箱庭×タワーディフェンスの『箱庭神社』が持つ、いいとこ取りのゲーム設計とは
いつの時代も人気のゲームジャンルというものはありますが、今スマホゲーム界隈を賑わせる箱庭ジャンルと、タワーディフェンスを融合したゲームが『箱庭神社』です。
目次
ポップな箱庭タワーディフェンスの『箱庭神社』
『箱庭神社』は、参拝客の集客に専念しつつも、神聖な場によりつく悪霊を倒していくという、ゲームシステムとしては少し忙しい設計を採用したスマホゲームです。
公式ホームページ:http://kaguratech.com/jinja.html
参拝客を集めて“お金”と“祈り”を獲得する箱庭ゲーム
箱庭ゲームとは、ゲームジャンルの1つ“ミニスケープ”の通称のことです。
本ジャンルでは、リアルタイムに進行する環境においてユーザーがゲーム内の環境を操作したり、キャラクターなどがその影響を受けて自発的作業を行ったりすることで、状況の変化をもたらしていきます。
本作においてはユーザーがゲーム内の環境を操作可能ですが、これはミニスケープというよりはタワーディフェンスにおける資源のやりくりに近い内容となっています。
そのため、ミニスケープのタイトルというよりは、文字通り“自分の箱庭を作れる”意味での箱庭ゲームという解釈のほうがより正しいといえます。
また本作の風景は、日本人には馴染み深い神社のある風景ですが、この作品はそんな日本の風景をよりよいものとできるよう、参拝客を集め、さらに豊かな神社を作り上げていくことを目的とするゲームとなっています。
小さなマス盤上で展開されるゲームですが、ちょっとしたシミュレーション要素が侮れないのがこのゲームです。
神社を設置すると、少しずつ参拝客が訪れ、「祈り」と「お金」を神社に提供して去っていくのですが、道中に茶屋などを設置すれば、そこでもしっかりとお金を落としてくれるようになります*1。
神社箱庭ゲームではあるものの、神社の道中にある建物などもしっかりと設計しておくことで、参拝客を絶えさせない神社作りをすることが可能になります。
参道などを配置したり、参拝客をうまく誘導して、ストレスなくお祈りをして帰ってもらえる神社経営を進めていくのが、このゲームのポイントとなるでしょう。
悪霊退散を目指すタワーディフェンスの要素も
そんな神社経営シミュレーターとしての一面を見せる中、もう一つ注目しておきたいのが、迫り来る悪霊を退治し、神社という祈りの場であり、参拝客の憩いの場を悪の手から守り通す、タワーディフェンスの側面です。
タワーディフェンスゲームはリアルタイムストラテジーの一種で、ステージとなるプレイヤーの陣地に侵入してくる敵を倒すことが目的となります。
基本的な操作は施設の設置のみで、リソースの運用や設置内容がキモとなるのはほぼ共通していますが、特殊なルールが設定されているタイトルは多く、シンプルながらバラエティ豊かなジャンルとなっています。
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神社に危害を加える悪霊たちは、参拝客に潜んで神社へとやってきます。
参拝客と同じルートを通り、神社へと歩みを進めてくるわけですが、神社へと到達する前に討伐するのがこのゲームのもう一つのミッションです。
参拝客向けの設備とは別に、『箱庭神社』のステージ上には悪霊を討伐するための設備も設置しなければなりません。
鳥居や狛犬など、神聖なものを各所に設置しておくことで悪霊にダメージを与え、参拝客に混じって訪れる悪霊をしっかりと成仏させていきましょう。
旬のゲームジャンルを融合させた『箱庭神社』
箱庭もタワーディフェンスも、今人気絶頂の最中にあるスマホゲージャンルの二つですが、今作はどのようなポイントを抑えているのでしょうか。
プレイヤーの育成心を刺激する「箱庭ゲー」
この作品にも採用されているような箱庭ジャンルは、手軽に遊べて、かつ長時間プレイできるということで、スマホゲーム界隈では人気のあるジャンルの一つです。
都市育成シミュレーションの「シムシティ」シリーズや、歴史シミュレーションの「シヴィライゼーション」シリーズ、牧場育成ゲームの『Stardew Valley』、水族館のような神秘的な空間が楽しめる『アピスリウム』など、新旧問わず、常に名作が勢ぞろいしているジャンルです。
