ジャンルを問わない3DCG制作!株式会社ミューズが取り組む、自由度と多様性に重点を置いた働き方に迫りました!

 

株式会社ミューズは、フルCGアニメ、ゲーム、ライブ映像など、プリレンダ、リアルタイム問わず幅広い3DCG制作を手掛けています。
今回は株式会社ミューズの代表取締役である杉森哲郎様に、ミューズを設立したきっかけやご経歴、3DCG専門スタジオとしてのミューズの特徴についてお伺いしました!

 

社風のベースにある〈自由度〉と時代の〈多様性〉

――まずは杉森様のご経歴について教えてください
株式会社ミューズ代表取締役、杉森哲郎と申します。

 

もともと大学卒業後の進路としては、映画業界を目指していました。ところが、採用試験でことごとく不採用。バブル絶頂期だった当時、就職浪人していたのは周囲で僕くらいでした(笑)。そんな時に、ある知人を通してエニックスの方からお誘いを受け、入社することになったのが社会人として最初のキャリアです。

 

入社して最初に任された業務は、ゲームキャラクターをモチーフにしたボードゲームやカードゲームの企画でした。自分のような社会人未経験の意見でも積極的に採用してくれる、とてもフランクな職場でした。ゲームのルールを小学生にも分かりやすく伝えるため、説明書をギャグ満載のストーリーマンガにしてみたり、いろんなアイディアを出し合って、みんなでそれを面白がるという雰囲気でしたね。その時の体験が、弊社の社風の原点のひとつになっていると思います。

 

その後転機になったのは、Windows 95でPCが一気に普及したとき、CD-ROMやQuick Timeが登場したことでした。
当時はPCで動画再生が出来るということがニュースになるような時代です。前述した通り、僕はもともと映画業界を志望していたので、 “これなら自分も映像制作の現場に入れるかも”と思い、CD-ROMでゲームや写真集を企画・制作する会社に転職しました。その時に初めて3DCGというものに出会ったんです。また、当時発売されたばかりの『MYST(ミスト)』というゲームにも、とても刺激されました。CGだけで作られた緻密で神秘的な世界観が素晴らしく、「新しい映像表現が登場した!」と、夢中になってプレイしましたね。

 

その後、アニメとも実写とも異なる映像空間を表現できる3DCGに可能性を感じ、エニックス時代の上司が設立した株式会社クライマックス・グラフィックスに転職しました。社名の略称が「C・G」であるくらいですから、3DCGによる表現にとてもこだわりのある開発会社でした。それからしばらくしてフリーランスになって、携帯ゲームのシナリオ作成や、特撮作品の書籍・DVDの企画・編集などにも携わりました。ミニチュア特撮は、表現のテクニックでCGと通じるところが多いんです。歴史的な作品を手掛けた方々へのインタビューなどを通して、貴重なノウハウをたくさんうかがえました。

 

ミューズを立ち上げたのはそのあたりです。携帯ゲームの開発会社に出入りしていた時に、そこのプロデューサーがCG制作を発注できる人材を探していたので、すぐにフリーランスでデザイナーをやっていた知人を紹介しました。それをきっかけに仕事が増え始めたので、仲間を2、3人集めて事務所を借り、取引の都合上、法人化することにしました。そんな流れなので、「起業するぞ!」みたいな志の高いスタートではなく、要は成り行きですね(笑)。

 

起業してすぐに遊技機用のCG需要が急激に増え始めて、その流れに乗ってスタッフの人数も増えていきました。いろいろなジャンルやテイストの依頼が来ましたし、求められるクオリティも日進月歩だったので、スタジオとして凄く鍛えられました。直近3~4年くらいはゲーム系とフルCGアニメが半々くらい、最近はVRなどにも関わっています。

 

 

――ジャンルによりCGの作り方は変わるのでしょうか?

 

弊社はゲーム会社でもアニメ会社でもない、〈3DCGのスタジオ〉というスタンスです。在籍するスタッフは全員CGデザイナーですが、みんな基本的にCGを作ること自体が大好きなので、やったことのないジャンルやテイストに対しても、「いろんなCGを作ってみたい」という好奇心が強いですね。ジャンルが違えばもちろん作り方も変わりますし、プロジェクトによって固有のシステムや技術への適応が求められることもあります。それをスキルや視野が広がるチャンスと捉えて、新しいことにも意欲的に取り組んでいます。これからさらに新しいジャンルが増えていくでしょうから、「いろんなCGを作ってみたい」と思っている弊社みたいなスタジオには欠かせない姿勢です。

 

――ミューズの組織づくりで特に意識されていることはありますか?

