公式サイトを作っていました。
企画、運営、営業……と、開発以外の全ての業務を一手に担当していました。
皆さんサイバードと聞くと、いまではスマートフォンのゲーム会社だと思っている人もいるかもしれませんが、ゲームは会社のコンテンツ事業の一部でしかなくて、実はゲームだけを作っている会社ではないんですよ。
――Voice UIの事業を立ち上げることになったきっかけというのは何でしたか?
元木
仕事のやり方は様々あると思っていて、任された仕事を、責任を持ってじっくり取り組んでもいいし、自分で新しい仕事を考えてバンバン新規事業を始めてもいい。
私は、後者の常に新しいことをやり続けたいタイプで、Voice UIの前にも新しい事業を何回か立ち上げていました。
上手くいかない経験もたくさんしているのですが、その反省と学びを活かして、次の新規事業を作ることを常に考えて、実行してきました。
その経験が結実したのが、今の Voice UI事業なんじゃないかなと思っています。
Voice UIに至った直接のきっかけは、先輩のエンジニアがアメリカのCESという見本市からAlexa搭載のEchoデバイスを持って帰ったことです。
これを使ったら面白いことができるんじゃないかと思い、いろいろなツテを辿ってAlexaの担当者に繋がりました。
また、Googleのイベントに行って、Googleアシスタントの講演をしていた人が降壇したところに突撃して話しかけるとか、LINEの人とはいつの間にか仕事をしていたとか(笑)。
印象的だったのは、そうやって話をすると「サイバードには占いがあるから良いよね!」とか「『なみある?』でやってみたら面白いんじゃない」と言われることです。
こんな風に「サイバードが持つ既存コンテンツを生かせるよ」というところから話が始まることが多く、サイバードが持っているコンテンツの強さを感じましたね。
――新井さんのご経歴も教えてください。
新井
私は2012年の新卒でサイバードに入社しました。
就職活動をしていた時代はみんながiPhoneを持ち始めた時代で、様々なことに挑戦できる無限の可能性を感じ、IT業界を志望していました。
また、昔から何かを作るのが好きで、大学時代もサークルの活動でフリーペーパーを作ったり、イベントを開催したり、ゼミの活動で映画を作ったりしていたので、何かを作って世界に届けたいと思っていました。
サイバードを選んだ理由は、会社説明会で当時の社長のビデオメッセージに共感したからです。
『自分たちが届けるもので皆を幸せにしたい』という理念に共感を覚えて、サイバードを選びました。
――入社してからのキャリアはいかがでしょうか?
新井
最初はコンテンツ事業部で、今でいうInstagramのような写真をアップしてみんなでハート(いいね!)を押し合うソーシャルサービスの運営をやっていました。
その後もコミュニケーションアプリの運営をしていたのですが、自分自身でゼロから新しいものを作りたいという思いが生まれてきました。
そこで、入社2年目の春に人事に部署異動の相談をしたら、ちょうど恋愛ゲームが部署としても拡大し始めたタイミングだったということもあり、恋愛ゲームの部署に異動することになって、そこから現在まで約6年半ほど在籍しています。
部署に移ってからは運営プランナーから始まり、ディレクターになって、新規タイトルの開発を経験し、現在は、『イケメンヴァンパイア』というタイトルのプロデューサーをしています。
――キャリアアップする流れのなかで、大きな転機というのはありましたか?
新井
ディレクター、プロデューサーといった変化よりも、大きかったのは『イケメンヴァンパイア』の開発に携わったことですね。
その前も新規タイトルの開発を経験しましたが、そのタイトルは既存タイトルの続編だったため、ベースがもうあった状況でした。
でも『イケメンヴァンパイア』はゼロからの開発で、「偉人×ヴァンパア」というテーマ自体を自らが考えるところから始めたので、その経験で得たものは大きかったです。
特に公式PVを発表した時に想像以上に大きな反響があって、お客さまの期待を超えるものを届けられたのかなという実感がありました。
他の『イケメンシリーズ』にはなかったちょっと過激なセクシーさを上手く表現できたなと感じましたね。
Voice UIと『イケメンヴァンパイア』の出会い
――後でVoice UIにも関係するので、先に『イケメンヴァンパイア』について伺いたいと思います。どのターゲットに向けて開発を進めたのでしょうか?