こういったゲームは、そもそもゲームプレイングスキルがそこまで問われないという点、そして、何時間でも遊べてしまう上、眺めているだけでも楽しいという、どんなシチュエーションでも楽しめるところが大きなメリットとなっています。
『箱庭神社』もまた、一から神社を構築して、増えていく参拝客を眺められる楽しみを有しており、今後は人気作品となっていくことが考えられます。
簡単戦闘モードでお手軽アクションのタワーディフェンス
一方で、箱庭シミュレーションと同じくらいに人気のジャンルとなっているのが、タワーディフェンスゲームです。
迫り来る敵に対してあらかじめ装備を整えておき、最深部に到達されないよう籠城戦を繰り広げるのがこのジャンルですが、その歴史は古く、多くのゲーマーを虜にしてきました。
展開されるテーマも多彩で、ゾンビの群れから人類を守る『They Are Billions』や、地球侵略の敵となる人類から母船を守る『エックスモーフ:ディフェンス』など、数の暴力で襲ってくる脅威を、優れた装備で退けるというのが基本的なゲームシステムとなっています。
タワーディフェンスは、基本的に攻撃ツールさえ設置してしまえば難しい操作は必要なくなるので、箱庭ゲームと同じくプレイヤースキルを問われないのが嬉しいところです。
難易度が難しいと感じても、何度かやっていくうちに攻略法は見えてくるため、自然とステージクリアの道も見えてきます。
何より、自分の設置した攻撃ツールがバッサバッサと敵をなぎ倒していく様を見るのは、実に痛快な景色でもあります。
そういう意味では、タワーディフェンスもまたプレイして楽しい、眺めていて楽しいゲームの一種と言えるでしょう。
どのように人気ジャンルを融合させたか
『箱庭神社』は、箱庭とタワーディフェンスという今人気のジャンルをいいとこ取りしたようなゲームですが、なぜ不思議とごちゃごちゃとした印象を与えない作りとなっているのでしょうか。
参拝客≒悪霊という設計
今作の面白いところは、シミュレーションゲームにおける収入源と、タワーディフェンスにおける的キャラの二種類が、同じルートを辿ってやってくるという点です。
彼らを神社にやってくるまでにうまく仕分ける必要があり、両者に対応する施設をうまく配置しながら、参拝客にはお金と祈りを拠出してもらい、悪霊には可能な限りダメージを与える必要があるという、合理的なパフォーマンスを求められます。
箱庭とタワーディフェンスを融合させているだけあり、ゲームシステムもゲーム内で分離しないよう、うまく二つのジャンルを融合させています。
タワーディフェンスと箱庭ゲーに通じるカスタマイズ性の融合
また、箱庭ゲームもタワーディフェンスも、それぞれがターゲットに対して有効な施設を設置するという意味では共通する行動を伴っています。
タワーディフェンスでは接近するキャラに対して攻撃するための施設を、箱庭ゲームでは彼らをうまく中へ連れ込むための施設を用意することになります。
一見矛盾した設計ですが、「参拝客」と「悪霊」という二つの軸を用意することで、『箱庭神社』は一つのアプリで二つのゲームを楽しめる作品として完成されているのです。
おわりに
『箱庭神社』は一見すると無理やり二つの人気ジャンルを抱き合わせた作品のようにも見えますが、実はゲームシステムの設計において、融合のための工夫がしっかりと施されていることがわかる、丁寧なゲームであることがわかります。
ビジュアルの作り込みなどもきめ細かなドットで行われており、ぜひ一度プレイをしてみる価値のある作品に仕上がっていると言えるでしょう。
併せて読みたい記事
→二つの「気持ちよさ」を融合したゲーム『Mindustry』の設計とは
出典:
*1 ゲームキャスト「神社を造って参拝客を迎える『箱庭神社』iOS/Android向けにリリース。箱庭を作りつつ参拝客の導線も意識する経営&簡易タワーディフェンス」
http://www.gamecast-blog.com/archives/65959088.html
ライター名:Satoru Yoshimura
プロフィール:ライター。20年以上の付き合いがあるビデオゲームとアメリカ音楽をテーマとした活動が中心。「日本のゲーム音楽がヒップホップに与えた影響」などブログで公開中。
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