
ゲームの移植とは?種類や企画の進め方、必要な人材などをわかりやすく解説
ゲーム業界において「移植」は、過去の名作を現代のハードウェアで蘇らせたり、異なるプラットフォームのユーザーへ作品を届けたりするために実施されます。
当コラムでは、ゲーム移植の定義から、リメイクやリマスターとの違い、移植プロジェクトのフロー、移植時に活躍する職種などを体系的に解説します。このコラムを読むことで、ゲーム移植の全体像を把握できますのでぜひ参考にしてください。
目次
1. 「ゲームの移植」とは
ゲームの移植とは、既存のゲームについて、別のプラットフォーム(ハードウェアやOS)でプレイできるようにする行為を指します。
たとえば、過去に存在した家庭用ゲーム機だけでプレイできるゲームは、現在多くの人が使っている環境では楽しむことができません。その一方で、そのタイトルを楽しみたい人が少なからず存在するという見通しがある場合、新たな環境下でプレイできるようにするわけです。
また、特定プラットフォーム向けにリリースした運用中のタイトルを、ユーザー層を広げるために移植を行う場合もあります。
1-1. 「リマスター」「リメイク」「リブート」との違い
移植と混同されやすい言葉に「リマスター」「リメイク」「リブート」があります。これらは作品に加える変更の方向性によって区別されます。(ただし、タイトルによって扱いが異なる例は存在します)
・リマスター
元のゲーム内容やシステムを維持しつつ、グラフィックの向上、テクスチャの高精細化、サウンドの高品質化など、主に外見や音質を現代の基準に引き上げることを指します。
・リメイク
「リメイク(remake)」という英単語には「作り直す」という意味があり、ゲームにおいても過去作を作り直すことを指します。その程度はさまざまで、ストーリーやキャラクター設定などの骨子を生かしつつ現代風にするものや、ある程度の要素を残すのみでストーリーまで変えてしまうものもあります。
・リブート
シリーズのコンセプトを維持しながら、設定や物語を一度白紙に戻して再始動させることです。移植やリメイクよりも自由度が高く、新作に近い扱いとなることが一般的です。
これらに対し「移植」は、あくまで「元のプレイ体験を別の環境で再現すること」に主眼を置いています。それぞれの詳細な違いについては、以下のコラムを参考にしてください。
→「ゲームの「リマスター」ってぶっちゃけ何?「リメイク」「移植」との違いも解説!」
2. ゲーム移植の代表的な種類
移植はその目的や予算、ターゲット端末の性能差に応じて、いくつかの手法に分類されます。
2-1. ストレート移植
ストレート移植は、オリジナル版のゲーム内容やグラフィックを基本的に変更せず、オリジナル版とは異なるプラットフォームで動作させることを優先します。
あくまでも動作互換が目的なので、修正範囲も最小限です。そのため、大きな開発コストがかかりませんし、短期間でリリースできるメリットがあります。
ユーザーにとっては、オリジナル版の体験をそのまま味わえる良さがある反面、驚きや新しさは得られません。
2-2. 最適化移植
最適化移植は、移植先プラットフォームの特性に合わせて、パフォーマンスを最大限に引き出すために行います。
たとえばフレームレート(1秒間のコマ数:frames per second)が異なる場合、描画に悪影響が出るリスクがありますから調整が必要です。また、ロード時間の短縮やシステムの安定、入力遅延の改善などが行われます。
2-3. 拡張要素追加移植
オリジナル版に対して、新しいコンテンツや機能を追加して移植する手法です。要件を追加することで開発規模が拡大し、話題性も高まるため、別プロジェクト化しやすいメリットがあります。
たとえばユーザーインターフェース(UI)の全面刷新や、新キャラクターや追加シナリオの実装などが代表的です。また、異なるプラットフォーム間で対戦や協力プレイができる「クロスプレイ」への対応などもこの移植に含まれます。
追加コンテンツを含めて移植を行い、「完全版」としてマーケティングする手法もあります。
3. 移植先として選ばれやすいプラットフォーム
移植先として、3つのプラットフォームを挙げ、その移植に関する特徴を解説します。
3-1. スマートフォン(iOS・Android)
PCや家庭用ゲーム機に比べるとスマートフォンの所持率は高いので、ゲーム会社のターゲットとしては非常に魅力的です。
ただし、スマートフォンでゲームをプレイする人はプレイの手軽さや読み込みの速さを求める傾向が強いので、その点への対応が欠かせません。また、PCや家庭用ゲーム機には無縁なタッチ操作への対応が求められますし、小さな画面でも見やすく扱いやすいUIの存在も必須です。
これらの課題があっても、市場の大きさを踏まえて多くのゲーム会社がスマートフォンへの移植を行っています。
3-2. PC(Steam)
端末としてのシェアが大きいスマートフォンと並行して、PCへの移植も行われています。市場的にはPCよりスマートフォンの普及率が高いとしても、PCにこだわるゲーマーは多いからです。
