芸術をゲームに落とし込むことは可能?『Song of Bloom』に見るべき設計のあり方


ゲームはみんなが楽しく遊べるものであることが通例となっていますが、一方でそのルールを無視したゲームも世の中には存在します。

 

賛否両論の『Song of Bloom』

ドイツ発のスマホゲームとして有名になった『Song of Bloom』は、その芸術性の高さから様々な意見がプレイヤーの間で錯綜しています。

App Store :https://apps.apple.com/jp/app/song-of-bloom/id1479162134

 

遊び方がわからないという不評

『Song of Bloom』をダウンロードしてゲームを起動してみると、謎のポエムと抽象的なイラストが画面に現れ、延々と同じシーンを繰り返す様子がわかります*1。

 

オープニングかと思い、ただただそのシーンを見続けているだけでは、全くもってゲームは進行せず、初めてこのゲームを手に取った人は何事だろうと思う人も少なくないでしょう。

 

実際、ゲームのレビューにはApp Storeで多くの低評価が寄せられており、このゲームが有料ということもあり、ヘイトを買ってしまいやすい設計となっていることは明らかです。

 

少額とはいえ、お金を払ってまで手に入れたゲームが、意味のわからないポエムを垂れ流しているだけであれば、プレイヤーが怒り心頭になってしまうのは当たり前です。

しかし一方で、このゲームを優れた名作であると評価する声もあります。

 

一方で完成されたゲームだという高評価も

『Song of Bloom』を優れたゲームであると評価する声の正体は、このオープニングのポエムの謎を解いた人より寄せられる賞賛の声です。

 

実のところ、『Song of Bloom』はかなりよくできたパズルゲームとなっており、オープニングの時点からすでにゲームは始まっているのです。

抽象的なビジュアルと音楽、そしてポエムから織りなされる芸術的な表現に、プレーヤーはゲームという形式で参加し、その作品を三次元的に楽しむことができるという設計になっているのです。

 

ゲームの遊び方に関する説明は、特に具体的にゲームの中でされることはないため、自らその遊び方を発見し、謎を解いていかなければなりません。

その楽しみ方の発見そのものがゲームであり、有料コンテンツとして『Song of Bloom』を購入した時から始まっているのです。

 

実際、このゲームをしっかりと遊んでクリアした人からは、賞賛の声が上がっています*2。『Song of Bloom』の評価が分かれるのは、すなわち「謎が解けた人」と「謎が解けなかった人」に大きな乖離があるからと言えるでしょう。

 

『Song of Bloom』の遊び方

そんな賛否両論のこのゲームを遊ぶにあたり、どのような点に目を向けるべきなのでしょうか。

 

基本はパズルゲーム

『Song of Bloom』は、基本的にはパズルゲームであるため、しっかりとプレイヤーに謎解きを提供することがミッションとなっています。

 

とっつきかたこそ斬新であるものの、『Song of Bloom』はしっかりと謎解きの楽しさをプレイヤーに届けることに成功しています。

説明不足ゆえにその謎の難易度は跳ね上がっていますが、謎を発見し、解いたときの感動を、その芸術性によって最大限に高めることに成功しているというわけです。

 

『Song of Bloom』はいわゆるスマホゲームですが、謎解きの報酬をスマホらしからぬ演出によって充実させることで、プレイヤーに期待値以上の感動を与えているのです。

 

特筆すべきはその作り込みの深さ

『Song of Bloom』が単なる謎解きが難しいゲームであるだけにとどまっていれば、ここまで高い評価は得られていなかったでしょう。

 

しかしこのゲームは豪華な音楽やビジュアルの演出、そしてプレイヤーのスマホに最適化されたプレイングをしっかりと提供することで、このゲームの完成度を向上させるのに役立っています。

 

こういった作り込みの深さは、プレイヤーにゲームを楽しんでもらう上での大きなアクセントとなり、「面白いゲームだな」という印象を深めてくれる効果を期待することができます。

 

『Song of Bloom』は一見すると悪趣味なスマホゲームのように思いますが、いざ遊び進めてみるとその作り込みの深さに感動させるゲームとなっているところに、高評価が集まっている理由の一つがあるのです。

 

芸術性の高いゲームを作るときに気をつけたいこと

『Song of Bloom』のように、芸術性が高くとも万人に受け入れられるようなゲームとなるにはどのような要素を備えておくことが必要なのでしょうか。

 

とにかく細部を作り込む姿勢が大事

『Song of Bloom』は非常にセンセーショナルなオープニングとなっているため、低評価が付けられることも珍しくないのですが、ただ奇抜なだけでは高評価が与えられることはありません。

 

肝心なのは、奇抜でありながらもディテールへのこだわりを見せたり、「このゲームはしっかりと作り込んでいるな」という印象を持ってもらえるよう、しっかりと制作することです。

 

通常のゲームでも当たり前ですが、『Song of Bloom』のように芸術性の高いゲームとなるとなおさらです。しっかりと髪の毛一本まで作りこむ気持ちを大切にし、自身の芸術性を理解してもらえるように仕上げていきましょう。

 

完成度を追求する姿勢がもたらしてくれること

『Song of Bloom』のように、たとえ低評価が寄せられるほど奇抜な作品であってもディテールへの注目と、ベーシックなパズルゲームとしての感動がしっかりと設計されていれば、多くのファンから愛されるクリエイターとなることができます。

 

スマホゲーム界隈では、特にしっかりと作り込むクリエイターが粗悪なゲームによって埋もれがちになっているため、「骨太なゲームを作る人」という評価はクリエイターにとっては非常に大きな意味を持ちます。

 

Youtubeなどでひっきりなしにゲームの広告が流れているのを見ている人は少なくないかと思いますが、どれだけ宣伝をしても、本当に長期的にファンを獲得し、長く遊んでもらえるのは質の高い作品です。

 

『Song of Bloom』は少しセンセーショナルすぎるためにファンを取り流している部分はあるものの、しっかりとゲームを作り込んでいれば、ファンは確実についてくれるということを示す作品でもあります。

 

おわりに

どのゲームにおいてもクオリティの追求は欠かせませんが、それが前衛的な作品となればなおさらです。

しかし前衛的なゲームにたまには目を向けてみることで、自分がゲームを作る上で気をつけなければいけない点や、新しいアイデアを得るきっかけにつながるかもしれません。

 

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出典:

*1 ゲームキャスト「狂気のこだわりが作る新しい体験『Song of Bloom』レビュー。僕らはこのゲームに何度も気づかされ、何度も驚く」

http://www.gamecast-blog.com/archives/65955938.html

 

*2 上に同じ。

 

ライター名:Satoru Yoshimura

プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。

 

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