新井
20代、30代くらいの女性をメインターゲットにしています。
『イケメンヴァンパイア』の前にリリースされたタイトルが『イケメン革命◆アリスと恋の魔法』というおとぎ話を題材にした女の子が好きな可愛いがつまった作品だったので、逆にもう少しニッチながらもズブズブにハマってもらえるような作品にしたいという思いがありました。
だから皆に自慢したくなるような王道の恋よりは、ちょっと自分だけの秘密にしたくなるような背徳的な恋を指向しています。
もちろんロマンティックという意味での王道の恋愛も要素としてありはするのですが、ズブズブにハマってもらうには、ヴァンパイアと人間の禁断の恋、みたいな背徳感が有効なんじゃないかと考えていました。
――どうやってそのテーマにたどり着いたのでしょうか?
新井
皆でとにかく議論し続けましたね。
『イケメンシリーズ』って実際に歴史上にいた人物をモチーフにしているのがひとつの特徴で、そこをぶらさないことは最初から決めていました。
ただ過去作で「幕末」も「戦国」も使っていたので、日本の歴史でもうこれ以上テーマとしての力が強いものがなかったんです。
そこで「三国志」とか海外の歴史も考えたのですが、いまいちハマらなくて…。
こうなったら「歴史上の偉人をかき集めちゃえ!」という発想にたどり着いたという訳です。
でも「偉人」というだけだと散漫で世界観が構築されないため、そこに先ほど言ったお客さまがハマる要素として「ヴァンパイア」を足して、偉人とヴァンパイアを掛け合わせることにしました。
――その発想をきちんと形にして、世の女性たちを魅了しているのがすごいです。
新井
テーマももちろん関係深いと思いますが、何で魅了しているのかというと、やはりキャラクターの魅力なのかなと思っています。
各キャラクターに履歴書と呼んでいる資料があって、そこには本編などで触れられていないことまで、めちゃくちゃ細かく設定が書かれているんです。
ひとりひとりを深堀りした上で本編としてストーリーを配信できていることが、キャラクターの魅力をきちんとお客さまに伝えられている理由かなと感じていますね。
あとは『イケメンシリーズ』では、お客さまとの信頼関係ができあがっている気がします。
「『イケメンシリーズ』の新しいタイトルだから絶対面白い!」という気持で、ファンの皆さまが楽しみにしてくれているんです。
先行作品によって『イケメンシリーズ』そのものに、ファンが作られているというのが何よりの強みだと考えています。
――これだけ長く愛される理由は他にもありますか?
新井
お客さまがキャラクターを好きになる時に、彼氏と同じ存在のような、人間を好きになるのと同じように好きになってくれることです。
例えば『イケメン王宮◆真夜中のシンデレラ』はもう7周年を迎えたのですが、お客さまがキャラクターの7回目の誕生日を祝ってくれて。もう現実の彼氏でも7年間付き合うってすごいことじゃないですか?(笑)
ゲームをしているというより、好きな人に会える場所みたいな感覚なのかなと思っています。
なので、ゲームとしての難易度や設計も大切にはしていますが、いかに物語に引きをつけるか、クリエイティブを可愛くするか、テーマを面白くするか、といった議論を深掘ってやっています。
――次に元木さんに、サイバードならではのコンテンツの作り方について聞いていきたいと思います。
元木
わたしは、去年と今年は社外にどんどん出て行って、Voice UIを広める活動をしていました。
Voice UI事業を立ち上げようとR&Dを始めた当時は、まだVoice UI市場は日本では未成熟の市場でした。
R&Dのフェーズなのでビジネスもうまく出来ていなかったし、社内での理解は正直得辛かったです。
色々提案するけど、なかなか受け入れられず、それならまずは自分達のプレゼンスを社外であげよう、外から認められるようになろうと思って、誰に言われた訳でもなく自主的にあらゆるハッカソンやイベントに出たり、自ら手を挙げてセミナーで登壇したりと、広報的な活動をしていました。
「サイバードはIPがあるからいいね」と言っていただく機会も多いのですが、社内のIPだからって、一朝一夕にすぐ使える訳ではないんです。
「これやりましょう」って話を持ち掛けても、説得が大変だったり、今の仕事で手一杯で手が回らない等、なかなか色よい返事がない場合も正直ありました。
Voice UIは名前の通りUIなので、なんでもできる一方で、それだけでは何もできないと考えています。
