日本のゲーム業界は衰退している?その原因と将来性を最新トレンドを踏まえて解説!
ゲーム業界は就職先の候補として非常に高い人気を持っています。
しかし、最近は日本のゲーム業界が衰退しつつあるという意見を持っている人もいるようです。
このコラムは、ゲーム業界の将来に不安を持っている人に向けて、数値データを元にした実際の状況や、ゲーム業界が生き残っていくための注意点を紹介していきます。
目次
1.日本のゲーム業界が衰退していると言われる原因
オランダの調査会社の発表によれば、2017年の調査では世界全体でのゲームの市場規模は15兆円でした。
(newzoo社が2018年4月に発表した記事による)
この数値では、2021年には20兆円になるとも言われていますし、e-sportsの台頭もあって世界規模で見ればゲーム業界は確実に成長を続けています。
一方、日本に目を移すとどうでしょう。
過去日本は他国の追随を許さず世界でトップの順位を誇っていたのですが、最近順位は下降傾向になっています。
このような現状を踏まえて、「衰退」という言葉をささやく人もいるのが現状です。
では、現在日本のゲーム業界はどのような状況に置かれているのか、詳しく見ていきましょう。
1-1. 要求されるゲームのクオリティと開発費の増大
世界のゲームそのもののクオリティは、まさに日進月歩で上昇しています。
それはユーザーにとっては嬉しいことかもしれませんが、制作している企業から見れば人件費などをはじめとする開発費の増大を意味しています。
そのため、リスクを伴うチャレンジングな取り組みがされにくくなっている実情があります。
多くのゲーム開発会社が売上や利益が予測しやすい過去のヒットタイトルの続編や、キャラクター・ネームバリューに頼ったものなどリスクヘッジを優先したタイトルを多く出しているのは、このような事情があるからなのです。
1-2. プラットフォームの遷移の速さ
今の状態を作っている背景に、ハードウェアなどゲーム業界を取り巻く環境の変化の激しさもあります。
以前は家庭用ゲーム機を使ったコンシューマーゲームが主流でしたが、今ではスマホやPCなど、様々なプラットフォームがあります。
このように速度の速いプラットフォーム環境の変化もあって、最新技術に追いつくために各社は大きなカロリーを消費しています。
新しい時流に乗れなければタイトルをリリースしても注目されず埋もれてしまうこともありますから、ここにかかる費用がゲーム開発企業の収益を圧迫しているのです。
1-3. 旧来の収益モデルが霞んでしまった”課金制”の影響力
最近はソーシャルゲームのシェアの増加によって、ゲーム会社の売上元が課金に頼ったものになってきており、コンシューマーゲームが主流だった時代の売り切りモデルとはスタイルが変わってきています。
人気が出れば売り切りモデルの何倍もの利益を上げることも珍しくないことから、課金制を前提としたタイトルの開発のみを行っている会社も増えています。
ただし、「課金制が悪い」と言うことではないのですが、課金し続けることがプレイする面白さに繋がる仕組み自体が、ゲーム性とトレードオフになる傾向が見られます。
それを敏感に感じたかつてのヘビーユーザーが離れていく傾向もあり、ユーザー層の変化も起こっています。
1-4. 競合コンテンツの増加に伴うゲーマーの減少
娯楽そのもののあり方が、YoutubeやNetflixなどの新規コンテンツによって大きく変わってきています。
テレビを見るかゲームをするか、という少ない選択肢だった時代とは異なり、娯楽の多様化が進んだことから、コスト面で競合すべき相手が増えている現状もあります。
1-5. 企業単位での新規参入のハードル上昇に伴う一部企業の影響力の増大
変化が激しく、ヒットタイトルを出せば小さな企業が大きく成長できるという魅力があったゲーム業界ですが、最近は成熟傾向にあります。
ここまで書いてきた事情によって、新タイトルをリリースするためのハードルが大きくあがり続けているからです。そのため、魅力あるIPを既に保有している大手ゲーム会社(パブリッシャー企業)や、特定のデベロッパー企業でないとタイトル開発が難しいという状態が見られます。
→大手ゲーム会社をご紹介!大手と中小の会社の違いについても解説
1-6. 海外ゲーム会社の躍進
かつては日本の独壇場だったゲーム業界の様相が変化したのは、海外のゲーム開発会社の著しい成長もあります。
以前の日本のノウハウを吸収しつつ、独自の目線でタイトル開発を行う海外企業のゲームに魅力があるのも確かなことです。
日本国内のユーザーが海外発のゲームに流れている点も見過ごせないポイントです。
実際に世界全体でのゲーム関連会社の売り上げから、日本のゲーム会社が置かれている状況を次の項目で細かく分析していますので参照してください。