 

弊社は創業以来、職場の〈自由度〉を重要テーマとして考えてきました。〈自由〉はさまざまに定義できると思いますが、ひとつは〈多様性への対応〉です。
20世紀は画一的に管理していた時代でしたが、近年は多様化する働き方・ライフスタイルにどう対応するかが問われていると思います。言い換えると“いかに自分らしく働けるか”ということですね。
育児中のシフト勤務などにも取り組んでいますが、制度を作るだけではなく、周囲の理解や制作スケジュールへの組み込み方など、運用の仕方も試行錯誤してきました。

 

これは些末な例ですが、僕はタイムカードが大嫌いなんですよ(笑)。打刻のための1分1秒に冷や汗をかくことにどんな意味があるのか?と。仕事の成果が上がっていれば、どんな働き方でもいいはずです。むしろ一定の〈自由度〉がある方が効率的なこともあります。

 

〈自由〉というのは、おのおのが勝手にやっていいということではもちろんなく、個々人による自己管理がとても大事です。弊社も最初から〈自由度〉が理想的に確保出来たわけではなく、たくさんの成功と失敗の上に、現在のスタイルが成り立っています。これまでのそうした〈自由度〉〈多様性への対応〉への取り組みは、急速に進むリモート化の中でとても役に立っています。

 

スタッフみんなが、CGを作ることが大好きだし、最新の技術情報にも貪欲です。だから勤怠に関して厳しく目配せする必要がそもそもないんですよ。エンターテインメントを作っているわけですから、開放された雰囲気の中で、楽しんで働いてもらいたい。誰だって、楽しいことなら言われなくても真剣にやるでしょ?(笑)

 

 

――成果について何か指標などはありますか?

 

当たり前ですが、基本は納品物がOKをもらうことです。
求められていることが出来ているか。その次に、そのプロジェクトを通してどれくらい成長できたか。制作物のクオリティだけでなく、作業効率化の提案や、プロジェクトをまとめる能力など、さまざまな角度から評価します。
タイトルによっては、緻密で膨大な指示書や資料を読み込むこともありますから、事務処理能力も必要です。そして、現場から高い評価が上がってきたら、すぐに給与査定をします。弊社は定期昇給ではなく、能力や貢献度に応じていつでも査定し、すぐに報酬に反映させています。スキルがアップしているのに、何ヶ月も昇給を待ってられないですからね(笑)。

 

――スキルアップのための社内教育などは行っていますか?

 

現在は新型コロナウィルスの流行により難しいですが、勉強会を開くことはあります。そして何より、ふだんの業務こそが技術力を向上させるチャンスですから、互いに教え合ったりする日常のコミュニケーションを大事にしています。特に新人の育成については、弊社のデザイナーはわりと熱心な方だと思います。
昨年以降、リモートワークのスタッフが増えましたから、それらの機会を確保するノウハウは探っていきたいですね。オンラインだからこそ出来ることも、必ずあるはずですから。

 

そうしたコミュニケーションを重視したスタイルは現場の中で継承されているので、僕の方で出来ることと言えば、なるべく各スタッフがそのとき持っている希望や課題に合った仕事を取ってくることくらい・・・ですが、そんなに積極的に営業しているわけではありません。
エニックス時代の社長である福嶋康博さん(現株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス名誉会長)から“作品が面白ければ、営業をしなくても売れるはずだ”と教え込まれたことを、今でも反復しています。CG制作で言えば納品物、つまり結果が次の営業につながるということですね。「また頼みたい」と思ってもらえること。そのためにも、まずはスキルアップやチームワークを強化出来る基盤となる職場環境づくりが大事だと思っています。

 

ダンス系作品だけは、〈プリキュア・シリーズ〉のエンディングや初音ミクが大好きな僕が、こだわりを持って営業してきた分野で、弊社の得意ジャンルのひとつになっています。

 


「初音ミク GALAXY LIVE 2020」
© Crypton Future Media, INC. www.piapro.net piapro
© 2016 pulse Inc. All Rights Reserved.
(ミューズはアニメーション制作を担当)

 

――〈自由度〉に対しては自己管理も重視しているとお聞きしました。その点について詳しくお話しいただけますか?

 

例えば、フリーランスの人はふつうに自己管理を行っていますよね。我々も同じ人間ですから、同じように出来るはずです。組織のみんなが自己管理出来れば、ルールや規則は減らしていけます。〈自由〉というのは、与えられるものではなく、自ら創り出すもの。withコロナの時代になって、それはもはや社風とかではなく、必須課題になっているんじゃないでしょうか。

 

それから自己管理というのは、自分の行動や意識をコントロールするという意味だけではありません。そこには「利他性」も必要だと考えています。自分のメリットだけでなく、他者のメリットも考える。その結果、組織全体のアベレージが上がれば、個々人のメリットとして戻ってくる。新人に技術を教えることで、逆に教える方のスキルがアップする、ということもありますしね。
ルールや規則から出来るだけ開放することで、そうしたことが自発的に行われる環境を作る。ルールは得てして罰則や減点とセットなってしまい、ギスギスした空気を作ることもありますよね。自発的な行動によって成果が出たり、他者から喜ばれたりすれば、うれしさは何倍にもなりますし、好循環につながると思っています。

スタジオと個人のマッチングを決めるのはフィーリング(?)