そんな状況で、「イケメンシリーズとVoice UIでサービスをつくりたいと」新井さんに提案したところ、「面白そうですね、やりましょう!」とすぐ言ってくれました。
私にとっては神みたいな存在で、Voice UI部が一歩踏み出せたのは、新井さんのおかげだと思っています。
新井
私はゲーム以外にも何かを作ることが好きで、ライツ事業部でメディアミックスも兼務していたこともあり、『イケメンヴァンパイア』でVoice UIの何か新しい試みができるなら、「ぜひやらせて下さい!」とお願いしました。
元木
すっと、すぐ握手しましたよね(笑)。
――新井さんはVoice UIのどこに可能性があると思ったのでしょうか。
新井
新しい試みが好きなんです。
ほかに類似のものがないし、ゲームのプロモーションにもなるので、断る理由がありませんでした。
――彼氏が部屋にいるイメージですよね。声によるインターフェースは機械の操作がベースだと思うのですが、元木さんが作っているものはそこから一歩踏み出そうとしている気がします。
元木
まさにそうで、寄り添う、一緒にいてくれる存在です。
推しがそばにいてくれるって最高じゃないですか。
その世界観をVoice UIで必ず実現させたいという思いで取り組みました。
それにえて、Voice UIの『イケメンヴァンパイア』コンテンツを作る際に自分たちに課した課題は、ファンの想像を超えたいということでした。
自分でゲームを遊んで、シナリオを全部読ませてもらって、「ゲームの中ではこのセリフは言ってないけど、このキャラクターなら、きっとこういうことを言うんじゃないかな?」というセリフを書いて、新井さんをはじめ、イケメンヴァンパイアのライターさんに監修してもらいました。
新井
そうなんです。
元木さんが、Voice UI用のセリフを全部考えて下さったんです。
元木
正直、『イケメンシリーズ』って自社のコンテンツなのですが、それまでは、少しは遊んでいましたが、きちんと触れていなかったんですね。
でも実際やってみると、コンテンツが濃密でシナリオが素晴らしいし、読んでいて自分が取り込まれるような感覚がありました。
ちょっと変な言い方かもしれないけど、とても誇りに思ったんです。
これをVoice UIに持って来るにはどうしたらいいのかと真剣考えて、ファンの期待は絶対に裏切らない、しかもその想像を超えていく内容にしようと、ギリギリのせめぎ合いをさせてもらいました。
新井
頂いたセリフの言い回しを少しだけ整えさせてもらいはしましたが、本当にそのくらいで…。
特にすごいと思ったのは、時間の数字を使った、言葉遊びみたいなセリフが入っていることです。
そもそもキャラクターのセリフを作るというだけでとても大変だったと思うのですが、さらにそんな仕掛けもされていて、『イケメンヴァンパイア』のスタッフ皆で感動していました。
元木
以前にシナリオの勉強もしたことがあって、それが役に立ちました。
無駄な勉強って本当にないんですね。
私からすると『イケメンシリーズ』を今まで遊んでなくてすいませんでした、という思いでいっぱいです…。
会社の良さが作っているコンテンツの良さに繋がる
――他社様から、Voice UIを使いたいという問い合わせがあったら?
元木
いくらでも相談に乗ります!
でも部署に3人しかいないから、あまり忙しくなると一気に複数案件をとりまわすのが、物理的に難しくはなりますが、外部にもご協力してくださる方々がいらっしゃるので、一度ご相談ください(笑)。
――儲かれば人数も増やせるということで。
元木
もう既に会社からビジネスとして成立させなさい、とは言われているんです(笑)。
最終的にはスマートフォンのアプリマーケットのように、BtoCでビジネスが回せれば一番いいと思っています。
でも今現在は、Amazon Echoシリーズを始め、スマートスピーカーが何台売れているのかはプラットフォームからは発表されていませんし、そのなかでどれだけの人がサードパーティのスキルを使えているかというと、首をひねる状態ではあります。
そんな厳しいVoice UI市場の状況下で、私たちサイバードがたくさんサービスを作っている理由は、時が来た際に、先行者利益を得られるようにするためです。
でも、それまでに「儲からないからもう終わり」って会社から言われてしまったらお終いなので、BtoBなど、ほかの手段でビジネスとして成立させないといけません。
ここ2年の私の社外活動もじわじわと効いて来ているところです。
――『イケメンシリーズ』の今後の展望についてはいかがでしょうか?