2.実際の世界のゲーム会社の売上
では、ここで、実際に世界のゲーム会社がどれほどの売上を記録しているのかを見ていきましょう。
参考にするのは、調査会社Newzooによって発表された「2019年世界ゲーム市場報告」です。
その中の、「2018年売上TOP35ゲーム会社」の項目に着目しました。
https://resources.newzoo.com/hubfs/Reports/Newzoo_2019_Global_Games_Market_Report_Press_Copy_v2.pdf
2-1.売上から見える現在の日本のゲーム会社の立ち位置
2018年1年間での世界のゲームの売り上げを会社別にみると、日本のゲーム会社では2位にソニーが入っていますが、その後は9位に任天堂、10位バンダイナムコ、16位スクウェア・エニックス、18位サイバーエージェント、19位ミクシィ、20位コナミとなっています。
20以内に7つの日本企業が入っていることを、「頑張っている」と受け取る解釈もあるとは思います。
しかし、売上額を見ると、「日本が世界のゲーム業界をリードしていた」というのはもはや過去のこと、と言わざるを得ないのかもしれません。
2位のソニーは1位のTencentと比較して7割程度、日本人がゲーム業界最大手として認識している任天堂ですらTencentの約2割の売り上げしかありません。
20位のコナミに至っては約6%ですから、この数値から世界の壁がいかに高いかが分かります。
2-2.上位にランクインしている企業の傾向
また、上位にランクインしている企業名を見るとMicrosoft、Apple、Googleなど、ゲームをプレイしない人でも日常的に目にする巨大企業が名を連ねているのも印象的です。
1位に上がっているTencentは日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、巨大市場である中国でSNSなどを提供している会社です。
中国の人口は既に14億人を超えているそうですから、1億2千万人程度の日本の10倍以上もの人口があります。
つまり潜在ユーザー数の面で見れば、日本国内の市場で太刀打ちするのは困難といってよいでしょう。
また、日本でもソニーや任天堂などのゲーム機を扱っている会社やミクシィ、サイバーエージェントなどのプラットフォームを扱うことができる企業が上位にいることを考えれば、ソフト製作のみで世界の上位に食い込むことは難しいのでは、という点も見えてきます。
3.日本のゲーム業界の実際の状況
「ゲーム業界は衰退している」と言われる理由を確認したところで、次は毎年発表されているファミ通ゲーム白書の2018版と2019版の二つを見比べながら、数値データを根拠にした日本のゲーム業界の状況を解説していきましょう。
3-1. 巣ごもり需要により国内家庭用ゲーム市場の規模が復調
新型コロナウイルスの蔓延による緊急事態宣言や「STAY HOME」の影響から、ゲームの中でも特に家庭用ゲーム機は”巣ごもり需要”の恩恵を受けました。
普段ゲームをしなかったライトユーザー層も、おうち時間の暇つぶしの為にゲームを購入する人口が増え、クラウドゲームでストリーミング形式のゲームを楽しむ人も増えていきました。また自宅でYouTubeなどの動画視聴をするユーザーが増えたことから、ゲーム実況動画の再生数が伸びる→ゲームに興味を持つ→購入するというサイクルにより、家庭用ゲーム機の売上はさらに伸びていきました。
任天堂株式会社が2021年3月期に発表した決算では、売上高が前年比34・4%増の1兆7589億円、純利益が同85・7%増の4803億円を記録。特にゲーム機の「ニンテンドースイッチ」や、人気ソフト「あつまれ どうぶつの森」の販売が好調で、営業利益と純利益は過去最高を記録しています。
また、PlayStation 5、Xbox Series X等の新型ゲーム機が続々と登場しており、今後もそのシェアを伸ばしていく事が考えられます。
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3-2. ゲームアプリやPC向けのオンラインゲーム市場の規模は大きく伸びている
前の項目でも書きましたが、オンラインのプラットフォームを利用したゲーム市場はこの10年で大きな伸び率を示しています。
また、国内のクラウドゲームの市場規模は2018年の11億円が、2019年5月の予想では、2022年には125.9億円にまで成長すると予測されています。
その伸び率は10倍以上ですから、堅調なジャンルも存在していることは確かな事実です。