そのため、スマートフォンを主体とするゲームや家庭用ゲーム機向けのタイトルをPCに移植することで、ユーザー層を広げることができます。これはコミュニティ育成にも有効なので、移植先としてPC(Steam)は有力です。
3-3. 家庭用ゲーム機
過去の家庭用ゲーム機専用タイトルを最新のゲーム機へ移植するのは、ユーザー層の拡大に有効です。また、クロスプラットフォーム対応によるコミュニティの活性化を狙い、PCやスマートフォン向けのタイトルを家庭用ゲーム機に移植することもあります。
家庭用ゲーム機メーカーの基準に合わせる技術的なハードルはありますが、PlayStationシリーズやXboxシリーズ、Nintendo Switchシリーズへの移植を行うゲーム会社も多いです。
4. 移植プロジェクトの進め方
移植プロジェクトは、単なるコピー作業ではなく、緻密な調査と計画に基づいた再構築プロセスです。
4-1. 企画・技術調査・移植方針決定
・企画
移植に当たって最初に行うべきなのは、しっかりと企画を立てることです。ユーザーのニーズが存在すること、企業として利益が上がることを明確に示さなければ、上層部やスポンサーは予算を出してくれません。
「どのプラットフォームを対象にするか」、「ターゲットはどの層か」といった検討や、収益モデルや発売時期の決定も重要です。
・技術調査
プラットフォームによってソースコードが異なる場合が多いので、技術的ハードルや必要なリソースを明確にする調査も行われます。これが不十分だと開発開始後に開発現場の混乱が起こります。
・方針決定
企画の立案や調査結果を元に、移植の方針を決定します。オリジナルに忠実なストレート移植を行うか、最適化に特化するか、コンテンツ追加などを含む拡張方向に舵を切るかがこの段階の注目点です。
4-2. 実装・最適化
・実装
企画が採用されて方針が決まれば、実際の開発作業に入ります。まず、ターゲット環境下で適切な開発が行えるようにビルド環境を整えます。その上で、プラットフォーム固有のAPI(アプリやプログラムをつなぎ合わせるインターフェイス)や、グラフィック処理、入力処理、保存機能、ネットワーク改修などさまざまな点への技術的対応が必要です。
・最適化
実装と並行して行われるのが最適化です。移植先では様々な特性が異なるので、パフォーマンスを維持できるよう注意が必要です。また、メモリ容量やロード時間の短縮など、配慮する点は多数あります。移植によって安定性が失われることがないよう、気を配りながら作業が進められます。
4-3. QA・認証・リリース後運用
・QA・認証
開発の最終段階では、QA(品質保証)も重要です。致命的なバグがないようにするのはもちろんのこと、アクセシビリティやプラットフォームへの適合性も確認します。また、既存のレーティング機構の認定を受けて対象年齢を明記することも欠かせません。
・リリース後運用
近年のゲームはリリース後にも多数の工程があります。発売後に発覚した不具合へのパッチ対応や、新しいOSバージョンへの互換性維持、ユーザーからのフィードバックに基づいたバランス調整など、継続的な運用が求められます。
5. 移植に必要な役割と人材
移植プロジェクトを成功させるには、以下のような人材が必要です。
・テクニカルディレクター・リードエンジニア
プロジェクト全体の技術方針を決定します。そのプロジェクトで起こり得る問題点を素早く見抜き、移植後にトラブルが起きないように、最適な開発を進める旗振り役として活躍するポジションでもあります。また、品質基準の策定や、技術的なトラブルの最終判断なども重要な責務です。
・プラットフォームエンジニア
ターゲットとなるハードウェアのSDK(Software Development Kit:開発に必要なツールのキット)や、OSに精通した専門家です。各プラットフォーム固有の認証要件やストアのレギュレーションへの対応も行います。
・グラフィックス・最適化担当エンジニア
このポジションのエンジニアは、負荷解析やレンダリング調整を行います。
・QA(品質保証)
移植作業によって発生する不具合の発見や報告を行って、品質の維持・保証を担当します。また、機種差分テストなども実施します。
・プロデューサー
プロジェクトの予算、スケジュール、人的リソース、作業範囲などを管理します。
6. まとめ
ゲームの移植は、既存タイトルを異なるハードウェアやプラットフォームでも楽しめるようにする手法です。人気を博した過去タイトルを現代の環境でプレイできるようにするケースや、特定プラットフォームのみでプレイできるゲームを移植して、ユーザー層を広げるために行うケースがあります。
また、オリジナル版の体験を生かすストレート移植から、コンテンツの追加などを含む拡張要素追加移植など、その手法も多岐にわたります。
どの手法であっても、移植にはプロデューサーやディレクター、エンジニアやQAなど、多数の分野のプロフェッショナルの尽力が必要です。ゲーム会社としては、移植特有の業務をしっかり押さえて、移植の成功を目指すことが重要です。
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