新井
実は私は、もともと恋愛ゲームをプレイしたこともなかったし、恋愛ゲームの部署になったら会社辞めますって言ってたくらいだったんです(笑)。
でも実際部署に入ってみたらメンバーの仕事に向かう姿勢にも感銘を受けたし、何よりシナリオを読んでみて超面白いと思ったんです。
きっと同じように、恋愛ゲームというハードルが理由でプレイしたことのやってない人たちがたくさんいると思うので、そういう人たち含めてもっと多くの人に遊んでもらいたいんです。
プレイしてもらったら絶対面白いと思ってもらえる自信があるので、もっと多くの方たちに恋愛ゲームをプレイしてもらうための企画を進めたいと思っています。
――新井さんは学生時代に映画作成の経験もおありなので、そのあたりも考えていらっしゃるのでしょうか。
新井
過去に舞台化はしているので、実は映画化もしてみたいとずっと思っています。
昔、携帯小説が映画化するブームがあったのですが、そんな感じで恋愛ゲームが映画化されるブームを作りたいんです。
そうすると恋愛ゲームがもっと多くの人に広まって、たくさんの人にプレイしてもらえるんじゃないか、という思いをずっと抱いています。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
新井
『イケメンシリーズ』に関して言うと、ゲームだけじゃなくて例えば映画化だったりと、新しい文化や流行を作っていけるようなことにどんどん挑戦していきたいと思っているので、これからも見守っていただけると嬉しいです。
会社に関しては、私は新卒からずっとサイバードなので、正直他の会社がよく分からないのですが、本当にサイバードという会社が大好きなんです。
働いている人も好きだし、挑戦できる環境もある。
やりたいことをやらせてもらえる環境があるということは、多分すごいことなんじゃないかなといつも思っています。
そういう環境だからこそ皆がどんどんアイデアを出して、コンテンツが良いものになっているのではないかなと。
会社の良さがコンテンツの良さにもつながっているのではないかと思います。
今は『イケメンシリーズ』を作っていますが、5年後にはまったく違うことをやっているかもしれない。
それは『イケメンシリーズ』が終わるという意味ではなく、物語を提供する形が変わっているかもしれないという意味で。
それができるのがサイバードという会社です。
その変化も含めて楽しんで頂き、ついでにサイバードがすごく良い会社だということが伝わると嬉しいです。
元木
Voice UIというキーワードでこのインタビューを読んでくださっている方は、新しいテクノロジーに興味を持っている人が多いと思います。
新しいテクノロジーは、それだけでは何も生まれません。
お客さまに新しい体験をしていただける「何か」を作るためには、過去の知識や経験、人との繋がりを大切に使いながら、どう新しいものに反映させていくか、ということが重要です。
だから、私がやっていることは、実はずっと一緒のことなのかもしれないと最近気付きました。
プラットフォームが変わっても、キャラクターやその世界観について昼夜問わず考えて、最適な形でお客さまにお届けできるように、日々努力をしています。
逆に言うと、地道にひとつのことを追求し、継続することが許されている会社なんだと思います。
ちゃんと腰を据えてものづくりに取り組むこともできるし、外に出て自分の活動をしてもいい。
もちろん本業をおろそかにしたら叱られるのですが、そこができている限り、自由にやらせてもらうことできる。
もちろん、何億とか投資する時はまた別ですけど……(笑)。
私の色々な活動が、次の何か新しい事業に繋がるかもしれないということを期待してくれてもいますし、私自身が13年も働いていられるので、悪い会社のはずがない(笑)。
とても自由で居心地がいい会社ですよ。
――ありがとうございました。
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