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3-3. 国内ゲーム人口は微減、しかしPCゲームユーザーは増えている
2017年の国内ゲームユーザーは4,922万人でしたが、2018年には4,911万人と1%未満の微小な減少が見られます。
しかしその中で、PCゲームは1483万人から1553万人と5%近い伸びを見せています。
これはハードウェアの普及やe-sportsが盛んになってきたことが原因とみられています。
3-4. 家庭用ゲームだけでなくソーシャルゲームも含めると、ゲーム業界はむしろ成長している
クラウドゲームの成長は2-2でも紹介しましたが、Googleがクラウドゲームに参入するという大きな流れも業界発展の起爆剤として期待されています。
「Stadia」などの新しいゲームストリーミングサービスが登場することで、ゲーム業界は成長し続けるシナリオは明確視されています。
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4.日本のゲーム業界で今後大切になること
ゲーム業界は一部成長が横ばいになっている分野もあるものの、総じて「衰退している」とは言いがたいということが分かりました。
しかし全盛期の頃に比べると、国内外問わず国産ゲームのシェアが落ちていることは事実です。
ここからは、日本のゲーム業界が今後考えていくべき問題を挙げていきましょう。
ただし、ゲーム開発会社ごとに抱えている問題は異なりますから、ここで上げるのはあくまで総論になります。
4-1. 国内市場だけではなく、海外市場を見据えたゲーム制作
国内市場は伸びているジャンルもありながらも、全体ではわずかながら減少が見られます。
近年の傾向として、コンシューマーゲームユーザーが多い北米と、PCゲームユーザーが多い中国という構図がありますから、これを無視することはできません。
以前は日本で売れたものをそのまま海外へ輸出するスタイルが一般的でしたが、これからは最初から海外市場の需要に合わせたゲームを開発していくことが繁栄のカギになるでしょう。
4-2. 日本独特のオリジナリティのあるIPを
シェアは低下しているものの、海外市場が日本に対して独特の期待感を持っているのも事実です。
『スプラトゥーン』、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、『NieR:Automata』、『仁王』、『ダークソウル』などの日本の独自性があるタイトルは高い評価を得ています。
ですから海外市場を意識すると言っても、その国に既に存在する売れ筋のものをまねるのではなく、その国の文化を意識しつつも日本らしさを持つタイトルの開発が必要です。
4-3. ゲームに変わる娯楽コンテンツにユーザーを奪われない、魅力的な価値を提供し続ける
YoutubeやNetflixなどの新しい娯楽がゲーム自体のシェアを脅かしていることは前述しました。
これからもこのような新しい娯楽媒体が登場してくるのは歴史の連続性から見れば、避けられないことです。
しかし、ゲームにも多様なジャンルがありますし、業界自体もクラウドゲームなどで新しい波を起こそうとしていますから、開発企業は時代にマッチした魅力的なコンテンツを出し続けることが重要です。
参考記事:ゲーム業界は衰退している?現状や今後の動向を詳しく解説します
5.e-Sportsの隆盛は日本のゲーム業界を盛り上げる?
最近、今後のゲーム業界を盛り上げていく要素のひとつとして、e-Sportsが取り上げられることが増えています。
そこで、e-Sportsの概要と日本内での現状と海外との差について確認していきましょう。
5-1.そもそもe-Sportsとは
e-Sportsとは「エレクトロニック スポーツ」の略称です。
ジャンルとしては勝敗やポイントを競うゲームならほとんどプレイする対象になっています。
例えば「ウイニングイレブン」などの実在のスポーツを題材としたイベントや、「ストリートファイター」「鉄拳」などの格闘ゲームを主とすることもあります。
他にもシューティングゲームや、複数のプレイヤーがチームで敵陣を攻略するMOBAと呼ばれるものなども親しまれていますし、「ぷよぷよ」などが扱われる場合もあります。
このようにe-Sportsの世界ではさまざまなゲームでプレイすることが日常的に繰り広げられています。
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→e-Sports(エレクトロニック・スポーツ)とは?知っておきたい基本知識
5-2.最近e-Sportsがクローズアップされているのはなぜ?