 

――入社してほしい職種や人材像などはありますか?
弊社はモデラーとアニメーターしかいないので、求める職種としてはこの2つです。ちなみに、現在弊社のデザイナーは25名で、男女比は6:4くらいです。

 

人材像については、特に明確なビジョンは持っていません。ポートフォリオはもちろん大事ですが、個人と企業の出会いなんて、結局は運とフィーリングに依るところも大きいんじゃないですかね。例えば、このインタビュー記事を読んでピンと来る人もいれば、そうでない人もいるはずです。
弊社は、「何社か不採用になって、終盤になってミューズに行き着いた」というケースが伝統的にあるんですよ。そう言うと最後の救済システムみたいだけど(笑)、そういう人とは、不思議と初対面からフィーリングが合うことが多いですね。「うちの会社にいそうなタイプだな」とか、「笑える人だな」という理由で採用したこともあります(笑)。そうやって採用したスタッフも、今やクライアントが指名を解除してくれないベテランにまで成長していますから。

 

また、公式サイトで“育児シフト勤務可能”という項目を見つけて応募してくれる人も、男女ともにいます。
一般的な用語だと「時短勤務」ということになるわけですが、先ほども述べたように、弊社はあくまで成果主義ですから、よほどの短時間勤務でない限り給与は変わりません。実際、割り当てられた1人月の工数を、みんな堅実にクリアしています。育児シフトで時短になって、かえって作業効率がアップし、スキルが飛躍的に伸びたスタッフもいます。テレワークの時代になり、働き方の常識も覆っていくでしょう。時間の使い方次第で能力が発揮されることもあると思います。これまで働きにくかった人にも、恵まれた労働環境が増えていって欲しいものです。

 

ただ、弊社の場合はたまたま〈自由度〉を重視していますが、逆にある程度管理されている方が働きやすいという人もいると思います。〈多様性〉というのはそういうことですから。弊社だけで全ての〈多様性〉には対応出来ません。いろいろなパラメータの会社があり、自分の働き方に合った会社を選ぶ。そのとき、弊社にもフィーリングを感じていただけたらうれしいですけど(笑)。

 

 

――フィーリング以外の技術的な採用基準についてもお聞かせください(笑)

 

はい(笑)。特に新卒者採用の際には、ポートフォリオの「完成度」ではなく、「何をやろうとしているか」を重視しています。社会人になる前に熟練の人なんてほとんどいません。イメージをきちんと持って、そこを目指して制作しているかを重点的に見ます。技術は後からいくらでも習得出来ますから。
それから弊社の場合は、絵を描く素養があるとポイントが上がります。その時点で未熟であっても、仕事での経験を得れば、伸びるのがとても早いです。

 

これは余談ですけど、この状況下でオンライン面接が増えたと思いますが、昨年弊社が予定していたインターンも難しくなったので、代わりにオンラインで実施しました。チャットワークを使って課題を出し、制作物をアップしてもらう・・・というかたちです。遠方地の学生さんだったので、インターンは夏休み期間だけを予定していました。それが思わぬ状況の変化で、逆に数ヶ月にわたってきめ細かなスタディが出来ました。さらに、その後に内定した学生さんにもそのチャットワーク・グループに入ってもらい、並行してスタディを行いました。お互いの情報を共有出来るし、オンライン活用法についてのひとつの発見でもありました。

 

――今後の展望などはありますか?
採用面接でもそうした質問を受けることがあるのですが、「特にありません」と答えています(笑)。CGの世界もコンテンツがどんどん〈多様化〉していますので、あまり未来を限定したくないんです。これから時代は大きく変化していきますから、僕ひとりのビジョンだけでは未来を進んでいけないと思っています。スタッフみんなの興味や関心の集合体が弊社の「夢」ですね。

 

――CG業界を目指す人に向けてメッセージがあればお願いします。
若い人にアドバイスするなんておこがましいことですから(笑)、そのうえで言えることがあるとしたら、とにかく“新しい人は新しいことをやって欲しい”ということですね。この時代の転換期でデジタル化、オンライン化は加速度的に進むでしょうから、次々と新しいものを見せて欲しいです。もちろん、僕の世代もまだまだ現役ですから、負けないように頑張りますけど(笑)。

 

先日、某SNSで、ゲーム業界の方々が業界の未来について熱く議論していたんですが、会社や肩書、年齢を超えての議論に聞き入ってしまいました。そうした土壌はあるので、これからの人たちも意見や行動をガンガン起こしてほしいですね。時代は大きく変わろうとしていますから、年齢や経験に関わらず、全員が新たなスタート地点にいるような気がします。100年後の世界から見たら、今のCGはまだまだ始まったばかりなんじゃないですかね。なので最後は、映画「ジョルスン物語」の有名なセリフで締めたいと思います。

 

「You ain’t heard nothin’ yet(お楽しみはこれからだ)」

 

――ありがとうございました!