日本では昔からゲームはプレイして楽しむものという見方が強く、どちらかと言えば不健康なものという偏見もありました。
その点で、汗を流したり体を鍛えたりする一般的な「スポーツ」とは対極的なものと見られてきた傾向があります。
しかし、海外ではもともと「スポーツ」という言葉には「娯楽」という要素を強く含んでいますから、ゲームをプレイすることも以前からスポーツの一種としてとらえられてきました。
そのため、自分自身がプレイしなくても他者が繰り広げるスーパープレイを見て歓声を送るという慣習は一般的なものなのです。
実際に海外ではプロゲーマーとして生活している人も数多く存在していますし、優勝すれば数億円の賞金を手にすることができる大会も多数開催されています。
2022年には中国で「アジア競技大会」という大きな大会が予定されていますし、e-Sportsをオリンピックの正式種目にする議論が行われているほど世界にはファンが多いのです。
5-3.日本でのe-Sportsの状況は?
日本でも世界の流れを受けて、ここ数年e-Sportsのイベントが増えてきていますが、世界のレベルから言えば遅れていると言わざるを得ません。
実は日本では現在法的な壁があって、海外のように大金を得られるe-Sportsの大会を開催することは難しい状態なのです。
しかし、ゲーム業界そのものを盛り上げる方法のひとつとして注目されていることは間違いありませんから、従来「ゲーム会社」と呼ばれてきた会社以外も、イベントのひとつとしてe-Sportsを開催する動きが見え始めています。
このような点では衰退がささやかれている日本のゲーム界にとって、新しいコンテンツとして取り組むジャンルがあるというのはビジネスチャンスであるとして前向きにとらえられています。
そのため、今後はさまざまな形でe-Sportsが日本国内に浸透していくことは間違いないでしょう。
6.VRゲームの台頭
6-1.VRゲームとは?
VRゲームは、virtual realityの略語で、仮想現実を生かした3Dと音声を結びつけることを可能にしたゲームです。プレイヤーにバーチャル・リアリティ技術を手軽に体験させることが可能で、2016年に発売されたPlayStaion VR以降、一気に活気づいた市場です。
VRコンテンツを楽しむ際は専用のVRゴーグルを使用します。これを装着する事で視界の360°が覆われ、限りなく現実に近い世界に没入する感覚が得られます。また、近年提供されているVRコンテンツは、リモコン操作によって自分の動きがVR映像内に反映されるため、よりリアルな体験が得られるようになりました。特に、ゲームや音楽のライブなど、エンターテインメントの世界が他分野に先行して多くのコンテンツを提供しており、VRの普及に貢献しています。
またVRゴーグルの販売台数は、2016年の1800万台から、2020年には6200万台までその販売本数を伸ばしており、今後も注目される技術の1つです。
6-2. ARとの違い
VRとよく比較される技術としてARがあります。ARとはAugmented Realityの略語で、日本語では拡張現実を意味しており、この技術を使用したゲームも多数リリースされています。
VRが完全な仮想世界でゲームを楽しむ事に対し、ARゲームは実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を“仮想的に拡張する”事が可能です。アプリゲーム「ポケモン Go」や、「ドラゴンクエストウォーク」等は、このAR技術を使用して開発されたゲームとして大ヒットを記録しました。
最新のVR/ARゲーム状況について
テクノロジー専門調査会社IDCの最新レポートによると、VR・ARのグローバル市場は、2020年から24年まで年率54%で成長し、市場規模は120億ドル(約1兆2,440億円)から728億ドル(約7兆5,465億円)に拡大すると予測されています。
アメリカのValve社やFacebook社といった大手テック企業も市場に参入しており、VRゴーグルの性能や表現できる3D技術も今後ますます成長する分野といえます。
7.まとめ
衰退が噂される日本のゲーム業界の実像について、さまざまな視点から状況を解説してきました。
要約すると、世界レベルで見たゲーム業界全体は確実に進歩を続けていますが、日本国内のユーザーが同じ伸びで増えているとは言えない状態にあります。
つまり海外に進出していけば市場は豊富で、ブルーオーシャンはまだまだ広がっています。
また、日本にはe-Sportsというまだまだ未発達のジャンルがあり、この点では国内需要も大きな伸びしろを持っていると言えます。
そのため、一部分を見て憂慮するのではなく、発展の道を目指して新しい手を打っていくことこそゲーム業界に必要な姿でしょう。
そもそもゲーム業界自体が、そのような変化が激しい中で勝ち残ることで洗練されてきた経緯があります。
ユーザーが求めるものを踏まえつつ、時代の流れを読み、独自性を持ったタイトルを生み出すことこそが、今のゲーム業界に求められています。
ゲーム業界やゲーム会社の仕事についてもっと詳しくなりたい、という方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
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